89 / 235
八十九
しおりを挟む
リリーカさんが言い掛けた言葉を遮り声を発したのは、件のオッサンでは無く、韓流俳優の様な顔立ちの若い男の人だった。
「貴方はフレッド様」
フレッド=アクラブ=ウォルハイマー。私を監禁し、拷問して殺したローザを捕縛してくれた人物だ。
「お久しゅう御座いますフレッド様」
リリーカさんは椅子から立ち上がってカーテシーを行う。うん、あのオッサンと対応が違う。分かる気がするけど。
「これはご丁寧に有難う御座います」
対するフレッドさんも、右手を肩に添えて深々とお辞儀をする。
「それで、こちらの御人は……おや?」
「こちらはカーン=アシュフォード様。豊穣祭の為に遠い所からいらしてくれた、私の婚約者ですの。カーン様。こちらは冠八位であらせるフレッド=アクラブ=ウォルハイマー様ですわ」
ジーッと私の顔を見つめるフレッドさん。バレるのではないかと冷や汗が止まらない。ともかく、紹介されてしまったのだから挨拶しない訳にはいかない。
「お、お初にお目に掛かります。私はカーン=アシュフォードと申します。どうぞお見知りおきを」
声でバレない様になるべく低く言葉を発する。
「ふむ。そうですか……貴方がカーン殿ですか。お噂はかねがね」
「噂……?」
「はい。爵位も持たぬ片田舎の貧乏貴族が、リリーカ様と婚約するなどとは生意気にも程がある。と、ある方が愚痴っておられました」
まあ、誰と言われなくても分かるな。
「アイツめ。許すんじゃありませんでしたわ……」
ボソリ。と呟いたリリーカさん。その顔は般若の様に怖い顔をしていた。
「ところでリリーカ様。この辺りで一人で歩いている子供をお見掛けしませんでしたでしょうか?」
「子供ですか……?」
「はい。歳は六つ程で、背丈は私の腰位。僅かに赤に染まった金色の髪を二つに束ねているのですが……」
うーん。ツインテールの女の子かぁ。見た覚えは無いな……
「いいえ。お見掛けしませんでしたわ。カーン様は如何です?」
「いえ、わた……コホン。ボクも見掛けてはおりません」
「そうですか……困ったな」
辺りを見渡しながら頭をボリボリ。と掻くフレッドさん。本当に困っている様子だ。
「その女の子はどなたのご息女ですの?」
「え? ああ。まあ、ある方としか言えません。その方の依頼で彼女の護衛として付いて来たのですが、見失ってしまって……」
「そうですの……もし、お見掛けしましたら衛兵詰所へお連れ致しますわ」
「それは非常に助かります。では、急ぎますのでこれで」
「はい。早々に見つかる事をお祈りしますわ」
「有難う御座います」
手を肩に添えてお辞儀をするフレッドさん。リリーカさんもカーテシーを行い、私も肩に手を添えてお辞儀をする。
「どんな理由かは存じませんが、この事は内密に致します。アユザワさん」
フレッドさんは頭を下げている私にソッと近付き、耳元でそう囁いた。正体バレてるぅ。
「貴方はフレッド様」
フレッド=アクラブ=ウォルハイマー。私を監禁し、拷問して殺したローザを捕縛してくれた人物だ。
「お久しゅう御座いますフレッド様」
リリーカさんは椅子から立ち上がってカーテシーを行う。うん、あのオッサンと対応が違う。分かる気がするけど。
「これはご丁寧に有難う御座います」
対するフレッドさんも、右手を肩に添えて深々とお辞儀をする。
「それで、こちらの御人は……おや?」
「こちらはカーン=アシュフォード様。豊穣祭の為に遠い所からいらしてくれた、私の婚約者ですの。カーン様。こちらは冠八位であらせるフレッド=アクラブ=ウォルハイマー様ですわ」
ジーッと私の顔を見つめるフレッドさん。バレるのではないかと冷や汗が止まらない。ともかく、紹介されてしまったのだから挨拶しない訳にはいかない。
「お、お初にお目に掛かります。私はカーン=アシュフォードと申します。どうぞお見知りおきを」
声でバレない様になるべく低く言葉を発する。
「ふむ。そうですか……貴方がカーン殿ですか。お噂はかねがね」
「噂……?」
「はい。爵位も持たぬ片田舎の貧乏貴族が、リリーカ様と婚約するなどとは生意気にも程がある。と、ある方が愚痴っておられました」
まあ、誰と言われなくても分かるな。
「アイツめ。許すんじゃありませんでしたわ……」
ボソリ。と呟いたリリーカさん。その顔は般若の様に怖い顔をしていた。
「ところでリリーカ様。この辺りで一人で歩いている子供をお見掛けしませんでしたでしょうか?」
「子供ですか……?」
「はい。歳は六つ程で、背丈は私の腰位。僅かに赤に染まった金色の髪を二つに束ねているのですが……」
うーん。ツインテールの女の子かぁ。見た覚えは無いな……
「いいえ。お見掛けしませんでしたわ。カーン様は如何です?」
「いえ、わた……コホン。ボクも見掛けてはおりません」
