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一章 そうだ。龍に会いに行こう。
十 暗黒島と書いて……。
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黒龍の駄々の所為で、遙か南にある黒龍の棲家に行く羽目になったカリン達一行。シルビアやお店のマスターを拾う為、また、食料や装備を整える為、鉱山都市アスホルンへ立ち寄った時にドルワフ達が大騒ぎした事は割愛しまして、現在は空の旅人となっていました。約一万ルメトの高高度を、音速に近い速度で飛行中です。大気を汚すようなモノはありませんので、遠くまでよく見えています。
「うっわー。あれが水平線ってやつ? すっごーい」
遙か東方の緩やかなカーブを描く一筋の線を見たシルビアは、テンションアゲアゲで子供の様に燥ぎます。お店のマスターは、ドッカリと腰を据えて黙想していました。
「ねぇねぇ、エリザ。あれ何?」
シルビアが気になったモノを指差しながら、エリザ王女の肩を掴んで揺さぶります。しかし、エリザ王女はそれに応えず、首だけがカックンカックンと動いていました。黒龍が飛び立つ時には元気に悲鳴を上げていたエリザ王女も、現在は白目を剥いて黙想中のようです。時折、身体がビクンッ。と、反応し、生温かい液体を零しています。
「オムツも買ってくれば良かったでちね」
『着いたら私が綺麗にナメて差し上げますよ』
「良いから、とっとと急げ」
『急げと言っても、流石にアレは回避しないとダメでしょう?』
黒龍の言うアレとは、行く手を塞ぐように立ちはだかる大きな雲でした。
「当たり前だ。我々なら問題は無いが、ご主人様と、その他大勢が乗っているのだからな」
『仕方ないですね』
そう言って、黒龍は進路を東に向けました。
「ねぇ、カリン。アレって何なの?」
『アレは空の城ですよ。お嬢さん』
「空の城……?」
『あの中って、キモチイイんですよねぇ……。風が身体を揉み解してくれて、雷で血行が良くなるんですよ』
どうやら龍達は、積乱雲を健康器具扱いしているようでした。
「へぇ、そんなにキモチイイんだ」
『行ってみます?』
「「行かんでいい」」
カリンとミュウの声がハモります。色んなモノに耐性がある龍ならともかく、生身の人間がそんな所に入れば、ウェルダンどころか炭になる事請け合いです。
「内部は強風が吹き荒れて、雨や雷が侵入する者を撃ち落とす怖い所でちよ」
「ええっ!? そんな怖い所なの?!」
『まあ、たまーに雲の中に大きな城が在ったりもしますね』
「!?」
「へぇぇ、行ってみたいなそのお城。きっと素敵な所なんだろうなぁ」
驚くカリンをよそに、シルビアは胸の前で手を組み、目を輝かせます。どうやらこの世界の何処かには、雲の中に某名作映画のような建造物が存在している様でした。
「そういえばミュウ。あの時攻撃してきた奴は誰だったのでちか?」
カリンは残念なイケメン。黒龍の所為で有耶無耶になっていた事を訪ねます。
「アレですか……恐らくあの攻撃は赤龍のモノです」
『何ですって?! 赤龍が妹であるあなたを攻撃したというのですか!?』
「「妹!?」」
カリンとシルビアが驚きの声を上げます。ここへきて衝撃の事実が発覚しました。赤龍と黄龍であるミュウは実は兄妹だったのです。
「ええ……姿こそ見ていませんが、あの火炎球は間違いなくお兄ちゃんのです」
お兄ちゃんって……ちっちゃな子供じゃないんだから。と、カリンもシルビアも内心思っていました。ただし口には出しません。
『ううむ。あのシスコンが妹に攻撃をするなど信じられんな』
「「シスコン!?」」
『そうですよ。やつ……赤龍は黄龍好き好き大好き! ってカンジで普段から妹自慢ばっかりしてましてね、兄妹でフザケあって良く山のニつ三つをケシ飛ばしてました。私が黄龍と寝た時なんか怒り狂って襲って来た時もありましたね』
「ミュウ」
「はい?」
「避妊はちゃんとするでちよ」
「ソコ!? 引っ掛かる所はソコですか?!」
「うーむ。それじゃあ、妹を寝取られて怒り狂う様なシスコン兄が、だいちゅき妹に攻撃を仕掛けたという事は、何者かに懐柔させられた。と、いう事でちかね」
「寝取られって、お兄ちゃんと寝てたのは子供の頃ですよ!? それに別に誰と寝ようが私の自由では?!」
「……魔王崇拝者かな?」
カリンはシルビアの呟きに頷きます。
「おおぃっ! 無視して話進めないで下さいっ!」
『あ、皆さん見えてきましたよ。あれが私の棲家です』
なおも食い下がるミュウをよそに、カリン達が黒竜の行く先を見ると、陽の光で煌めく大海原の只中に、島がポツンと浮いているのが見えました。大陸から遠く離れた絶海の孤島に、黒竜の棲家を象徴するような黒く鋭い牙にも似た山が聳え立ちます。山の周りには森があり、街もあるようでした。
「街があるのでちか?」
『ええ、棲家。と、言っても、私一人で棲んでいる訳ではないのです。あそこには民が居て生活をしています。さあ、降りますので掴まっていて下さい』
