39 / 49
第39話 本物の証明(4)
しおりを挟む
翌朝、村の広場。
柔らかな光の下、馬車の荷台に俺と太刀川は腰を下ろした。
「マジで、お金払わなくていいんスか?」
前方で手綱を握る御者のおっさんに向かってそう声をかけると、返ってきたのは豪快な笑い声だった。
「いいって! アンタらのおかげで村は救われたんだからな。金なんてもらったらバチが当たるってもんよ!」
ニセモノどもを村の外に放り出したあと、村の人たちは一晩中どんちゃん騒ぎで俺たちをもてなしてくれた。
そればかりか、事情を打ち明けたら「ここで立ち往生は気の毒だ」と馬車まで出してくれるという厚遇っぷりだ。
もちろん、この馬車が港街まで直行するわけじゃない。
だが、作物の仕入れに行くという近くの街までなら、乗せていってくれるそうだ。それだけでも十分すぎるほど助かる。
馬車の脇に立っていた村長のじいさんに、太刀川が声をかける。
「あの、村長さん……それで、アタシたちが契約者だってことは、その……」
「心配はいらんよ」
じいさんは目を細めて、やさしくうなずいた。
「誰も口外はせん。王家がどうこう言ってきても、知らぬ存ぜぬで通してやるわい。それくらいの義理はあるでの」
「あ、ありがとうございます」
太刀川は胸をなでおろし、俺のほうをちらりと見て、小さく微笑んだ。
そこへ、ちょこまかと駆け寄ってくる小さな影。
「兄ちゃん、姉ちゃん!」
コーディだった。その後ろから、母親も少し息を切らせてついてくる。
「本当に、ありがとうございました……。あなたがたは命の恩人です」
「そ、そんな……大げさですよ」
母親は深々と頭を下げると、太刀川も頭を下げ返した。
「カッコよかったよ、姉ちゃん! 気をつけてね!」
「ふふ、ありがと。コーディ君も元気でね」
太刀川が照れたように頬をかいたそのとき、コーディがこちらを見て、真っすぐ言った。
「兄ちゃん! オイラ、兄ちゃんみたいな人になるよ!」
「……あん?」
俺は思わず聞き返した。
「いや、なんで俺? 強さでいったら、あの姉ちゃんの方がダンチで強かったろ」
「ううん。だって父ちゃんが言ってたんだ」
コーディは胸を張り、にかっと笑った。
「強いヤツが勝つのは当たり前。弱い人間が、自分より強い相手に立ち向かうのが、本物の勇気なんだってさ」
その言葉に、俺は一瞬、息を呑んだ。
隣では太刀川が、目を細めて笑っている。
思わず目をそらし、天を仰いだ。
「……そっか。いい父ちゃんだな」
「うん!」
無邪気な声が、馬のいななきに重なった。
「さあ、行こうか!」
オッサンの合図とともに、馬車がぎしぎしと動き出す。
「ばいばーい! 二人とも、頑張ってねー!」
見送るコーディの声に、俺たちは手を振って応えた。
※※※
「って言ってもさ」
揺れる荷台の向かい側から、太刀川がじっとこっちを見てきた。
「もうちょっと強くなってほしいんだけどな。せめて、あのニセモノの半分くらいはさ」
からかうように細めた目で、ニヤリと笑う。
「うるせぇ。スローライフに筋肉なんて必要ねぇんだよ」
「だから半分でいいってば。少しは頼りがいのあるところ、見せてほしいなぁ~」
「俺は頭脳派なんでね。肉体労働は遠慮させてもらうわ」
「なるほど~。さすが頭脳派、口だけは達者だよね~」
太刀川はニヤニヤと、おちょくり半分の顔。
むっ。調子に乗りやがって。
「じゃあ、お前もあのニセモノ女の半分くらい、メリハリのある体になってくれよな」
「……は? 今なんて言った?」
ぺったんこの委員長が、額に青筋を浮かべて睨みつけてくる。
「それ、セクハラ発言だよね?」
「ざーんねん、異世界にはそんな概念ありませ~ん!」
「本気で殴るよ?」
「はーん、やってみろよ! お前にもダメージが返るかんな!」
そんなやりとりを眺めていた御者のおっさんが、面白そうにニヤリと振り返る。
「おいおい、痴話ゲンカか? 契約者ってのは仲もよろしいことで!」
「違う!」「違います!」
二人の声が揃ったところで、御者のおっさんの笑い声が青空に響き渡る。
馬車はゴトリと揺れ、次なる街を目指してゆっくりと進んでいった。
柔らかな光の下、馬車の荷台に俺と太刀川は腰を下ろした。
「マジで、お金払わなくていいんスか?」
前方で手綱を握る御者のおっさんに向かってそう声をかけると、返ってきたのは豪快な笑い声だった。
「いいって! アンタらのおかげで村は救われたんだからな。金なんてもらったらバチが当たるってもんよ!」
ニセモノどもを村の外に放り出したあと、村の人たちは一晩中どんちゃん騒ぎで俺たちをもてなしてくれた。
