22 / 51
0021.現実逃避
しおりを挟むふむ。これはつまりこういうことだろうか。
あ……ありのまま今起こったことを話すぜ! ……的な?
「もしかして、俺ってば魔物を無害化できちゃう?」
ついつい、いつもと違う口調になってしまった。
「まったく、何馬鹿なことを言ってるでありんす」
同じくリッカも現実逃避をはじめたようだ。意外とノリがいいのな。
リッカの新たな一面を垣間見れた。ボケると意外に合わせてくれるのかもしれない。
しかし魔物が魔物じゃなくなるなんて……何言ってるのかわからないと思うが俺も何が起こったのかわからないでもないが確信はない。
つまりだ。
「冷静に考えれば仮説はある。俺の調和の能力だ。もし元が動物で、核が埋め込まれたことで魔物化したとすればそれは明らかに異常な状態だ。それを調和の力で本来あるべきバランス状態に正したと考えれば、異常な状態の原因である核を取り除くことができても不思議ではない」
「ほう。なるほどな。それはつまりヤマトが念動力とやらだけでなく、調和とかいう能力も持っているということかな?」
「そうだよ」
「そっかー……」
「……にこっ」
とりあえず擬音語付きで笑顔を返しておいた。
「ふっざけんじゃねーーーー!」
ついにリッカが爆発した。
「おいおいおいおい、ヤマトさんっ! そんな話は聞いていませんよ」
「落ち着け。キャラが崩壊しているぞ」
「落ち着いてられるか! 複数能力なんて初めて聞いたぞ!」
「リッカが知らないだけで、世界は広いのだ」
「……のだ。じゃねぇ!お前みたいな世間知らずがそんな事知っているはずがないっ!」
「……どきっ」
「さっきから擬音語が腹立つっ!」
そろそろ精神が壊れそうなのでお互いに冷静になることにした。現実に戻ろうか。
「もし本当にヤマトの力で魔物をただの動物に戻せるとしたら、世界はきっと変わるぞ。今までの常識が覆るんだ」
世界ときたか。そんなもの背負うつもりはないんだが。
「全ての魔物で同じことができるかどうかはまだわからないぞ」
「確かに。もっと試す必要があるな」
なぜかリッカがやる気を出している。意外と正義感が強いのだろうか。
「ちなみにこの魔石はどれぐらいで買い取って貰えるんだ?」
「質にもよるがひとつ50ゼムってところだ」
日本円にして5000円程度か。悪くない。リッカの強さは想像以上だった。これで俺の念動力でサポートすれば同じクラスの魔物は敵ではないだろう。能力についても明かしたためリッカの前では使用をためらう必要もない。
だが流石に何かあってはリッカの母に顔を向けられない。
「よし。同じように討ち漏らした狼を狩っていこう。決しては無理はしない。いいな?」
リッカが頷く。
「ところで、俺の能力のことだが……」
「わかってるよ。他言はしない。今のところはね」
最後の一言は気になったがリッカのことだ。無闇矢鱈に吹聴することはないだろう。
二人は揃って街の入口へと向かった。
しばらく歩いて街の入り口が見え始めた頃リッカが呟いた。
「……なんだ、これは」
視界のあちらこちらで人間対魔物の戦闘が行われていた。同じような制服を着ているのは恐らくブレイズ国に所属している兵士だろう。一方、服はバラバラだが魔物と対等にやりあっているのはきっとギルドだ。何と言ったってあのベルグがいる。どうやら予備の剣でやり合っているようだ。また、周囲には魔物の死骸や負傷して倒れている人間も多くいる。
「こんな数は初めてだ。いったい何がどうなっているんだ」
どうやら今回の襲撃の規模は大きいらしい。
これなら討ち漏らしが出るのも仕方ないかもしれない。劣勢とまではいかないが兵士やギルドもあまりの数に困惑しているようである。
討ち漏らしを探すよりどこかに加勢したほうが良いか?
そう考えながら周囲を見渡していたとき、遥か前方から激しい咆哮が聴こえた。
戦闘中だった兵士やギルドも思わず、声の方を向く。
「……なんてデカさだ」
自然と声を漏らしてしまった。
リッカも驚きを隠せていない。
前方には他の狼よりも一回りも二回りも大きい黒い狼が悠然と歩いていた。自らの力に絶対の自信を持っているかのように落ち着いている。
間違いない。やつらの親玉だ。
いくらリッカが強いと言っても流石に相手が悪い。ここは兵士かギルドに任せるしかない。
グォォォオ!
早速近くにいた兵士が巨大な狼に立ち向かったが、狼のなぎ払いに兵士は一瞬にして吹き飛んだ。
おいおい。なんてパワーだ。反則だろ……。
足止めにもならない圧倒的な力に戦慄する。
無理をしないと決めたばかりなのに簡単に逃げられそうにない状況にため息をつくほかなかった。
0
あなたにおすすめの小説
おばさんは、ひっそり暮らしたい
蝋梅
恋愛
30歳村山直子は、いわゆる勝手に落ちてきた異世界人だった。
たまに物が落ちてくるが人は珍しいものの、牢屋行きにもならず基礎知識を教えてもらい居場所が分かるように、また定期的に国に報告する以外は自由と言われた。
さて、生きるには働かなければならない。
「仕方がない、ご飯屋にするか」
栄養士にはなったものの向いてないと思いながら働いていた私は、また生活のために今日もご飯を作る。
「地味にそこそこ人が入ればいいのに困るなぁ」
意欲が低い直子は、今日もまたテンション低く呟いた。
騎士サイド追加しました。2023/05/23
番外編を不定期ですが始めました。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
看病しに行ったら、当主の“眠り”になってしまった
星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全36話⭐︎
倒れた当主を看病する役目を振られた使用人リィナは、彼の部屋へ通うことになる。
栄養、灯り、静かな時間、話し相手――“眠れる夜”を整えていく。そして、回復していく当主アレクシス。けれど彼は、ある夜そっと手を握り返し、低い声で囁く。
「責任、取って?」
噂が燃える屋敷で、ふたりが守るのは“枠(ルール)”。
手だけ、時間だけ、理由にしない――鍵はリィナが握ったまま。
けれど、守ろうとするほど情は育ち、合図の灯りはいつしか「帰る」ではなく「眠る」へ変わっていく。
看病から始まった優しい夜は、静かな執着に捕まっていく。
それでも、捕獲の鍵は彼ではなく――彼女の手にある。
召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?
浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。
「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」
ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。
本の知識で、らくらく異世界生活? 〜チート過ぎて、逆にヤバい……けど、とっても役に立つ!〜
あーもんど
ファンタジー
異世界でも、本を読みたい!
ミレイのそんな願いにより、生まれた“あらゆる文書を閲覧出来るタブレット”
ミレイとしては、『小説や漫画が読めればいい』くらいの感覚だったが、思ったよりチートみたいで?
異世界で知り合った仲間達の窮地を救うキッカケになったり、敵の情報が筒抜けになったりと大変優秀。
チートすぎるがゆえの弊害も多少あるものの、それを鑑みても一家に一台はほしい性能だ。
「────さてと、今日は何を読もうかな」
これはマイペースな主人公ミレイが、タブレット片手に異世界の暮らしを謳歌するお話。
◆小説家になろう様でも、公開中◆
◆恋愛要素は、ありません◆
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。
黄玉八重
ファンタジー
水無月宗八は意識を取り戻した。
そこは誰もいない大きい部屋で、どうやら異世界召喚に遭ったようだ。
しかし姫様が「ようこそ!」って出迎えてくれないわ、不審者扱いされるわ、勇者は1ヶ月前に旅立ってらしいし、じゃあ俺は何で召喚されたの?
優しい水の国アスペラルダの方々に触れながら、
冒険者家業で地力を付けながら、
訪れた異世界に潜む問題に自分で飛び込んでいく。
勇者ではありません。
召喚されたのかも迷い込んだのかもわかりません。
でも、優しい異世界への恩返しになれば・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる