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0020.革命
しおりを挟むリッカは装備をしまい腕を組んで正面に立った。背が低い割には様になっている。誤魔化しは許さない雰囲気だ。
「言いたいことは山ほどある」
奇遇だな。俺もだ。感謝するか。謝罪するか。それともなぜついてきたのかと逆に説教してみるか。
「ヤマトがどうして一人で行ったか、それはもういい。今さら理由を聞くまでもない」
リッカは呆れたように大げさに首を振る。
理解が早くて助かる。さすがリッカ。
「もちろん後で怒りをぶつけることは既に決まっている」
あ、そうなんだ。
「そんなことより気になるのは最初の一撃だ」
……見られていたか。
「何だあの矢の軌道は!?」
「もう察しているかもしれないが、俺は能力持ちだ」
「……っ! やっぱり!」
リッカを信じると決めた。少なくとも能力について隠すのはやめよう。
「多くは語れない。別に隠しているわけじゃないんだ。自分の能力についてまだよくわかっていないと言ったほうが正しい。何せ、つい最近能力が使えるようになったばかりだからな。使える能力は念動力。念じるだけで物体を少し動かすことができる。矢は軽いからそう負担は大きくなかった」
「後天的な能力の覚醒……か。噂には聞いていたが、本当にあるんだな」
リッカにまじまじと見られる。
「まあ、この国でもミラは能力持ちなんだろ? そんなに珍しいことじゃないさ」
「ミラだって? 何でヤマトがこの国の王女に気安いのかは知らないけど、能力持ちが珍しくないなんて一体どこの国からやってきたんだ?」
おっと、呼び捨てはまずかったか。ついつい口が滑った。それにしてもミラもフィーナも能力を使えると言っていたから、てっきり能力持ちが蔓延っているのかと思ったが想像以上に希少なようだ。出会った人間が偏り過ぎていたな。
「とにかく、せっかく狼をやっつけたんだ。これ、どうすればお金になるんだ?」
「はぁ……もうヤマトが何も知らないのは慣れてきたよ……」
疲れたようにリッカは大きくため息をついた。
悪いな。流石に異世界からきたことを伝えるにはまだ早すぎる気がする。心の中で謝罪しながらリッカの説明を聞く。
リッカは後に仕留めた狼に近づいた。
「魔物には大抵、核がある。場所は決まっていないが……ほら、ここを見ろ」
リッカは狼を仰向けにして腹部を指した。
「これは…石か?」
そこには赤紫色の鉱石のようなものが体にめり込んでいた。ちょうど親指と人差指で丸を作ったぐらいの大きさだ。
「核、魔石、呼び方は人それぞれだが……」
リッカは小刀を取り出すと、狼の体に刃をいれゆっくりと核を引き剥がした。するとその部分から大量に出血がはじまった。
「こいつは魔物にとっては心臓みたいなものだ。これを取ると魔物は死ぬ。魔物とやり合う時はこの鉱石を狙う手もあるが、こんな小さなものに狙いをつけるのは至難の技だ。それに同じ種類の魔物でも場所は不規則。体内にある場合もあると聞く」
リッカから核を受け取る。一見すると美しくもあるが、生物の体には明らかに異質なものだ。まるで誰かに埋め込まれたようにも見える。
「研究や加工材料としてこいつを買い取って貰える、ってわけさ。さて、もう一匹」
リッカは最初に弓で射抜いた狼に近づく。
「……まだ生きているな」
狼は地面にうずくまっていたようだが、完全には息絶えてなかったようだ。
だが矢が刺さったままの重傷でとても反撃できるような状態ではない。
「……殺すしかないのか」
元の世界で動物愛護精神が特別強かったわけではないが、こうして対峙すると少し心が痛む。自分より幼いリッカが平気でこんなことをしていいのだろうか。
「やらなければやられる。そういう世界だ」
それはわかっている。それにたまたま狼の見た目がペットにすることが多い犬に近いからというのも原因だろう。牛や豚だったらここまで感傷的ににはならないかもしれない。それでも自分勝手は承知であまりリッカに慣れて欲しくないと思った。
「こいつは俺にやらせてくれないか」
せめて自分がやろう。そしてこの行いにも慣れていかなければならない。
リッカは頷いて小刀を差し出してくれた。小刀を受け取ると狼に近づいた。
ヤマトが狼を仰向けにすると胸の辺りに核があった。狼が呼吸するたびに上下に動いている。
「すまない」
そういってヤマトは左手で核を支え、右手に持ったリッカの小刀で魔石を引き剥がそうとした。
「……あれ?」
「えっ!?」
しかし、実際は支えるつもりだった左手だけであっさりと核がとれてしまった。
「えーっと、これ、そんなに力が必要ないのかな」
「そんなはずは……!?」
リッカは狼を見てさらに驚愕の表情を浮かべる。
「そんな……生きてる!?」
狼は一定の呼吸を繰り返していた。先ほど見たような出血も起こっていない。
核が魔物の心臓、その常識が今ここであっさりと覆された。
流石のリッカも頭の回転がついていかず、ぽかんと口を開けて固まっていた。
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