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27 対峙する2人
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ばさり、と羽ばたく音。
悠々と飛んできたそれは、ゆったりとサディシャの肩にとまる。
大きな鱗に被われたトカゲに、コウモリのような羽をつけた、サディシャのテイム。
「そろそろ諦めてくれないかい?」
笑いかける。
強情を張る子供に呆れる大人のような、サディシャ。
嫌悪と恐怖が入り混じった表情で怯えるサラァテュ。
異様な光景に、クァイリはサディシャの後ろで立ち尽くしていた。
「…やはり、お前の差し金か」
睨みつける。
その敵意に満ちた視線からは、恐怖も感じ取れた。
あまりにも違う反応に、クァイリは命の恩人に対して気味の悪さを感じる。
「久々の食事はどうだったかい?」
にこりと、意地悪い笑みを浮かべる。
どこか怒っているようにも見える、その微妙な笑み。
クァイリはその皮肉に抵抗を示すが、口には出さない。
「………黙れ」
「君自身はどうしようと、本能足るべきものは逆らえないからねぇ」
一層,殺意がこもった視線に,言葉を重ねる。
なぜ、こんなにも堂々と相手を挑発できるのか不思議に思うクァイリ。
と同時に、サラァテュが攻撃しないことに気がつき、現状の違和感を知る。
「まぁ、もう少しでどうにかなると思うから、のんびり待っていてね」
にこりと、笑う。
能面のような作り物の笑みには、傍目にも凄味があることが分かった。
目に見えて気圧されているサラァテュは、歯を食いしばって肉塊を操る。
しかし、びちゃ、と水っぽい音と共に床に落ちる。
「無理はダメだよ 体に良くない」
「…黙れ」
サディシャから遠く離れたところで落ちた肉塊。
力なく自分の方へ戻る肉片を眺めながら、辛うじて呟く。
震えているのは、怒りか、それとも別の感情か。
「次、会う時が楽しみだよ」
ニヤリと笑う。
踵を返し、歩き始めるサディシャ。
無防備な背中を、歯を食いしばりながら見つめるその姿は、ひどく憐れに見えた。
(………単なる研究対象、というわけでもない)
肩越しにぼうっと眺めていたクァイリは、妙に冷静な頭でそう感じる。
少し遅れて、こちらに近づいてくるサディシャに焦点を合わせる。
笑っていた。
「さぁ、帰ろうか」
すれ違いざま、優しく語りかけてきた。
友人を奪われ絶望している人には、縋りつきたくなるくらい、心地よいものだった。
多少,冷静になっていたクァイリにはそれが分かり、ぞっと恐怖させた。
ディエントがあそこまで無条件に信じて心酔していた理由が、良く分かった。
目を逸らすように、頷いて、後に続く。
振り向く寸前、サラァテュの方を窺う。
俯いており、表情は見えなかった。
何かをブツブツと呟いてた。
床に落ちている肉片は、ゆっくりと肉の海へ還り、肉の海は少しずつ天井へ登っていく。
それでも尚、一本の糸のようにサラァテュの背中には、肉塊が降りていた。
見えない、背中。
(…一体,どうなっているのだろうか)
その感想を最後に、クァイリは考えるのを止め、後ろについて部屋を出ていった。
悠々と飛んできたそれは、ゆったりとサディシャの肩にとまる。
大きな鱗に被われたトカゲに、コウモリのような羽をつけた、サディシャのテイム。
「そろそろ諦めてくれないかい?」
笑いかける。
強情を張る子供に呆れる大人のような、サディシャ。
嫌悪と恐怖が入り混じった表情で怯えるサラァテュ。
異様な光景に、クァイリはサディシャの後ろで立ち尽くしていた。
「…やはり、お前の差し金か」
睨みつける。
その敵意に満ちた視線からは、恐怖も感じ取れた。
あまりにも違う反応に、クァイリは命の恩人に対して気味の悪さを感じる。
「久々の食事はどうだったかい?」
にこりと、意地悪い笑みを浮かべる。
どこか怒っているようにも見える、その微妙な笑み。
クァイリはその皮肉に抵抗を示すが、口には出さない。
「………黙れ」
「君自身はどうしようと、本能足るべきものは逆らえないからねぇ」
一層,殺意がこもった視線に,言葉を重ねる。
なぜ、こんなにも堂々と相手を挑発できるのか不思議に思うクァイリ。
と同時に、サラァテュが攻撃しないことに気がつき、現状の違和感を知る。
「まぁ、もう少しでどうにかなると思うから、のんびり待っていてね」
にこりと、笑う。
能面のような作り物の笑みには、傍目にも凄味があることが分かった。
目に見えて気圧されているサラァテュは、歯を食いしばって肉塊を操る。
しかし、びちゃ、と水っぽい音と共に床に落ちる。
「無理はダメだよ 体に良くない」
「…黙れ」
サディシャから遠く離れたところで落ちた肉塊。
力なく自分の方へ戻る肉片を眺めながら、辛うじて呟く。
震えているのは、怒りか、それとも別の感情か。
「次、会う時が楽しみだよ」
ニヤリと笑う。
踵を返し、歩き始めるサディシャ。
無防備な背中を、歯を食いしばりながら見つめるその姿は、ひどく憐れに見えた。
(………単なる研究対象、というわけでもない)
肩越しにぼうっと眺めていたクァイリは、妙に冷静な頭でそう感じる。
少し遅れて、こちらに近づいてくるサディシャに焦点を合わせる。
笑っていた。
「さぁ、帰ろうか」
すれ違いざま、優しく語りかけてきた。
友人を奪われ絶望している人には、縋りつきたくなるくらい、心地よいものだった。
多少,冷静になっていたクァイリにはそれが分かり、ぞっと恐怖させた。
ディエントがあそこまで無条件に信じて心酔していた理由が、良く分かった。
目を逸らすように、頷いて、後に続く。
振り向く寸前、サラァテュの方を窺う。
俯いており、表情は見えなかった。
何かをブツブツと呟いてた。
床に落ちている肉片は、ゆっくりと肉の海へ還り、肉の海は少しずつ天井へ登っていく。
それでも尚、一本の糸のようにサラァテュの背中には、肉塊が降りていた。
見えない、背中。
(…一体,どうなっているのだろうか)
その感想を最後に、クァイリは考えるのを止め、後ろについて部屋を出ていった。
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