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捜査
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魔法少女に関する事件は警察内部でも扱いには困っていた。
外国人犯罪として扱うなら、公安が動くべきだが、ことの重大さから難色をしめすものもいる。会議と馴れ合いの結果できたのが、曖昧な権限と、複雑怪奇な指示系統をもつ部署だった。
鎬は、昨日の魔法少女学校襲撃事件の調査に入っていた。
古いインターフォンを押すと、奥から人が来る気配がする。
「えっと、どちら様でしょうか?」
「警察のものです。岡星信彦さんにお話がありまして」
扉が開く。扉の向こうには信彦本人が立っていた。
鎬は警察手帳を目の前で開く。手帳の写真はあまり気に入っていない。
「あ、はい! どうぞ! どうぞ!」
「失礼します」
岡星信彦、彼は崩壊した校舎から奇跡的に生還した学生だ。もっとも魔法少女と接している。
椅子に腰かけると、すぐにお茶が用意される。一瞬、人の気配を感じるが、すぐに消えてしまう。
岡星信彦が鎬の向かいに座る。
「体のほうは大丈夫みたいね。どこか変なとこある?」
「はい、大丈夫みたいです。痛いとこもないです」
はにかんだ笑顔が返ってくる。年上の女性と対面して気後れしているのだろう。
「よかったわ。私たち警察は、あなたの学校を襲った犯人を追っているの。あの場にいた生徒はみんな、『少女』に襲われたというわ。あなたから見て、それであってる?」
あの学校には設置してあった防犯カメラには魔法少女が映っていた。鎬はもっと繊細な情報を欲していた。
「たしかに、そう中学生ぐらいの少女だったです。外見は、そう普通の子でした。服装はちょっと奇抜っていうか。今風じゃない感じでした。……後は逃げるので必死だったので」
「その犯人なんだけど、どんな武器をつかっていたかわかるかしら」
生徒たちの証言を信じれば、魔法少女は詠唱をしていない。
「いえ……、あ、でもあの子は棒を、ステッキをもっていました」
この証言は他の生徒からは出てこなかった。鎬は焦る気持ちを抑えながら次の質問をする。
「ステッキ?どんなのかな?」
気づかないうちに身を乗り出していた。
「こう、小さな女の子が遊ぶおもちゃのような」
魔法具だ。
「犯人は、それをどんな感じで使っていたかな?」
少年の目が逸れる。事件の記憶を思い出したくないのか、何かを隠しているのか。
「あなたが情報で犯人逮捕が近づくの」
少年の目は伏したままだった。
女性の警察官が帰っていった。
「日本の官警は仕事が早いな」
奥で隠れたいたバル子が姿を現す。
「どうした信彦?おかしいぞ?何かされたのか」
隠しているつもりだったが彼女にはわかるらしい。
「いや……さっきの警察の人」
あの女性警官はブラジャーをしていなかった
「バル子は、これからどうするんだ?」
この魔法少女は任務があるといっていた。
「私はこちらの世界で『捜査』をしなければならない」
誰かを追っているのか? それ以上聴いていいものか迷う。
「とりあえず、この辺りから調べてみようと思う」
「この辺りって、丸子を? 無茶だよ!」
多摩川に沿う形で広がるこの町は、都心のベットタウンとしても人気で、住民の数も多い。
「これも上からの命令だ。それに私が魔法少女だと忘れてないか」
彼女は自慢げに懐から1/10000表記の地図を取り出す。
「ある程度は見当がつけてある。あとはそこにいけばいい」
彼女が開いたページには赤い丸が記入されている。
「あの、バル子」
「なんだ。私がこんな繊細な地図を持っていて驚いたかな。確かに地図は軍機に類するものだからな」
バル子がもっている地図はよく本屋で売っている出版社のだった。
「その地図、3年前のだぞ」
しかたないので僕が案内することにした。
学校はあんな事件があったので当分休みだと連絡があった。一応は自宅学習扱いなので、日中に町中にでるのはダメなんだが。
「バル子、その地図かしてみて」
地図の住所を確認する。自分の生活範囲外の場所に赤丸が記されていた。僕は迷わないように、スマホのアプリでルートを調べる。
「ほう、それが携帯電話か! 板みたいじゃないか!」
魔法少女がスマホを食い入るように見てくる。僕が指でパネル操作すると驚嘆の声まであげてくる。
「そんな珍しい?」
「うむ、実物は初めてだ」
巨大ロボットのほうが珍しいんだけど、まあ文化が違うからそんなもんか。
「私も、こっちに来ると決まってから三週間の講習を受けただけだからな。驚くことばかりだよ」
「魔法の国て、どんなとこなの」
僕の何気ない質問に魔法少女の表情が一気に硬くなる。
「いいところだ。楽園だよ。人々も楽しく暮らしている」
その割にはバル子の声に感情を感じられない。
まあ、色々あるのだろう。
最初の赤丸地点が見えてきた。
地図アプリをここを指している。
住宅地の一角にある、潰れた商店。
「ここだって」
一体こんなところに、何があるというんだろう。バル子の表情を伺ってみると、真剣な目で店内を見ている。
いきなりバル子がガラスの引き戸を開けようとする。案の定鍵がかかっている。
バル子はステッキでガラスを割る。
「い!? バル子何してんの!」
「任務だ」
バル子は鍵を開け、店内に侵入していく。
僕は辺りを見回し、人がいないのを確認し彼女の後に続く。
空の棚には埃が積もっていた。僕は物音を立てないよう奥に向かう。日中とは思えないほど中は暗い。
ここは一体何屋さんだったんだろう。棚の配置から考えて、品数がかなり多かったらしいが。
レジがあったであろう場所までくると、なぜか悲しい気分になっていた。
「ここには何もないか」
奥の部屋からバル子が戻ってくる。
「ここは一体?何を探してたんだ?」
「おもちゃ屋だった。ここで購入されたステッキを探している」
おもちゃ屋といわれて、納得する。いわれてめれば、往時を想像することもできる。
「ステッキて、おもちゃのステッキを探してるの?」
「そうだ。ここのステッキが魔法の国に大量に流入しているんだ」
おもちゃのステッキがなぜ魔法の国に?話が見えない。
「密輸されてるのか?」
「それで済めばいいんだがな」
バル子の影が濃くなる。
元おもちゃ屋から僕たちは出る。
「あら、信彦くん」
なぜ、どうしてこんな所で百合子と出会うのか。今日は自宅学習だろう。
「何してんの?あらその子は」
百合子がバル子の顔を覗き込もうとする。
「この子は、近所の子だよ!」
「……ちょっとまって。いま二人でこの奥からでてきたわよね」
やばい、そこまで見られたのか。
「このロリコン!そんな小さな子と何してんのよ!へんたい!短小!くされ外道!」
住宅街に罵詈雑言が響きわたる。
外国人犯罪として扱うなら、公安が動くべきだが、ことの重大さから難色をしめすものもいる。会議と馴れ合いの結果できたのが、曖昧な権限と、複雑怪奇な指示系統をもつ部署だった。
鎬は、昨日の魔法少女学校襲撃事件の調査に入っていた。
古いインターフォンを押すと、奥から人が来る気配がする。
「えっと、どちら様でしょうか?」
「警察のものです。岡星信彦さんにお話がありまして」
扉が開く。扉の向こうには信彦本人が立っていた。
鎬は警察手帳を目の前で開く。手帳の写真はあまり気に入っていない。
「あ、はい! どうぞ! どうぞ!」
「失礼します」
岡星信彦、彼は崩壊した校舎から奇跡的に生還した学生だ。もっとも魔法少女と接している。
椅子に腰かけると、すぐにお茶が用意される。一瞬、人の気配を感じるが、すぐに消えてしまう。
岡星信彦が鎬の向かいに座る。
「体のほうは大丈夫みたいね。どこか変なとこある?」
「はい、大丈夫みたいです。痛いとこもないです」
はにかんだ笑顔が返ってくる。年上の女性と対面して気後れしているのだろう。
「よかったわ。私たち警察は、あなたの学校を襲った犯人を追っているの。あの場にいた生徒はみんな、『少女』に襲われたというわ。あなたから見て、それであってる?」
あの学校には設置してあった防犯カメラには魔法少女が映っていた。鎬はもっと繊細な情報を欲していた。
「たしかに、そう中学生ぐらいの少女だったです。外見は、そう普通の子でした。服装はちょっと奇抜っていうか。今風じゃない感じでした。……後は逃げるので必死だったので」
「その犯人なんだけど、どんな武器をつかっていたかわかるかしら」
生徒たちの証言を信じれば、魔法少女は詠唱をしていない。
「いえ……、あ、でもあの子は棒を、ステッキをもっていました」
この証言は他の生徒からは出てこなかった。鎬は焦る気持ちを抑えながら次の質問をする。
「ステッキ?どんなのかな?」
気づかないうちに身を乗り出していた。
「こう、小さな女の子が遊ぶおもちゃのような」
魔法具だ。
「犯人は、それをどんな感じで使っていたかな?」
少年の目が逸れる。事件の記憶を思い出したくないのか、何かを隠しているのか。
「あなたが情報で犯人逮捕が近づくの」
少年の目は伏したままだった。
女性の警察官が帰っていった。
「日本の官警は仕事が早いな」
奥で隠れたいたバル子が姿を現す。
「どうした信彦?おかしいぞ?何かされたのか」
隠しているつもりだったが彼女にはわかるらしい。
「いや……さっきの警察の人」
あの女性警官はブラジャーをしていなかった
「バル子は、これからどうするんだ?」
この魔法少女は任務があるといっていた。
「私はこちらの世界で『捜査』をしなければならない」
誰かを追っているのか? それ以上聴いていいものか迷う。
「とりあえず、この辺りから調べてみようと思う」
「この辺りって、丸子を? 無茶だよ!」
多摩川に沿う形で広がるこの町は、都心のベットタウンとしても人気で、住民の数も多い。
「これも上からの命令だ。それに私が魔法少女だと忘れてないか」
彼女は自慢げに懐から1/10000表記の地図を取り出す。
「ある程度は見当がつけてある。あとはそこにいけばいい」
彼女が開いたページには赤い丸が記入されている。
「あの、バル子」
「なんだ。私がこんな繊細な地図を持っていて驚いたかな。確かに地図は軍機に類するものだからな」
バル子がもっている地図はよく本屋で売っている出版社のだった。
「その地図、3年前のだぞ」
しかたないので僕が案内することにした。
学校はあんな事件があったので当分休みだと連絡があった。一応は自宅学習扱いなので、日中に町中にでるのはダメなんだが。
「バル子、その地図かしてみて」
地図の住所を確認する。自分の生活範囲外の場所に赤丸が記されていた。僕は迷わないように、スマホのアプリでルートを調べる。
「ほう、それが携帯電話か! 板みたいじゃないか!」
魔法少女がスマホを食い入るように見てくる。僕が指でパネル操作すると驚嘆の声まであげてくる。
「そんな珍しい?」
「うむ、実物は初めてだ」
巨大ロボットのほうが珍しいんだけど、まあ文化が違うからそんなもんか。
「私も、こっちに来ると決まってから三週間の講習を受けただけだからな。驚くことばかりだよ」
「魔法の国て、どんなとこなの」
僕の何気ない質問に魔法少女の表情が一気に硬くなる。
「いいところだ。楽園だよ。人々も楽しく暮らしている」
その割にはバル子の声に感情を感じられない。
まあ、色々あるのだろう。
最初の赤丸地点が見えてきた。
地図アプリをここを指している。
住宅地の一角にある、潰れた商店。
「ここだって」
一体こんなところに、何があるというんだろう。バル子の表情を伺ってみると、真剣な目で店内を見ている。
いきなりバル子がガラスの引き戸を開けようとする。案の定鍵がかかっている。
バル子はステッキでガラスを割る。
「い!? バル子何してんの!」
「任務だ」
バル子は鍵を開け、店内に侵入していく。
僕は辺りを見回し、人がいないのを確認し彼女の後に続く。
空の棚には埃が積もっていた。僕は物音を立てないよう奥に向かう。日中とは思えないほど中は暗い。
ここは一体何屋さんだったんだろう。棚の配置から考えて、品数がかなり多かったらしいが。
レジがあったであろう場所までくると、なぜか悲しい気分になっていた。
「ここには何もないか」
奥の部屋からバル子が戻ってくる。
「ここは一体?何を探してたんだ?」
「おもちゃ屋だった。ここで購入されたステッキを探している」
おもちゃ屋といわれて、納得する。いわれてめれば、往時を想像することもできる。
「ステッキて、おもちゃのステッキを探してるの?」
「そうだ。ここのステッキが魔法の国に大量に流入しているんだ」
おもちゃのステッキがなぜ魔法の国に?話が見えない。
「密輸されてるのか?」
「それで済めばいいんだがな」
バル子の影が濃くなる。
元おもちゃ屋から僕たちは出る。
「あら、信彦くん」
なぜ、どうしてこんな所で百合子と出会うのか。今日は自宅学習だろう。
「何してんの?あらその子は」
百合子がバル子の顔を覗き込もうとする。
「この子は、近所の子だよ!」
「……ちょっとまって。いま二人でこの奥からでてきたわよね」
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