三島くんと篠崎さん

ルーシュ

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ぐう、という腹の虫と、同時に襲ってきた空腹感によって、俺は突然、過去の忌まわしい記憶から現実へと引き戻された。 

そういえばもう昼時だ。何か食べなければ。 

「飯、食ってくだろ?」 

隣りを歩く成美に声をかける。 

俺のいきなりの問い掛けに、それでも特に驚く様子もなく俺の方を向く成美。 

…………因みに一つ言っておくと、二人は、さっきからずっと無言だった。しかしそれは二人にとっては当然なことである。もしも二人がどこにでもいる恋人同士のように、笑いながら話をしていたとすれば、そちらのほうがよっぽど異常なことだ。だから、これに関してはあえて何も言うことはないだろう。 

「…………ん」 

しばしの思考の末、成美はいつものように無表情で答えた。 

最初はこの無表情さに戸惑いどころか怒りさえ覚えたものだが、今はもう慣れてしまっている。 

というか、成美と付き合う上で注意しなければならないことがあるとしたら、むしろこっちだろう。 

「何が食べたい?」 

俺はそう尋ねた。 

「…………」 

すると成美は、少し上の方を睨み始める。 

…………これは、彼女が考え事をしていることを表しているのだ。が、はた目には分からない。しかも彼女は、考えがまとまらないといつまでたっても次の行動を開始せず、その状態で、そのままなのだ。これでは、怒っているのかと勘違いされても無理はない。事実、最初の頃の俺の慌てっぷりは…………思い出したくもないからやめておこう。。 

「あー、じゃあピザは?」 

「…………」 

最近は、少しでも成美の選択肢を簡単にする為にこちらからも意見を言ってやっている。 

だが、成美は首を横に振った。 

「えっと……ハンバーガーとか」 

「…………」 

「じゃあ……」 

「そばが食べたい」 

どうやら考えがまとまったらしい。 
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