リバース/サーフェス ~この魔法の廃れた世界で 転生薬剤師さんが 魔導王(マグスロード)を目指します!~

吾妻 八雲

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シーズン1 【MD試験編】 

水族館へようこそ!

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牧場の朝は早かった。
清々しい緑の香りが吹き渡り、眩しい朝日が穏やかに頬を照らしていた。

「朝は気持ちいいな!」
「クラリッサ、おはよう!」
「ハーベルおはよう、よく眠れたか?」
「うん、そう言えば次の目的地の事だけど…。」
「うん、それがどうした?」
クラリッサがあくびをしながらハーベルに挨拶した。

「ハーベル、おはよう!」
「ああ、ネルいいところにきた。」
「なんか、ハーベルが話があるってさ…。」
「何?」
ネルの寝起きの顔は最高に可愛かった。

「次の目的地への移動についてだけど…。」
「ああ、また私が運転か…。ダル…。」
「それなんだけど、一瞬で行けちゃうんだけどどうする?」
「はあ?」
「…え?」
「いや、いや何言っちゃってるの?」
「さすがにそれは無理かと…。」
二人は呆れ顔でハーベルを見つめていた。

「このスマホでさ…、ガニヤ地区を検索するでしょ、ポチっと…。」
「何がポチっだよ、そんなんで移動できたら乗り物、要らねえわ!」
クラリッサがバカにするように言った。

ハーベルがドアを開けると、そこは海辺の砂浜だった。
潮の香りが鼻腔をくすぐる。

「ウソ、ウソ、ウソーーー!」
「さすがにこれは•••嘘でしょ?」
二人は広大な海を目の前に海岸に跪いた。

「だから、チートすぎるって言っただろ…。」
「確かにチートだわ!」
「ですね…。」
二人もやっと理解できた。

「ちなみに、このワープをふたりのスマホにも設定できるんだけど、要るかな?」
「アホか!要るに決まってるだろ!」
「できればお願いしたいです…。」
当然のようにスマホを差し出す。

「ああ、待て待て、何か要求する気だろう?」
「ああ…。」
そう言って咄嗟にスマホを取り返した。

ハーベルが話し出そうとすると、
「ああ、待て待て、金はないぞ!目的は身体か?それはダメだぞ!」
「ええ…。」
クラリッサは一人で妄想を膨らませる。

「だから、何も要求なんかしませんって!」
「本当だろうな!あとから金払えとか言うなよ!」
「クラリッサ…。」
ネルはクラリッサに呆れていた。

ハーベルは、ふたりのスマホにチャチャっと設定してしまった。

「これだけ?」
「もう使えるの?」
不思議そうにスマホを確認する二人。

「試しに師匠の家でも行ってみたら?」

二人は、半信半疑で地図で師匠の家を検索した。

「じゃあ行くぜ!」
「はい…。」
「せーの、ポチっと!」
スマホのボタンを一緒に押してみた。

「ああ、師匠の家の前だ!」
「誰、騒いでいるのは?」
何も知らないリーフィアが慌てて外へ出てきた。

「あれ、あなたたちまだこんなところにいたの?早く行かないと間に合わないわよ?」
「それが、ハーベルの奴が…。」
「なるほどね、バカな子ね、正直に言わなくていいのに…、でもいい子ね。」
リーフィアは可愛い子供たちを見る母親のように嬉しそうに微笑んだ。

「はい!」
「じゃあ、私たち戻ります!」
「行ってらっしゃい!」
リーフィアは清々しい顔で、また朝食を作り始めた。

「お帰り!」
「ただいま!」

「まじでチートだね…。」
「ちなみに、他の人に奪われて勝手にスマホを触られないように魔力認証も付けておいたから…、あと充電も必要ないよ魔力で動いてるからね…。」
ハーベルはあたかも当然のように説明する。

「はああ、もうワケわからなくなってきたわ…。」
「デタラメね…。」
二人は呆れながらも嬉しそうにスマホを見ていた。

「でもこれですぐに師匠の家に戻れるから、リバースレルムでの修行もできるね。」
「確かに!」

「まずは腹ごしらえして、水族館へ向かいましょ!」
「オッケー!」
「はい!」
三人は楽しい朝食を済ませると旅の準備を整え始めた。

⭐☆☆☆☆☆☆☆☆⭐

水族館まで来るとなにやら騒がしいようすだった。

「どうしたんですか?」
「大変なんだ、展示用に連れてきたメガシャークが暴れて水族館への搬入ができないんだ!」
水族館の職員らしき男が慌てた様子で説明してくれた。

「ちょっと見てきます!」
ハーベルは、職員と一緒に走っていってしまった。

「お節介ね!」
「まあ、そこがいいところなんだけどね…。」
ネルはなんだか嬉しそうだった。

「私たちも行きましょ!」
「そうだな、付き合うか!」
水族館の裏口では、大きな水槽の中に5mほどのメガシャークが暴れていた。

「危ない!」
「早く何とかしないと水槽が割れて海へ逃げてしまう、そうなったら大惨事だ!」
職員たちは騒然としていた。

「ここは俺に任せて、みんなは避けていてください!」
「君で大丈夫なのか?」
「今はそんなこと言っている余裕はありません、早く避難を!」
「分かった!」
職員たちは、少し後ろに下がって見守っていた。

「ネル、解析スキルで麻酔薬って作れる?」
「もちろん任せて!」

「クラリッサは、水槽の温度を少しずつ下げていってくれ!」
「了解!」

ハーベルは、水槽に飛び移ると暴れるメガシャークに馬乗りになって土魔法で押さえつけた。
「チェーン・ロック!」

「ハーベル、用意できたわ!」
「サンキュー、投げて!」
ネルが、麻酔薬の入ったビンをハーベル目掛けて投げた。

「よし、ナイス、ネル!」

「ハーベル、こっちもかなり温度が下がってきたわよ!」
「オッケー、あとはこいつを!」
麻酔薬で動きが緩慢になったメガシャークの口に一気に流し込んだ。

「クラリッサ、温度を戻していって!」
「人使いが荒いわね!」

そして、メガシャークは動かなくなった。

「麻酔で眠っているだけですが…。」
「素晴らしい連携だったね、おめでとう!」
職員たちは一斉に拍手をし始めた。

「え?」
「う、騙された!」
「そう言うことか…。」

「君たちは、第三チェックポイント合格だ!さあ、これが次のチェックポイントだよ。」
地図を渡すと職員がみんなで、もう一度拍手をしてくれた。

「おう、おう喜ぶのは早いぜ!」
そこへ不穏なオーラを垂れ流しながら誰かの声が響いた。

「お前は誰だ!」
「え、リフト?」

次回
デュアルの世界へようこそ!
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