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5 不思議な占い屋
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2022年7月18日
私は置時計を手に入れる為、魔法少女を探し回っていた。今まで三回とも、時計を受け取ったのはこの日だ。
「こんにちは!」
後ろから突然話しかけられ、私は驚いた。
「もう四回目だよ?また必要なの?」
「はい…。」
「仕方ないから占ってあげるね!」
そう言って彼女は私の手を引いて路地裏に案内した。
そこには占いの屋台があった。屋台にはピンク色の少し派手めの看板が置かれており、「サリリの占い屋さん」とデコレーションされた可愛い文字で書かれている。
(本当に占いやってたんだ…。)
「さぁさぁ座って!」
私は促されるまま屋台の正面に置かれた椅子に座った。
タロットカードを取り出した彼女は、信じられない程のスピードでカードを切ってテーブルに伏せた状態で並べていく。
「この中から好きなカード5枚めくってね!」
私は言う通りにカードをめくる。
めくったカードの意味は分からないが、魔法少女はうんうん唸っている。
「もしかして5歳以前の記憶がない?」
「え?」
確かにその通りだ。私には5歳以前の記憶がない。何故かは知らないし、それ程気にしたこともなかった。
「はい。あまり気にしてなかったんですけど、私にはその頃の記憶がありません。」
「そっかぁ…じゃあ聞いても分からないかもしれないね…あなたはその頃○〇って所に住んでたはずなんだけど覚えてる?」
○〇は樹君の実家のある町だ。そして恵奈が昔住んでいた所でもある。
「あなたはその当時の記憶を取り戻す必要があるみたいね。」
「それってどういう…」
「はい!占い結果が出ました。2007年1月10日に行って下さい!」
「え?」
「え?じゃなくて、その日に行ってくれば分かるから!」
ほらほら!と言って無理矢理背中を押される。力が強いのか、かなり痛い。
私は訳もわからないまま屋台を追い出されてしまった。
「ちょっと待っ…」
どういう事なのか問いただそうと振り返れば、そこには屋台も魔法少女の姿も無かった。
夢でも見ていたのかとも思ったが、私の手には魔法の時計がある。
(15年前…?何があるってのよ…。)
私は家に帰ると魔法少女に言われた通りに時計を設定した。
2007年1月10日
目覚めると知らない部屋だった。母が起こしてくれたようだ。
全く知らない部屋のはずなのに、既視感を覚える。それに関しては自分の記憶がないせいだろう。時計を確認すれば、七時半だった。
「おはよう。お着替えして顔を洗っておいで。」
(若いころのお母さん……。)
さっと着替えた私は、場所が分からなくて母に聞く。
「わかった。洗面台どこ?」
「あらあら?甘えてるのかな?」
本当に分からないんだけど…。
「一緒に行きましょうね?」
着替えも随分早かったし、洗面台なんて言葉…教えたかしら?と母は呟きながら私を案内してくれた。
顔を洗い、歯磨きをしてトイレを済ませる。
「偉いわ!一人で歯磨きするようになったの?」
当時の私は一人で出来なかったらしい。
「う、うん。」
普通にしているつもりだったがそう言われると、なんだかなぁと思ってしまう。
(やりにくいなぁ…。気を付けないとね。)
「それじゃあご飯にしましょう。」
「そうだね。たまには私が作ろっか?目玉焼きで良い?」
「え?」
母は目を見開いて驚いている。
(しまった!今の私は四歳。いくらなんでも不自然過ぎる。誤魔化さなきゃ。)
さっき気を付けようと思ったばかりなのに、私はまだ寝惚けているのかもしれない。
「テレビで見た。」
「あっ。そういう事だったの。」
とりあえず納得してくれたようで何よりだ。
朝食は焼き魚と卵かけご飯だった。
久しぶりの母の料理にもくもくと食事をとっていると…。
「綺麗に食べられるようになったな。ちゃんと骨も取ってるし偉いぞ。」
と父に褒められた。
「いや…もう子供じゃないんだから、汚い食べ方してたら恥ずかしいよ。」
「ええ??子供だろ…。」
(私のバカ……。)
「テレビの真似っこみたいよ?」
「そういう事か…。」
勝手に納得してくれて助かった。
喋れば喋る程ボロが出る。
(子供の頃どんな風に話してたかなんて覚えてないよ。もう、ある程度開き直っちゃおう。)
「今日は樹君の家で遊ぶんでしょ?あんまり恵奈ちゃんと喧嘩しちゃダメよ?」
「え?」
「あれ?忘れてたの?約束してたじゃない。」
(樹君…?恵奈ちゃん…?)
