【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!

隣のカキ

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聖女の暴力編

第49話 聖女の狂気

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 そうして暫くの間魔法の撃ち合いになり、膠着状態が続くと思ったけど……。

「どうやら、魔法の速度は僕の方が不利な様だ。」

 黒い炎は威力こそ同等。しかし、連射速度に関しては私の方が僅かに早い。

「みたいです、ね!」

 相殺しきれない魔法を防御したアドンに接近し、杖を打ち下ろす。

「うっ!」

 連続で防御させる事で、強制的にアドンをその場に縫い付ける事に成功した。

「君はいつまで魔力が続くんだい!? その魔法、消費量が半端じゃないはずだよね!」

 私のコンディションは絶好調で、勝手に魔力が増えていく。このまま戦い続けても魔力切れするのはまだまだ先だ。

「私は戦うと調子が上がるみたいです。」

「何それ? オカシイ! 絶対にオカシイって! 君の魔力量、戦い始めの倍くらいになってるじゃないか!?」

「そうですか?」

 攻撃を続けながら更に追い込んでいく。

 スピードはアドンの方が上かもしれないが、黒い魔法込みなら威力はやや私が上。

 このまま防御に集中させる事で押し切る!

「ぐっ! 攻撃の速度も……威力も上がってる……?」

 杖が手に馴染む。

 思い通りに振り回せる。

 なんとなく、どうすればより強い攻撃が出せるのか理解出来る。

「楽しいですね。」

「僕は全然楽しくないよ!」




アンリ、ベーゼブ視点

 ズドドドドドン! と大質量を叩きつけるような鈍い音が連続で室内に響き渡る。

「楽しいですよ! あはははは!!」


「お前の孫……。ちょっとイッちゃってないか?」

「……アリエーンより酷いわ。」

 アリエンナの攻撃はとどまる所を知らず、徐々に速度が増していく。

 どんどん追い込まれるアドンは苦悶の表情を浮かべ、一見めちゃくちゃに振り回しているような攻撃だが、的確に彼の嫌がる所に叩きつけていた。

 漆黒に覆われた杖がブレて、まるで複数の杖で攻撃しているかのようだ。

「なぁ、アンリはあれに勝てそうか?」

「接近戦なら不可能ね。現時点で魔法戦だったら自信はあるけど……。」

「けど?」

「あの調子で成長されたら、魔法の戦いですら一時間もあれば追い付かれるわ。」

「俺も武器ありなら自信はあったんだが……既に互角かもしれん。とは言え、魔力量はまだ魔神レベルに届いてはいないし、力も俺の方がまだ上だ。付け入る隙があるとすれば、そこだな。」

「無理でしょ。こうやって話している間にも増えていってるのよ? もう魔力量だけなら、私の五分の一くらいにまでなってるわ。力だってすぐに追いつかれるわよ?」



「あーっはっはっはっは! 反撃しないと潰れちゃいますよ!!」

 アリエンナの手に持つそれは、更に黒さを増していく。

 まるで杖そのものが闇と化しているようで、繰り出される攻撃は魔神と言えどもただでは済まない。

「ほら! ほらほら! 魔神でしょ!? 頑張って! 更に出力を上げていきますよ!!」

 最大出力と思われたアリエンナの身体強化魔法。それが戦いの最中で成長し、上限などないと言わんばかりに上がっていく。

「ぐっ……とうとう純粋な身体能力すらも追い付かれちゃったね。」

「大丈夫ですよ! 魔神ならまだ戦える! やれば出来る!!」

 アドンは徐々に壁に追い詰められていき、とうとう逃げ場を失ってしまった。

「どうしました? 大丈夫ですか? もっと頑張らないと死にますよ!」

 あまりの攻撃速度に、杖を打ち付けるタイミングと音がズレている。

 既に追い詰められた魔神は、完全に力負けし始めた。

「あはははははは!! ダメですよ! もっと力を入れて! 本当に潰しちゃうぅぅ!!」

「くそっ! こんなはずじゃ……。」

「あぁ……! ダメ! アドンが死んじゃう!! でも楽し過ぎて止められないのぉぉぉ!!」


 戦いが始まってから50分、アドンが追い詰められてからは20分が経過した。

 アリエンナの力は魔神アドンを押している。スピードすらも追い付いてしまい、身体能力に関しては魔神レベルを若干上回り始めていた。

 魔力量はアンリの三分の一、アドンの三分の二、ベーゼブとは既に互角。

 アリエンナは楽しくて、少しでも戦いを長引かせようと黒い塊を杖から放つ事をやめていた。

 元々、遠近両方の戦闘を得意とするアドンだが、永い時をかけて磨いた魔法と近接能力を駆使してさえも防御だけで精一杯。

 一体の魔神が潰されるまでのカウントダウンがスタートしていた……。


「これは……完全にアドンより強くないか? 武器ありの戦闘でも、俺より若干強いぞ?」

「そうね……多分、私じゃもう正攻法では勝てない。ちなみにアドンを殺すつもりだった?」

「そんなつもりはない。あんなんでも一応友達だ。負けた方が配下になるって約束で命の取り合いまではしない事にしていた。」

「なら、そろそろ止めましょう。」

「そうしてくれ。」

「アリエンナちゃん! そろそろ終わりよ!」

 戦いを止めようとアンリが声を掛ける。しかし……


「あは! あははっ! あーっはっはっはっは!!」


 そこには狂ったように笑い、魔神を追い詰める事をやめない聖女が居た。


「アリエンナちゃん!!」


「うるさい!!」


 アンリの方を見もせず片手だけを向け、黒い塊を連射するアリエンナ。

 まるで狂気に憑りつかれたように敵味方の区別なく攻撃を仕掛け始めた……。
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