メタルヒーロー、異世界を征く!

ネコヅキ

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一 メタルヒーロー、界を渡る。

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 タブロード大陸の最東端にエストリアという島が浮かんでいた。

 北海道を二つ並べても余裕で入る大きさのその島は、大陸の住人のなかには滅びゆく島と呼ぶ者もいる。邪悪な怪物どもが人々の生活圏を脅かし、何者をも寄せ付けぬ魔の領域が各地に存在するがために。そして、水平線の向こう側に地獄へ通じると云われる大瀑布があるがゆえに。エストリアは日々、そこへ向かって動いているのだとまことしやかに囁かれていた。

 そのエストリアの南東部にマーテルという町がある。大瀑布に二番目に近い位置に在るこの町は、北に険しい山々がそびえ立ち、そこから齎される良質な湧き水は洗練された酒の原料となり、鬱蒼と茂る深い森で採れる木材はコクの深い酒を作るのに役立っている。そんな酒造が主産業のこの町の近くで異形としかいえない者が太い木の幹の陰から先を窺い見ていた。

 金属らしき物で出来た鎧には肌が露出している部分が全くなく体にピッタリとフィットしている。姿は全身鎧のフルプレートメイルにも似ているが、その鎧の所々には青や白、赤といった薄い光が隙間から外へと漏れている。頭部も同様に肌の露出は全くなく、隙間から光が漏れる兜でスッポリと覆われている。どう見ても怪しさMAXの風貌だ。

(驚いた……ゴブリンよね、アレ)

 鎧の中の人がそう判断する。その者の思う通り、約五十メートル先に居る生物はゴブリンである。ボロボロの腰布のみを身に纒い、緑色の肌を晒している。その手には拾ったか奪ったかすらも分からない錆びた剣の様なモノを握っていた。

(このハリボテのはずのスタースーツが機能している事にも驚いたけど、まさかゴブリンをこの目で見る日が来ようとはね……)

 スタースーツとは今現在着ている鎧の名前だ。星の生命活動エネルギーを凝縮して作り上げた宇宙空間でも活動可能なスペーススーツ。と、公式には記載されている。そのスレンダーな見た目からは想像もつかないような武装が多く内蔵されていて、それはさながら洋画のアイア◯マンの様だ。それもそのはず、アイアン◯ンのデザインを手掛けた人物がゴーギャンをデザインしているとの噂があり、公式もそれを否定していない。

 本家アイ◯ンマンの様に、各パーツに内蔵された武装を用いて宇宙海賊ブロズオマーダーの野望を阻止する正義の使者。それがこの異形なものの正体であり、、日曜日の朝。通称ニチアサの超人気番組、『宇宙捜査官ゴーギャン』のコスチュームだ。そしてその中の人。ゴーギャンのスーツアクターをしているのが證誠寺魔魅しょうじょうじまみである。

 證誠寺魔魅は現在二十三歳。スレンダーな体型で胸があまりないのが悩みだが、だからこそスーツアクターとして大成したといっても過言ではない。毎日の訓練は片時も欠かさず、程よくついた筋肉は監督の要望に応えるだけの動きを見せる。そして、男では出し得ない華奢な体はスーツの外の人である俳優達と近しいものがある。それが彼女の人気の一つであり、演出家達も『とりあえず彼女を採用しておけば間違いない』と言わしめる人物でもある。

 その彼女が、ニチアサの超人気番組。『宇宙捜査官ゴーギャン』の収録中の事故により、爆破の聖地。と呼ばれる栃木県の某所から突如として森の中に転移をしてしまった所から端を発する。採掘場の岩だらけの風景から突如として深い森の中に移動をした事で驚き、ただの着ぐるみでしかなかったコスチュームが公式設定通りに動き出した事で二度目を剥いた。

(アニメの設定じゃ非常に好戦的って記載されてたけど……)

 ファンタジー系アニメとのコラボ企画。ジョイントオペレーションを過去に行っていた事もあり、魔魅はファンタジーの知識を一通り学んでいる。その設定資料の中にはゴブリンの事も書かれていた。

(どうしよう。声を掛けてみようか。スーツが機能しているのなら公式設定通りに翻訳機能も使えるはずだけど……)

 ゴーギャンの活動域は全宇宙という設定になっている。その中には、悪に属する種族だけでなく好意的な種族も存在している。もちろん種族が違えば扱う言語も異なり多様な種族の言語を理解するために翻訳機能が使用される。怪人などが発した声がお茶の間で聞き取れるのは、この翻訳機能によるものなのであると公式では謳っている。

(よし。話しかけてみよう)

 魔魅は意を決してその姿をさらす。そして一つ、二つ。と、深呼吸をして息を整えると、言葉を発した。

『あの、すみません』
「ウキィッ?!」

 女性の柔らかな声でなく、男性的な野太いイケボが発せられた。どうやら番組内でイケメン俳優が話す時の様に機械的に音声変換されている様子だった。その事に魔魅も驚いたがそれ以上に驚いたのは声を掛けられたゴブリンの方だった。

 空腹で倒れそうな時に、地面を這う美味しそうな虫を見つけて巣穴を夢中で掘り返していたところに突然声を掛けられたのだ。飛び上がる程びっくりしたゴブリンは不機嫌そうに眉間にしわを寄せながら振り向き、そしてその動きが固まった。

「ウ、キ?」

 驚かすんじゃない。と、文句の一つも言ってやろうと振り返った先に、金属っぽい鎧を身にまとってピカピカと光っている怪しげな何かが立っていれば、ゴブリンとて目玉をくりくりに見開いて驚かざるを得ない。

「グギヤ?」

 どなたですか? ゴブリンは首を傾げて誰何するも、魔魅にはそれが分からなかった。

 少しの間沈黙が流れ、さわりさわりと風が草木を撫でていく。

『あの……』

 魔魅が一歩を踏み出すと、ゴブリンはビクッと身を震わせて一歩下がる。ダメだ。勝てない。そう決断したゴブリンの行動は早かった。踵を返して走り出し、緑色の肌は下草と同化して瞬く間に見えなくなってしまった。魔魅も呼び止めようと手を伸ばすも声までは出す事が叶わなかった。それほどの一瞬の出来事だった。

『翻訳機能が働いてない?』

 スーツのグローブを眺めながら呟く魔魅。

(ウキとかグギャとかって言葉じゃないのかしら……。追いかけてもう一度話をしてみる? 今ならセンサーで追えるし……だけど、怯えていたっぽいしなぁ……)

 バイザーには動体センサーが内蔵されている。そのレーダーには、先ほど逃げたゴブリンの反応が残っていた。その反応が一定の距離を離れると、今度は二つ三つと増えていく。

『あれ? 反応が増えた?』

 合計六つに増えた動体反応は今度は真っ直ぐこちらに向かってやって来る。ガサリガサリと草をかき分けて再び姿を現したゴブリンのその手には、手入れなぞロクにしていない錆びに錆びた剣を握っていた。

『え? ちょっと待って下さいっ!』
「ゲギャァッ!」

 言葉が通じない為、魔魅の制止の声も届かない。ゴブリン達は彼女を略奪の対象と決めて一斉に襲いかかった。手に持つ錆びた武器をある者は振り下ろし、ある者は横に薙ぐ。その度に黒板を爪で引っ掻いた様な耳障りな金属音が森に響き渡った。

『ちょっ、やめっ!』

 テレビの時の様な派手な火花は飛び散らないが、剣が触れた箇所から僅かに火花が飛ぶ。星の生命エネルギーで作られたコンバットスーツにはゴブリンの持つ錆びた刃は通用しないが斬られたり突かれたりの衝撃は多少なりとも魔魅には届いている。その中で魔魅は戦うか否かの選択を迫られていた。

(クッ。結局ゴブリンは敵なのね。致し方ない!)

 ガギンッと左腕の籠手の部分で振り下ろされた錆びた剣を弾き返し、腰を落として右手を握る。

『フィストオン!』
『フィストオン。ウェポンスキルレディ』

 サポートAIの復唱音がヘルメット内に響くと同時に拳にナックルが装備され、ナックルから淡い光が漏れ出した。

『メテオインパクト!』
『マキシマムアタック』

 メテオインパクトはゴーギャンの必殺技の一つだ。地殻エネルギーを右拳に集中させ、後部スラスターで瞬時に加速し、質量の増大した拳を相手に叩き込む。叩き込まれた相手は空の彼方へと吹き飛んでいく。しかし、全部が全部吹き飛んでいては番組が成り立たないので吹き飛ぶのは下級戦闘員のみである。そして番組で用意された戦闘員でもないゴブリンはというと、増大されたその質量に耐えきれるはずもなく、体は爆散して弾け飛んだ。

『ゲッ!』

 紫色の体液が雨の様に降り注ぐ光景に魔魅は思わず変な声をあげた。

(しまった。ついいつもの調子で技を……)

 メテオインパクトは番組内でも使用頻度の高い技だ。下級戦闘員とのバトルにおいてはまずこの技が使用される。そして効果のない中級戦闘員が出てくると別の武器に切り替える。

(な、ならこっちを)
『コアブレード』

 右手の小手の内側が開き、一本の筒が手の中へと滑り込む。その筒をグッと握ると、長さが八十センチ程度の光の刃が現れた。

『コアブレードオンライン』

 サポートAIの音声がヘルメット内に響いた。このコアブレードはゴーギャンが常備する武器の一つで、惑星のコアエネルギーを収束した光剣。公式設定ではあらゆるものを切り裂くとされる。しかし、番組内でそんな事をしてしまってはちびっ子達が泣き出すこと請け合いなので斬っても火花が飛び散るだけである。そのコアブレードをブブブン。と振り回し、これなら手加減が出来そうだと思った魔魅は、足の幅を肩幅に開くとコアブレードを構えた。


 ☆ ☆ ☆


 マーテルの町から南西へ約半日。アムタリア王国の首都へと至る街道沿いに、ちょっとした休憩所が設けられていた。マーテルから首都へと赴く場合には最初の休憩場所であり、逆の場合には最後の休憩地となる場所だ。その広場の中央。北の山脈から湧き出た水が小川となって流れている広場の中央に、一つの人影があった。

 皮をなめして幾重にも重ねた軽量の鎧を着込み、ブーツは履かないどころか素足のまま。驚くべき事にその足には短い毛が生えて豹柄を作り出していた。この世に多数存在する亜人族の一つ、豹猫族ひょうびょうぞくという種族の特徴だ。見た目は豹と何ら変わる事はなく、しかし人と同じ様に二足歩行で歩くことも出来る。危険察知能力に優れていて敏捷性も高く、実際の豹と同じ速度で走る事が出来た。

「はぁ。生活費を稼ぐのも楽じゃないな」

 ナミルは小川に近づいて片膝を落とすと、腰に吊るした皮袋のフタを開けて小川に沈める。飲み水用の皮袋に水が吸い込まれていく様子を見ながら、田舎から出てきた事を後悔していた。

 ナミルはマーテルの北にある小さな村に生まれ、幼い頃に出会った冒険者に感銘を受けた。以来、冒険者になる為に研鑽を積み、近年になってギルドに登録をしたものの仕事が少なく実入りも少ない為に日銭を稼ぐので精一杯だった。

「このままじゃ、王都に行けるのは何年後になる事やら……」

 王都に行けば仕事はある。けれど王都に行く金が無い。王都に着くまでの十五日分の食料を買う為に毎日冒険者ギルドへ通い依頼を受けては少しずつ貯金をしてはいるものの、日々の宿代と食事代でそのほとんどが出てしまっていた。

「もっと稼ぎの良い依頼があればなぁ……」

 酒造が主産業のマーテルの町での主な依頼は薬草の採取だ。薬効成分が含まれた酒が飛ぶ様に売れる事から常設依頼として貼り出されている。しかし、薬草採取だけでは完全に赤字で、本来は何かのついでに受ける様な依頼だった。この深い森の中で僅かとはいえ黒字を出しているのは鼻が利く豹猫族だからこそといえた。

「ん?」

 ナミルの耳がピクリと動き警戒体制に入る。背筋を正して注意深く森を見渡し異音のする方向を探っていると、僅かばかりの金属音が耳に届いた。

「斬撃音? 誰かが戦っているのか?!」

 ナミルは水筒を仕舞うと金属音がした方向へと走り出す。初めは二足歩行で駆け出し、やがて四足での疾走に変わる。その姿はまさしく豹だ。

 下草を飛び越え、立ち木を右へ左へと交わして道なき道を疾走する彼女。やがて何者かが戦っている場所へと辿り着き、異様な光景を目の当たりにすると木の陰に息を潜めて窺い見る。

「な……鎧が戦っている?!」

 燻んだ銀色の全身甲冑フルプレートメイルには赤や青や緑などの淡い光が各所に見られ、不規則にピカピカと光っている。それだけでも十分に異様なのだが、さらに目を引くモノがその手に握られていた。

「な、なんだ? あの光輝く棒は……」

 光る棒が動く度にブブン。ブブブン。と、音を立て、その棒がゴブリンに当たると何の手応えもなく通り過ぎる。棒が通り過ぎたゴブリンは真っ二つになって地面に転がった。

「な……武器なのかアレ。なんちゅー斬れ味だ。ギルドのバラシヤが使っているナイフなんて目じゃねーぞ」

 通称バラシヤ。冒険者が持ち込んだ魔物を解体して素材を取り出す職業の事だ。そのナイフの切れ味は鋭く切れない物は無いとされる。マーテルの町にも常駐はしてはいるが、素材となる魔物を倒せる様な冒険者は常駐していない為に最近は暇だったりする。

「にしても、なんて綺麗な剣閃だ。でも、なんか無駄な動きが多いな……」

 ゴブリンの剣を弾き、光刃をグルンと一回転させてから袈裟懸けに振り下ろす。駆け出し冒険者のナミルはもとより、ベテランの冒険者すらでさえもやらないような事を鎧の装着者はやっている。無駄な動きは隙を作りやすく、体幹のバランスや反撃タイミングなどを失いかねない事態になり冒険者にとってそれは死に繋がる。しかし魔魅の場合、こういった無駄な動きはエンターテインメントを極めた結果の動きだったりする。監督や演出家との話し合いで、こうした方が良くなる。と指導を受け、撮影に臨んでいた為に魔魅の体に染み込んでしまっていた。だがそれも、ゴブリンの首を刎ねた途端に動きが鈍り始めた。

「あっ!」

 ゴブリンの首を刎ねた際、何らかのアクシデントがあった事が見てとれた。流れる様に動いていた光刃がひょろひょろと波打ち始め、片腕はしきりに目を擦っている。相手を倒す動きは今やただ牽制するだけの動きへと変わり、その光刃を掻い潜ったゴブリンが鎧に襲い掛かる。

「危ない!」

 ナミルはそう叫び、駆け出していた。


 ☆ ☆ ☆


 コアブレードを構え、ゴブリン達と相対する魔魅は震えていた。魔魅にとってこれが初めての実践。さっきのはシステムが半自動的に行ったに過ぎない。番組では幾度となくリハーサルを行ってから撮影をしている。それでも演技が上手くいかなかったり、立ち回りが悪かったりとテイクを重ね、監督のOKが出たものがお茶の間のちびっ子達に届けられる。しかし、いざ実践となるとやり直しは利かない。NGイコール死。そのプレッシャーが魔魅に襲い掛かる。

(だだだ、大丈夫。訓練は何百何千とやってきた。殺陣の師匠からも免許皆伝をやる日も近いと言っていた。私なら、やれるわ)

 自らを奮い立たせ、師匠の師匠。そのまた師匠から受け継いできた剣術を披露する魔魅。しかし、実践による緊張からかその剣の動きは拙く見るに耐えない。そんな素人同然の剣を掻い潜り、ゴブリン達の刃はスーツに届き火花を散らす。

『なんでっ?!』

 免許皆伝間近といわれた剣技をもってしても躱されいなされ事態は進まない。むしろゴブリン達の方が魔魅の動きに慣れ始め、懐に潜り込んでは一撃を当てて離脱を繰り返し、魔魅はそれ目掛けて当たるはずのない剣を振るう。事態が急変したのは草の根に足を取られたゴブリンを上下に分断した後だった。

(私、一体何をして……)

 恥ずかしい。免許皆伝の一歩手前まで上り詰めた自分が、入門したてで何も分かっていない素人と同様の技を使っていた事に。師匠から学んだ事を一つも活かせていなかった事が。そしてここから魔魅がスーツアクター業界のトップクラスの実力を発揮する事となる。

 短かった光刃から発する音がブアーンブアーンと長くなり、無駄が多かった動きも洗練され始めると、ゴブリン達も手も足も出なくなり押され始めた。しかし四体目のゴブリンの首を刎ねたのが不味かった。吹き出した緑色の体液はゴーギャンの頭部にベットリと掛かり、視界不良に陥ってしまった。

『しまった!』

 流れる様な剣閃は最初の頃に戻り、ひょろひょろと波打ちながら右へ左へと振る。斬る為の動きではなく近寄らせない様にする為の動きへと変わり、視野の回復を図るために外部情報をヘルメット内部へと伝える高性能カメラを左手で拭く。それを好機と見たのか、たった一匹となってしまったゴブリンは姿勢を低くして光刃をやり過ごすと、手に持つ剣を逆手へ構えて魔魅へと飛び掛かった。しかしその手に持った獲物は魔魅に届く前に何者かの介入によって防がれる。

 メギッ。視覚情報が閉ざされた魔魅の耳にもハッキリと聞こえた。骨が折れる鈍い音。自分のではない他人が発した音だ。

「ゲッ!」

 間近で聞こえたゴブリンの声。次いで離れた場所に何かが落ちた音。そして、ゴブリンではない何者かの気配。視覚は塞がれても探知機能は生きている。急接近してくる反応に魔魅は恐怖を覚えた。しかしそれは杞憂に終わる。

「大丈夫か?!」

 この世界に飛ばされて初めて聞いた言葉に安堵する。そして視覚情報が回復しバイザーに映し出されたその姿に魔魅は息を呑んだ。

 ケモ耳にネコ面。生えた体毛は黄色をベースとした豹柄を成してはいるものの豹というよりかはオセロットに近い。そんな風貌の生物が目の前に居るのだから驚かないはずがなかった。

『ひっ、豹?!』

 ブブン。とコアブレードを豹に向けて構える魔魅。ナミルは驚き後退る。そして両の手を魔魅へと向けた。

「まっ、まてマテ待てっ! おいらは敵じゃないっ!」
『喋った?!』

 動物が言葉を話すなんて事は魔魅の常識ではあり得ない。けれど目の前の豹はネコ科の特徴そのままでありながら流暢に言葉を話している。声帯どうなってんの? という疑問が湧き上がると同時に革製の鎧を着込んでいる姿を一目見て、ここがファンタジー世界である事を魔魅は再認識する。

『あ、あなたは一体何者……?』
「おいらはナミルってんだ。この先にあるマーテルって町で冒険者をしている者さ」
『町?! 近くに町があるの!?』
「あ、ああ」
『案内してくれない?!』
「わ、分かった! でもその前にその物騒な武器エモノを下ろしてくんねーか?」

 ナミルは出っぱなしの光刃を指差した。ゴブリンとはいえその体を苦も無く両断する程の切れ味を見せた武器だ。何かの拍子でスッパリといきかねない。魔魅は『ごめんなさい』とひと言謝り、コアブレードを収納していく。まず光刃が筒の中に引っ込み、そして筒は右腕の中に収納される。それを見て『一体どんな仕組みなんだ?』と、ナミルは疑問に思っていた。


 ☆ ☆ ☆


 豹猫族の亜人と部分的にチカチカと光る全身甲冑。誰がどう見ても目を引く異色の組み合わせが森を行く。木々の合間を縫って差した陽の光はナミルの鮮やかな豹柄を際立たせ、逆に木陰の闇はスペーススーツが放つ僅かな光が闇を微かに打ち払う。そんな二人の距離は微妙に離れていた。

「そ、そういやよ。アンタ一体何者でどこから来たんだ?」

 前を向きながらも後ろを気にするナミル。後ろから追いかけている魔魅は、自身がまだ名乗りを上げ得ていない事に気付いた。

『私の名前はゴーギャン。……あ』
「ご、ごーぎゃん?」

 スーツアクターといえども自身が登場してからのシーンの台詞は覚えていなければならない。その台詞を発する事で動きにリアリティが生まれ、メインの俳優である麻生亮あそうりょうが吹き替える際に感情移入しやすくなっている。

 その為、仕事外でもつい名乗りを上げてしまい赤面する事もしばしば。今も彼女は顔を真っ赤にしてイケボを発しながら女性の仕草で否定する。

『わ、私の名前は證誠寺魔魅しょうじょうじまみ。職業はスーツアクターよ』
「す、すーつあくたー?」
『えっと、スーツアクターってのはね……』

 魔魅はスーツアクターについて話すが、ナミルの頭に疑問符が浮かび上がっているのが分かると、見せた方が早いだろうと結論付けた。

『ちょっと待ってね。えっと……セパレート』
「なっ! なんだ!?」

 突然木々の影が打ち払われる。背後から押し寄せる光の奔流にナミルは驚き、手で光を遮る。その強烈な光が収まると、光があったその場所に一人の女性が佇んでいた。

「これが本当の私。今まであのスーツの中に入っていたの」
 
 実は着ぐるみを着ているだけなのだと魔魅はそう説明する。その直後に彼女は異変に気付いた。

 目の前にいるナミルは嬉しそうに語りかけている。けれど、魔魅はその言葉を理解ができない。犬か猫などの動物が鳴いているかの様だ。『どうして突然』と魔魅は思うも、その答えはすぐに分かった。

(もしかして、スーツを脱いだから?!)

 宇宙規模の警察組織に所属するゴーギャンには、多種多様な種族に対応した翻訳機能が備わっている。今現在、対応言語は数十万とも数百万とも云われているが、それでも宇宙は広く対応していない種族も多い。その場合には現地へ赴いて変身を解き、再度スーツを装着する事で惑星のコアに刻まれたその星の言語が宇宙警察のデータバンクにアップデートされるのである。

 その事を公式に記載されていた事を思い出した魔魅は、ナミルに両手の平を向けて落ち着くように促すと、彼女から距離を取る。そして両足を肩幅に開いて右拳を地面へと向け、ロープを引っ張り上げる様に天へと伸ばす。ここでコンバットスーツを着る為の台詞を言う。

「着装っ!」

 足元から天に向かって光の柱が立ち昇り魔魅の体を覆い隠す。光の柱が収まると、中からコンバットスーツに包まれた魔魅が現れた。

『宇宙捜査官っ! ゴーギャン参上っ!』

 今をときめく人気俳優、麻生亮あそうりょうのイケボで名乗りを上げると共に、監督や演出家らと話し合って決めたポージングを披露する。番組ならばここで「説明しよう」というナレーションが入り、ゴーギャンの変身シーンのスロー再生が始まるのだが流石にそれは省かれている。

 搭載AIによるシステムチェックが行われている最中、魔魅はスペーススーツの形状が変わっている事に気付いた。

『あれ? デザインが少し違うような……?』

 宇宙での活動も可能なゴーギャンのコンバットスーツは惑星のコアエネルギーを凝縮して創り上げられたものである。惑星ごとに様々な環境がある様に、ゴーギャンの姿もまた惑星ごとに変化する。今までのは地球のコアエネルギーで創られたスーツで、それを外してしまったが為にこの惑星の影響を受けたスーツに変わってしまっていた。だが使える機能は元のものと遜色は無いようで、搭載されているAIは変身直後の各部位のチェックを問題なく続けていた。

「すっげぇ! さっきのが本当のあんたか!」

 一体どうやってその鎧を着けたりしてるんだ? と、コンバットスーツを見つめるナミル。恐る恐る触ってみたり、スーツの感触を確かめてみたりしている彼女を見ながら、やっぱりスーツの機能だったかと思う魔魅。そして彼女はある事に気付いた。

(ちょっと待って。もしかして私、ずっとこの格好で過ごさないとイケナイ訳!?)

 スーツを脱いだら言葉が通じない以上は着っぱなしにするほかない。視聴者からの便りに「スーツって窮屈ではないんですか?」との質問があった事があり、「装着者に負担がかからない様に調整されています」との答えを公式は出しているが、そうはいっても四六時中着たままでは窮屈である事には違いなく、せめてヘルメットでも外せればとも思うのだが元の電装飾が付いただけのハリボテスーツならともかく、どうやらこれは外せない仕様になっている様子だった。

(この星の言語を学ぶしかないか……)

 幸い現地人であるナミルが居る。時間がある時にでも彼女から言葉を習うしかない。それまでの辛抱だと言い聞かせて、ナミルと共にマーテルの町へと向かった。
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農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

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