「うっかりしてた。明日と勘違いしてたみたい。」
「あらそうなの?お母さん準備できたら声かけるからね。」
「うん。」
「お父さんは?」
「お父さんはお仕事よ。」
考えてみれば当たり前だった。
「お父さんは何の仕事?」
「お父さんはね。火を消すんだ。どうだ?恰好良いだろ?」
「火を消す?あぁ…消防士って事?それだと分かりにくいよ。」
「え?あ、あぁ…すまん。」
父は意気消沈してしまった。なんだか可哀そうな事をした気がする。
私の記憶では父は会社員だったはずだ。公務員ではない。
(私の記憶が失われるような何かがあって、仕事をやめて引っ越した?)
普通に考えれば転職しただけなんだろうけど…。
「じゃあ仕事に行ってくるよ。」
「行ってらっしゃい。」
「行ってらっしゃいのチューは?」
「え?しないけど。」
父は落ち込み、今日は娘が冷たい…と言って出かけて行った。
「慧ちゃん、今日は様子が変ね…。家でゆっくりした方が良いかしら?」
(待って、それは困る。)
樹くんと恵奈ちゃんは、失われた記憶の手掛かりかもしれない。
「大丈夫だよ。元気だし、樹くんと恵奈ちゃんに会いたくて会いたくて震えるよ?」
「なにそれ?」
(あれ?西野ナナってまだデビュー前だったっけ?)
私は置時計を手に入れる為、魔法少女を探し回っていた。今まで三回とも、時計を受け取ったのはこの日だ。
「こんにちは!」
後ろから突然話しかけられ、私は驚いた。
「もう四回目だよ?また必要なの?」
「はい…。」
「仕方ないから占ってあげるね!」
そう言って彼女は私の手を引いて路地裏に案内した。
そこには占いの屋台があった。屋台にはピンク色の少し派手めの看板が置かれており、「サリリの占い屋さん」とデコレーションされた可愛い文字で書かれている。
(本当に占いやってたんだ…。)
「さぁさぁ座って!」
私は促されるまま屋台の正面に置かれた椅子に座った。
タロットカードを取り出した彼女は、信じられない程のスピードでカードを切ってテーブルに伏せた状態で並べていく。
「この中から好きなカード5枚めくってね!」
私は言う通りにカードをめくる。
めくったカードの意味は分からないが、魔法少女はうんうん唸っている。
「もしかして5歳以前の記憶がない?」
「え?」
確かにその通りだ。私には5歳以前の記憶がない。何故かは知らないし、それ程気にしたこともなかった。
「はい。あまり気にしてなかったんですけど、私にはその頃の記憶がありません。」
「そっかぁ…じゃあ聞いても分からないかもしれないね…あなたはその頃○〇って所に住んでたはずなんだけど覚えてる?」
○〇は樹君の実家のある町だ。そして恵奈が昔住んでいた所でもある。
「あなたはその当時の記憶を取り戻す必要があるみたいね。」
「それってどういう…」
「はい!占い結果が出ました。2007年1月10日に行って下さい!」
「え?」
「え?じゃなくて、その日に行ってくれば分かるから!」
ほらほら!と言って無理矢理背中を押される。力が強いのか、かなり痛い。
私は訳もわからないまま屋台を追い出されてしまった。
「ちょっと待っ…」
どういう事なのか問いただそうと振り返れば、そこには屋台も魔法少女の姿も無かった。
夢でも見ていたのかとも思ったが、私の手には魔法の時計がある。
(15年前…?何があるってのよ…。)
私は家に帰ると魔法少女に言われた通りに時計を設定した。
2007年1月10日
目覚めると知らない部屋だった。母が起こしてくれたようだ。
