レベル1の俺が死んだらレベル999の最強チート美少女も死ぬらしい~異世界スローライフしたい俺と、帰りたい彼女の命がけバディ生活~

古池ケロ太

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第45話 魔鉱列車起動せよ(6)

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 というわけで、ブッ倒れた後、目を覚ました俺たちは街外れのじいさんの家(=魔鉱列車の客車)まで戻ってきた。

「ごめん……」

 黒髪ポニテのチートちゃんは、座席の隅っこにちんまり座ってしょんぼり顔だ。
 その頭には俺とおそろいのタンコブができている。

「なんか今回、お金は盗られるし、暴走するし……アタシ、全然いいとこなかったね……」

 またしてもネガティブループ突入かよ。
 しゃーない、相棒として少しはフォローしてやるか。

「何言ってんだ、文句無しにMVPだぞ。素手であんだけ虫つぶせる女なんて、世界中探してもお前だけだ」
「全然フォローになってない!」

 すごい勢いで怒られた。

 なんで? 女心ってむずかしいね。

「で、じいさん。そっちはどうよ?」

 列車の先頭、機関室に足を運ぶと、ヨギじいさんは鉄製のストーブみたいな釜の前でじっとあぐらをかいていた。
 その深刻な顔を見れば、答えは明白だった。

「やっぱダメ?」
「ああ。ウンともスンとも言いやがらねぇ……」

 持って帰った魔鉱石は、釜がいっぱいになるまで投入した。
 だが、その後じいさんがどんな操作をしても、列車は枯れた花にみたいに沈黙したままだった。

「結局……このまま朽ち果てるだけか。こいつも、俺っちも……」

 じいさんの力無いつぶやきが、機関室の床に落ちた。

「おじいさん……」
「すまねェな、おめぇら。あんだけ体張ってくれたってのによ……」
「いえ……気を落とさないでください。私たちも力になれなくてごめんなさい」

 太刀川もじいさんの背中をそっと撫でながら、顔を曇らせた。
 結局、すべては振り出しか……

「ん? この文字、なんだ?」

 ふと、釜の横に小さく刻まれた文字に目が止まった。

「ああ……古代文字だ。こいつは古代文明の遺物だからよ。機器の名前とか操作方法とかが書いてあんだろ」
「じゃ、読めば動かせるんじゃ?」
「べらぼうめ、それができたら苦労しねぇってんだよ。街の学者が束になっても、まるっきり解読できなかったんだからな」
「でもほら、書いてるぞ。『再起動時は下記を詠唱せよ。イグザレル=キーネ・サ・アストレイン』って」
「……なに?」

 直後、列車が低くうなりを上げた。
 釜が鮮やかな紫色に輝き出し、機関室内部の機構が息を吹き返したように次々と起動し始めた。
 おお……やった。

「な、なんで読めるんでェ?」
「俺のスキル、『古代文字解読』だから」

 地味すぎて、自分でもときどき忘れそうになるけどな。

 ガガガガ……と、重く力強い音が機関室に響き渡る。
 列車が前後に揺れたかと思うと、ゆっくりと前進を始めた。

「おお……お、おおおおおお!!」

 言葉にならない、ってのはこのことだろうか。
 ヨギじいさんはその場に膝をつき、雄たけびを上げた。
 数十年分の想いを吐き出すみたいに。

「やったぁ! すごいすごい星野君! 動かしちゃったよ、列車!」

 跳ねるように背中に抱きついてくる太刀川。
 頬と頬がくっつき、しっとり湿った肌の感触が――って、おいおい!

「ち、近いって! そんなキャラじゃないだろ、お前!」

 ハッと我に返った太刀川は、顔を真っ赤にして離れ、

「ご、ごめん……! 嬉しくてつい……」
 
 口をモゴモゴをさせながら、胸の前に出した両手をニギニギする。
 なんだその謎モーション。

 列車はぐんぐんとスピードを上げてゆく。
 窓から顔を出せば、線路なんてないはずの街道沿いの草原を、ガタガタと音を立てて突き進んでゆく。
 機関部の真下から紫色の光が漏れ、列車自身が自ら魔力で線路を創り出しながら進んでいるのが見える。すげーぞ、古代文明。
 
「おおっ? なんだ、ありゃあ!」
「ま、魔鉱列車だ! 信じられない、動いてる! あのガラクタが……」
「すげぇ! か……かっこいい!」

 街道を行く人々が、数十年ぶりに息を吹き返した伝説の列車を目にして、口々に驚きの声を上げる。
 その歓声すら置き去りにして、列車は地響きを立てながら風を切り進む。
 
「こんちくしょう、夢じゃねぇよな……! おめぇ、ホントに目ェ覚ましやがったんだよな……!」

 ヨギじいさんは機関室の床を愛おしむように撫でながら、むせび泣いた。

「よかったですね、おじいさん!」
「これで未練なくあの世に行けるな」
「てやんでぇ! まだくたばってたまるか! こっからが俺っちの本当の人生の始まりよ!」

 怒ってるんだか笑ってるんだか分からない顔で叫ぶと、じいさんは操縦席に腰を下ろした。

「さぁ、行くぜ! 行き先はマリンナの港でいいんだな!」
「はい、お願いします! 安全運転で!」

 ぐん、と列車が曲がり、東へと鼻先を向けた。
 草原を貫き、目指すべき場所、マリンナへ向かって。

「ね、星野君」
「ん?」
「次も頼りにしてるよ」
「俺が頼りになるようじゃ、世も末だわ」

 ふふ、と目を細めて微笑む太刀川。
 さて、次こそ少しはスローライフな展開に――なるわけないか。
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