ゲームの世界に閉じ込められて魔王になりました。99万9999人のプレイヤーを倒すまで現実世界に帰れません。

でるたー

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〜戦力強化編〜

31話 駒から家族へ

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 大半の者が寝静まっているであろう夜中。都会などの明るい場所に身を置いているならば、夜中には絶対に立ち入らないような森の入り口に人影が5つ。光源の一つも無しに身を寄せ、何やら言葉を交わしている姿があった。

「ここまで来て今更言うのもあれだが、俺のレベリングに協力してほしい。悪いな」

「カイザ様のご命令とあれば、どのような頼みでも受け入れます」

 ビャクラが胸に手を置きながらそう口にする。面倒な奴ではあるけど、忠誠心は本物なんだよなあ……。

「そうです、私たちに断るという手段はありません」

 レイが落ち着いた声でビャクラの言葉に続けて言う。他の2人も頷いている。なんか、ここまで配下が配下らしいと俺が魔王なんかでいいのか不安になるな……。

「そうか。その言葉を聞いて安心した、ありがとう。だが、これだけは言わせてくれ」

 俺が配下に言っておきたいこと。これから先、何が起こるか分からない。だからこそ言っておかなければいけない『命令』。

「俺のために命を投げ出すな」

 わざと強い圧を声にのせ言う。この言葉が来るのを予想していなかったのだろう。4人が全く同じ反応、目を見開き口を魚のようにぱくぱくと動かしている。

「ですが――」

「これはお願いではない。命令だ」

 ビャクラの反論を遮り、再び力強い声で言う。
 今の反応で確信した。こいつらは間違いなく己の命を俺のために使う。
 魔王に仕える配下としてはそれが当たり前なのかもしれない。
 もし死んでもこいつらはリポップするかもしれない。でも、駄目だ。
 最初はこんな気持ち、抱かなかった。ゲームワールドに対する思いを胸に、ただ駒を動かしプレイヤーを倒すデスゲームくらいに考えていた。
 だが、こいつらは駒じゃない。俺の配下、家族だ。ここ2週間この世界で生き、こいつらと関わったからこそ感じられる。感じてしまった。
 感じてしまったからにはこの気持ちからは逃れられない。俺は俺なんかのために家族が死んでいくのは見ていられない。いつか必ず壊れてしまう。
 誰も死んでいない時からこんなことを思うのは時期尚早かもしれない。だが、もしリポップもせずそのまま死んでしまったら、終わりなのだ。失われた命は戻ってこない。だからこそ今言う必要がある。

 俺はもう、あんな思いはしたくない。

「畏まり……ました」

 ビャクラが項垂れながら言葉を口にする。

「よし、暗い話はもう終わり!レベリング開始!いざ、レジェンダリーフォレストへ!」



 生い茂る木々を払いながら森を進んでいく。レイの言う通り、夜でも問題なく辺り一面が滞りなく見渡せる。明るさは、嵐の日に訪れるあの黒い雲が空を覆いつくしたような感じだろうか、しっかりと夜だと認識できるがそれでも日が出ている時と変わらない景色だ。
 そのせいだからだろう、闇の中では俺が主役だと言わんばかりに目をぎらつかせている、横幅が1メートルほどある巨大な蝙蝠や、獲物を見る目でこちらを睨んでいる黒い毛皮の狼がなんだか可愛く見えてくる。
 朝昼は見かけなかった魔物達だ。逆に朝昼に見かけた魔物はあまり見ない。どうやら時間帯に応じて出現する魔物が変わるようだ。

 俺ら5人を取り囲むように『ジャイアントバット』『ダークウルフ』が円を描いている。レベルはおおよそ20、数はどちらも10はいるだろう。
 俺はこういう状況を望んでいた。これからプレイヤーと本格的に戦闘していくにあたり、八方塞がりの状況の打開策を編み出しておきたい。と言っても、流石に心強い味方が4人もいればこれくらい余裕だが。

「ビャクラとロイザは俺の援護、レオとレイは各個撃破だ。レベリングは始まったばかり。くれぐれもこの戦いだけでMP切れにはならないように」

「「「了解」」」

「そんじゃ、行くぞ!」

『グㇽオアア!?』

 正面の狼目掛け、地を踏みしめ駆ける。いきなり疾走するとは思ってもみなかったのだろう、狼は驚きの声をあげるのみ。

<ダークウルフLv19を撃破しました>

『#%&#%$&$#!』
『グㇽオオオオ!』

 俺の経験値となった狼の仇を取るように、蝙蝠が耳に障る声をあげながら飛来する。それに続くように狼も俺に突進。その数蝙蝠3、狼2。到底俺だけでは対応できない。

「援護!」

 だが、こちらには魔術師が2人常に待機している。

紅龍こうりゅう、行け!」
「セイレーン、カイザ様をお守りして」

 4魔将は必ずパートナーが存在する。ミストであればシェスト、フェイスであれば5種の仮面。そしてビャクラのパートナーは、全身が炎で出来た龍の紅龍。ロイザのパートナーは、全身が水で出来た歌姫の人魚セイレーンだ。どちらも【広目天】【持国天】に含まれた効果、専属召喚により呼び出される。


 紅龍はその細長い体をうねらせながら狼に迫り、そして呑み込む。気付けば、紅龍の背から青い球体が幾つも天に昇り雲散していく。そこから呑み込まれた狼の結果は一目瞭然だろう。
 セイレーンはウクレレのような形をした水を両手に持ち、美しい声を響かせる。その声は蝙蝠の元まで届き、そして死の歌へと変り果てる。蝙蝠たちは一斉に断末魔の叫びをあげ、力なく地面に落下していく。

「いい連携だ。このまま行くぞ」

「「了解」」

 結果、20ほどの小軍団は5分ほどで光となり、雲散していった。
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