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31 語らない手紙
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──拝啓、アンダス先生。
少し汚れた封筒が私の元に届いた時、声が震えそうになるほど後悔した。
やはり、行かせるべきではなかったと、強く悔やんだ。
私のテイム、オゥルを失ったような,あの喪失感。
年甲斐もなく、背筋に冷たいものが走った。
──研究内容を薬水に絞ってみようと思います。
何故,どうして。
研究については語りたがるあの子にしては、そこが書かれていないことが不自然だった。
大量に持っていった紙で足りなければ、葉に書いてでも送ってくるような子なのに。
──ディエントさんの件は、一段落しました。
仇討ちに,一段落なんてあるのだろうか。
そう言いたくなるくらい、あの子は嘘はつけないと実感する。
──アンダス先生に紹介してもらった女史に合いにいこうと思います。
旅の途中、耳にしたクロニという女史だと思うのですが、合っているでしょうか?
クロニ。
聞き覚えのない名前だ。
しかし、あの人らしい名前とも言える。
多分,間違いはないだろう。
本棚に視線を向け、ため息をつく。
──時に、もしかするとサディシャという名の男性が訪ねてくるかもしれません。
ぴく、と。
眉を顰めて、手紙を手に取る。
その短い手紙の中で、もっとも内容が多い部分。
──あまり自信はないのですが、私の所見では良い研究者ではないと思います。
ディエントさんの件にも関わっているようなのですが、詳しいことは聞けず
終いでした。
聞けず終い。
ディエントさんの件。
良い研究者ではない。
(これは…、思っていた以上に)
ひどい状況になっています。
あの子の事でしょうから、分かった上で踏み込んでいるのでしょうけど。
ただ、それよりも…
──特に,学生と接触するのは、望ましくないと思います。
学生と接触。
本当に,嫌な予感しかしませんね。
(………すいません,クァイリ)
慌てて椅子から立ち上がるが、思ったように体は動かない。
こういう所で年齢を感じてしまう。
よろめきながらも、部屋を出る。
(……もう一晩、早ければ、)
中庭へ向かう。
まだ休憩時間中のはずなので、学生たちがたくさんいるはずです。
あの口ぶりならば、おそらくそこにいるでしょう。
──では、また進展がありましたら、連絡します。
中庭に着く。
息を整えながら,見回す。
「どうかしたんですか、アンダス先生」
学生がこちらにやってくる。
少し,不安そうな表情になっていた。
一息で息を吐ききり、表情を和らげる。
「いいえ それより、今朝方こられた旅人さんは、いまどちらに?」
「少し前に広間にいきましたよ」
ありがとうございます、と。
いつも通りの顔で言えただろうか。
私は走りそうになる自分の足を押さえながら、踵を返した。
少し汚れた封筒が私の元に届いた時、声が震えそうになるほど後悔した。
やはり、行かせるべきではなかったと、強く悔やんだ。
私のテイム、オゥルを失ったような,あの喪失感。
年甲斐もなく、背筋に冷たいものが走った。
──研究内容を薬水に絞ってみようと思います。
何故,どうして。
研究については語りたがるあの子にしては、そこが書かれていないことが不自然だった。
大量に持っていった紙で足りなければ、葉に書いてでも送ってくるような子なのに。
──ディエントさんの件は、一段落しました。
仇討ちに,一段落なんてあるのだろうか。
そう言いたくなるくらい、あの子は嘘はつけないと実感する。
──アンダス先生に紹介してもらった女史に合いにいこうと思います。
旅の途中、耳にしたクロニという女史だと思うのですが、合っているでしょうか?
クロニ。
聞き覚えのない名前だ。
しかし、あの人らしい名前とも言える。
多分,間違いはないだろう。
本棚に視線を向け、ため息をつく。
──時に、もしかするとサディシャという名の男性が訪ねてくるかもしれません。
ぴく、と。
眉を顰めて、手紙を手に取る。
その短い手紙の中で、もっとも内容が多い部分。
──あまり自信はないのですが、私の所見では良い研究者ではないと思います。
ディエントさんの件にも関わっているようなのですが、詳しいことは聞けず
終いでした。
聞けず終い。
ディエントさんの件。
良い研究者ではない。
(これは…、思っていた以上に)
ひどい状況になっています。
あの子の事でしょうから、分かった上で踏み込んでいるのでしょうけど。
ただ、それよりも…
──特に,学生と接触するのは、望ましくないと思います。
学生と接触。
本当に,嫌な予感しかしませんね。
(………すいません,クァイリ)
慌てて椅子から立ち上がるが、思ったように体は動かない。
こういう所で年齢を感じてしまう。
よろめきながらも、部屋を出る。
(……もう一晩、早ければ、)
中庭へ向かう。
まだ休憩時間中のはずなので、学生たちがたくさんいるはずです。
あの口ぶりならば、おそらくそこにいるでしょう。
──では、また進展がありましたら、連絡します。
中庭に着く。
息を整えながら,見回す。
「どうかしたんですか、アンダス先生」
学生がこちらにやってくる。
少し,不安そうな表情になっていた。
一息で息を吐ききり、表情を和らげる。
「いいえ それより、今朝方こられた旅人さんは、いまどちらに?」
「少し前に広間にいきましたよ」
ありがとうございます、と。
いつも通りの顔で言えただろうか。
私は走りそうになる自分の足を押さえながら、踵を返した。
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