全く知らない部屋のはずなのに、既視感を覚える。それに関しては自分の記憶がないせいだろう。時計を確認すれば、七時半だった。
「おはよう。お着替えして顔を洗っておいで。」
(若いころのお母さん……。)
さっと着替えた私は、場所が分からなくて母に聞く。
「わかった。洗面台どこ?」
「あらあら?甘えてるのかな?」
本当に分からないんだけど…。
「一緒に行きましょうね?」
着替えも随分早かったし、洗面台なんて言葉…教えたかしら?と母は呟きながら私を案内してくれた。
顔を洗い、歯磨きをしてトイレを済ませる。
「偉いわ!一人で歯磨きするようになったの?」
当時の私は一人で出来なかったらしい。
「う、うん。」
普通にしているつもりだったがそう言われると、なんだかなぁと思ってしまう。
(やりにくいなぁ…。気を付けないとね。)
「それじゃあご飯にしましょう。」
「そうだね。たまには私が作ろっか?目玉焼きで良い?」
「え?」
母は目を見開いて驚いている。
(しまった!今の私は四歳。いくらなんでも不自然過ぎる。誤魔化さなきゃ。)
さっき気を付けようと思ったばかりなのに、私はまだ寝惚けているのかもしれない。
「テレビで見た。」
「あっ。そういう事だったの。」
とりあえず納得してくれたようで何よりだ。
朝食は焼き魚と卵かけご飯だった。
久しぶりの母の料理にもくもくと食事をとっていると…。
「綺麗に食べられるようになったな。ちゃんと骨も取ってるし偉いぞ。」
と父に褒められた。
「いや…もう子供じゃないんだから、汚い食べ方してたら恥ずかしいよ。」
「ええ??子供だろ…。」
(私のバカ……。)
「テレビの真似っこみたいよ?」
「そういう事か…。」
勝手に納得してくれて助かった。
喋れば喋る程ボロが出る。
(子供の頃どんな風に話してたかなんて覚えてないよ。もう、ある程度開き直っちゃおう。)
「今日は樹君の家で遊ぶんでしょ?あんまり恵奈ちゃんと喧嘩しちゃダメよ?」
「え?」
「あれ?忘れてたの?約束してたじゃない。」
(樹君…?恵奈ちゃん…?)
「うっかりしてた。明日と勘違いしてたみたい。」
「あらそうなの?お母さん準備できたら声かけるからね。」
「うん。」
「お父さんは?」
「お父さんはお仕事よ。」
考えてみれば当たり前だった。
「お父さんは何の仕事?」
「お父さんはね。火を消すんだ。どうだ?恰好良いだろ?」
「火を消す?あぁ…消防士って事?それだと分かりにくいよ。」
「え?あ、あぁ…すまん。」
父は意気消沈してしまった。なんだか可哀そうな事をした気がする。
私の記憶では父は会社員だったはずだ。公務員ではない。
(私の記憶が失われるような何かがあって、仕事をやめて引っ越した?)
普通に考えれば転職しただけなんだろうけど…。
「じゃあ仕事に行ってくるよ。」
「行ってらっしゃい。」
「行ってらっしゃいのチューは?」
「え?しないけど。」
父は落ち込み、今日は娘が冷たい…と言って出かけて行った。
「慧ちゃん、今日は様子が変ね…。家でゆっくりした方が良いかしら?」
(待って、それは困る。)
樹くんと恵奈ちゃんは、失われた記憶の手掛かりかもしれない。
「大丈夫だよ。元気だし、樹くんと恵奈ちゃんに会いたくて会いたくて震えるよ?」
「なにそれ?」
(あれ?西野ナナってまだデビュー前だったっけ?)
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