黒竜が高度を下げ始めたので、カリン達は鱗にしがみ付きます。エリザ王女は未だ失禁ちゅ……瞑想中なので、お店のマスターがロープを使い華麗に縛り付けました。
ペチペチ。
「んっ……」
ペチペチペチ。
「んんぅっ……はっ!」
長らく瞑想状態のエリザ王女が、頬の刺激に目を開けます。蒼く澄んだ空の下、心配そうに自分を見つめるカリン達がそこに居ました。
「やっと目が覚めまちたか」
「あ……か、カリンさん?!」
ガバリと身を起こすと、ソコは見た事の無い草原の只中。爽やかな風の中にほんのりと潮の香りとアンモニア臭が混じります。
「ここは一体……」
「ここは私の棲家ですよ。お嬢さん」
黒竜は、イケメン執事の姿で一礼しました。そして、両腕を左右に大きく開きます。
「皆さん、ようこそお出で下さいました。ここが私の棲家、暗黒島です」
「…………ミュウ」
「何でしょう?」
「変なルビが見えた気がしたのでちが……」
カリンの言葉に、ミュウは大きく頭を振りました。
「いいえご主人様。気の所為では――」
「あーっ! クロちゃんっ!」
「「「「クロちゃん?!」」」」
背後からの声に一同は振り返ります。小高い丘の上に年の頃は二十前半の女性が立っていました。しかも沢山。
「やあ、皆さん。ただ今戻りました」
『おかえりなさいっ!』
まるで、小高い丘が叫んだように聞こえた帰宅の挨拶。次いで、地鳴りの様なモノがカリン達に迫ります。
「「「「な、な、な……」」」」
カリン達は、何やら『な』を連発しつつ、地鳴りの濁流に呑まれました。
「クロちゃんっ。今日は私の番だったよね」
「アンタはこの前シたばかりでしょ?! 今日は私よ!」
「あっ、ずるいー。私もシたーい」
「はっはっは。ごめんよみんな。今日はお客さんが居て、相手をしなくちゃならないんだ。だから、また今度……ね」
バチリ。と、黒龍がウィンクをかますと、カリン達以外のその場に居る女性達が卒倒します。
「一体何人侍らせているんだ? 黒龍さんよ」
「えーっと、確か三百二十人だったかな……?」
「さ……」
一日一人と計算すれば、あと四十五人で年中無休営業になります。残念なイケメン。黒龍のマスターは、人外だけあって超絶倫仕様なのでした。ちなみに、お店のマスターがお得意のメープルワッフルを与えれば、この内の何人かはお供に加わる事を彼は知りませんし、それに気付かせてはなりません。
「そういえば、ボクの留守中に何か変わった事はありませんでしたか?」
「変わった事……ですか?」
女性達は互いに顔を見つめ合います。そのうちの一人の女性が、そういえば。と、手の平を叩きました。
「昨日なんかぁ、新人さんが来てぇ、クロちゃんにぃ、逢いたいからぁ、家を教えて欲しいってぇ。だからぁ、わたしぃ…………やかましぃんじゃぼげ、そんなんワレ一人で探せや。ってぇ言ったのぉ」
その女性は、キャッ。と、頬を抑えて恥ずかしそうにしていましたが、途中の豹変具合にカリン達は一歩身を引いていました。
「その新人さんとは、どんなお人なのですか」
黒龍がその女性をアゴクイすると、他の女性が騒ぎ立てます。
「え……あ、その……確か、目が二つに鼻が一つ。それから……んっとー、口が一つ。あとは……耳がンッ」
黒龍が女性の口を口で塞ぎました。その様子を見ていた他の女性達が更に騒ぎ立て、口づけをされた女性は記憶が飛んでしまったかの様に呆けていました。
「わかりました。ありがとう」
「分かってないでちよ」
「そうだ黒龍、よく見ろ。その娘が言ったモノは、この場に居る全員が持っているぞ」
「え? そうなんですか? 顔の特徴を言われても正直ボクにはよく分かりませんが?」
どうやら黒龍にとって、人の顔には興味が無いようです。
「黒龍、アンタどうやって他人を識別しているんだ?」
「え? 簡単ですよ。例えば……こちらは八十三のユナさん。そしてこちらが九十四のルーサさん。で、七十八のヨウコさんに、八十のミツコさん。ちなみに黄龍は九十二で、そちらのお嬢さんは八十九」
「ちょっ、どこで識別してるんですか!」
エリザ王女は、自身の隠しきれない渓谷を、腕で必死に隠して抗議します。どうやら黒龍は、おっぱいで人を判断しているようでした。
「何処って……ソココソが女性の女性たるアイデンティティ! ……じゃ、ありませんか? 故に、感謝の気持ちを以って合掌。そして一礼しております」
「あ、何の儀式かと思ったら、そんな意味があったんだ……」
取り巻きの女性の一人が呟くと他の女性もなるほど。と、呟きます。どうやら黒龍は、常日頃から実演してみせている様です。
「別に女はそれだけじゃないと思うな……」
「あらぁ? じゃあ、そっちのアナタは、ど、こ、が、女だと思うのぉ?」
「そ、それは、その……」
シルビアの呟きに、九十四のルーサが詰め寄り、答えに困ったシルビアは言葉を詰まらせます。
「かぉまっかにして可愛い。ねぇ、今晩ウチに来ない? その事についてぇ、オネェさんとぉ、朝まで語り合いましょうよぉ」
ベッドの中で。と、ルーサは小声でシルビアの耳に囁きます。シルビアは恥ずかしそうに頷きました。……え? 頷くんですか?
