薬師と少女の物語―幸せへの路―

弥雨 林(みさめ りん)

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ギルフォードの薬師ー2

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「……ぅ」
「ルーナちゃん!」
「っ……ルーナ……」
 虚ろに映る世界が段々とはっきり見えてくる。
 安堵でだろうか涙を浮かべたリラ。
 今にも怒鳴りそうな複雑な顔のビルト。
「まだ毒は残っていますから、動かないように」
「……お、ししょう、さま」
 こちらに表情を一切見せず言い放つ師の声は、頑なに自分を拒否しているように見えた。
 きょろ、と見回すとそこは診療所のベッドだった。
「お師匠さまが、治してくれたの?」
「……」
「……」
 ルーナの言葉に、リラとビルトが顔を見合わせる。
「あぁ、そうだ」
 疑問を流すようにビルトが目線を少しずらして応えたので、ルーナは不思議に思った。
 ――?
「……アラン先生、腕をナイフで切りつけて血をルーナちゃんに飲ませたの。万能薬なんだって」
「そっ……んな……!」
 リラの衝撃的な言葉に、ルーナは声を上げて瞳を大きく見開いた。
 しかし、起き上がろうとした瞬間ぐらりと視界が歪み、ビルトの手に支えられて布団へと戻った。
「リラ」
「先生の腕は傷だらけだった。たぶんずっと……村のために、血を流してきたんだと思う」
 静かなアランの咎めるような声を無視するように、リラの言葉は止まらない。
「ずっと独りで……自分を傷つけてたの」
「リラ!」
 アランが珍しくイラ立った声を上げる。
 少女には聞かれたくなかった事のようだった。
「アラン先生。ちゃんとルーナちゃんに伝えて? 先生が何を思ったか」
「……」
「リーが……私が、言う事じゃない気がするから」
「……」
 リラが促すように言葉を紡ぐ。
 アランの肩が、少し震えているように見えた。
「……吐き気がしました」
「え……?」
「ルーナ、貴方はっ……何を考えているんですか……! 一歩間違えば……いえ、私の血が無ければ、確実に……」
「お師匠さま……」
 アランは片手で自分を抱き締める。
 震える体は怒りなのか、悲しみなのか、または別の感情なのか、少女には分からない。
 ――縋る場所の無い、子供――……。
 ルーナには、必死に感情を抑える彼が、まるで同年代の子のように見えた。
「……チェストは……?」
「奥の部屋で寝てる。もうそろそろ起きるだろう。元々アランが……血を飲ませていたんだ」
「……」
 問いかけに対して、今度はビルトがぽつりと答える。
 ルーナは薬師の手伝いをするとアランに言った時の彼の言葉を思い出していた。
「……『薬と毒は同じもの。薬師はそれを使い見極める事が仕事』……」
「え?」
「お師匠さまは何で……悪魔の食事草フォリーエルブを皆に飲ませていたの? 薬になる量が知りたければ、私の体で試せば良かったのに」
「っ」
「ルーナ……!」
 アランはこの事件の責任を取るために、きっと地下牢送りだ。
 だったら、自分だって、裁かれるべき。
 一番近くに居たのに、アランを止める事が出来なかった。
 それに――アランの居ない生活なんて、もう考えられない。
「貴方の……! そういう所がっ……嫌いなんですよ!」
「っ……」
「アラン……」
 頑なに少女に顔を向けずに叫ぶアランの声は、震えていた。
 ビルトは、複雑そうに眉間に皺を寄せている。
「私はただ……お師匠さまと一緒に居たいの」
 こんな事になっても、まだ師への執着を捨てられない。
 他人から見れば、こんな自分も、異質なものだろう。
「っ……ビルト、私を早く牢へ」
「――リラ!!」
 アランの言葉が終わるより早く。
 バンと診療所の扉を叩き開けた村長が空気を震わせるような怒号を飛ばし、皆の体に緊張が走った。
「おとう、さん」
「また貴様らか……! 忌々しいっ! リラ、帰るぞ!」
「……っ、やめて!」
 リラの腕をぐいと引っ張り連れ帰ろうとするゼーラックを振り払い、彼女は叫んだ。
 ぽかんとしている村長に真っ向対峙して、きりりと意志の強い瞳を向ける。
「……此度の一連の騒動の責任者として、長としてのあなたを解任します」
「な……っ!?」
 次いだ言葉に、ゼーラックはよろりとたたらを踏んだ。
 ルーナはビルトと顔を見合わせて困惑を滲ませた。
「何を、言っているんだ? リラ、お前はっ……」
 彼女の肩を掴もうとした手は宙を掴み、一歩引いたリラは毅然とした口調でこう言い切った。
「此度の事件を引き起こしたアラン=ギルフォード。彼を魔物にしたのは――あなたでしょう、ゼーラック=タイニーゴ!」
「……なんっだと? お前は……自分が何を言っているのか、分かっているのかっ!?」
「心得ています。少なくとも、あなたより」
 リラは感情を抑えて言う。
 それはきっと『父』としての彼では無い『村長』に向けた言葉だからだ。
「う……ぬっ……! この、痴れ者がっ……!」
 怒りで顔を真っ赤にしたゼーラックは、ぶるぶると体を震わせる。
 しかし、リラの態度は揺らがない。
「貴様か……やはり、貴様みたいな疫病神が近くに居るせいで、リラがおかしくなるんだ!」
「きゃっ……!」
「やめて」
 ビルトを突き飛ばしてルーナに詰め寄った瞬間、ゼ―ラックの手を振り払ったのは、奥で寝ていたはずのチェストだった。
「おかしいのは、貴方でしょう」
「っなん、だと……!?」
「……アラン先生にした事、全部聞きました。到底許される事じゃないわ。心当たり、あるでしょう?」
「うっ……ぬぅう! 何なんだ貴様らは!」
 ぎりぎりと歯を噛みしめ、見回すようにその場の全員を睨みつける。
「処分の取り仕切りは、私と自警団でします。それまで……お父さん。家に帰ろう?」
 たじろぐゼーラックの腕を掴み引っ張り、扉の外へと振り向かずにリラは出て行った。
 ――リラは、強い子だ。私より、ずっと……。
 ルーナは、ぎゅっと目を閉じた。
「……チェスト、お前体は? 大丈夫なのか?」
「えぇ。アラン先生のおかげでね」
 ビルトの問いかけに、チェストが明るく応える。
 対して男は、複雑そうに眉を寄せていた。
「……アランは、お前に」
悪魔の食事草フォリーエルブを飲ませた――でしょ? アラン先生に心臓を強くするにはそれしかないって言われたの。飲んだのは、あたしの意思よ」
「は?」
「……どういう事?」
 チェストが笑んで言うと、経緯全てを打ち明けた。
 体の超回復という機能……要は仮死状態になり悪い細胞を殺し命を繋ぎ止めようとする、人間に埋め込まれた遺伝子を活性化させる目的で、強い毒性を持つフォリーエルブを差し出され、自分自身で死の危険を承知で飲む決断をした事。
 彼女自身が真実に薄々気付き、死ぬかもしれないからアランに全てを打ち明けて欲しいと促し、事件の真実もゼーラックが彼にした事実も全て聞いた事。
 アランが量の調整をしたが、今まで服用した皆に共通する『暴れる』という副作用を起こさなかったのはきっと運が良かったのだと言って、彼女は笑った。
 ラウルの死は、アランにとっても不測の事態だった事も……。
 ……老婆の事も全ての責任は自分にあると語ったアランが、チェストの容体を診た上で、どうせ死ぬならばビルトの手にかかりたい、なんて苦笑を浮かべて言っていたらしい。
 無論、ビルト本人は聞いた瞬間酷く不機嫌になったが。
 そして――……。
「アラン先生。ここからはあたしの口からは言えない。ちゃんと、二人に……ルーナに。話して」
 チェストが一歩引いて促す。
 じっと黙って、表情を見せなかったアランが振り向いた。
 そして、いつもの笑顔で、口を開く。
「私は……恐らく後半年も経たずに、この世を去ります。もうずっと、人間の身体で耐え得る領域を超えた無理をしてきたのですから。薬毒のせいで髪の色もこんなになってしまったし」
「なっ!?」
「――」
 ビルトが声を上げ、ルーナは絶句した。
 笑顔を絶やさない彼は何事も無いように、窓を開けてピュウと口笛を吹いた。
 すると、どこからともなく飛んできた山鳥が入ってくる。
「この子はアルバルフ。この地に棲む精霊です。……といっても、リラに説明を受けたでしょうね。以前焼き払われる前の悪魔の食事草フォリーエルブを植え替えさせたり……この子にも無茶をさせてきました。そろそろ……解放してやらなければいけません」
「お、ししょう、さ……」
「そして、ルーナ。貴方の事も」
「っ?」
 いきなり水を向けられて、少女の体が震えた。
 ――お師匠さまは、私すら……――?
「アージスなんてこの世の何処にも居ません。この子みたいな精霊も、人が加護を受けるなんて本来おこがましい事……。ルーナ、貴方は一人で生きていく術を持つんです。私の事など、忘れて」
 アランの苦笑しながら言う言葉一つ一つが痛くてしょうがない。
 まるで、受け取る事を拒否したい、遺言のような……。
「テメェ……いい加減にしろや……」
 今までじっと聞いていたビルトが、ゆらりと立ち上がる。
 そして振りかぶった右拳を打ち下ろして、アランの顔を思いきり殴った。
「ビルトっ……」
「怒れよ、ちび! コイツ、お前の事……ッ」
 ベッドから飛び降りて、ビルトの腕にしがみついてこれ以上を必死で止める。
 体はだいぶマシになったようで、力が入るようになっていた。
「黙ってろってのか!? 無茶言うなよ……この野郎、俺らを馬鹿にしてやがる!」
「っ……分かってる、からぁ! ビルトの気持ちだって……分かる、つもり……!」
「じゃあなんで止めるんだ!」
「いくら殴っても……無駄だからっ……」
 ……今まで必死に押し留めていたものや、自虐的で投げやりなアランの台詞の数々。
 ビルトで無くても、見過ごせるものでは無い。
 しかし暴力で訴えた所で、恐らくアランの心には少しも届かない。
 青年は口内を切ったのだろうか一筋流れる血を拭いもせずに、ただ俯いている。
「お師匠さま……もう一度聞きます。どうして私の体で試さなかったんですか?」
「っ……いいでしょう、なんでもっ」
 やはりそうだ。
 先程から動揺を見せるのは、自分の体を実験台にすればいいだとか、悪魔の食事草フォリーエルブを飲んだだとか、要はルーナの体を軽んじるような発言や……命をかけた時だ。
「私の命は、お師匠さまに救われました。だから……今度は私が、助けたい」
「――!」
 びく、とアランの体が揺れた。
「お師匠さまは、後継者が欲しかったんじゃないですか? だから、毒を与える事で、耐え得る体も探していたんでしょう」
「……えぇ。そうです」
「私が器になります。そうすれば、もう誰も傷つけなくて済みます」
「――っ!? ……わた、しは……」
 思わず彼の顔が上がった時、いつもポーカーフェイスの内にある葛藤と狼狽が手に取るように分かった。
 チェストも、それを分かってるから咎める事が出来ないのでは無いだろうか。
 じっと師の次の言葉を待つ。
「貴方を迎えた時……昔の私と似た瞳を持っていた貴方なら、きっと……」
「きっと?」
 初めて心を吐き出すような、苦しそうな表情を、少女は視線を逸らさずにじっと見る。
「いい、器になってくれるって……」
 少女は小さく頷いて、注意深く師の声を逃すまいと拾い続けた。
「何度も毒を飲ませようとしました……。私が死ぬ前に、薬の継ぎ手が居なきゃって……。……でも、出来なかった……」
「どうしてですか?」
「………………」
 少女は、問う。
 恐らくこの場で彼を断罪出来るのは、自分だけだ。
 ビルトの怒りも、チェストの思いやりも、今のアランには届かない……。
 感情の内を暴いて、揺さぶって、初めて師の心に触れる事が出来るのだろうとルーナは思った。
「そ、れは」
「……」
 少女が先の言葉を促すように、こくりと頷く。
 その時、アランの眼から、一筋の涙が流れた。
 誰も見たことの無い顔だった。
「…………貴方を……愛して、しまったから……」
 多分、アランにとって初めて声にする感情だったのだろう。
 心を麻痺させる事でしか、自分を守れなかったアラン。
 彼のした事は到底許される事では無い。
 勿論、罪は償わなくてはいけない。
 しかし、彼の心の内に居る少年を、少女は助けたかった。
 ……自分が助けられた時のように。
 クウゥ。
 彼の精霊であるアルバルフが悲しげに鳴く。
 一歩、また一歩。
 ルーナは師に近づいていき、自分よりも大きな体の子供を、心ごとぎゅうと抱き締めた。
「……お師匠さま、ばかですよ……。私も……ビルトも、チェストだって……同じように、あなたを愛しているって、なんで分かろうとしないの……」
 少女の瞳から泪が溢れて落ちる。
 アランはこの時呪いの解けた心の感情が溢れ、初めて嗚咽を漏らしながら泣いた。
 彼の中の少年が泣き止むまで、じっと少女は傍らに寄り添い続けた。



「おーい、ルーナ!」
「ビルト」
 湖畔で声を掛けてきたのは、見慣れた大男だ。
「ちょっといいか」
「何ですか? 改まって」
「それがよ……」
 少し照れたように頭を掻きながら言い淀む用件とは、一体何だろうと少女は首を傾げた。
 ――……あれから七日が経つ。
 ゼーラックが犯してきた非人道的な行為は露見し失職となり、タイニーゴの名を奪われた。
 今は村長代行をリラが担っている。
 普段ルーナが見ていた幼いリラとは別人のようにしっかりして、ピンと背筋が張った姿は見習いたいくらいだ。
 残っていた悪魔の食事草フォリーエルブは、薬として使うには危険が大きすぎるという結論が出て、誤飲防止の為にも全て焼き払われた。
 また、カイの家は封鎖され、例のキノコは幻覚を見せるような作用が含まれていたらしい事も分かった。
 カイは、キノコと悪魔の食事草フォリーエルブのダブルで狂ったという見解になった。
 当のアランは気が抜けたようにぼうっとしている時間が増え、罪人として逃走の様子も無い事からリラは北の山小屋での幽閉という形とした。
 基本的に面会は認めないとなっているが、山小屋故に一日中見張りがいる訳でも無い。
 きっと、ルーナの事を思って、リラが気を回してくれたのだろう。
 ……おかげで、ルーナは足繁くアランの元に通い、日々薬師としての力を蓄えている。
「なぁ、俺達と……一緒に暮らす気は無いか? ……子供一人じゃ、何かと困るだろ」
「俺達? それって、もしかして……」
 ビルトの日に焼けた顔がみるみる赤くなっていくので、これはとルーナは微笑んだ。
「んー、まぁ。その。チェストと……近々、結婚するんだ。心臓治ったとは言うけど、やっぱ心配だからよ」
「わあっ、素敵ですね! おめでとうございます……!」
「形式上だけだっての。まぁ……さんきゅな」
「照れちゃって」
「うっせ」
 くすくすと笑みを零す少女に、ビルトは視線が合わせられない程照れているようだ。
「でも、ごめんなさい。私はここが家なんです」
 診療所を見上げて、きっぱりと気持ちを言った。
「……でもよ」
「それに、決めたんです。薬師ギルフォードの名を残すって。私が、ルーナ=ギルフォードとして!」
 食い下がるビルトに、今の気持ちを正直に話す。
 こんなに穏やかに話が出来るようになれたのはきっと、事件の副作用とも言えるだろう。
「そうか……。頑張れな。なんかあったら、いつでも頼って来い」
「ありがとう! ……まだ、お師匠さまの事、怒ってますか」
「っ当たり前だ! 俺はお前みたいに優しくないんでな」
 男は色々と複雑そうだ。
 それもそうだと思う。
 アランは……それだけの事をしたのだから。
「でもよ、なかなか似合ってるぜ。その片眼の眼鏡モノクル
 ビルトの言葉に、ルーナは満面の笑みで返した。
 リラが、持っていていいと言ったからだ。
 少女は師から託された、鎖の付いた片眼の眼鏡モノクルをかけるようにした。
 そしてアルバルフを手懐けている真っ最中だ。
「じゃあ、いってきます!」
「おう、気を付けろよ」
「大丈夫です! アルバルフが居てくれるもの」
 上空で、ピーヒョロと山鳥が鳴いた。
 いつも薬草採りに行った道を、師に会う為に行く。
 ……悲しい事や辛い事は沢山あった。
 しかし、立ち止まっている暇は無い。
 今一番気がかりなのは、アランの体調なのだ。
 ルーナはどうにか彼の体を治したいと思っている。
 無理かもしれない。
 無駄かもしれない。
 けれど、自分が諦めたら、今度こそアランは独りぼっちになってしまう。
 だから愛しているアランの……家族の為に、戦うと決めた。
 同じギルフォードの名を持つ者として。
「あなたも悲しむだろうしね」
 自分より上を飛んでいるアルバルフに向かって言うと、クオと一言鳴いた。
 山を登り始めて、三十分。
 アランの居る山小屋はもうすぐだ。
 木の重い扉をノックしても反応は無い。
「お師匠さまぁ」
 ルーナは大きく声を張り上げて、彼の元へと急ぐ。

 ――今度こそ、大事な人は自分で守るんだ。

 そう決意したのだから。
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みんなの感想(1件)

有里  詩月
2018.08.25 有里 詩月

ルーナの過去が壮絶というか、悲しい話で、切なくなりました。アージスという言葉も気になるし、更新が待ち遠しいです!これからも頑張ってください!

2018.08.25 弥雨 林(みさめ りん)

初めまして、弥雨林と申します!
嬉しいお言葉をありがとうございます…!
頑張りますので、是非今後ともお時間のある際に読んでいただければ嬉しく思います!

ルーナがの過去があれなので、笑顔なシーンは書いていて自分もにこにこしました。笑

解除

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