そればかりか、事情を打ち明けたら「ここで立ち往生は気の毒だ」と馬車まで出してくれるという厚遇っぷりだ。
もちろん、この馬車が港街まで直行するわけじゃない。
だが、作物の仕入れに行くという近くの街までなら、乗せていってくれるそうだ。それだけでも十分すぎるほど助かる。
馬車の脇に立っていた村長のじいさんに、太刀川が声をかける。
「あの、村長さん……それで、アタシたちが契約者だってことは、その……」
「心配はいらんよ」
じいさんは目を細めて、やさしくうなずいた。
「誰も口外はせん。王家がどうこう言ってきても、知らぬ存ぜぬで通してやるわい。それくらいの義理はあるでの」
「あ、ありがとうございます」
太刀川は胸をなでおろし、俺のほうをちらりと見て、小さく微笑んだ。
そこへ、ちょこまかと駆け寄ってくる小さな影。
「兄ちゃん、姉ちゃん!」
コーディだった。その後ろから、母親も少し息を切らせてついてくる。
「本当に、ありがとうございました……。あなたがたは命の恩人です」
「そ、そんな……大げさですよ」
母親は深々と頭を下げると、太刀川も頭を下げ返した。
「カッコよかったよ、姉ちゃん! 気をつけてね!」
「ふふ、ありがと。コーディ君も元気でね」
太刀川が照れたように頬をかいたそのとき、コーディがこちらを見て、真っすぐ言った。
「兄ちゃん! オイラ、兄ちゃんみたいな人になるよ!」
「……あん?」
俺は思わず聞き返した。
「いや、なんで俺? 強さでいったら、あの姉ちゃんの方がダンチで強かったろ」
「ううん。だって父ちゃんが言ってたんだ」
コーディは胸を張り、にかっと笑った。
「強いヤツが勝つのは当たり前。弱い人間が、自分より強い相手に立ち向かうのが、本物の勇気なんだってさ」
その言葉に、俺は一瞬、息を呑んだ。
隣では太刀川が、目を細めて笑っている。
思わず目をそらし、天を仰いだ。
「……そっか。いい父ちゃんだな」
「うん!」
無邪気な声が、馬のいななきに重なった。
「さあ、行こうか!」
オッサンの合図とともに、馬車がぎしぎしと動き出す。
「ばいばーい! 二人とも、頑張ってねー!」
見送るコーディの声に、俺たちは手を振って応えた。
※※※
「って言ってもさ」
揺れる荷台の向かい側から、太刀川がじっとこっちを見てきた。
「もうちょっと強くなってほしいんだけどな。せめて、あのニセモノの半分くらいはさ」
からかうように細めた目で、ニヤリと笑う。
「うるせぇ。スローライフに筋肉なんて必要ねぇんだよ」
「だから半分でいいってば。少しは頼りがいのあるところ、見せてほしいなぁ~」
「俺は頭脳派なんでね。肉体労働は遠慮させてもらうわ」
「なるほど~。さすが頭脳派、口だけは達者だよね~」
太刀川はニヤニヤと、おちょくり半分の顔。
むっ。調子に乗りやがって。
「じゃあ、お前もあのニセモノ女の半分くらい、メリハリのある体になってくれよな」
「……は? 今なんて言った?」
ぺったんこの委員長が、額に青筋を浮かべて睨みつけてくる。
「それ、セクハラ発言だよね?」
「ざーんねん、異世界にはそんな概念ありませ~ん!」
「本気で殴るよ?」
「はーん、やってみろよ! お前にもダメージが返るかんな!」
そんなやりとりを眺めていた御者のおっさんが、面白そうにニヤリと振り返る。
「おいおい、痴話ゲンカか? 契約者ってのは仲もよろしいことで!」
「違う!」「違います!」
二人の声が揃ったところで、御者のおっさんの笑い声が青空に響き渡る。
馬車はゴトリと揺れ、次なる街を目指してゆっくりと進んでいった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
木を叩いただけでレベルアップ⁉︎生まれついての豪運さんの豪快無敵な冒険譚!
神崎あら
ファンタジー
運動も勉強も特に秀でていないがめっちゃ運が良い、ただそれだけのオルクスは15歳になり冒険者としてクエストに挑む。
そこで彼は予想だにしない出来事に遭遇する。
これは初期ステータスを運だけに全振りしたオルクスの豪運冒険譚である。
唯一無二のマスタースキルで攻略する異世界譚~17歳に若返った俺が辿るもう一つの人生~
専攻有理
ファンタジー
31歳の事務員、椿井翼はある日信号無視の車に轢かれ、目が覚めると17歳の頃の肉体に戻った状態で異世界にいた。
ただ、導いてくれる女神などは現れず、なぜ自分が異世界にいるのかその理由もわからぬまま椿井はツヴァイという名前で異世界で出会った少女達と共にモンスター退治を始めることになった。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる