戦争から帰ってきたら、俺の婚約者が別の奴と結婚するってよ。

隣のカキ

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外伝:メイド喫茶でバイトテロしたら異世界召喚されました。しかも死に戻り特典付きで。

第14話 お礼の品

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 碧ちゃん、レイベルト、エイミー、サクラ……皆本当にありがとうございました。

 皆のお蔭で私は終わりの見えない絶望の旅を経験する事なく生涯を終える事が出来そうです。

 モリちゃんにも事情を説明したら歴史の改変が起こらないようにお礼をしたら良いと提案され、皆が帰還した後に手紙とお礼の品が渡るよう代々の王に伝える事にしました。

 この手紙を読んでいるという事はきっと無事に受け取れたのでしょう。

 最悪受け取れていない場合も想定し、帰還してから五年以上受け取りが確認出来ない時はナガツキ家の誰かに目掛けて手紙と箱が猛烈な勢いで飛んでいくよう設定しましたので気を付けて下さい。

 私の魂と記憶を持つエイミーがいる以上は下手な物では意味がないと思い、皆がいる時代には既に絶滅してしまった動物や植物などから採取した素材で楽しい物を作りました。

 誠にささやかなお礼ではありますが、受け取ってもらえたら幸いです。

 皆が大喜びしている姿が目に浮かんできます。

 もう会う事は出来ないけど、皆と心はいつも一つだよ! バイバイ!


追伸:説明書を同封しておきました。良く読んで、お友達に迷惑がかからないよう節度を守って楽しく使って下さい。















「という事だそうです。」


 気を付けて下さいって……猛烈な勢いで飛んで来るという事は手紙を読んでいない場合だろうに。

 存在すら知らない物にどうやって気を付けろというのだろうか?


「なあレイベルトよ。」

「何でしょう。」

「どんな物か気になる。是非ここで箱を開けてくれないか?」


 望めば大抵の物は手に入る大国の王といえども、伝説の勇者が作った品は気になるのだろう。


「勿論です。それでは……。」


 箱を開けると、中には五本のステッキ?が入っていた。

 サクラがマジナガムーンキャットに変身した後使うステッキに似ているな。


「こ、これは……。」


 王はステッキを見るなり驚愕し、震えている。

 どういう反応だ?


「欲しい……。」

「はい?」

「レイベルトよ。もし良ければ、俺に一本くれないか?」

「まぁ、良いですけど。」


 何故か五本あるしな。

 それにしても、王がこんな物を欲しがるなど思いもしなかった。


「有難い! これは王家の持つどんな宝よりも価値があるぞ! イットリウム王家の家宝にしよう。」


 やけに嬉しそうだが、何故そんなに有難がるんだ?


「随分と嬉しそうですね。」

「当然だ。伝説の勇者は晩年、可愛い魔法のステッキを持って活躍したのだぞ。そんな勇者が自ら作ったステッキに価値があるのは自明の理。」


 伝説の勇者にそんな話なんてあったか?


「王様。私は初耳なんですけど、その話って有名なんですか?」


 アオイも俺と同じ疑問を抱いたらしい。

 まぁ、当然の疑問だ。

 伝説の勇者サクラが魔法のステッキを所持していたなんて話は聞いた事がないのだから。


「勇者殿、何を言っている? 子供でも知っている程有名な話だぞ。元々イットリウム王国では勇者が使用した魔法のステッキの劣化版を作って他国に輸出する産業が盛んではないか。」

「え? 初めて聞きましたけど。」


 どういう事だ?


「お母さん知ってる?」

「私も知らないわ。」


 少なくとも俺達四人は知らない。

 だが王は有名な話だという。


「ナガツキ大公家ともあろう者が国の産業を忘れるのはどうかと思うぞ? お前たちが大公家になった経緯とて、かつてストレッチ王国が魔法のステッキ製造の権利を巡って戦いを挑んできて、これを打ち破ったからだろう。」

「は?」


 全然意味が分からん。

 ストレッチ王国が戦争を仕掛けてきたのは侵略が理由だったはずだ。

 決して、魔法のステッキ製造の権利を争ってなどというどうしようもない理由ではない。


「歴史が……。」

「変わってるね。」

「えぇ。間違いないわ。」


 歴史が変わっただと?


