レベル1の俺が死んだらレベル999の最強チート美少女も死ぬらしい~異世界スローライフしたい俺と、帰りたい彼女の命がけバディ生活~

古池ケロ太

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第44話 魔鉱列車起動せよ(5)

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「どあああっ!」

 虫のエサENDだけは勘弁してくれ!
 心の底から神様に泣きついたその瞬間――

 ――プツン。

 背後で、何かが切れる音がした。

「うわあああああああああああ!!」

 絶叫と同時に、太刀川が拳を振り抜く。
 目の前の巨大蜘蛛が、一瞬にして文字通り消滅した。

「た、太刀川!?」
「来ないで来ないで来ないでぇぇぇ――!! お願いだからあっち行ってぇ!! いやあああああ!」

 狂乱の叫びと共に、嵐のような拳と蹴りが空間を切り裂く。  
 もう空手の型もへったくれもない。本能のまま放たれた太刀川の両手両足があらゆる方向へ破壊的な打撃を叩き込む。
 ムカデもイモムシも、ゲジゲジも、ただ拳圧が触れただけで弾け飛び、衝撃波で蒸発してしまった。

「す、すげえ……!」

 ヨギじいさんが地面に這いつくばって唖然とする。
 俺? もちろんポカンですよ。

「やだやだやだやだ! ごめんなさいごめんなさい! アタシが悪かったからちゃんと話し合おう! 話せばわかるから! いや――――――!!」

 錯乱しすぎて、もう何を言っているのかさっぱり分からない。
 話し合うも何も、お前の連射式核兵器みたいな攻撃で虫どもはとっくに全滅してるぞ。

「太刀川、もういい! 終わりだ! 全部やっつけたぞ!」

 だが。

「いやあああああ!! みんな消えて! 全部あっち行ってよぉ! わあああああ!!」

 太刀川は止まらない。 
 敵の姿が見えなくなっても錯乱したまま暴れ続け、巨大な岩盤を砕き、石柱を粉々に粉砕し、床を陥没させる。
  崩落した破片が飛び散り、壁や天井に亀裂が広がっていく。

「お、おい、もう敵いないから! 止まれって、太刀川!」 
「落ち着け! 洞窟ごと崩れちまう!」

 俺とじいさんの声も、もはや耳に入らない。
 正気を失い、ぐるぐる目で暴走する太刀川。

「おい、若造! 止めろ!」
「止めるだぁ!? 太刀川を? 俺の999倍強いんですけど!?」
「そこをなんとかしろ! おめぇの連れだろうが!」
「無茶言うな、アホジジイ!」

 と叫んだその時。

 バキィッ! 

 天井から巨大な岩塊が割れ落ち、唸りをあげて俺たち目掛けて落ちてきた。

「やべっ、逃げ――!」

 後ろに飛び退こうとした刹那、背中を押されるような衝撃。

「どあっ?」

 床に倒れ込んだ俺が慌てて振り返ると、そこには俺を突き飛ばし、倒れたヨギじいさんがいた。

「おい、じいさん! 大丈夫か!」
「てやんでぇ……こんなもん、カスリ傷よ……ぐっ……!」

 強がってはいるが、その肩口からは血がにじみ、息も苦しげだ。

「なんで俺をかばうんだよ? そんな義理ないだろ?」

 そう問うと、ヨギじいさんはうずくまったまま、かすかに笑った。

「おめぇらは、大事な客だからだ」
「客……?」
「街の連中はどいつもこいつも俺の夢を笑うがよ、おめぇらはなんだかんだで、こんな洞穴の奥までついてきてくれた。列車が目ェ覚ましたら、最初の客はおめぇらに決めてんだ。それまでは、何があっても死なせねェ」
「じいさん……」

 ガラにもなく、胸が詰まった。
 まったく、なんてじいさんだよ……

 ――くそったれ。

 この手だけは使いたくなかったが……仕方ない。

 俺は、じいさんが取り落とした破砕用のハンマーを差し出した。

「じいさん……ケガしてるとこ悪いけど、頼みがある」
「あん?」
「このハンマーで、俺を思いっきり殴ってくれ」
「はぁっ!?」

 じいさんは目をむき、

「おめぇ正気か!? 何のためにそんなこと……!」 
「説明は後だ! 早くしてくれ!」
「馬鹿言ってんじゃねぇ! 何のためにおめぇをかばったと思ってんだ!」
「いいから早く! 全員が助かるためなんだ!」

 マゾじゃあるまいし、俺だって好きでこんなこと言ってるんじゃない。
 でも、これしか手はないんだ。

 じいさんはなおも反論しようとしたが、俺の覚悟を見て観念したらしい。
 肩をふるわせながら、ハンマーを高く振り上げ――

「覚悟しろよ!」
「おう、来い!」

 ゴンッ!

 頭の中が真っ白になり、世界が遠ざかった。
 ぐらりと横倒しになる視界の中、俺とダメージを共有する太刀川が、同じように倒れていくのが見えた。

「お、おい……大丈夫か二人とも!?」

 ヨギじいさんの声が、意識の向こう側へと遠ざかっていった――。
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