三島くんと篠崎さん

ルーシュ

文字の大きさ
10 / 11

10

しおりを挟む
俺はもともと食べるのが早い。 

しかも麺類は特にそうで、ずるずるとかきこんでものの五分で食べ終えてしまう。 

今ももちろんそう。 

五分程で食べ終えてしまった。 

対して隣りの成美はというと、まだ半分も食べていない。 

「ん?」 

つゆを飲んでいる成美が、目だけで俺の方を見た。 

「なに?」と聞いているらしい。 

「なんでもない」 

そう答えると、再びきつねそばに専念する。 

彼女は猫舌らしく、挟んだ麺に何度も息を吹きかけて覚ましてから食べていた。 

しかもそれに加え一口の量が少ないので、余計に時間がかかる。 

ただ、一生懸命な感じでそばを食べている成美の姿は妙にかわいく見えた。 

「ん?」 

また彼女が目だけをこちらに向ける。 

「なんでもないって」 

「…………」 

が、今度は俺を見て止まったままだ。 

なんとなく、このままだといつまでたっても彼女の食は進まないような気がしてきたので、俺は思わず視線をずらす。 

すると彼女はそばを食べ始めた。 

しかしその数分後、俺は性懲りもなくまた成美を見る。その視線に気づくと、彼女の箸が再び止まる。 

…………まるでセンサーを感知するロボットのようである。 

「いいから食べろって」 

「見ないで」 

「別にいいだろ?」 

「嫌」 

成美が俺を睨む。 

目だけで怒るその表情に、ただよく見れば、少しだけの懇願があった。 

俺はそれを見逃さない。 

(…………やれやれ) 

そんな顔をされると、それ以上続ける気も失せるというものだ。 

それで俺は代わりに、席を立ってお茶のポットを取ってきた。 

自分の湯飲みと、彼女の湯飲みにお茶を注ぐ。 

「ん」 

食べながらお礼の「ん」 

…………いったい彼女の「ん」は何種類の意味があるのだろうか。 

本当に、『不思議少女』である。


















結局、彼女は十五分以上かけてきつねそば一杯を平らげた。 

それから、その後すぐに会計を済ませる。 

すると、去りぎわに会計のおばちゃんが笑って言った。 

「またおいで。彼氏連れてくれば今度はサービスしたげるから」 

…………成美は相変わらず「ん」としか答えなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

大丈夫のその先は…

水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。 新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。 バレないように、バレないように。 「大丈夫だよ」 すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m

離婚すると夫に告げる

tartan321
恋愛
タイトル通りです

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

有名俳優の妻

うちこ
恋愛
誰もが羨む結婚と遺伝子が欲しかった そこに愛はいらない

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく… なお、スピンオフもございます。

蝋燭

悠十
恋愛
教会の鐘が鳴る。 それは、祝福の鐘だ。 今日、世界を救った勇者と、この国の姫が結婚したのだ。 カレンは幸せそうな二人を見て、悲し気に目を伏せた。 彼女は勇者の恋人だった。 あの日、勇者が記憶を失うまでは……

処理中です...