「ルーサさん。でちたね。ウチのシルビアを悪の道に引き込まないでくれまちか?」
カリンは連れて行かれそうになっているシルビアの袖を掴んでグイッと引き寄せます。
「シルビアにはエリザ。という、れっきとした相手が居るのでちよ」
「ちょ、カリンさん?!」
「ハッ! そうだった。私には、エリザおねぇ様というお人が居たんだった!」
「あらそうなの? じゃあ、三人でってどぉ?」
「あ、それなら良いですね」
良い訳はありません。
「なあ、カリンちゃんよぉ。話が思いっ切り脱線してねぇか?」
『オジサンは黙ってて! 「でち」』
何とか軌道修正しようとしたお店のマスターですが、一同から総スカンを喰らいました。
「フ……フフ」
「マスター? どうちたのでちか?」
「フフフフ……はーっはっはっは!」
お店のマスターは、天を仰いで狂ったかのように笑い声を張り上げます。
「オジサン……なめんなよ?」
カリンはお店のマスターの瞳の奥に、キラリと光る何かを見た気がしていました。
「だったらこの、オジサンがお前達を満足させてやる。女がおっぱいだけじゃ無いって所を見せてヤルぜ!」
「ちょ、マスター。何をするでちか?!」
「ルーサさん。だっけ? それと、フェゼさん。あとは……そうだな、シィアンさん。こっちへ来て口を開けな。違う! もっといやらしくだ! フフフ。良い表情をしてるな……さあっ! おあがりよ!」
「「「んんぅ!」」」
並ばされた三人の女性の口に、お店のマスターはその極太なモノを無理矢理突っ込みます。
「んふぅ! (ナニコレ……おっきぃ)」
「んんんっ! (中から出て来るドロッとしたモノが口一杯に広がるぅ)」
「くふぅ! (粘液の仄かな苦味がクセになっちゃうぅ)」
「ウチ自慢のメープルワッフルだぜ!」
「「「んんんんぅ! (はぁーん。とろけちゃうぅ)」」」
仏頂面だった三人の女性の表情は、今や至高の笑みへと変わりました。咥えさせられた三人の女性は、もっと下さい。と、言わんばかりにお店のマスターに擦り寄り欲しがります。どうやらお店のマスターは、自身が持つ魅力に気付いてしまった様でした。
「どうでぃ、黒龍さんよ。コレが女ってモンだぜ!」
「まあ、甘い物大好きでちからね」
エリザ王女もコクリと頷きます。その際に口からキラリと光るモノが落ちようとしましたが、慌ててソレを吸い込みました。エリザ王女も欲しくて堪らない様子です。そして、お店のマスターも壮絶な脱線をした事に気付いていませんでした。
「……フーン」
しかし黒龍のその一言で、今までの尺が全て無意味になった事を、この場に居る全員が理解しました。
「ところで、こんな事をしている場合なのですか?」
「「「はっ!」」」
壮絶なる脱線の末、エリザ王女とシルビア、そしてお店のマスターはようやく自身の使命に気付きました。
「いや、アンタも急がないといけないのでちよ?」
「ハッ! そうでした!」
龍の眼が無事である事を確認しなければ、黒龍曰くボコられるそうです。
「皆さん! 急ぎましょう!」
「「「「お前が言うな!」」」」
カリン達の総ツッコミを貰い、一同は黒龍の棲家へと急ぐのでした。
「るーるるるる。るーるるるる」
黒龍が奇妙な声を出すと、目の前にある仄かに光る紋様。つまり、魔封印が崩れて消えました。どうやらこの「るーるるるる」は、魔封印の解除キーの様です。ただし、魔封印を施した本人でなければ開ける事は出来ず、その他の人が開ける場合は、解除の呪文で開けるしかありません。
「道中暗いのでお気を付けて」
「エリザ、お願いするでち」
「分かりましたわ。……んんっ、ぁっ……んんんぅ!」
エリザ王女の喘ぎ声が、洞窟内に響き渡ります。自分を抱き締め、その身をピクピクと震えさせ、エリザ王女は明かりを一つ生み出しました。その明かりは、カリン達の周囲を明るく照らし出して、若干前屈みのお店のマスターをも浮き彫りにさせます。どうやらお店のマスターは、久し振りに聞いたエリザ王女の呪文詠唱に、お店のマスターのマスターが猛る寸前な様です。
「……なるほど、あなたが巷で噂の彼の方でしたか。道理で素晴らしいおっぱいを持っておいでな訳だ」
「クッ……噂がここまで……」
エリザ王女はその場にガックリと膝を落としました。
「姫サン! どうしたんですかい?!」
「なんでも……なんでもありませんわ」
エリザ王女は、悲しいそれは悲しい瞳で応えました。ドラゴンにまで、あの忌まわしき二つ名が広がっているとは思っていなかったのです。
「……ひっ!」
「どうした? シルビアちゃん」