「それはマズいんじゃないか?」

「マズい……のかは分からない。どう影響したのか予想もつかないからね。」

「歴史が変化するとは不可解だな。歴史が変わったのなら、お前たちがそれを認識出来るとは思えないが?」


 言われてみればその通りかもしれない。

 流石に王をやっているだけあって、俺とは違ってすぐに色々考えつくようだ。


「上手く説明は出来ませんが……過去に戻った事で、私達は歴史改変の影響を免れたのではないかと。」

「成る程。そういう事もあり得るのか? まぁ、勇者殿が言うのならばそうなのだろう。それよりも説明書を読んでみてくれ。どんな使い方をするのか気になって仕方がない。」

「では再び俺が。」


 箱の中に入っていた説明書を開き、読み上げる。









『商品内容』

商品名:オールワンハートロッド 型番:AOH-001WH

説明
1.ステッキを振ると、動きに合わせて光ったり音が出たりするよ!
2.魔力を込めると大きなビームが出るよ!
3.「お願い。~の姿を見せて。」と言うと、可変式だから色んな武器に変形するよ!
4.殺傷設定のオンオフ切り替えが出来るから、相手を傷つけたくない時はオフにしてね!
5.恐竜が本気で蹴っても壊れないよ! むしろ恐竜の足が壊れるから気を付けて!
6.音声認識を搭載してるから色々と試してみてね! 思わぬ機能があるかも!?

※当商品は限定生産品です。今後如何なる場合でも再生産は致しかねます。当商品は勇者桜の力で振り回しても壊れないようには出来ていますが、万一動作不良等があった際には予備を一本入れていますのでそちらをお使い下さい。尚、この商品における全ての権利は桜=イットリウムに帰属します。コピー商品を防ぐ措置として、分解して構造を真似て作られた物は半径数キロに渡り爆発する仕組みとなっていますことを予めご了承ください。





「何とも高性能なステッキだな。物騒過ぎる。」

「では俺が引き取りましょうか?」

「それはダメだ。イットリウム王家の家宝にする。」


 物騒とは分かっていても、手放したくない程魅力的な品だという事か。

 歴史改変の影響が魔法のステッキだけにとどまっていれば良いのだが。


「王様ぁ、試してみても良いですかぁ?」

「マジナガムーンキャットなる格好で遊びたいという事か? 良いだろう。」


 サクラは上目遣いで品を作り王に問うと、王はあっさりと許可を出す。案外美少女に弱いのかもしれん。

 サクラはサクラでうずうずして我慢できないらしい。なんやかんやで年頃の娘。まだまだ遊びたいという事なのか?

 ジャイン王も快諾してくれた事だし、偶には羽目を外すのも悪くはない……か。


「最近有名な盗賊団のアジトが分かったのだ。そこにビームとやらを撃ってみてくれ。」

「はい!」


 王は地図を取り出し、王都付近の森にアジトがあるのだとわざわざ説明してくれた。


「では行こうか。」

「ジャイン王も行くのですか?」

「当たり前だろう。効果を見てみたい。」

「ですが護衛も連れずにとなりますと……。」

「ここに世界最強の四人が揃っているではないか。」


 そうかもしれないが、護衛するとなればまた別の難しさがある。


「しかし王よ……。」
『音声認識完了。座標、SW-0030097051Cに向けて発射します。所有者は魔力を準備して下さい。』

「「「「「え?」」」」」


 ステッキが喋った。


「桜ちゃんの事だから、追尾機能とかあるのかもね。」

「そうなのか?」

「うん。」


 アオイは勇者サクラと従姉妹だから色々と察する事が出来るのかもしれない。


「えっと、じゃあ……魔力を込めてみるね。」


 サクラは部屋の窓まで移動し、俺が教えた剣術の構えを取ってステッキを振りかぶった。

 動きに合わせてステッキが光りながら不思議な音を奏でている。


「ナガツキパワーは伊達じゃない! マジナガムーンマックスパワー!」


 サクラが信じられない程恥ずかしいセリフを叫ぶと、ステッキからはブオンブオンとやけに不気味な音が発せられ、室内が無数の魔法陣に埋め尽くされる。


「待て。これはマズいんじゃ……。」
「いっけええええええーーーー!!!」


 俺の制止を無視したサクラがステッキを振り、ステッキからはとんでもない光量の魔法が放たれた。


 ドグゥオッッッ!!!!!


 と激しい音を立て、魔法?ビーム?は森の方角と思われる場所へと一直線に伸びて行く。

 窓どころか壁ごとぶち破られている。

 呆然とその様子を見ていた俺達だったが、暫くすると森の方角には大きなキノコ雲が出現し、更に時間差でここまで轟音が響いてきた。


「……レイベルトよ。」

「はい。」

「森、消滅したような気がするのだが?」

「えっと……そうかもしれません。」


 辺りが沈黙に包まれる。


「今日の事は俺達五人の秘密にしようと思うがどうか?」

「そ、そうですね。」

「……はい。」

「私も……それが良いかなぁーなんて……。」

「私は何も見てません。」


 イットリウム王家とナガツキ大公家に新たな密約が出来た瞬間だった。
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