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第47話 名も無き影(2)
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「……なんだ、こいつ」
そいつを見た瞬間、背骨に冷水を流し込まれたような悪寒が走った。
背丈は太刀川と同じ、160センチほど。
だが、形容しようのない不気味さが全身から滲み出ている。
この暑さの中、真っ黒なロングコートを羽織り、頭は深くフードをかぶっている。
その顔は影に覆われて、輪郭すら見えない。
人間か? モンスターか? それとも、黒ヒゲのスキルで作られた無生物なのか?
「行け、シャドウ! 全員引き千切ってやれ!」
黒ヒゲの号令に、そいつは無言のまま一歩前へ出た。
ざり、と砂を踏む音がして足跡が残る。
ってことは、ひとまず実体はあるらしい。
黒衣の右腕が、すっと持ち上がった。
太刀川がピクンと反応して構えをとる。
武器は持ってない。袖口から覗くのは、白い手首と指先だけ。
俺たちが注視する中、シャドウの右手がゆっくりと奇妙な形を組んだ。
親指と他の指をぴたりと合わせ、人差し指と小指だけをピンと立てる。
砂地に落ちた影が、耳のような突起を持つ獣の顔を描き出す。
フードの奥から、抑揚のない声がした。
「影映り――狐」
瞬間、影絵がぶわりと膨らみ――
バシュッ!
漆黒の狐が地面を破って飛び出し、太刀川めがけて一直線に襲いかかった。
「なっ!?」
太刀川がとっさに身をひねる。
黒い爪がポニーテールをかすめ、髪が数本、宙に舞った。
通り抜けざまに着地した獣は、砂を蹴り、鋭くターン。
太刀川の背中めがけて再び跳びかかる――。
「せやあっ!」
振り向きざまの後ろ回し蹴り。
ヴァッ! と横薙ぎに砕けた影が、黒い霧となって宙に溶けた。
しかし。
「影映り――鷹」
今度は、黒い双翼の鳥が空を裂いて襲い来る。
シャドウの両手がひねり合わさり、翼のような影絵を作っていた。
「このっ!」
ボウッ!
迎撃の右フックが砲撃そのものの音を放った。
が、一撃必殺の拳は空を切っただけだ。
影色の鷹は直前で急上昇し、太刀川の頭上高く飛び上がると、翼をしならせて何十枚もの羽根を刃のように射出してきた。
ヒュババババッ!
鋭い羽根が雨のように降り注ぐ。
太刀川は両腕で受け止める。
火花のような砂煙が弾けるが、もちろん彼女に傷一つない。
だが、絶え間ない波状攻撃に息をつく暇もない。
影を具現化するスキル。
あの手の形と名前の詠唱で、影に命を持たせるのな。しかも速くて鋭い。
なんでこんなヤツが、あんなモブ顔のヒゲ野郎に従ってんだ?
「くはーはっはっ! いいぞシャドウ! もっとやれ! お前を拾ってやったのはこうときのためだってハナシよ!」
バカ笑いの黒ヒゲ――その目の前に。
「え?」
ヴン、と瞬間移動のようなスピードで、黒髪ポニテの女が出現した。
「ふっ!」
ドボオッ!
「ぐぼあっ!」
えぐるようなボディブロー。黒ヒゲが悶絶し、膝から崩れ落ちる。
「やった!」
命令者の黒ヒゲを倒せば、シャドウも止まるはず。
ナイスだ、太刀川!
「――星野君!」
切迫した声にハッと頭上を見ると、影絵の鷹から、羽根の刃がこっちに降り注いできた。
「うおっ!」
間一髪で飛び退く。
あぶねぇ!
「ってか、アイツ全然動きが衰えねーぞ! どうなってんだ!」
「アタシが知りたいよ!」
システムバグってんじゃねーか?
開発者呼んでこい!
そいつを見た瞬間、背骨に冷水を流し込まれたような悪寒が走った。
背丈は太刀川と同じ、160センチほど。
だが、形容しようのない不気味さが全身から滲み出ている。
この暑さの中、真っ黒なロングコートを羽織り、頭は深くフードをかぶっている。
その顔は影に覆われて、輪郭すら見えない。
人間か? モンスターか? それとも、黒ヒゲのスキルで作られた無生物なのか?
「行け、シャドウ! 全員引き千切ってやれ!」
黒ヒゲの号令に、そいつは無言のまま一歩前へ出た。
ざり、と砂を踏む音がして足跡が残る。
ってことは、ひとまず実体はあるらしい。
黒衣の右腕が、すっと持ち上がった。
太刀川がピクンと反応して構えをとる。
武器は持ってない。袖口から覗くのは、白い手首と指先だけ。
俺たちが注視する中、シャドウの右手がゆっくりと奇妙な形を組んだ。
親指と他の指をぴたりと合わせ、人差し指と小指だけをピンと立てる。
砂地に落ちた影が、耳のような突起を持つ獣の顔を描き出す。
フードの奥から、抑揚のない声がした。
「影映り――狐」
瞬間、影絵がぶわりと膨らみ――
バシュッ!
漆黒の狐が地面を破って飛び出し、太刀川めがけて一直線に襲いかかった。
「なっ!?」
太刀川がとっさに身をひねる。
黒い爪がポニーテールをかすめ、髪が数本、宙に舞った。
通り抜けざまに着地した獣は、砂を蹴り、鋭くターン。
太刀川の背中めがけて再び跳びかかる――。
「せやあっ!」
振り向きざまの後ろ回し蹴り。
ヴァッ! と横薙ぎに砕けた影が、黒い霧となって宙に溶けた。
しかし。
「影映り――鷹」
今度は、黒い双翼の鳥が空を裂いて襲い来る。
シャドウの両手がひねり合わさり、翼のような影絵を作っていた。
「このっ!」
ボウッ!
迎撃の右フックが砲撃そのものの音を放った。
が、一撃必殺の拳は空を切っただけだ。
影色の鷹は直前で急上昇し、太刀川の頭上高く飛び上がると、翼をしならせて何十枚もの羽根を刃のように射出してきた。
ヒュババババッ!
鋭い羽根が雨のように降り注ぐ。
太刀川は両腕で受け止める。
火花のような砂煙が弾けるが、もちろん彼女に傷一つない。
だが、絶え間ない波状攻撃に息をつく暇もない。
影を具現化するスキル。
あの手の形と名前の詠唱で、影に命を持たせるのな。しかも速くて鋭い。
なんでこんなヤツが、あんなモブ顔のヒゲ野郎に従ってんだ?
「くはーはっはっ! いいぞシャドウ! もっとやれ! お前を拾ってやったのはこうときのためだってハナシよ!」
バカ笑いの黒ヒゲ――その目の前に。
「え?」
ヴン、と瞬間移動のようなスピードで、黒髪ポニテの女が出現した。
「ふっ!」
ドボオッ!
「ぐぼあっ!」
えぐるようなボディブロー。黒ヒゲが悶絶し、膝から崩れ落ちる。
「やった!」
命令者の黒ヒゲを倒せば、シャドウも止まるはず。
ナイスだ、太刀川!
「――星野君!」
切迫した声にハッと頭上を見ると、影絵の鷹から、羽根の刃がこっちに降り注いできた。
「うおっ!」
間一髪で飛び退く。
あぶねぇ!
「ってか、アイツ全然動きが衰えねーぞ! どうなってんだ!」
「アタシが知りたいよ!」
システムバグってんじゃねーか?
開発者呼んでこい!
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