一行は洞窟の奥へと進んでいました。時折、珍妙な声を上げるシルビアに、気になったお店のマスターが声を掛けます。
「む……虫が……」
「むし?」
シルビアが指差す方向を見ると、ソコには拳大程の大きなナニカの虫が壁面を這っていました。お店のマスターが見るに、無害そうな虫です。
「(虫に怯えるなんて、やっぱり女の子だな……)え!?」
壁面を這っていた虫が、唐突に消え失せました。そして先頭をゆく黒龍の顎が動いているのが目に止まります。
「ね? ね?」
「だっだだだだ大丈夫だシルビアちゃん。むむっむむむ無視するんだ」
虫だけに。
「……俺達は何も見てない。そうだそうだよ、俺達は何も見てはいないんだ」
「うん……うんっ」
こうしてシルビアとお店のマスターは、現実逃避をするのでした。
「黒龍さん。少し控えてくれないでちか? 後ろの二人が怯えているのでちよ」
「あ、すみません。つい、いつもの癖で……怯えさせて大変申し訳ございません」
「「「ひぃぃぃぃ!」」」
振り返って会釈し、頭を上げてニッコリと微笑む黒龍に、シルビアとお店のマスター、そして、二人のやり取りで気付いたエリザ王女も加わっての悲鳴が洞窟内に木霊します。イケメンの口元にナニカの虫の脚が垂れ下がっているのを見れば、誰しも悲鳴を上げる事でしょう。
「おい黒龍。残ってるぞ、はしたないな」
「はしたない。で、済ますアンタも同類でちよ」
「ちちち違いますよ私は! 流石にアレは食べませんよ!」
慌てて言い繕うミュウですが、他の虫なら食べるんだ。と、龍二匹以外の人達は思っていました。大抵の龍は陽の光を糧としている為食事は必要としませんが、稀にこういった偏食家も居ますのでご注意下さい。
「さあ、着きました。このドアの向こうが私の棲家です」
木製の、鉄で補強を施されたドアを開け放つと、ソコには見た事の無い光景が広がっていました。その凄まじい光景に一同は驚きを隠せず、口をポカンと開けたままでその場に立ち尽くします。
「……凄い、ね」
最初に言葉を発したのはシルビア。次いでお店のマスターが言います。
「ああ、この世の物とは思えないくらいだ」
「そうですわね。私も生まれて初めて見ましたわ」
流石に王族である以上、エリザ王女はこの様な景色とは無縁でしょう。
「黒龍……」
「何ですか? 黄龍」
「部屋の片付けくらいしろ!」
軽く飛び跳ねたミュウは、その拳を勢いと遠心力を付けて黒龍の頭を上から下へと打ち抜きます。ミュウの言う通り、部屋の中はメガ散らかっていて、足の踏み場どころか身を置くスペースすら見出す事は困難……いえ、出来ません。
「これは酷いでちね」
「ああ、俺の部屋も散らかってると思ってたが……上には上が居るもんだ……」
そんな上なぞ居なくて良いです。
「あれだけ信奉者が居るんだから片付けさせれば良いのに……」
「流石に彼女達を入れる訳にはいきませんよ」
「いや、入れてくれでちよ」
「で? 龍の眼は何処だ?」
「ええっと……確かアソコに……」
黒龍が指差す先には、台座が置かれているだけで何もありませんでした。
「あれ? 落ちたのかな?」
「「「「「落ちた!?」」」」」
一同の声がハモります。
「この中から探し出さないといけないのですか……?」
エリザ王女の呟きに顔を見合わせた一同は、ギギギ。と、全く同じタイミング同じ動きで頭を動かし、再び部屋の中に視線を向けました。
「ミュウ」
「はい。何でしょう? ご主人様」
「龍の眼って、神器だと言ってまちたね」
「ハイそうです。龍の眼は聖魔大戦末期に、神様がお創りになられたシロモノです」
「じゃあ、少しくらい衝撃を与えても壊れないでちね」
「まあ、落っことしたくらいでは全然平気ですね。龍に踏まれても大丈夫なくらいですから」
誰か踏んだんかい! 一同は内心突っ込みを入れていました。もしそれで破壊していたなら大騒ぎになっていた事でしょう。
「なら大丈夫でちね。ミュウ、ご主人様として命令するでち」
「はい。どの様なご命令を……?」
ミュウは、ここを片付けろ。と、言われるのではないかと、内心ビクついていました。
「薙ぎ払えでち」
「「……は?」」
ミュウと黒龍の目が点になりました。
「うっわー。あれが水平線ってやつ? すっごーい」
遙か東方の緩やかなカーブを描く一筋の線を見たシルビアは、テンションアゲアゲで子供の様に燥ぎます。お店のマスターは、ドッカリと腰を据えて黙想していました。
「ねぇねぇ、エリザ。あれ何?」
