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〜戦力強化編〜
52話 バグは命を救う
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――コンコン
薄暗い怪しげな部屋の扉がノックされる。
「ん、どうぞ」
「冴葉、これお前の仕業だろ? 結構荒れてるぞ」
無精ひげを生やした男は部屋に入るなり、あるページを開いたタブレットを差し出してくる。
男の声に怒りは混ざっておらず、口元は薄気味悪い笑みを浮かべている。
それを見た冴葉は、男にしては長い髪が覆う後頭部をポリポリと掻きながら奇怪な笑みを浮かべる。
「いやはや、現代の情報拡散力には恐れ入りますね。これはシステムを元に戻した方が良さそうだ」
「そうだな。燃え上がった火は即座に鎮火しないと大変なことになる」
『システムコード00042-KIFを使用しますか?』
「相変わらずそのタイピング速度に目を疑うよ」
「僕の一番の特技です。きっひっひ」
『システムコード00042-KIFを適用しました』
^
「まずは一人目」
ファーズをガリウスさんの首を目掛け振るう。避けようがないであろう一振り。仮にガリウスさんが瞬歩を持っていたとしても、明確にここへ行くと決め視界に入れている『地』でないと発動は不可能だ。
だが、絶対の自信を含んだ一閃は空をきった。
「……‼」
ファーズが首に触れる瞬間、ガリウスさんの姿が消えたのだ。辺りを見渡すもその姿はどこにも見当たらない。それどころか、周りにはプレイヤーが誰一人としていない。
「なんだ?転移魔術でもあるのか?」
俺、ネロ、ヴラドだけが残り静まり返った森の中で、宙に浮くティオルを手に取り鞘にしまいながらそんなことを考える。
俺、というより魔王には習得できずプレイヤーのみが習得できるスキルが無いとも限らない。『転移を彼のにする魔術』が存在している可能性も0ではないだろう。
そう思いはしたのだが
「でも、それなら俺がプレイヤーを倒すことがほぼ不可能になるしな」
もしそんな魔術が存在していた場合、俺がプレイヤーを倒すためには一撃で仕留めなければいけない。
『撃破対象は99万9999人』『期間は2年以内』という条件を設置しておいて、これ以上の負荷をかけるとは思えない。
俺をこんな目に遭わせたあのゲームワールドだ。俺の精神面のことを考慮していないわけが無いだろう。
「うーーん……。まあいっか」
どうせいくら考えても答えが分かるわけでもない。ひとまずこの件は放置だ。
「ヴラド、お疲れ様。助かったよ」
これから城へ帰還する。現在地はLv30辺りの魔物が蔓延る場だ。特にこれ以上ヴラドを必要とする場面は道中ではないだろう。
「お力になれたようで何よりでございます」
ヴラドが満面の笑みを浮かべ貴族風の礼をする。
「召喚解除」
召喚解除を発動すると、ヴラドの体が瞬時に消える。
「ネロ、乗るぞ」
「どうぞお乗りください」
毛皮をモフモフしながらネロに跨る。どうやら乗り易さを意識したようで、若干足を曲げ姿勢を低くしている。
「よし、道は俺が指示する。取り敢えずまっすぐ進んでくれ」
ナビゲートは目的地に到達するか、意図的に発動を取りやめない限り効果は永続する。
「畏まりました。行きます」
ネロが大地を踏みしめ、駆ける。
^
「……は! ……あれ? ここ、エレクトルか? 撃破されたはずじゃ……」
スグルが目を覚ますと、そこは転移石碑が置いてあった洞窟の中だった。
「ふふ、ようやく起きた。どう? 調子は」
スグルの様子をうっすらと笑みを浮かべた表情でニーアが見つめながら問う。
「うん、調子は大丈夫。でも、どうして俺達ここにいるんだ? ……あの変な石もなくなってるし」
体を起こしたスグルがニーアの問いに答えながら、転移石碑があった方へ顔を向ける。
「さっき運営からのアナウンスがあったんだが、どうやらバグが発生したみたいだ」
「バグ?」
スグルの問いにカナタが安堵の籠もった表情で答える。
「ああ、どうやらあの『転移石碑』はストーリークリア後に使用可能になるものらしいんだ。それが、バグが発生し俺らのようなクリア前のプレイヤーにも表示されていたようだ。それを修正したためここに戻ってきたようだな」
「なる、ほどな。まあ、俺に難しい事は分からねえけど、とにかくそのバグってやつが起きたおかげで命拾いしたってことだよな」
スグルの声を聞いた瞬間、残りの4人の表情が険しくなる。
「……そうだな。少しでもバグの修正が遅れていれば、俺は魔王に撃破されていた」
ガリウスが拳に力を籠めながら言う。
「そうね。私は魔王ではない、彼の従えてる魔物にすら敵わなかったわ」
「私なんて、敵わないどころか皆の足を引っ張っちゃったし……」
――パンッ
一人一人が言葉を洞窟に響かせる度重くなる空気を見かねたカナタが手を叩く。
「これはゲームだ。本当に死ぬわけじゃない。一回負けたくらいでそんなに落ち込むな、もっと楽しもうぜ! 確かにあいつらに勝てなかったのはとても悔しい」
皆の注目を集めたカナタの言葉が一瞬途切れ、闘志の籠もった瞳になり再び口を開く。
「だが、勝てない相手がいてこそゲームってのは楽しいんだ! 皆、あいつに負けて悔しいんだろ? なら、勝てるようになるまで強くなればいい! 俺らなら出来る、そうだろ?」
「ああ、そうだな」
「当たり前だろ、何言ってんだ。っへへ」
「ええ、そうね」
「う、うん。そうだね、きっと勝てる!」
場の空気の重みが消え、活気が溢れる。
「見とけ魔王、俺らの成長はこっからだ!」
薄暗い怪しげな部屋の扉がノックされる。
「ん、どうぞ」
「冴葉、これお前の仕業だろ? 結構荒れてるぞ」
無精ひげを生やした男は部屋に入るなり、あるページを開いたタブレットを差し出してくる。
男の声に怒りは混ざっておらず、口元は薄気味悪い笑みを浮かべている。
それを見た冴葉は、男にしては長い髪が覆う後頭部をポリポリと掻きながら奇怪な笑みを浮かべる。
「いやはや、現代の情報拡散力には恐れ入りますね。これはシステムを元に戻した方が良さそうだ」
「そうだな。燃え上がった火は即座に鎮火しないと大変なことになる」
『システムコード00042-KIFを使用しますか?』
「相変わらずそのタイピング速度に目を疑うよ」
「僕の一番の特技です。きっひっひ」
『システムコード00042-KIFを適用しました』
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「まずは一人目」
ファーズをガリウスさんの首を目掛け振るう。避けようがないであろう一振り。仮にガリウスさんが瞬歩を持っていたとしても、明確にここへ行くと決め視界に入れている『地』でないと発動は不可能だ。
だが、絶対の自信を含んだ一閃は空をきった。
「……‼」
ファーズが首に触れる瞬間、ガリウスさんの姿が消えたのだ。辺りを見渡すもその姿はどこにも見当たらない。それどころか、周りにはプレイヤーが誰一人としていない。
「なんだ?転移魔術でもあるのか?」
俺、ネロ、ヴラドだけが残り静まり返った森の中で、宙に浮くティオルを手に取り鞘にしまいながらそんなことを考える。
俺、というより魔王には習得できずプレイヤーのみが習得できるスキルが無いとも限らない。『転移を彼のにする魔術』が存在している可能性も0ではないだろう。
そう思いはしたのだが
「でも、それなら俺がプレイヤーを倒すことがほぼ不可能になるしな」
もしそんな魔術が存在していた場合、俺がプレイヤーを倒すためには一撃で仕留めなければいけない。
『撃破対象は99万9999人』『期間は2年以内』という条件を設置しておいて、これ以上の負荷をかけるとは思えない。
俺をこんな目に遭わせたあのゲームワールドだ。俺の精神面のことを考慮していないわけが無いだろう。
「うーーん……。まあいっか」
どうせいくら考えても答えが分かるわけでもない。ひとまずこの件は放置だ。
「ヴラド、お疲れ様。助かったよ」
これから城へ帰還する。現在地はLv30辺りの魔物が蔓延る場だ。特にこれ以上ヴラドを必要とする場面は道中ではないだろう。
「お力になれたようで何よりでございます」
ヴラドが満面の笑みを浮かべ貴族風の礼をする。
「召喚解除」
召喚解除を発動すると、ヴラドの体が瞬時に消える。
「ネロ、乗るぞ」
「どうぞお乗りください」
毛皮をモフモフしながらネロに跨る。どうやら乗り易さを意識したようで、若干足を曲げ姿勢を低くしている。
「よし、道は俺が指示する。取り敢えずまっすぐ進んでくれ」
ナビゲートは目的地に到達するか、意図的に発動を取りやめない限り効果は永続する。
「畏まりました。行きます」
ネロが大地を踏みしめ、駆ける。
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「……は! ……あれ? ここ、エレクトルか? 撃破されたはずじゃ……」
スグルが目を覚ますと、そこは転移石碑が置いてあった洞窟の中だった。
「ふふ、ようやく起きた。どう? 調子は」
スグルの様子をうっすらと笑みを浮かべた表情でニーアが見つめながら問う。
「うん、調子は大丈夫。でも、どうして俺達ここにいるんだ? ……あの変な石もなくなってるし」
体を起こしたスグルがニーアの問いに答えながら、転移石碑があった方へ顔を向ける。
「さっき運営からのアナウンスがあったんだが、どうやらバグが発生したみたいだ」
「バグ?」
スグルの問いにカナタが安堵の籠もった表情で答える。
「ああ、どうやらあの『転移石碑』はストーリークリア後に使用可能になるものらしいんだ。それが、バグが発生し俺らのようなクリア前のプレイヤーにも表示されていたようだ。それを修正したためここに戻ってきたようだな」
「なる、ほどな。まあ、俺に難しい事は分からねえけど、とにかくそのバグってやつが起きたおかげで命拾いしたってことだよな」
スグルの声を聞いた瞬間、残りの4人の表情が険しくなる。
「……そうだな。少しでもバグの修正が遅れていれば、俺は魔王に撃破されていた」
ガリウスが拳に力を籠めながら言う。
「そうね。私は魔王ではない、彼の従えてる魔物にすら敵わなかったわ」
「私なんて、敵わないどころか皆の足を引っ張っちゃったし……」
――パンッ
一人一人が言葉を洞窟に響かせる度重くなる空気を見かねたカナタが手を叩く。
「これはゲームだ。本当に死ぬわけじゃない。一回負けたくらいでそんなに落ち込むな、もっと楽しもうぜ! 確かにあいつらに勝てなかったのはとても悔しい」
皆の注目を集めたカナタの言葉が一瞬途切れ、闘志の籠もった瞳になり再び口を開く。
「だが、勝てない相手がいてこそゲームってのは楽しいんだ! 皆、あいつに負けて悔しいんだろ? なら、勝てるようになるまで強くなればいい! 俺らなら出来る、そうだろ?」
「ああ、そうだな」
「当たり前だろ、何言ってんだ。っへへ」
「ええ、そうね」
「う、うん。そうだね、きっと勝てる!」
場の空気の重みが消え、活気が溢れる。
「見とけ魔王、俺らの成長はこっからだ!」
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