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第48話 名も無き影(3)
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「せやああっ!」
太刀川は気合一閃、砂地に拳をブチ込んだ。
巨大な砂柱が巻き上がり、空中の影鷹を消し飛ばす。
しかも、大量の砂が煙幕になり、シャドウの視界を奪った。
「ふっ!」
ドン! と爆発的な勢いで踏み込んだ次の瞬間には、太刀川はシャドウの眼前に迫っていた。
反応もできない相手めがけて正拳突きが炸裂する――
と、思ったそのとき。
「――!?」
太刀川の拳は、ヤツの眼前で止まっていた。
「な……何で止めるんだよ、太刀川!」
「ち、違っ……! 動かせないの……!」
「なにぃ?」
太刀川は腕を突き出した姿勢のまま、セメントで固めたみたいに微動だにしない。
いや、できないのか。
フードの奥から、感情の抜けた声が漏れた。
「影縛り――」
気づけば、シャドウの足が、太刀川の影を踏んづけていた。
あのせいで動きを封じられたんだ。
なんてこった、あんなもん、影使いならお約束のスキルじゃねーか。俺が気がつかなくてどうする!
指一本動かせない太刀川に、シャドウはゆらりと手を差し伸ばした。
子供の頭をなでるように、ゆっくりと、優しく――鼻と口をふさぐ。
「……!」
槍で突いても銃で撃っても、太刀川の身体は傷つかない。
だけど、呼吸を封じたらどうなるのか?
答えはすぐに出た。
「っ……! うっ、ぐ……!」
太刀川の目が見開き、顔が苦しげに歪んでゆく。
そして、俺も。
「がっ……! かはっ……!」
何もされていないのに息が詰まり、目の前が暗くなる。
太刀川の息苦しさが、そのまま俺に転写されているんだ。
いつかの古代遺跡の逆パターンだ。
「お、おい! 大丈夫か、若造!」
ヨギじいさんが、膝をついた俺の体を支える。
すまん、じいさん。全然大丈夫じゃないわ。
タフネス999999のチートでも、やっぱ息できないと死ぬか……って冷静に分析してる場合じゃねぇ。なんとかしないと!
「じ、じいさん、頼みがある……」
「おう、なんでぇ! 人工呼吸か!」
「クソジジイ、そんなんされるなら死んだほうがマシだ……!」
いいからマジメに話をさせろ。
「さっき市場で買ったアレ、出してくれ……」
「アレってどれだ?」
「だ、だから、せ、せん、こ……」
ダメだ、意識が遠のいて言葉が出ない。
頼む、じいさん、なんとか察してくれ……
「! 分かったぜ、コイツだな!」
じいさんは頭上に電球が灯った顔で、手持ちの袋から一個の缶を取り出した。
朦朧とした意識の中、それを受け取り、ピンを外すと、渾身の力を込めて振りかぶり、
「くらえ、このヤロー!」
投げつけた。
火事場の馬鹿力ってやつか。
缶は奇跡のようなコントロールで、太刀川とシャドウの真上に飛び、
バシャアアンッ!!
耳をつんざく爆発音とともに、太陽が落ちてきたかと思うような閃光が弾けた。
陽光がかき消され、シャドウが踏みつけていた影が消える。
それはほんの一瞬――それでも太刀川が拘束から脱出するには十分すぎる。
「ッ!」
左右を見回すフード野郎。その背後から、
「こっちだよ」
振り返ったときにはもう遅い。
太刀川の右拳が風を巻いてシャドウの顔面に迫り、
ドンッ!!
拳圧が砂塵を巻き上げて砂漠を駆け抜けた。
砂埃が風に舞い、2人の姿があらわになる。
太刀川の右拳は――またも、シャドウの目の前で止まっていた。
(た……太刀川?)
俺と同様、当の太刀川もなぜか驚きに目を見開いていた。
「ほ、星野君、この人……」
黒いフードが風圧で外れ、シャドウの素顔があらわになっていた。
短く切りそろえられた、淡い黄色を帯びた白髪。
血を薄く溶かしたような紅の瞳。
無機質なプラスチックを思わせる、冷たい白肌。
「お、女……?」
俺たちと同年代の若い女だった。
声もない俺たちの前で、女はぐらりと横に揺れ――砂の上に倒れた。
太刀川は気合一閃、砂地に拳をブチ込んだ。
巨大な砂柱が巻き上がり、空中の影鷹を消し飛ばす。
しかも、大量の砂が煙幕になり、シャドウの視界を奪った。
「ふっ!」
ドン! と爆発的な勢いで踏み込んだ次の瞬間には、太刀川はシャドウの眼前に迫っていた。
反応もできない相手めがけて正拳突きが炸裂する――
と、思ったそのとき。
「――!?」
太刀川の拳は、ヤツの眼前で止まっていた。
「な……何で止めるんだよ、太刀川!」
「ち、違っ……! 動かせないの……!」
「なにぃ?」
太刀川は腕を突き出した姿勢のまま、セメントで固めたみたいに微動だにしない。
いや、できないのか。
フードの奥から、感情の抜けた声が漏れた。
「影縛り――」
気づけば、シャドウの足が、太刀川の影を踏んづけていた。
あのせいで動きを封じられたんだ。
なんてこった、あんなもん、影使いならお約束のスキルじゃねーか。俺が気がつかなくてどうする!
指一本動かせない太刀川に、シャドウはゆらりと手を差し伸ばした。
子供の頭をなでるように、ゆっくりと、優しく――鼻と口をふさぐ。
「……!」
槍で突いても銃で撃っても、太刀川の身体は傷つかない。
だけど、呼吸を封じたらどうなるのか?
答えはすぐに出た。
「っ……! うっ、ぐ……!」
太刀川の目が見開き、顔が苦しげに歪んでゆく。
そして、俺も。
「がっ……! かはっ……!」
何もされていないのに息が詰まり、目の前が暗くなる。
太刀川の息苦しさが、そのまま俺に転写されているんだ。
いつかの古代遺跡の逆パターンだ。
「お、おい! 大丈夫か、若造!」
ヨギじいさんが、膝をついた俺の体を支える。
すまん、じいさん。全然大丈夫じゃないわ。
タフネス999999のチートでも、やっぱ息できないと死ぬか……って冷静に分析してる場合じゃねぇ。なんとかしないと!
「じ、じいさん、頼みがある……」
「おう、なんでぇ! 人工呼吸か!」
「クソジジイ、そんなんされるなら死んだほうがマシだ……!」
いいからマジメに話をさせろ。
「さっき市場で買ったアレ、出してくれ……」
「アレってどれだ?」
「だ、だから、せ、せん、こ……」
ダメだ、意識が遠のいて言葉が出ない。
頼む、じいさん、なんとか察してくれ……
「! 分かったぜ、コイツだな!」
じいさんは頭上に電球が灯った顔で、手持ちの袋から一個の缶を取り出した。
朦朧とした意識の中、それを受け取り、ピンを外すと、渾身の力を込めて振りかぶり、
「くらえ、このヤロー!」
投げつけた。
火事場の馬鹿力ってやつか。
缶は奇跡のようなコントロールで、太刀川とシャドウの真上に飛び、
バシャアアンッ!!
耳をつんざく爆発音とともに、太陽が落ちてきたかと思うような閃光が弾けた。
陽光がかき消され、シャドウが踏みつけていた影が消える。
それはほんの一瞬――それでも太刀川が拘束から脱出するには十分すぎる。
「ッ!」
左右を見回すフード野郎。その背後から、
「こっちだよ」
振り返ったときにはもう遅い。
太刀川の右拳が風を巻いてシャドウの顔面に迫り、
ドンッ!!
拳圧が砂塵を巻き上げて砂漠を駆け抜けた。
砂埃が風に舞い、2人の姿があらわになる。
太刀川の右拳は――またも、シャドウの目の前で止まっていた。
(た……太刀川?)
俺と同様、当の太刀川もなぜか驚きに目を見開いていた。
「ほ、星野君、この人……」
黒いフードが風圧で外れ、シャドウの素顔があらわになっていた。
短く切りそろえられた、淡い黄色を帯びた白髪。
血を薄く溶かしたような紅の瞳。
無機質なプラスチックを思わせる、冷たい白肌。
「お、女……?」
俺たちと同年代の若い女だった。
声もない俺たちの前で、女はぐらりと横に揺れ――砂の上に倒れた。
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