「そうですか……困ったな」
辺りを見渡しながら頭をボリボリ。と掻くフレッドさん。本当に困っている様子だ。
「その女の子はどなたのご息女ですの?」
「え? ああ。まあ、ある方としか言えません。その方の依頼で彼女の護衛として付いて来たのですが、見失ってしまって……」
「そうですの……もし、お見掛けしましたら衛兵詰所へお連れ致しますわ」
「それは非常に助かります。では、急ぎますのでこれで」
「はい。早々に見つかる事をお祈りしますわ」
「有難う御座います」
手を肩に添えてお辞儀をするフレッドさん。リリーカさんもカーテシーを行い、私も肩に手を添えてお辞儀をする。
「どんな理由かは存じませんが、この事は内密に致します。アユザワさん」
フレッドさんは頭を下げている私にソッと近付き、耳元でそう囁いた。正体バレてるぅ。
0
あなたにおすすめの小説
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
【完結】貧乏令嬢の野草による領地改革
うみの渚
ファンタジー
八歳の時に木から落ちて頭を打った衝撃で、前世の記憶が蘇った主人公。
優しい家族に恵まれたが、家はとても貧乏だった。
家族のためにと、前世の記憶を頼りに寂れた領地を皆に支えられて徐々に発展させていく。
主人公は、魔法・知識チートは持っていません。
加筆修正しました。
お手に取って頂けたら嬉しいです。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
【大賞・完結】地味スキル《お片付け》は最強です!社畜OL、異世界でうっかり国を改革しちゃったら、騎士団長と皇帝陛下に溺愛されてるんですが!?
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
【第18回ファンタジー小説大賞で大賞をいただきました】→【規約変更で書籍化&コミカライズ「確約」は取り消しになりました。】
佐藤美佳子(サトウ・ミカコ)、享年28歳。死因は、過労。連日の徹夜と休日出勤の果てに、ブラック企業のオフィスで静かに息を引き取った彼女が次に目覚めたのは、剣と魔法のファンタジー世界だった。
新たな生を受けたのは、田舎のしがない貧乏貴族の娘、ミカ・アシュフィールド、16歳。神様がくれた転生特典は、なんと《完璧なる整理整頓》という、とんでもなく地味なスキルだった。
「せめて回復魔法とかが良かった……」
戦闘にも生産にも役立たないスキルに落胆し、今度こそは静かに、穏やかに生きたいと願うミカ。しかし、そんな彼女のささやかな望みは、王家からの突然の徴収命令によって打ち砕かれる。
「特殊技能持ちは、王宮へ出仕せよ」
家族を守るため、どうせ役立たずと追い返されるだろうと高をくくって王都へ向かったミカに与えられた任務は、あまりにも無謀なものだった。
「この『開かずの倉庫』を、整理せよ」
そこは、数百年分の備品や資材が山と積まれ、あまりの混沌ぶりに探検隊が遭難したとまで噂される、王家最大の禁足地。
絶望的な光景を前に、ミカが覚悟を決めてスキルを発動した瞬間――世界は、彼女の「お片付け」が持つ真の力に震撼することになる。
これは、地味スキルでうっかり国のすべてを最適化してしまった元社畜令嬢が、カタブツな騎士団長や有能すぎる皇帝陛下にその価値を見出され、なぜか過保護に甘やかされてしまう、お仕事改革ファンタジー。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします
未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢
十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう
好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ
傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する
今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった
少し冷めた村人少年の冒険記
mizuno sei
ファンタジー
辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。
トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。
優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる