三島くんと篠崎さん

ルーシュ

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店を出るとすでに暗くなっていた。 

これはまずい。 

一人暮らしの俺とは違い、成美は自宅通いである。遅くならないうちに帰さなくてはならないのだ。 

時計はまだ八時をさしているが、こればっかりは仕方がない。駅まで送ることにした。 

…………もっとも、彼女と夜を過ごしても何も起きそうにないが。 

(いや、まぁ『何か』を起こしたからこそこんな状況なんだけどさ) 

それを言っちゃおしまいである。 

とにかく、そんなこんなで何キロか歩いたわけで。 

そんな事を考えて自嘲しているとあっという間に駅についてしまった。 

改札の前で定期券を出す成美。 

「またな」 

「ん」 

「気をつけてな」 

「ん」 

「バイバイ」 

「ん。…………バイバイ」 

――――。 

成美は何事もなかったかのように自動改札を抜け、ホームへとおりていった。 

「バイバイって…………篠崎が?」 

確かに、小さい声ではあったが、「バイバイ」と言っていた。 

いつもは別れの「ん」のはずなのに、今日は「バイバイ」である。 

「あの不思議少女がねぇ…………」 

そして、俺は言ってから気づいた。 

なるほど、と。 

周りの理解不能、予測不可能な行動を取るからこそ『不思議』なのだ。 

そう思うと、なぜか笑いがこみ上げてきた。 

(…………やばい) 

やばい、俺、はまった。 

必死に笑いをこらえながら、駅の出口へと向かう。 

たぶん、俺は泥沼に片足を突っ込んでいる状態なんだろう。 

で、今はもう片方の足までも泥に飲まれようとしていると。 

(抜け出そうと思えば抜け出せるんだろうけど…………) 

俺は思った。 

もう少しだけ、成美と付き合ってみよう、と。 

――――俺は、一人にやつきを抑えながら自宅に帰っていった。
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