戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。

隣のカキ

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外伝:メイド喫茶でバイトテロしたら異世界召喚されました。しかも死に戻り特典付きで。

第2話 さぐぬtヴぃらヴんみr

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 今、私は練兵場? とか言う場所にいる。

 地面が土だから魔法陣を描くのに問題はない。


「では、先ずは陣を描きます。」


 私はしっかり宣言し、先程オムライスにも描いた冒涜的な魔法陣を更に大きく地面に描き始める。


「ゆ、勇者よ。随分とその……こ、個性的な陣だな?」


 公爵様の顔が引き攣っている。

 周囲の人間も眉を顰め、ひそひそと小声で何かを話していた。

 感じ悪いなぁ……。


「良し完成。では呪文を唱えます。」

「そ、そうか。」


 失敗したら嫌だし丁寧にお唱えしよう。

 私は目を閉じ、ゆっくりと唱え始める。


「いえ いえ しゅぶ・にぐらす いあーる むなーる うが なぐる となろろ よらならーく しらーりー!」


 あ、光ってる。

 オオオオオォォォォォォ…………とか聞こえてくるけど、気にしちゃダメよね。

 周りに集まった人達が何か叫んでるけど、邪魔しないで欲しい。


「いむろくなるのいくろむ! のいくろむ らじゃにー! いえ いえ しゅぶ・にぐらす! となるろ よらなるか!」


 完璧ね。今のは会心の呪文だったという自信がある。

 そして目を開くとそこには……


「何これ?」


 気持ち悪うぅ。

 黒くてずんぐりした胴体に、ヌメヌメした触手がたくさん生えた良く分からない生き物が私を見下ろしている。

 大きさも結構あるみたい。二階建ての一軒家くらいありそう。


「ゆ、勇者よ。これは……何だ?」


 やばい。

 自分でも分からない物を召喚しちゃったけど、分かりませんじゃ恰好が付かない。

 何か言わなきゃ。


「と、友達です。」


 バッカ! 私のバッカ!

 こんな友達いるはずないじゃん! 何で咄嗟に出た言い訳が友達なの?!

 人格を疑われちゃうじゃない!


「と、ともだ……ち? これは……いや、友達は、言う事を聞いてくれる……のか?」


 信じちゃった!?

 でもどうしよう。この生き物が私の言う事を聞いてくれなかったら……

 万が一暴れでもしたら……

 私の責任?


「えっと、この子は確固たる人格があるので優しくしてあげて下さい。気に入らない事があると暴れるかもしれませんし、そうなった場合は責任を持てません。」

「き、気を付けよう。」


 良し! 責任逃れは基本よね。

 偉い人がやってるのを良くテレビとかで見るし!

 責任を持てないのは本当だから間違ってないよね?


『げぎゃひひひひげぎゃひひひひひひぃぃぃぃ!!!!』

「「「「「ひぃぃぃぃぃぃっ!!」」」」」」


 ん? なんかこの子が言ってる事、分かるかも?


「ゲギャヒちゃんはお腹が空いたみたいです。」

「それが、名前か?」

「はい。」


 今勝手に名付けたけど、嫌がってないみたいだしゲギャヒちゃんで決定!


『ぶぐしゅるるるる。ぶしゅぐるるるる。』

「うんうん。お肉が食べたいの? 公爵様、お肉を……」
「直ちに肉を持って来させろおぉぉぉぉぉっ!!!!」


 公爵様、何でそんなに焦ってるの?

 ゲギャヒちゃんは別にそこまで待てない感じじゃないみたいだよ?

 言葉も分かるみたいだし、あまり怖がらないであげて欲しいなぁ。


『ぶふうぅぅぅぅ。ぶふうぅぅぅぅ。』

「勇者よ! い、今肉を持って来させているので、ゲギャヒ殿を落ち着かせてくれんか?」


 え? 落ち着いてるじゃん。

 どうしてそんな……って、もしかすると公爵様はゲギャヒちゃんの言葉が通じてない?


「公爵様はゲギャヒちゃんが何て言ってるか分かりませんか?」

「分かる訳ないだろ! あ、いえ……分かりません。」


 ゲギャヒちゃんが触手を近付けたからか、急に敬語になる公爵様。


「今は落ち着いているみたいなので大丈夫ですよ。」

「そ、そうか。では、落ち着いている今のうちにゲギャヒ殿が……どのくらい強いのか教えて貰えんか?」


 全っ然、分かりません。

 私にとっては初対面だし仕方ないよね?

 でも、分かりませんって答えるのはダサいなぁ。何かいい方法は……そうだ!