シルビアが気になったモノを指差しながら、エリザ王女の肩を掴んで揺さぶります。しかし、エリザ王女はそれに応えず、首だけがカックンカックンと動いていました。黒龍が飛び立つ時には元気に悲鳴を上げていたエリザ王女も、現在は白目を剥いて黙想中のようです。時折、身体がビクンッ。と、反応し、生温かい液体を零しています。
「オムツも買ってくれば良かったでちね」
『着いたら私が綺麗にナメて差し上げますよ』
「良いから、とっとと急げ」
『急げと言っても、流石にアレは回避しないとダメでしょう?』
黒龍の言うアレとは、行く手を塞ぐように立ちはだかる大きな雲でした。
「当たり前だ。我々なら問題は無いが、ご主人様と、その他大勢が乗っているのだからな」
『仕方ないですね』
そう言って、黒龍は進路を東に向けました。
「ねぇ、カリン。アレって何なの?」
『アレは空の城ですよ。お嬢さん』
「空の城……?」
『あの中って、キモチイイんですよねぇ……。風が身体を揉み解してくれて、雷で血行が良くなるんですよ』
どうやら龍達は、積乱雲を健康器具扱いしているようでした。
「へぇ、そんなにキモチイイんだ」
『行ってみます?』
「「行かんでいい」」
カリンとミュウの声がハモります。色んなモノに耐性がある龍ならともかく、生身の人間がそんな所に入れば、ウェルダンどころか炭になる事請け合いです。
「内部は強風が吹き荒れて、雨や雷が侵入する者を撃ち落とす怖い所でちよ」
「ええっ!? そんな怖い所なの?!」
『まあ、たまーに雲の中に大きな城が在ったりもしますね』
「!?」
「へぇぇ、行ってみたいなそのお城。きっと素敵な所なんだろうなぁ」
驚くカリンをよそに、シルビアは胸の前で手を組み、目を輝かせます。どうやらこの世界の何処かには、雲の中に某名作映画のような建造物が存在している様でした。
「そういえばミュウ。あの時攻撃してきた奴は誰だったのでちか?」
カリンは残念なイケメン。黒龍の所為で有耶無耶になっていた事を訪ねます。
「アレですか……恐らくあの攻撃は赤龍のモノです」
『何ですって?! 赤龍が妹であるあなたを攻撃したというのですか!?』
「「妹!?」」
カリンとシルビアが驚きの声を上げます。ここへきて衝撃の事実が発覚しました。赤龍と黄龍であるミュウは実は兄妹だったのです。
「ええ……姿こそ見ていませんが、あの火炎球は間違いなくお兄ちゃんのです」
お兄ちゃんって……ちっちゃな子供じゃないんだから。と、カリンもシルビアも内心思っていました。ただし口には出しません。
『ううむ。あのシスコンが妹に攻撃をするなど信じられんな』
「「シスコン!?」」
『そうですよ。やつ……赤龍は黄龍好き好き大好き! ってカンジで普段から妹自慢ばっかりしてましてね、兄妹でフザケあって良く山のニつ三つをケシ飛ばしてました。私が黄龍と寝た時なんか怒り狂って襲って来た時もありましたね』
「ミュウ」
「はい?」
「避妊はちゃんとするでちよ」
「ソコ!? 引っ掛かる所はソコですか?!」
「うーむ。それじゃあ、妹を寝取られて怒り狂う様なシスコン兄が、だいちゅき妹に攻撃を仕掛けたという事は、何者かに懐柔させられた。と、いう事でちかね」
「寝取られって、お兄ちゃんと寝てたのは子供の頃ですよ!? それに別に誰と寝ようが私の自由では?!」
「……魔王崇拝者かな?」
カリンはシルビアの呟きに頷きます。
「おおぃっ! 無視して話進めないで下さいっ!」
『あ、皆さん見えてきましたよ。あれが私の棲家です』
なおも食い下がるミュウをよそに、カリン達が黒竜の行く先を見ると、陽の光で煌めく大海原の只中に、島がポツンと浮いているのが見えました。大陸から遠く離れた絶海の孤島に、黒竜の棲家を象徴するような黒く鋭い牙にも似た山が聳え立ちます。山の周りには森があり、街もあるようでした。
「街があるのでちか?」
『ええ、棲家。と、言っても、私一人で棲んでいる訳ではないのです。あそこには民が居て生活をしています。さあ、降りますので掴まっていて下さい』
黒竜が高度を下げ始めたので、カリン達は鱗にしがみ付きます。エリザ王女は未だ失禁ちゅ……瞑想中なので、お店のマスターがロープを使い華麗に縛り付けました。
ペチペチ。
「んっ……」
ペチペチペチ。
「んんぅっ……はっ!」
長らく瞑想状態のエリザ王女が、頬の刺激に目を開けます。蒼く澄んだ空の下、心配そうに自分を見つめるカリン達がそこに居ました。
「やっと目が覚めまちたか」
「あ……か、カリンさん?!」
ガバリと身を起こすと、ソコは見た事の無い草原の只中。爽やかな風の中にほんのりと潮の香りとアンモニア臭が混じります。
「ここは一体……」
「ここは私の棲家ですよ。お嬢さん」
黒竜は、イケメン執事の姿で一礼しました。そして、両腕を左右に大きく開きます。
「皆さん、ようこそお出で下さいました。ここが私の棲家、暗黒島です」
「…………ミュウ」
「何でしょう?」
「変なルビが見えた気がしたのでちが……」
カリンの言葉に、ミュウは大きく頭を振りました。
「いいえご主人様。気の所為では――」
「あーっ! クロちゃんっ!」
「「「「クロちゃん?!」」」」
背後からの声に一同は振り返ります。小高い丘の上に年の頃は二十前半の女性が立っていました。しかも沢山。
「やあ、皆さん。ただ今戻りました」
『おかえりなさいっ!』
まるで、小高い丘が叫んだように聞こえた帰宅の挨拶。次いで、地鳴りの様なモノがカリン達に迫ります。
「「「「な、な、な……」」」」
カリン達は、何やら『な』を連発しつつ、地鳴りの濁流に呑まれました。
「クロちゃんっ。今日は私の番だったよね」
「アンタはこの前シたばかりでしょ?! 今日は私よ!」
「あっ、ずるいー。私もシたーい」
「はっはっは。ごめんよみんな。今日はお客さんが居て、相手をしなくちゃならないんだ。だから、また今度……ね」
バチリ。と、黒龍がウィンクをかますと、カリン達以外のその場に居る女性達が卒倒します。
「一体何人侍らせているんだ? 黒龍さんよ」
「えーっと、確か三百二十人だったかな……?」
「さ……」
一日一人と計算すれば、あと四十五人で年中無休営業になります。残念なイケメン。黒龍のマスターは、人外だけあって超絶倫仕様なのでした。ちなみに、お店のマスターがお得意のメープルワッフルを与えれば、この内の何人かはお供に加わる事を彼は知りませんし、それに気付かせてはなりません。
「そういえば、ボクの留守中に何か変わった事はありませんでしたか?」
「変わった事……ですか?」
女性達は互いに顔を見つめ合います。そのうちの一人の女性が、そういえば。と、手の平を叩きました。
「昨日なんかぁ、新人さんが来てぇ、クロちゃんにぃ、逢いたいからぁ、家を教えて欲しいってぇ。だからぁ、わたしぃ…………やかましぃんじゃぼげ、そんなんワレ一人で探せや。ってぇ言ったのぉ」
その女性は、キャッ。と、頬を抑えて恥ずかしそうにしていましたが、途中の豹変具合にカリン達は一歩身を引いていました。
「その新人さんとは、どんなお人なのですか」
黒龍がその女性をアゴクイすると、他の女性が騒ぎ立てます。
「え……あ、その……確か、目が二つに鼻が一つ。それから……んっとー、口が一つ。あとは……耳がンッ」
黒龍が女性の口を口で塞ぎました。その様子を見ていた他の女性達が更に騒ぎ立て、口づけをされた女性は記憶が飛んでしまったかの様に呆けていました。
「わかりました。ありがとう」
「分かってないでちよ」
「そうだ黒龍、よく見ろ。その娘が言ったモノは、この場に居る全員が持っているぞ」
「え? そうなんですか? 顔の特徴を言われても正直ボクにはよく分かりませんが?」
どうやら黒龍にとって、人の顔には興味が無いようです。
「黒龍、アンタどうやって他人を識別しているんだ?」
「え? 簡単ですよ。例えば……こちらは八十三のユナさん。そしてこちらが九十四のルーサさん。で、七十八のヨウコさんに、八十のミツコさん。ちなみに黄龍は九十二で、そちらのお嬢さんは八十九」
「ちょっ、どこで識別してるんですか!」
エリザ王女は、自身の隠しきれない渓谷を、腕で必死に隠して抗議します。どうやら黒龍は、おっぱいで人を判断しているようでした。
「何処って……ソココソが女性の女性たるアイデンティティ! ……じゃ、ありませんか? 故に、感謝の気持ちを以って合掌。そして一礼しております」
「あ、何の儀式かと思ったら、そんな意味があったんだ……」
取り巻きの女性の一人が呟くと他の女性もなるほど。と、呟きます。どうやら黒龍は、常日頃から実演してみせている様です。
「別に女はそれだけじゃないと思うな……」
「あらぁ? じゃあ、そっちのアナタは、ど、こ、が、女だと思うのぉ?」
「そ、それは、その……」
シルビアの呟きに、九十四のルーサが詰め寄り、答えに困ったシルビアは言葉を詰まらせます。
「かぉまっかにして可愛い。ねぇ、今晩ウチに来ない? その事についてぇ、オネェさんとぉ、朝まで語り合いましょうよぉ」
ベッドの中で。と、ルーサは小声でシルビアの耳に囁きます。シルビアは恥ずかしそうに頷きました。……え? 頷くんですか?
「ルーサさん。でちたね。ウチのシルビアを悪の道に引き込まないでくれまちか?」
カリンは連れて行かれそうになっているシルビアの袖を掴んでグイッと引き寄せます。
「シルビアにはエリザ。という、れっきとした相手が居るのでちよ」
「ちょ、カリンさん?!」
「ハッ! そうだった。私には、エリザおねぇ様というお人が居たんだった!」
「あらそうなの? じゃあ、三人でってどぉ?」
「あ、それなら良いですね」
良い訳はありません。
「なあ、カリンちゃんよぉ。話が思いっ切り脱線してねぇか?」
『オジサンは黙ってて! 「でち」』
何とか軌道修正しようとしたお店のマスターですが、一同から総スカンを喰らいました。
「フ……フフ」
「マスター? どうちたのでちか?」
「フフフフ……はーっはっはっは!」
お店のマスターは、天を仰いで狂ったかのように笑い声を張り上げます。
「オジサン……なめんなよ?」
カリンはお店のマスターの瞳の奥に、キラリと光る何かを見た気がしていました。
「だったらこの、オジサンがお前達を満足させてやる。女がおっぱいだけじゃ無いって所を見せてヤルぜ!」
「ちょ、マスター。何をするでちか?!」
「ルーサさん。だっけ? それと、フェゼさん。あとは……そうだな、シィアンさん。こっちへ来て口を開けな。違う! もっといやらしくだ! フフフ。良い表情をしてるな……さあっ! おあがりよ!」
「「「んんぅ!」」」
並ばされた三人の女性の口に、お店のマスターはその極太なモノを無理矢理突っ込みます。
「んふぅ! (ナニコレ……おっきぃ)」
「んんんっ! (中から出て来るドロッとしたモノが口一杯に広がるぅ)」
「くふぅ! (粘液の仄かな苦味がクセになっちゃうぅ)」
「ウチ自慢のメープルワッフルだぜ!」
「「「んんんんぅ! (はぁーん。とろけちゃうぅ)」」」
仏頂面だった三人の女性の表情は、今や至高の笑みへと変わりました。咥えさせられた三人の女性は、もっと下さい。と、言わんばかりにお店のマスターに擦り寄り欲しがります。どうやらお店のマスターは、自身が持つ魅力に気付いてしまった様でした。
「どうでぃ、黒龍さんよ。コレが女ってモンだぜ!」
「まあ、甘い物大好きでちからね」
エリザ王女もコクリと頷きます。その際に口からキラリと光るモノが落ちようとしましたが、慌ててソレを吸い込みました。エリザ王女も欲しくて堪らない様子です。そして、お店のマスターも壮絶な脱線をした事に気付いていませんでした。
「……フーン」
しかし黒龍のその一言で、今までの尺が全て無意味になった事を、この場に居る全員が理解しました。
「ところで、こんな事をしている場合なのですか?」
「「「はっ!」」」
壮絶なる脱線の末、エリザ王女とシルビア、そしてお店のマスターはようやく自身の使命に気付きました。
「いや、アンタも急がないといけないのでちよ?」
「ハッ! そうでした!」
龍の眼が無事である事を確認しなければ、黒龍曰くボコられるそうです。
「皆さん! 急ぎましょう!」
「「「「お前が言うな!」」」」
カリン達の総ツッコミを貰い、一同は黒龍の棲家へと急ぐのでした。
「るーるるるる。るーるるるる」
黒龍が奇妙な声を出すと、目の前にある仄かに光る紋様。つまり、魔封印が崩れて消えました。どうやらこの「るーるるるる」は、魔封印の解除キーの様です。ただし、魔封印を施した本人でなければ開ける事は出来ず、その他の人が開ける場合は、解除の呪文で開けるしかありません。
「道中暗いのでお気を付けて」
「エリザ、お願いするでち」
「分かりましたわ。……んんっ、ぁっ……んんんぅ!」
エリザ王女の喘ぎ声が、洞窟内に響き渡ります。自分を抱き締め、その身をピクピクと震えさせ、エリザ王女は明かりを一つ生み出しました。その明かりは、カリン達の周囲を明るく照らし出して、若干前屈みのお店のマスターをも浮き彫りにさせます。どうやらお店のマスターは、久し振りに聞いたエリザ王女の呪文詠唱に、お店のマスターのマスターが猛る寸前な様です。
「……なるほど、あなたが巷で噂の彼の方でしたか。道理で素晴らしいおっぱいを持っておいでな訳だ」
「クッ……噂がここまで……」
エリザ王女はその場にガックリと膝を落としました。
「姫サン! どうしたんですかい?!」
「なんでも……なんでもありませんわ」
エリザ王女は、悲しいそれは悲しい瞳で応えました。ドラゴンにまで、あの忌まわしき二つ名が広がっているとは思っていなかったのです。
「……ひっ!」
「どうした? シルビアちゃん」
一行は洞窟の奥へと進んでいました。時折、珍妙な声を上げるシルビアに、気になったお店のマスターが声を掛けます。
「む……虫が……」
「むし?」
シルビアが指差す方向を見ると、ソコには拳大程の大きなナニカの虫が壁面を這っていました。お店のマスターが見るに、無害そうな虫です。
「(虫に怯えるなんて、やっぱり女の子だな……)え!?」
壁面を這っていた虫が、唐突に消え失せました。そして先頭をゆく黒龍の顎が動いているのが目に止まります。
「ね? ね?」
「だっだだだだ大丈夫だシルビアちゃん。むむっむむむ無視するんだ」
虫だけに。
「……俺達は何も見てない。そうだそうだよ、俺達は何も見てはいないんだ」
「うん……うんっ」
こうしてシルビアとお店のマスターは、現実逃避をするのでした。
「黒龍さん。少し控えてくれないでちか? 後ろの二人が怯えているのでちよ」
「あ、すみません。つい、いつもの癖で……怯えさせて大変申し訳ございません」
「「「ひぃぃぃぃ!」」」
振り返って会釈し、頭を上げてニッコリと微笑む黒龍に、シルビアとお店のマスター、そして、二人のやり取りで気付いたエリザ王女も加わっての悲鳴が洞窟内に木霊します。イケメンの口元にナニカの虫の脚が垂れ下がっているのを見れば、誰しも悲鳴を上げる事でしょう。
「おい黒龍。残ってるぞ、はしたないな」
「はしたない。で、済ますアンタも同類でちよ」
「ちちち違いますよ私は! 流石にアレは食べませんよ!」
慌てて言い繕うミュウですが、他の虫なら食べるんだ。と、龍二匹以外の人達は思っていました。大抵の龍は陽の光を糧としている為食事は必要としませんが、稀にこういった偏食家も居ますのでご注意下さい。
「さあ、着きました。このドアの向こうが私の棲家です」
木製の、鉄で補強を施されたドアを開け放つと、ソコには見た事の無い光景が広がっていました。その凄まじい光景に一同は驚きを隠せず、口をポカンと開けたままでその場に立ち尽くします。
「……凄い、ね」
最初に言葉を発したのはシルビア。次いでお店のマスターが言います。
「ああ、この世の物とは思えないくらいだ」
「そうですわね。私も生まれて初めて見ましたわ」
流石に王族である以上、エリザ王女はこの様な景色とは無縁でしょう。
「黒龍……」
「何ですか? 黄龍」
「部屋の片付けくらいしろ!」
軽く飛び跳ねたミュウは、その拳を勢いと遠心力を付けて黒龍の頭を上から下へと打ち抜きます。ミュウの言う通り、部屋の中はメガ散らかっていて、足の踏み場どころか身を置くスペースすら見出す事は困難……いえ、出来ません。
「これは酷いでちね」
「ああ、俺の部屋も散らかってると思ってたが……上には上が居るもんだ……」
そんな上なぞ居なくて良いです。
「あれだけ信奉者が居るんだから片付けさせれば良いのに……」
「流石に彼女達を入れる訳にはいきませんよ」
「いや、入れてくれでちよ」
「で? 龍の眼は何処だ?」
「ええっと……確かアソコに……」
黒龍が指差す先には、台座が置かれているだけで何もありませんでした。
「あれ? 落ちたのかな?」
「「「「「落ちた!?」」」」」
一同の声がハモります。
「この中から探し出さないといけないのですか……?」
エリザ王女の呟きに顔を見合わせた一同は、ギギギ。と、全く同じタイミング同じ動きで頭を動かし、再び部屋の中に視線を向けました。
「ミュウ」
「はい。何でしょう? ご主人様」
「龍の眼って、神器だと言ってまちたね」
「ハイそうです。龍の眼は聖魔大戦末期に、神様がお創りになられたシロモノです」
「じゃあ、少しくらい衝撃を与えても壊れないでちね」
「まあ、落っことしたくらいでは全然平気ですね。龍に踏まれても大丈夫なくらいですから」
誰か踏んだんかい! 一同は内心突っ込みを入れていました。もしそれで破壊していたなら大騒ぎになっていた事でしょう。
「なら大丈夫でちね。ミュウ、ご主人様として命令するでち」
「はい。どの様なご命令を……?」
ミュウは、ここを片付けろ。と、言われるのではないかと、内心ビクついていました。
「薙ぎ払えでち」
「「……は?」」
ミュウと黒龍の目が点になりました。
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