32 / 68
〜戦力強化編〜
31話 駒から家族へ
しおりを挟む
大半の者が寝静まっているであろう夜中。都会などの明るい場所に身を置いているならば、夜中には絶対に立ち入らないような森の入り口に人影が5つ。光源の一つも無しに身を寄せ、何やら言葉を交わしている姿があった。
「ここまで来て今更言うのもあれだが、俺のレベリングに協力してほしい。悪いな」
「カイザ様のご命令とあれば、どのような頼みでも受け入れます」
ビャクラが胸に手を置きながらそう口にする。面倒な奴ではあるけど、忠誠心は本物なんだよなあ……。
「そうです、私たちに断るという手段はありません」
レイが落ち着いた声でビャクラの言葉に続けて言う。他の2人も頷いている。なんか、ここまで配下が配下らしいと俺が魔王なんかでいいのか不安になるな……。
「そうか。その言葉を聞いて安心した、ありがとう。だが、これだけは言わせてくれ」
俺が配下に言っておきたいこと。これから先、何が起こるか分からない。だからこそ言っておかなければいけない『命令』。
「俺のために命を投げ出すな」
わざと強い圧を声にのせ言う。この言葉が来るのを予想していなかったのだろう。4人が全く同じ反応、目を見開き口を魚のようにぱくぱくと動かしている。
「ですが――」
「これはお願いではない。命令だ」
ビャクラの反論を遮り、再び力強い声で言う。
今の反応で確信した。こいつらは間違いなく己の命を俺のために使う。
魔王に仕える配下としてはそれが当たり前なのかもしれない。
もし死んでもこいつらはリポップするかもしれない。でも、駄目だ。
最初はこんな気持ち、抱かなかった。ゲームワールドに対する思いを胸に、ただ駒を動かしプレイヤーを倒すデスゲームくらいに考えていた。
だが、こいつらは駒じゃない。俺の配下、家族だ。ここ2週間この世界で生き、こいつらと関わったからこそ感じられる。感じてしまった。
感じてしまったからにはこの気持ちからは逃れられない。俺は俺なんかのために家族が死んでいくのは見ていられない。いつか必ず壊れてしまう。
誰も死んでいない時からこんなことを思うのは時期尚早かもしれない。だが、もしリポップもせずそのまま死んでしまったら、終わりなのだ。失われた命は戻ってこない。だからこそ今言う必要がある。
俺はもう、あんな思いはしたくない。
「畏まり……ました」
ビャクラが項垂れながら言葉を口にする。
「よし、暗い話はもう終わり!レベリング開始!いざ、レジェンダリーフォレストへ!」
^
生い茂る木々を払いながら森を進んでいく。レイの言う通り、夜でも問題なく辺り一面が滞りなく見渡せる。明るさは、嵐の日に訪れるあの黒い雲が空を覆いつくしたような感じだろうか、しっかりと夜だと認識できるがそれでも日が出ている時と変わらない景色だ。
そのせいだからだろう、闇の中では俺が主役だと言わんばかりに目をぎらつかせている、横幅が1メートルほどある巨大な蝙蝠や、獲物を見る目でこちらを睨んでいる黒い毛皮の狼がなんだか可愛く見えてくる。
朝昼は見かけなかった魔物達だ。逆に朝昼に見かけた魔物はあまり見ない。どうやら時間帯に応じて出現する魔物が変わるようだ。
俺ら5人を取り囲むように『ジャイアントバット』『ダークウルフ』が円を描いている。レベルはおおよそ20、数はどちらも10はいるだろう。
俺はこういう状況を望んでいた。これからプレイヤーと本格的に戦闘していくにあたり、八方塞がりの状況の打開策を編み出しておきたい。と言っても、流石に心強い味方が4人もいればこれくらい余裕だが。
「ビャクラとロイザは俺の援護、レオとレイは各個撃破だ。レベリングは始まったばかり。くれぐれもこの戦いだけでMP切れにはならないように」
「「「了解」」」
「そんじゃ、行くぞ!」
『グㇽオアア!?』
正面の狼目掛け、地を踏みしめ駆ける。いきなり疾走するとは思ってもみなかったのだろう、狼は驚きの声をあげるのみ。
<ダークウルフLv19を撃破しました>
『#%%$&$#!』
『グㇽオオオオ!』
俺の経験値となった狼の仇を取るように、蝙蝠が耳に障る声をあげながら飛来する。それに続くように狼も俺に突進。その数蝙蝠3、狼2。到底俺だけでは対応できない。
「援護!」
だが、こちらには魔術師が2人常に待機している。
「紅龍、行け!」
「セイレーン、カイザ様をお守りして」
4魔将は必ずパートナーが存在する。ミストであればシェスト、フェイスであれば5種の仮面。そしてビャクラのパートナーは、全身が炎で出来た龍の紅龍。ロイザのパートナーは、全身が水で出来た歌姫の人魚セイレーンだ。どちらも【広目天】【持国天】に含まれた効果、専属召喚により呼び出される。
紅龍はその細長い体をうねらせながら狼に迫り、そして呑み込む。気付けば、紅龍の背から青い球体が幾つも天に昇り雲散していく。そこから呑み込まれた狼の結果は一目瞭然だろう。
セイレーンはウクレレのような形をした水を両手に持ち、美しい声を響かせる。その声は蝙蝠の元まで届き、そして死の歌へと変り果てる。蝙蝠たちは一斉に断末魔の叫びをあげ、力なく地面に落下していく。
「いい連携だ。このまま行くぞ」
「「了解」」
結果、20ほどの小軍団は5分ほどで光となり、雲散していった。
「ここまで来て今更言うのもあれだが、俺のレベリングに協力してほしい。悪いな」
「カイザ様のご命令とあれば、どのような頼みでも受け入れます」
ビャクラが胸に手を置きながらそう口にする。面倒な奴ではあるけど、忠誠心は本物なんだよなあ……。
「そうです、私たちに断るという手段はありません」
レイが落ち着いた声でビャクラの言葉に続けて言う。他の2人も頷いている。なんか、ここまで配下が配下らしいと俺が魔王なんかでいいのか不安になるな……。
「そうか。その言葉を聞いて安心した、ありがとう。だが、これだけは言わせてくれ」
俺が配下に言っておきたいこと。これから先、何が起こるか分からない。だからこそ言っておかなければいけない『命令』。
「俺のために命を投げ出すな」
わざと強い圧を声にのせ言う。この言葉が来るのを予想していなかったのだろう。4人が全く同じ反応、目を見開き口を魚のようにぱくぱくと動かしている。
「ですが――」
「これはお願いではない。命令だ」
ビャクラの反論を遮り、再び力強い声で言う。
今の反応で確信した。こいつらは間違いなく己の命を俺のために使う。
魔王に仕える配下としてはそれが当たり前なのかもしれない。
もし死んでもこいつらはリポップするかもしれない。でも、駄目だ。
最初はこんな気持ち、抱かなかった。ゲームワールドに対する思いを胸に、ただ駒を動かしプレイヤーを倒すデスゲームくらいに考えていた。
だが、こいつらは駒じゃない。俺の配下、家族だ。ここ2週間この世界で生き、こいつらと関わったからこそ感じられる。感じてしまった。
感じてしまったからにはこの気持ちからは逃れられない。俺は俺なんかのために家族が死んでいくのは見ていられない。いつか必ず壊れてしまう。
誰も死んでいない時からこんなことを思うのは時期尚早かもしれない。だが、もしリポップもせずそのまま死んでしまったら、終わりなのだ。失われた命は戻ってこない。だからこそ今言う必要がある。
俺はもう、あんな思いはしたくない。
「畏まり……ました」
ビャクラが項垂れながら言葉を口にする。
「よし、暗い話はもう終わり!レベリング開始!いざ、レジェンダリーフォレストへ!」
^
生い茂る木々を払いながら森を進んでいく。レイの言う通り、夜でも問題なく辺り一面が滞りなく見渡せる。明るさは、嵐の日に訪れるあの黒い雲が空を覆いつくしたような感じだろうか、しっかりと夜だと認識できるがそれでも日が出ている時と変わらない景色だ。
そのせいだからだろう、闇の中では俺が主役だと言わんばかりに目をぎらつかせている、横幅が1メートルほどある巨大な蝙蝠や、獲物を見る目でこちらを睨んでいる黒い毛皮の狼がなんだか可愛く見えてくる。
朝昼は見かけなかった魔物達だ。逆に朝昼に見かけた魔物はあまり見ない。どうやら時間帯に応じて出現する魔物が変わるようだ。
俺ら5人を取り囲むように『ジャイアントバット』『ダークウルフ』が円を描いている。レベルはおおよそ20、数はどちらも10はいるだろう。
俺はこういう状況を望んでいた。これからプレイヤーと本格的に戦闘していくにあたり、八方塞がりの状況の打開策を編み出しておきたい。と言っても、流石に心強い味方が4人もいればこれくらい余裕だが。
「ビャクラとロイザは俺の援護、レオとレイは各個撃破だ。レベリングは始まったばかり。くれぐれもこの戦いだけでMP切れにはならないように」
「「「了解」」」
「そんじゃ、行くぞ!」
『グㇽオアア!?』
正面の狼目掛け、地を踏みしめ駆ける。いきなり疾走するとは思ってもみなかったのだろう、狼は驚きの声をあげるのみ。
<ダークウルフLv19を撃破しました>
『#%%$&$#!』
『グㇽオオオオ!』
俺の経験値となった狼の仇を取るように、蝙蝠が耳に障る声をあげながら飛来する。それに続くように狼も俺に突進。その数蝙蝠3、狼2。到底俺だけでは対応できない。
「援護!」
だが、こちらには魔術師が2人常に待機している。
「紅龍、行け!」
「セイレーン、カイザ様をお守りして」
4魔将は必ずパートナーが存在する。ミストであればシェスト、フェイスであれば5種の仮面。そしてビャクラのパートナーは、全身が炎で出来た龍の紅龍。ロイザのパートナーは、全身が水で出来た歌姫の人魚セイレーンだ。どちらも【広目天】【持国天】に含まれた効果、専属召喚により呼び出される。
紅龍はその細長い体をうねらせながら狼に迫り、そして呑み込む。気付けば、紅龍の背から青い球体が幾つも天に昇り雲散していく。そこから呑み込まれた狼の結果は一目瞭然だろう。
セイレーンはウクレレのような形をした水を両手に持ち、美しい声を響かせる。その声は蝙蝠の元まで届き、そして死の歌へと変り果てる。蝙蝠たちは一斉に断末魔の叫びをあげ、力なく地面に落下していく。
「いい連携だ。このまま行くぞ」
「「了解」」
結果、20ほどの小軍団は5分ほどで光となり、雲散していった。
0
あなたにおすすめの小説
魔物に嫌われる「レベル0」の魔物使い。命懸けで仔犬を助けたら―実は神域クラスしかテイムできない規格外でした
たつき
ファンタジー
魔物使いでありながらスライム一匹従えられないカイルは、3年間尽くしたギルドを「無能」として追放される。 同世代のエリートたちに「魔物避けの道具」として危険な遺跡に連れ出され、最後は森の主(ヌシ)を前に囮として見捨てられた。
死を覚悟したカイルが崩落した壁の先で見つけたのは、今にも息絶えそうな一匹の白い仔犬。 「自分と同じように、理不尽に見捨てられたこの子だけは助けたい」 自分の命を顧みず、カイルが全魔力を込めて「テイム」を試みた瞬間、眠っていた真の才能が目覚める。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
転生したら領主の息子だったので快適な暮らしのために知識チートを実践しました
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
不摂生が祟ったのか浴槽で溺死したブラック企業務めの社畜は、ステップド騎士家の長男エルに転生する。
不便な異世界で生活環境を改善するためにエルは知恵を絞る。
14万文字執筆済み。2025年8月25日~9月30日まで毎日7:10、12:10の一日二回更新。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】
きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】
自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。
その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ!
約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。
―――
当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。
なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる