9 / 32
第一章 第二王子との出会い
9.疑念
しおりを挟む
「君が復讐する気がないなら、これからどうするの?」
アルベルトは心底不思議だと言うように首を傾げて聞いてきた。
彼の疑問は最もだろう。
だって、当初の目的はエドワードを見返すことだったのだから。
その為にアルベルトが必要で、私は彼に同行してもらったわけだけど……。
それも今となっては無くなってしまった。
そっか、これからのことを考えて良いんだ。
思えば今まで、目の前のことで精一杯だったから、未来なんて考えてなかったかも。
「まあ俺としては、このままここに住んでもらっても良いんだけどね。」
「ここに……?」
アルベルトの言葉にハッと現実へと引き戻された私は、周りにあるものに目を向ける。
この部屋、シンプルだけどすごく高そう。
どうやらただの宿ではないということに気づき、一つの、嫌な予感がしてくる……。
……この造り、見たことあるかも。
そう思った時にはもう遅かった。
「そ。俺のお嫁さんになって、一緒に王宮に住もうってこと。」
「……!?」
それはそれは嬉しそうにとんでもないことを提案するアルベルト。
私はやっぱりゲームの攻略対象は言うことが違うな……なんて現実逃避をすることでなんとか平穏を保っていた。
……ちょっと待って。
お嫁さんって、実質后妃なんじゃ……?
だって私という後ろ盾を手にしたらエドワードなんて相手にもならない。
そんな考えがよぎったが、すぐに否定する。
いやいや、アルベルトに限ってそんなことあるはずがない。
だって、ゲームでも好成績を収めないとヒロインに見向きもしない人だよ?
ヒロインが聖女であっても、一切。
そもそも王太子になることに執着してないし。
自分が安定した地位につければそれで良いやって感じの人だった。
それなのに……
『プロポーズには少し早かったかな?また赤くなってるのかわい。あーでも、こうやってずっと顔眺めとくのもありかも。』
っ……!
なんで!
なんでこんなに甘々なの!?
こんなの、プレイヤーが見たらびっくりしちゃうよ。
キャラがあまりにも違いすぎもん。
攻略した後もこんなに優しかったかどうか……。
いや、言葉はゲーム通り、なのか……?
なら、心の中ではずっとこんなこと思ってたってこと!?
……ちなみに、彼に心の声が読めることは伝えていない。
これは私の切り札になるかもしれない能力だし、対策されてしまったら意味がないから、伝えないことにしたのだ。
だから、私が使えるのは全属性のみだって言ってある。
全属性でもこの世界じゃ凄いことだしね。
アルベルトも驚いていたし。
それにどうやら、全属性使えるのは転生者の特権ではないらしい。
アルベルトによると、前回来た人は3属性だそうだ。
どれだけ魔法が使えるのかは、魔法の適正的なのが関係してるのかな。
今度神殿に行って女神様に聞いてみよう。
そんなふうに考え込んでいると、ふとアルベルトが真剣な表情になってこちらを見ていることに気がついた。
それでどうしたのか尋ねる様に首を傾げると、
「……でもその前に、君の名前を聞いとかないとね。」
なんて言われてしまった。
いつかは聞かれるだろうと覚悟を決めていたつもりだったけど、アルベルトの言葉に顔が強張ってしまったのを感じた。
もう、ずっと呼ばれていないその名前を、一度は失ってしまったその名前を私は軽々しく口にしてしまって良いのか分からなかったからだ。
アルベルトもいつもと違う私の様子に心配そうにしてこちらの出方を伺っている様だった。
心配をかけるくらいなら、もういっそ……
『早く名前を呼びたいな。……結婚するのにも必要だし。』
「……!」
そんな考えがよぎった瞬間、思っていたよりも不純な動機で聞かれていることを知り、拍子抜けしてしまう。
あーもう。
気負ってる私が馬鹿みたいじゃん。
でも……、やっぱりアルベルトはアルベルトだ。
幾分か落ち着きを取り戻した私は、アルベルトの青い綺麗な瞳を見つめた。
うん、なんとかなりそう。
そう思った私は口を開いて名前を告げようとした。
だけど、
「……姿が変わってからずっと、君のことをクロエ嬢って呼んで無かったんだけど、気づいてた?」
アルベルトのその言葉によってかき消されてしまったんだ。
アルベルトは心底不思議だと言うように首を傾げて聞いてきた。
彼の疑問は最もだろう。
だって、当初の目的はエドワードを見返すことだったのだから。
その為にアルベルトが必要で、私は彼に同行してもらったわけだけど……。
それも今となっては無くなってしまった。
そっか、これからのことを考えて良いんだ。
思えば今まで、目の前のことで精一杯だったから、未来なんて考えてなかったかも。
「まあ俺としては、このままここに住んでもらっても良いんだけどね。」
「ここに……?」
アルベルトの言葉にハッと現実へと引き戻された私は、周りにあるものに目を向ける。
この部屋、シンプルだけどすごく高そう。
どうやらただの宿ではないということに気づき、一つの、嫌な予感がしてくる……。
……この造り、見たことあるかも。
そう思った時にはもう遅かった。
「そ。俺のお嫁さんになって、一緒に王宮に住もうってこと。」
「……!?」
それはそれは嬉しそうにとんでもないことを提案するアルベルト。
私はやっぱりゲームの攻略対象は言うことが違うな……なんて現実逃避をすることでなんとか平穏を保っていた。
……ちょっと待って。
お嫁さんって、実質后妃なんじゃ……?
だって私という後ろ盾を手にしたらエドワードなんて相手にもならない。
そんな考えがよぎったが、すぐに否定する。
いやいや、アルベルトに限ってそんなことあるはずがない。
だって、ゲームでも好成績を収めないとヒロインに見向きもしない人だよ?
ヒロインが聖女であっても、一切。
そもそも王太子になることに執着してないし。
自分が安定した地位につければそれで良いやって感じの人だった。
それなのに……
『プロポーズには少し早かったかな?また赤くなってるのかわい。あーでも、こうやってずっと顔眺めとくのもありかも。』
っ……!
なんで!
なんでこんなに甘々なの!?
こんなの、プレイヤーが見たらびっくりしちゃうよ。
キャラがあまりにも違いすぎもん。
攻略した後もこんなに優しかったかどうか……。
いや、言葉はゲーム通り、なのか……?
なら、心の中ではずっとこんなこと思ってたってこと!?
……ちなみに、彼に心の声が読めることは伝えていない。
これは私の切り札になるかもしれない能力だし、対策されてしまったら意味がないから、伝えないことにしたのだ。
だから、私が使えるのは全属性のみだって言ってある。
全属性でもこの世界じゃ凄いことだしね。
アルベルトも驚いていたし。
それにどうやら、全属性使えるのは転生者の特権ではないらしい。
アルベルトによると、前回来た人は3属性だそうだ。
どれだけ魔法が使えるのかは、魔法の適正的なのが関係してるのかな。
今度神殿に行って女神様に聞いてみよう。
そんなふうに考え込んでいると、ふとアルベルトが真剣な表情になってこちらを見ていることに気がついた。
それでどうしたのか尋ねる様に首を傾げると、
「……でもその前に、君の名前を聞いとかないとね。」
なんて言われてしまった。
いつかは聞かれるだろうと覚悟を決めていたつもりだったけど、アルベルトの言葉に顔が強張ってしまったのを感じた。
もう、ずっと呼ばれていないその名前を、一度は失ってしまったその名前を私は軽々しく口にしてしまって良いのか分からなかったからだ。
アルベルトもいつもと違う私の様子に心配そうにしてこちらの出方を伺っている様だった。
心配をかけるくらいなら、もういっそ……
『早く名前を呼びたいな。……結婚するのにも必要だし。』
「……!」
そんな考えがよぎった瞬間、思っていたよりも不純な動機で聞かれていることを知り、拍子抜けしてしまう。
あーもう。
気負ってる私が馬鹿みたいじゃん。
でも……、やっぱりアルベルトはアルベルトだ。
幾分か落ち着きを取り戻した私は、アルベルトの青い綺麗な瞳を見つめた。
うん、なんとかなりそう。
そう思った私は口を開いて名前を告げようとした。
だけど、
「……姿が変わってからずっと、君のことをクロエ嬢って呼んで無かったんだけど、気づいてた?」
アルベルトのその言葉によってかき消されてしまったんだ。
362
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
捨てられ侯爵令嬢ですが、逃亡先で息子と幸せに過ごしていますので、邪魔しないでください。
蒼月柚希
恋愛
公爵様の呪いは解かれました。
これで、貴方も私も自由です。
……だから、もういいですよね?
私も、自由にして……。
5年後。
私は、ある事情から生まれ育った祖国を離れ、
親切な冒険者パーティーと、その地を治める辺境伯様のご家族に守られながら、
今日も幸せに子育てをしています。
だから貴方も勝手に、お幸せになってくださいね。
私のことは忘れて……。
これは、お互いの思いがこじれ、離れ離れになってしまった一組の夫婦の物語。
はたして、夫婦は無事に、離婚を回避することができるのか?
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
婚約破棄が私を笑顔にした
夜月翠雨
恋愛
「カトリーヌ・シャロン! 本日をもって婚約を破棄する!」
学園の教室で婚約者であるフランシスの滑稽な姿にカトリーヌは笑いをこらえるので必死だった。
そこに聖女であるアメリアがやってくる。
フランシスの瞳は彼女に釘付けだった。
彼女と出会ったことでカトリーヌの運命は大きく変わってしまう。
短編を小分けにして投稿しています。よろしくお願いします。
踏み台(王女)にも事情はある
mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。
聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。
王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
出来損ないの私がお姉様の婚約者だった王子の呪いを解いてみた結果→
AK
恋愛
「ねえミディア。王子様と結婚してみたくはないかしら?」
ある日、意地の悪い笑顔を浮かべながらお姉様は言った。
お姉様は地味な私と違って公爵家の優秀な長女として、次期国王の最有力候補であった第一王子様と婚約を結んでいた。
しかしその王子様はある日突然不治の病に倒れ、それ以降彼に触れた人は石化して死んでしまう呪いに身を侵されてしまう。
そんは王子様を押し付けるように婚約させられた私だけど、私は光の魔力を有して生まれた聖女だったので、彼のことを救うことができるかもしれないと思った。
お姉様は厄介者と化した王子を押し付けたいだけかもしれないけれど、残念ながらお姉様の思い通りの展開にはさせない。
役立たずと捨てられた万能建築士、隣国で「聖域」を造って無双する。今さら復興のために戻れ? ご自分たちで瓦礫でも積んでいればよろしいのでは?
しょくぱん
恋愛
「お前の魔法は石を積むだけの土木作業だ」と婚約破棄されたので、城を支えていた『構造維持結界』をすべて解除して出て行きますね。今さら「城が崩れる!」と泣きつかれても、私は隣国で氷結の皇帝陛下と「世界最高の聖域」を造っていますので、一切知りません。
王国唯一の建築魔導師アニエスは、その地味な見た目と能力を理由に、王太子シグムンドから婚約破棄と国外追放を言い渡される。 彼の隣には、派手な光魔法を使う自称聖女の姿があった。
「お前の代わりなどいくらでもいる。さっさと出て行け!」 「……分かりました。では、城にかけていた『自動修復』『耐震』『空調』の全術式を解約しますね」
アニエスが去った直後、王城は音を立てて傾き、噴水は泥水に変わり、王都のインフラは崩壊した。 一方、アニエスは隣国の荒野で、呪われた皇帝レオンハルトと出会う。彼女が何気なく造った一夜の宿は、呪いを浄化するほどの「聖域」だった。
「君は女神か? どうか私の国を救ってほしい」 「喜んで。ついでに世界一快適な住居も造っていいですか?」
隣国がアニエスの力で黄金の国へと発展する一方、瓦礫の山となった母国からは「戻ってきてくれ」と悲痛な手紙が届く。 だが、アニエスは冷ややかに言い放つ。 「お断りします。契約外ですので、ご自分で支えていればよろしいのでは?」
これは、捨てられた万能建築士が隣国で溺愛され、幸せを掴む物語。 そして、彼女を捨てた者たちが、物理的にも社会的にも「崩壊」し、最後には彼女が架ける橋の『礎石』として永遠に踏まれ続けるまでの、壮絶な因果応報の記録。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる