【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!

隣のカキ

文字の大きさ
2 / 87
聖女が村人をブッ叩くまで

第2話 魔女の旅立ち

しおりを挟む
 私、アリエンナには幼い頃から不思議な力があった。

 怪我や病気を治す力、動物や魔物と心を通わせる力、男性を興奮させる力、世間では魔法と呼ばれ、迫害される力だ。

 いつの頃だったか…転んで膝を擦りむき泣いている私を見た母が「痛いの痛いの~飛んでっけー!」と笑顔で呪文を唱えてくれたのを覚えている。

 娘が泣いているのに笑顔なのはどうかと思った。


 私が12歳の時、近所の男の子が「結婚してやるよ。お前なんてどうせ誰も貰ってくれないだろ?」と顔を真っ赤にして言ってきた。

 イラっとしてその子を棒でブッ叩いたら怪我をさせてしまい、気休めにでもなればと例の呪文を唱えると、その子の怪我はみるみるうちに治ってしまった。

 次の日からその子は口を聞いてくれなくなった。どれだけ話しかけても、頭を小突いても腹パンしても、無言だった。

 私は悔しくて泣いたのを覚えている。

 何で私を無視するの? 腹パンしたんだから「ゔっ」くらい言えよオラ。

 更に次の日、近所の子からいじめられた。勿論私は優しいので、全員を棒でブッ叩いてから治してやった。そもそも女の子に対して「どーせ結婚出来ない」と言う奴が悪いのだ。

 それ以降、近所の子は皆私を無視するようになる。

 こんな事になるのなら、もう少し強めに叩いておけば良かったと後悔した。


 母は美人だった。近所の男性はみんな母が好きで、母が近くにいるだけで男性は前かがみになる。

「おじさんはどうしてお母さん居るとそんな態勢になるの?」

 そう片っ端から大人の男たちに聞いて回ると、誰も彼もが目を逸らして無言を貫く。

 大人までもが私を無視するようになったのだ。


 そんな私だが寂しくはなかった。不思議な力に興味津々で、色々と力の使い方を試す事に没頭していたのだ。その力を魔法と呼ぶのだそう。

 14歳になる頃には自分の持っている魔法の使い方をしっかり理解していた。

 例えば『回復魔法』だ。魔物や動物を力いっぱいブッ叩いて治す事を繰り返すと、徐々に回復魔法の効果は強くなっていく。そして彼らは私の言う事を聞くようになる。人間以外と心を通わせる事が出来るようになったのだ。

 きっと私は、魔物や動物たちに好かれる性質を備えていたのだろう。どうも相手が弱れば弱る程効果があるようだ。この魔法に『みんな友達』という名前を付けた。

 他にも…自分の体を男にすりつければ、彼らは極度の興奮状態に陥るのだ。この力に関してはきっと母譲り。最近では何もしなくても発動している事があるみたい。この魔法には『元気いっぱい』と名付けた。


 現在16歳の私は、いつしか『魔女』と呼ばれるようになっていた。

 魔法が使えるからだろう…誰もが私を無視したり、嫌味を言ってくる。確かに私は魔女かもしれないが、心は次亜塩素酸ナトリウムにだって負けないくらい綺麗なのに……。


 ある日の事…。

 家の近くで怪我をしている冒険者の男性を見つけた。

 彼は自らの足で立って歩くことが出来ないようで、私は心配になり尋ねる。


「大丈夫ですか?」

「あぁ…魔物にやられちまってね。」


 それは大変だ。近隣の魔物は、私が全力で二発ブッ叩かないと倒せないくらいに強いのだ。


「治療しますので、そのまま楽にしていて下さい。」

「すまねぇ。」


 私は冒険者の男性に身を寄せ「痛いの痛いの飛んでって。」と耳元に囁く。

 すると男性の怪我はすっかり治ってしまい、目をギラつかせ極度の興奮状態になって私に襲い掛かってきた。

 私は驚いてしまって…男をそこそこの力でブッ叩いた。

 男は隣の家の壁に背を打ち付けて、礼も言わずにヨタヨタしながら逃げて行く。壁には人型の跡が付いていた。

 咄嗟に力が入ってしまったが、無事なようで良かった……。

 それにしてもいきなり襲い掛かかって来るなんて…私が一体どんな悪い事をしたというのだろう。


 その日以来、家の近所で怪我をした男性を見かける事が多くなったように思う。

 毎回怪我を治してあげても、みんな極度の興奮状態になり襲い掛かってくるのには困ったものだが……。

 都度にブッ叩いてやると、みんな逃げていく。

 加減はしてあるので、大きな怪我はないと思うが心配だ。


 一ヶ月も経つ頃には、近所の男を一通りブッ叩いた。そんな男たちの中には父も含まれている。

 父に関しては、母にもブッ叩かれたそうだ。

 男は私を見れば顔を赤らめ「魔女様だ」と言い、女は顔を顰め「魔女め」と言う。

 特に女達は、笑いながら水をかけてくる人までいる始末。勿論棒でブッ叩いた。

 私が…『魔女』が迫害されているのは明らかだ。

 もうここを出よう。

 きっとこの村では…もしかしたらこのジョガリーマ王国での魔法という力は、忌むべき力なのだろう。

 これ以上ここに居ては魔女狩リータという儀式で、モッツァレラチーズとバジルをのせて火炙りにされるかもしれない。

 『みんな友達』を使っても良いが、数が多すぎて日が暮れてしまう。それならば潔く身を引いて違う町へ行ったほうが賢明だろう。

 いつも私の味方をしてくれた母だけは気掛かりだが……。

 しかし、もう迫害されるのはウンザリだ。それに私はチヤホヤされたいのだ。


「さようなら。私の故郷。」


 涙を堪え、心を通わせた猪の魔物に乗って南の国『ドゥー』を目指す。

(悲しいけど振り返らないわ…。)

 私は誰か見送りに来てくれないだろうか…と何度もチラチラと後ろを確認した。






 途中、お腹が空いたので猪の魔物は食料になった。ありがとう。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【完結】追放された転生聖女は、無手ですべてを粉砕する

ゆきむらちひろ
ファンタジー
「祈るより、殴る方が早いので」 ひとりの脳筋聖女が、本人にまったくその気がないまま、緻密に練られたシリアスな陰謀を片っ端から台無しにしていく痛快無比なアクションコメディ。 ■あらすじ 聖女セレスティアは、その類稀なる聖なる力(物理)ゆえに王都から追放された。 実は彼女には前世の記憶があって、平和な日本で暮らしていたしがないOLだった。 そして今世にて、神に祈りを捧げる乙女として王国に奉仕する聖女に転生。 だがなぜかその身に宿ったのは治癒の奇跡ではなく、岩をも砕く超人的な筋力だった。 儀式はすっぽかす。祈りの言葉は覚えられない。挙句の果てには、神殿に押し入った魔物を祈祷ではなくラリアットで撃退する始末。 そんな彼女に愛想を尽かした王国は、新たに現れた完璧な治癒能力を持つ聖女リリアナを迎え入れ、セレスティアを「偽りの聖女」として追放する。 「まあ、田舎でスローライフも悪くないか」 追放された本人はいたって能天気。行く先も分からぬまま彼女は新天地を求めて旅に出る。 しかし、彼女の行く手には、王国転覆を狙う宰相が仕組んだシリアスな陰謀の影が渦巻いていた。 「お嬢さん、命が惜しければこの密書を……」 「話が長い! 要点は!? ……もういい、面倒だから全員まとめてかかってこい!」 刺客の脅しも、古代遺跡の難解な謎も、国家を揺るがす秘密の会合も、セレスティアはすべてを「考えるのが面倒くさい」の一言で片付け、その剛腕で粉砕していく。 果たしてセレスティアはスローライフを手にすることができるのか……。 ※「小説家になろう」、「カクヨム」、「アルファポリス」に同内容のものを投稿しています。 ※この作品以外にもいろいろと小説を投稿しています。よろしければそちらもご覧ください。

妹が聖女の再来と呼ばれているようです

田尾風香
ファンタジー
ダンジョンのある辺境の地で回復術士として働いていたけど、父に呼び戻されてモンテリーノ学校に入学した。そこには、私の婚約者であるファルター殿下と、腹違いの妹であるピーアがいたんだけど。 「マレン・メクレンブルク! 貴様とは婚約破棄する!」  どうやらファルター殿下は、"低能"と呼ばれている私じゃなく、"聖女の再来"とまで呼ばれるくらいに成績の良い妹と婚約したいらしい。 それは別に構わない。国王陛下の裁定で無事に婚約破棄が成った直後、私に婚約を申し込んできたのは、辺境の地で一緒だったハインリヒ様だった。 戸惑う日々を送る私を余所に、事件が起こる。――学校に、ダンジョンが出現したのだった。 更新は不定期です。

婚約破棄された上に国外追放された聖女はチート級冒険者として生きていきます~私を追放した王国が大変なことになっている?へぇ、そうですか~

夏芽空
ファンタジー
無茶な仕事量を押し付けられる日々に、聖女マリアはすっかり嫌気が指していた。 「聖女なんてやってられないわよ!」 勢いで聖女の杖を叩きつけるが、跳ね返ってきた杖の先端がマリアの顎にクリーンヒット。 そのまま意識を失う。 意識を失ったマリアは、暗闇の中で前世の記憶を思い出した。 そのことがきっかけで、マリアは強い相手との戦いを望むようになる。 そしてさらには、チート級の力を手に入れる。 目を覚ましたマリアは、婚約者である第一王子から婚約破棄&国外追放を命じられた。 その言葉に、マリアは大歓喜。 (国外追放されれば、聖女という辛いだけの役目から解放されるわ!) そんな訳で、大はしゃぎで国を出ていくのだった。 外の世界で冒険者という存在を知ったマリアは、『強い相手と戦いたい』という前世の自分の願いを叶えるべく自らも冒険者となり、チート級の力を使って、順調にのし上がっていく。 一方、マリアを追放した王国は、その軽率な行いのせいで異常事態が発生していた……。

聖女やめます……タダ働きは嫌!友達作ります!冒険者なります!お金稼ぎます!ちゃっかり世界も救います!

さくしゃ
ファンタジー
職業「聖女」としてお勤めに忙殺されるクミ 祈りに始まり、一日中治療、時にはドラゴン討伐……しかし、全てタダ働き! も……もう嫌だぁ! 半狂乱の最強聖女は冒険者となり、軟禁生活では味わえなかった生活を知りはっちゃける! 時には、不労所得、冒険者業、アルバイトで稼ぐ! 大金持ちにもなっていき、世界も救いまーす。 色んなキャラ出しまくりぃ! カクヨムでも掲載チュッ ⚠︎この物語は全てフィクションです。 ⚠︎現実では絶対にマネはしないでください!

その人、聖女じゃなくて聖女『モドキ』ですよ?~選んだのは殿下ですので、あとはお好きにどうぞ~

みなと
ファンタジー
「お前は慎みというものを知るべきだ! 俺は、我が腕の中にいるアルティナを次代の筆頭聖女に任命し、そして新たな我が婚約者とする!」 人を指さしてドヤ顔を披露するこの国の王太子殿下。 そしてその隣にいる、聖女として同期の存在であるアルティナ。 二人はとてつもなく自信満々な様子で、国の筆頭聖女であるオフィーリア・ヴァルティスを見てニヤついている。 そんな中、オフィーリアは内心でガッツポーズをしていた。 これで……ようやく能無しのサポートをしなくて良い!と、今から喜ぶわけにはいかない。 泣きそうな表情を作って……悲しんでいるふりをして、そして彼女は国を追放された。 「いよっしゃああああああああああああ! これで念願のおば様のところに行って薬師としてのお勉強ができるわよ!!」 城の荷物をほいほいとアイテムボックスへ放り込んで、とても身軽な状態でオフィーリアは足取り軽くおばが住んでいる国境付近の村へと向かう。 なお、その頃城では会議から戻った国王によって、王太子に鉄拳制裁が行われるところだった――。 後悔しても、時すでに遅し。 アルティナでは何の役に立たないことを思い知った王太子がオフィーリアを呼び戻そうと奮闘するも、見向きもされないという現実に打ちひしがれることになってしまったのだ。 ※小説家になろう、でも公開中

【完結】婚約破棄された令嬢が冒険者になったら超レア職業:聖女でした!勧誘されまくって困っています

如月ぐるぐる
ファンタジー
公爵令嬢フランチェスカは、誕生日に婚約破棄された。 「王太子様、理由をお聞かせくださいませ」 理由はフランチェスカの先見(さきみ)の力だった。 どうやら王太子は先見の力を『魔の物』と契約したからだと思っている。 何とか信用を取り戻そうとするも、なんと王太子はフランチェスカの処刑を決定する。 両親にその報を受け、その日のうちに国を脱出する事になってしまった。 しかし当てもなく国を出たため、何をするかも決まっていない。 「丁度いいですわね、冒険者になる事としましょう」

聖女の紋章 転生?少女は女神の加護と前世の知識で無双する わたしは聖女ではありません。公爵令嬢です!

幸之丞
ファンタジー
2023/11/22~11/23  女性向けホットランキング1位 2023/11/24 10:00 ファンタジーランキング1位  ありがとうございます。 「うわ~ 私を捨てないでー!」 声を出して私を捨てようとする父さんに叫ぼうとしました・・・ でも私は意識がはっきりしているけれど、体はまだ、生れて1週間くらいしか経っていないので 「ばぶ ばぶうう ばぶ だああ」 くらいにしか聞こえていないのね? と思っていたけど ササッと 捨てられてしまいました~ 誰か拾って~ 私は、陽菜。数ヶ月前まで、日本で女子高生をしていました。 将来の為に良い大学に入学しようと塾にいっています。 塾の帰り道、車の事故に巻き込まれて、気づいてみたら何故か新しいお母さんのお腹の中。隣には姉妹もいる。そう双子なの。 私達が生まれたその後、私は魔力が少ないから、伯爵の娘として恥ずかしいとかで、捨てられた・・・  ↑ここ冒頭 けれども、公爵家に拾われた。ああ 良かった・・・ そしてこれから私は捨てられないように、前世の記憶を使って知識チートで家族のため、公爵領にする人のために領地を豊かにします。 「この子ちょっとおかしいこと言ってるぞ」 と言われても、必殺 「女神様のお告げです。昨夜夢にでてきました」で大丈夫。 だって私には、愛と豊穣の女神様に愛されている証、聖女の紋章があるのです。 この物語は、魔法と剣の世界で主人公のエルーシアは魔法チートと知識チートで領地を豊かにするためにスライムや古竜と仲良くなって、お力をちょっと借りたりもします。 果たして、エルーシアは捨てられた本当の理由を知ることが出来るのか? さあ! 物語が始まります。

悪霊令嬢~死した聖女憎悪に染まりて呪いを成す~

女譜香あいす
ファンタジー
 数え切れない人々をその身に宿す奇跡の力で救ってきた少女、サヤ・パメラ・カグラバ。  聖女と称えられた彼女であったが陰謀の末に愛した者から婚約破棄を言い渡され、友人達からも裏切られ、最後には命を奪われてしまう。  だがそのとき感じた怒りと悲しみ、そして絶望によって彼女の心は黒く歪み、果てにサヤは悪霊として蘇った。  そして、そんな彼女と世を憎みながらもただ生きる事しかできていなかった一人の少女が巡り合う事で、世界に呪いが拡がり始める事となる。  これは誰よりも清らかだった乙女が、憎悪の化身となりすべての人間に復讐を果たす物語。 ※この作品は小説家になろうにも掲載しています。

処理中です...