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04.建国記
しおりを挟むその昔、世界は突如として顕れた邪悪なる龍ヘクセンドラと、その眷族たる魔物達に拠って混迷に沈んでいた。後の世に混沌の時代と呼ばれる年代だ。
人や家畜を見境なく襲い喰らう魔物が其処彼処に跋扈する日常。邪龍の放つ瘴気で土地は荒れ果て、人里では疫病が蔓延した。
諸悪の根源たるヘクセンドラを討伐せんと挑んだ者は個人、組織と問わずとも数知れず、しかしその誰もが帰っては来なかった。
困窮に喘ぎ、瘴気に当てられ日増しに荒んで行った者達は、少しでも豊かな土地を手にしようと、正に人が変わったように相争い、そして無為にその命を散らし、結果、数多の国が滅んでいった。
邪龍達の圧倒的な暴力を前に、人々は成す術なく、ひたすら息を殺して恐怖に震えながら逃げ隠れることしかできなかった。そうして人類は瞬く間に滅びへ向かっていった。
邪龍の出現から数十年が経った頃、山間の小さな農村で暮らしていた青年レイ・フォーラントが精霊王アルセノムの加護を授かる。レイは故郷の友人達と共に邪龍の討伐に挑む旅に出た。その道中で亡国の騎士や流れの魔術師などを仲間に加えることもあった。しかし、その戦いは熾烈を極め、レイは多くの同胞を喪いながらも遂に邪龍討伐を成し遂げた。
斯くて最大の脅威が取り除かれた世界であったが、邪龍が討伐された後もその瘴気は消えず、各地には魔物も多く残っていた。
故郷へ帰ったレイが復興に向けて活動する内に、周辺の村落で生き残った者達が集まり、邪龍の討伐から八年後、レイを国王に据えたフォーラント王国の建国へと至った。
建国を宣言する式典で、集った国民達に向けてレイはこう言った。
「今はまだ、平和とは言い難い世界だが、一日でも早くそう呼べる日に辿り着けるよう尽力することを誓おう。そのために、皆にも協力してもらいたい。──そして、いずれまた世界には邪龍ヘクセンドラのような存在が顕れるだろう。しかし、俺達が今この日を迎えられたように、結束した人の力で乗り越えられない困難はないと信じている」
国民は空を割らんばかりの熱狂的な喝采を以て、歴史に残るその日と英雄王を迎えた。
フォーラント王国建国にあたり、かねてよりレイを支え、邪龍の討伐戦も共に戦い抜いた者達四人が公爵の位を得て国の要職に就いた。再び訪れた人の世に、数多の国が勃興し、時に争い、騒乱の時代は長らく続いたが、四人の公爵はそれぞれに与えられた役職でも目覚しい活躍を見せることになる。その内に国民から畏敬を込めて彼等は四公と呼ばれた。
それから更に時は流れ、復興の途上にある世界で第二代目国王になったレイの息子セルストは、国の安定に注力した初代国王にして父であるレイの名を敬意と決意と共に継ぎ、セルスト・レイ・フォーラントを名乗った。特別定めたことではないが、互いに友人であった四公爵家の後継達もそれに倣い、王家と四公の直系はそれぞれ初代の名を継承することが慣例となった。
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