「公爵様。悪い事をした犯罪者と戦わせてみると良いかもしれません。」

「だ、大丈夫か? 本当にそんな事をして大丈夫なのか? 興奮して暴れたりはせんのか?」

「大丈夫です。」


 もしゲギャヒちゃんが暴れたら全速力でこの国から逃げよう。












「と、いう事で連れて来たぞ。」


 公爵様が筋肉モリモリの男の人を連れて来た。

 凄く強そう。


「えっと、その人は強いんですか?」

「ああ! 恐ろしい程強いぞ! このマーダスは戦闘狂いでな、戦場にて敵も味方も関係なく殺しまくるから手に負えないので捕えたのだ。味方殺しなんてしなければ国の英雄になれたものを……」


 なんて酷い人なの!?

 でも……


「そんな強い人をどうやって捕まえたんですか?」

「報告では、戦場のど真ん中で寝ていた所を縄でグルグル巻きに縛り上げたらしい。」


 バッカね。この人ったら正真正銘のバッカだわ。


「マーダスさんは今縛られていませんよね? どうして逃げないんですか?」

「ちゃんと俺は捕まってるぞ? 公爵様がいつも食ってる美味い飯を俺にも食わせてくれたら大人しく捕まっとくって約束でなぁ。はっはっはっ。飯がうめぇ。」


 んん?

 飯がうめぇの使い方間違ってるよ?

 というか、捕まってないんじゃない? それ。


「事情は分かって貰えたようだな勇者よ。」


 全然分かりません。


「ではマーダスよ! あの化け物を倒すのだ! 奴はきっと世界を滅ぼす化け物に違いない!!」


 友達って言ったじゃん! 勝手に倒すなんて酷いよ!

 私にとっては多分? 友達? かもな。くらいのものだけど。

 ゲギャヒちゃんとは初対面だし、そこまで愛着はない。


「まぁ、美味い飯を食わせて貰ってるし、偶には働くか。」


 やっぱ捕まってないじゃん。


「行くぜバケモノォォォォ!!!」

「速っ!」


 マーダスさんが走る速度はおおよそ人が出せるものとは思えないものだった。異世界へ来た事を改めて実感する。

 でも、このままじゃゲギャヒちゃんが危ない。

 そう思った瞬間、私は更に驚かされる事になった。




 ぱくり



「「え?」」


 見た。私は見てしまった。

 マーダスさんがゲギャヒちゃんの足元に到達した瞬間、まるでカエルの舌がハエを捕えるようにゲギャヒちゃんの舌がマーダスさんに巻き付き、一瞬で口の中に放り込まれていく様を……

 と同時に、私は少しだけ体の調子が良くなった事を実感した。

 ゲギャヒちゃんが誰かを食べると、その力が私にも少し流れてくるって事?


『ゲギャギャッびぎゃむぐrが。ktきくるndすむれひpnあ。』

「ゆ、勇者よ! なんと言っているんだ!?」

「僕はバケモノではありません。あなたの言葉に大変傷付いたのであなたを食べる、と言っています。」


 え? その見た目で一人称が『僕』なの?


「す、すまん!! 今大量の肉を持ってくるから!!」

『むるぐるなるぎおlrpぢごりごbpおらづめgkぇdぎらぶえおgほみ……』
「えっと? 大量のお肉があるからと言って、あなたの言葉が許されるわけではありません……」

『ぐびなdごrffbけ。るぐあなむbとjじょgびぼたむ。』
「ですが、謝罪は受け取りました。仲直りの印にあなたを食わせて下さい……って、え?」

「は?」


 それ、仲直りって言わないよね?

 でもゲギャヒちゃん的には普通の事みたい。

 これが異文化交流なのね……。


「すみませんでしたっ! マーダスが仲直りの印です!!」

『ぶふぉるヴぃbとふsえうし。ゅくぶりごもらるsえlどびっつしwりるがらずびもら。』
「なになに? さっきの彼が仲直りの印だと認識しました。他にも仲良くなりたい人が居れば紹介して下さい。」

「ほ、ほかにも……だと?」


 とりあえず、ゲギャヒちゃんを召喚したこの魔法を友達召喚バイトテロと名付けよう。バイトテロの時と同じ呪文使ったし。

 そう言えば……


「ゲギャヒちゃん、いつの間に私達の言葉を使えるようになったの?」

「全然使えとらんじゃないか!?」


 あれ?


「だが、そうだな。他にと言えば……ストレッチ王国の方々なんかはどうだろうか?」

『てぷgらいりbじぇあいらぅぬmれぁどsぷぶえらせるぢぉくふぃばさぐぬtヴぃらヴんみrぺりごうき。』

「うんうん。へぇー? そうなんだ。」

「勇者よ。何と言っている。」

「人間なら一度に十万人と仲良く出来るそうです。十万人と仲良くなったら『さぐぬtヴぃらヴんみr』に帰るって言ってます。」

「勇者よ。何を言っている。」

「え?」


 もしかして、さぐぬtヴぃらヴんみrを知らないのかな?

 公爵sまhあ偉い人dぁし、物sりだとおmっtんだけどnAァ……。
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