38 / 49
第38話 本物の証明(3)
しおりを挟む
「オラァ!」
タコメの股間に、蹴りが炸裂した。
「ぐっ……!」
モヒカン男は思わずコーディを放し、顔をしかめてうずくまった。
コーディは尻もちをついたが、どうにか無事だ。
ってか、おい誰だ、横槍を入れたのは?
「なんだぁ……てめぇは――」
気づけば、モヒカン男が俺をギロリと睨みつけていた。
他の村人たちも、俺に向かって視線を集中砲火だ。
え? あれ? まさか――
「えっと……もしかして今の、俺がやっちゃった?」
「ふざけんな! ぶっ殺してやる!」
怒りに燃えたタコメが、ぶっとい腕で殴りかかってきた。
――あ、やば、死ぬ。
と思った次の瞬間。
ガシィッ!
拳を受け止める音とともに、黒髪ポニーテールの背中が俺の前に立ちはだかった。
「はぁ~……」
太刀川は、あきれ顔でため息をついた。
「さんざんアタシに我慢我慢って言っといて、なんで自分で突撃しちゃうのよ? 損した気分じゃない」
「あ~……すまん。体が勝手に」
「まぁ、いいけど。……いいんだよね? もう」
太刀川の手の中で、タコメの拳がミシッと音を立てた。
筋肉ダルマのパワーをはるかに凌駕する、これが本当の黒の書の力だ。
「がっ……て、てめぇ、一体……」
「なにやってんのよ! そんなヤツ、とっととブッ殺しちゃいなさいよ!」
「わ、わかって……らぁっ!」
タコメが風を巻いて右脚を振り上げ、渾身の蹴りを叩き込む――
しかし、その一撃は虚しく空を切った。
太刀川の姿は、すでにそこにはいない。
「なっ……き、消えた!?」
混乱するタコメの頭上から、涼やかな声が降ってくる。
「こっちだよ」
見上げれば、宙を舞う太刀川のスカートがふわりとひるがえった。
高々と掲げられた左脚が陽光を浴びてきらめき、一直線に振り下ろされる――
「ふっ!」
ドゴシャアアアッ!
カカト落としがタコメの顔面を直撃し、その頭が地面にめり込んだ。
隕石でも落ちたかのような衝撃で、地面が大きくへこみ、大地が揺れた。
舞い上がった石つぶてが降り注ぐ中、タコメは白目をむいて失神し、ピクピクと痙攣している。
ニセモノ女も村人たちも、目の前の光景に言葉を失っていた。
太刀川は無言で男の顔から足を離すと、静かにニセモノ女の前へ歩み寄った。
「ヒィッ!」
バケモノに出会ったように身を縮める女。
太刀川は冷徹な声で告げた。
「謝って」
「はひぃっ?」
「コーディ君と村の人たちに。……あと、アタシにも」
正義の怒りに満ちた声だった。
若干、個人的な感情も混じってるが……
錯乱したニセモノ女は、「うわああ!」と叫んでニセの黒の書を突き出した。
「く、来るなぁ! 来たらこれを開くわよ! そしたら大蛇が出て、アンタなんて一呑みに――」
パァン!
空気を裂く音が響き、女の手の中でニセの書が跡形もなく砕け散った。
「はへっ……?」
呆然としたまま手元を見つめる女。
俺にも見えなかったが――太刀川がジャブ一閃で本を消し飛ばしたんだ。
「もう一度言わせる気?」
「ひっ! ひぎっ! ひいいいいっ!」
太刀川の圧に、ニセモノ女は腰を抜かしてへたり込んだ。
「な、なんなの、何者なのよ、アンタたちはぁ!」
その言葉が、俺の中のジャパニーズの魂に火をつけた。
こうなったら、いっそド派手に開陳してやるか。
俺は背中のナップザックから、『本物』の黒の書を取り出した。
「ひかえぃ! ひかえおろう!」
あぜんとする悪代官――じゃなかった、ニセモノに向かって書を突き出し、
「この黒の書が目に入らぬか! 頭が高い! ひかえーい!」
どーん! と決めセリフをぶちかましてやった。
うおおっ、気持ちいいっ……!
「……いや、それ、異世界の人たちに通じるのかな?」
たしかに……。
「な、ま、まさか……」
「こ、これが本物の……黒の書……」
「それじゃ……あの子たちが……本物の契約者!?」
一同はざわつき、
「へへえ――っ!」
と一斉に土下座した。
「ごめんなさいごめんなさい! もう二度としません! この村にも絶対近づきません! だから許してぇ!」
ニセモノ女は地面に頭をこすりつけて、許しを請う。
「おお、通じた……」
「うそぉ。ていうか、なんで村の人たちまで一緒に土下座してんの?」
「ノリと勢い……じゃねぇ?」
ともかく。
これで一件落着……かな?
タコメの股間に、蹴りが炸裂した。
「ぐっ……!」
モヒカン男は思わずコーディを放し、顔をしかめてうずくまった。
コーディは尻もちをついたが、どうにか無事だ。
ってか、おい誰だ、横槍を入れたのは?
「なんだぁ……てめぇは――」
気づけば、モヒカン男が俺をギロリと睨みつけていた。
他の村人たちも、俺に向かって視線を集中砲火だ。
え? あれ? まさか――
「えっと……もしかして今の、俺がやっちゃった?」
「ふざけんな! ぶっ殺してやる!」
怒りに燃えたタコメが、ぶっとい腕で殴りかかってきた。
――あ、やば、死ぬ。
と思った次の瞬間。
ガシィッ!
拳を受け止める音とともに、黒髪ポニーテールの背中が俺の前に立ちはだかった。
「はぁ~……」
太刀川は、あきれ顔でため息をついた。
「さんざんアタシに我慢我慢って言っといて、なんで自分で突撃しちゃうのよ? 損した気分じゃない」
「あ~……すまん。体が勝手に」
「まぁ、いいけど。……いいんだよね? もう」
太刀川の手の中で、タコメの拳がミシッと音を立てた。
筋肉ダルマのパワーをはるかに凌駕する、これが本当の黒の書の力だ。
「がっ……て、てめぇ、一体……」
「なにやってんのよ! そんなヤツ、とっととブッ殺しちゃいなさいよ!」
「わ、わかって……らぁっ!」
タコメが風を巻いて右脚を振り上げ、渾身の蹴りを叩き込む――
しかし、その一撃は虚しく空を切った。
太刀川の姿は、すでにそこにはいない。
「なっ……き、消えた!?」
混乱するタコメの頭上から、涼やかな声が降ってくる。
「こっちだよ」
見上げれば、宙を舞う太刀川のスカートがふわりとひるがえった。
高々と掲げられた左脚が陽光を浴びてきらめき、一直線に振り下ろされる――
「ふっ!」
ドゴシャアアアッ!
カカト落としがタコメの顔面を直撃し、その頭が地面にめり込んだ。
隕石でも落ちたかのような衝撃で、地面が大きくへこみ、大地が揺れた。
舞い上がった石つぶてが降り注ぐ中、タコメは白目をむいて失神し、ピクピクと痙攣している。
ニセモノ女も村人たちも、目の前の光景に言葉を失っていた。
太刀川は無言で男の顔から足を離すと、静かにニセモノ女の前へ歩み寄った。
「ヒィッ!」
バケモノに出会ったように身を縮める女。
太刀川は冷徹な声で告げた。
「謝って」
「はひぃっ?」
「コーディ君と村の人たちに。……あと、アタシにも」
正義の怒りに満ちた声だった。
若干、個人的な感情も混じってるが……
錯乱したニセモノ女は、「うわああ!」と叫んでニセの黒の書を突き出した。
「く、来るなぁ! 来たらこれを開くわよ! そしたら大蛇が出て、アンタなんて一呑みに――」
パァン!
空気を裂く音が響き、女の手の中でニセの書が跡形もなく砕け散った。
「はへっ……?」
呆然としたまま手元を見つめる女。
俺にも見えなかったが――太刀川がジャブ一閃で本を消し飛ばしたんだ。
「もう一度言わせる気?」
「ひっ! ひぎっ! ひいいいいっ!」
太刀川の圧に、ニセモノ女は腰を抜かしてへたり込んだ。
「な、なんなの、何者なのよ、アンタたちはぁ!」
その言葉が、俺の中のジャパニーズの魂に火をつけた。
こうなったら、いっそド派手に開陳してやるか。
俺は背中のナップザックから、『本物』の黒の書を取り出した。
「ひかえぃ! ひかえおろう!」
あぜんとする悪代官――じゃなかった、ニセモノに向かって書を突き出し、
「この黒の書が目に入らぬか! 頭が高い! ひかえーい!」
どーん! と決めセリフをぶちかましてやった。
うおおっ、気持ちいいっ……!
「……いや、それ、異世界の人たちに通じるのかな?」
たしかに……。
「な、ま、まさか……」
「こ、これが本物の……黒の書……」
「それじゃ……あの子たちが……本物の契約者!?」
一同はざわつき、
「へへえ――っ!」
と一斉に土下座した。
「ごめんなさいごめんなさい! もう二度としません! この村にも絶対近づきません! だから許してぇ!」
ニセモノ女は地面に頭をこすりつけて、許しを請う。
「おお、通じた……」
「うそぉ。ていうか、なんで村の人たちまで一緒に土下座してんの?」
「ノリと勢い……じゃねぇ?」
ともかく。
これで一件落着……かな?
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。
異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。
定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる