彼と私のお友達計画

百川凛

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STEP6:テスト勉強をしましょう

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 中総体が終わって待っているのは、夏休みという天国パラダイスに向けて立ちはだかる地獄のテスト週間である。しかも、進路に関わる大事なテストなんだから気が抜けない。とてもじゃないけど部活ロスやら燃え尽き症候群になんてなってる暇はないのだ。

 真面目に授業を受けてテストに出そうな所をチェックしておかないと。ああ……受験生はツラい。

 自分の席で次の授業の準備をしていると、廊下にジャージ姿の集団を見つけた。体育館に移動する途中なんだろう。あれは多分一組の生徒だ。そのままなんとなく見続けていると、一番後ろで男子の友達とじゃれあっている鳴海くんの姿を見つけた。珍しく大口を開けて笑っている。鳴海くんってあんな顔もするんだ。なんだか可愛いなぁ。

 そんな風に思っていると、鳴海くんとパチリと目が合ってしまった。無視するのもなんだか気まずいのでぺこりと会釈する。驚いた顔で私を見ていた鳴海くんも、周りの男子に気付かれないようチラチラ様子を伺いながら軽く右手をあげて応えてくれた。

 その気遣いがなんだかくすぐったくて、私は国語の教科書に隠れるようにしてくすりと笑った。彼を見ているとなんだか心があったかくなる。でも、同時にドキドキもする。この気持ちはなんだろう? 鳴海くんは丸い目でこちらを見ながら、何故かその場で立ち止まっていた。

「鳴海? どしたん?」

 前を歩く友達が声を掛けると、鳴海くんは慌てたように動き出した。私は通り過ぎて行く彼の後ろ姿を静かに見送った。





 放課後、私と皐月ちゃんは下駄箱の前で鳴海くんを待っていた。今日は三人でテストに向けて勉強会をする事になったのだ。鳴海くんは理数系が得意で、英語が苦手らしい。私は文系が得意で数学が苦手なので、だったらお互い教え合っちゃえばいいじゃん! と皐月ちゃんの一言で決まった勉強会だ。

「お疲れ」

 鳴海くんがやって来ると、皐月ちゃんが苛立たしげに言った。

「鳴海遅い!! あたし達を待たせるなんて何様のつもり!? もっと早く来なさいよ!」
「HR長引いたんだからしょうがねーだろ。文句あるならうちの担任に言えよ」

 いつものように言い合いが始まる。このやり取りはいつもと変わらない。変わらないはずなんだけど……なんだか最近、鳴海くんが皐月ちゃんと仲良くしている所を見ると胸がモヤモヤする。たぶん、こないだ試合を見に行った時に後輩の女の子たちが言ってたことが原因だろう。──確かに、こうして並んでいるのを見ると二人はとてもお似合いだ。美男美女だし、話も合ってるし、信頼関係もあるし。何より皐月ちゃんは良い子だ。優しくて、明るくて、思いやりがあって……きっと鳴海くんも、

「……か? ちょっと一花? 聞いてる?」

 ハッと我にかえると、皐月ちゃんが私の名を何度も呼んでいた。

「大丈夫? なんかぼーっとしてたけど」
「ご、ごめん! ちょっと考えごとしてただけだから! 全然大丈夫!」
「そう? じゃあ鳴海も来たし、空き教室に移動しよっか」
「う、うん」

 いけないいけない。今は余計なこと考えないようにしないと。私はぶんぶんと首を振って邪念を払うと、空き教室に向かって歩き出した。





 空き教室の机をくっつけ、教科書とノートを開く。三人しかいない教室はがらんとしていて、プリントに文字を書くシャーペンの音がよく響いていた。今は私の苦手な数学をやっていて、先生にもらったプリントの問題を解いていた。

 最初は順調に問題が解けていた私だけど、四問目で手が止まる。これってどうやって解くんだっけ……教科書を見ていると、私の様子に気付いた鳴海くんが声をかけてくれた。

「……もしかして、つまずいてる?」
「う、うん。この問題がちょっとわかんなくて」
「どれ?」

 鳴海くんがプリントを覗き込む。ふわりと爽やかな香りがした。

「ああ、これはまず共通因数でくくって……」

 鳴海くんは説明しながらすらすらとペンを走らせる。

「と、解けた!」
「よかったな」
「ありがとう鳴海くん」
「いや、別に」

 お礼を言うと、鳴海くんは照れたのか視線をそらしながら言った。

「すごいじゃん一花! 鳴海! あたしにも教えてよ!」
「……100円な」
「金取るとか卑怯! 訴えてやる!」
「今のとこよく出るらしいから覚えといた方がいいよ、笹川さん」
「エコひいき反対!!」

 私はこのやり取りを苦笑いを浮かべながら見ていた。
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