しゃんけ荘の人々

乙原ゆう

文字の大きさ
9 / 44
1.203号室 住人 橘鈴音

9.

しおりを挟む
  食事が終わり、各自使用したお皿を洗って後片付け。
 その後美沙恵ちゃんが日本茶を入れてくれた。美沙恵ちゃんが入れてくれる日本茶も美味しいのだ。

「美沙恵ちゃんの入れてくれるお茶、好き」

 ふわりと香る緑茶。とろりと甘みのあるお茶よりきりりとした味が楽しめる煎茶が食後には嬉しい。あー、幸せだ。1日に何度も美沙恵ちゃんのお茶を飲めるなんてめったにないよ。

「ありがとー」

 美沙恵ちゃんは嬉しそうに笑った。
 お茶や紅茶は、入れ方ももちろん大事だけど、好みの茶葉に出会えるかどうかも重要なんだそうだ。美沙恵ちゃんの好みが私の好みと似てるから美沙恵ちゃんのお茶が美味しいと思えるんだそうだ。

「伊織くんにお茶入れ伝授しとこうかな~。茶葉コレクション活用して欲しいし」

 キッチン戸棚にずらりと並べてある紅茶缶、少し見ただけだけどメーカーも様々でざっと20缶弱はあったんじゃないのかな。是非とも美味しく入れて貰いたい。

「そういえば、ティーパックだったけど丁寧に入れてくれたよ?美味しかった」

「でしょう?」

「あんまり適当に入れてたから最初に教えたの。『紅茶美味しく入れられたら女の子にもてるよ~』って」

 確かにちょっとときめいたよ!美沙恵ちゃん流石だ!でもそんなことしなくても伊織くんは人気あるはずだけどね。

「鈴ちゃんにも時間があれば伝授しときたいんだけどなぁ。ちょっと時間が足りないからなぁ」

 基本の入れ方はさることながら、茶葉の種類やメーカーによって微妙に分量やら蒸らし時間を変えてるそうだ。……そこまでこだわってたんだ。そりゃ美味しいはずだよ。

「美沙恵さん。伊織は勉強に部活にと大変ですから、私に受け継がせて貰えませんか?」

「いつきくんに?」

「はい。もともと紅茶も好きですし。自分で言うのも何ですが凝り性なのでとても興味があります」

「うーん」

「それに伊織もいつまでここにいるかもわかりませんし。できればここに紅茶も根付かせたいのですが」

 管理人さんはぐいぐい押してくる。にっこり穏やか、尚且つどっしりと。
 美沙恵ちゃんはしばらく考えていた。

「まぁ、いいか?いいよ、いつきくんにお願いするよ」

「ありがとうございます」

 管理人さんは凄くうれしそうだ。研究心に火がついたのかな。

「鈴ちゃん、いつきくんに美味しいお茶入れてもらってね~」

いや、だからまだ入居決まってないからね。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

N -Revolution

フロイライン
ライト文芸
プロレスラーを目指す桐生珀は、何度も入門試験をクリアできず、ひょんな事からニューハーフプロレスの団体への参加を持ちかけられるが…

処理中です...