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2.202号室 住人 宮間礼子
22.
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「お疲れ」
夜の9時過ぎ。帰宅して食堂に向かうと小早川がいた。蕎麦を茹でようとしていたので自分の分もすかさず頼む。ここのアパート、新入居者があった日は住人全員に蕎麦が振る舞われる。夕食の時間に間に合わない者も、この日ばかりは食堂に蕎麦が置いてあるので食べにやってくる。
「普通、『私がやりますぅ』って言うんじゃないんですか?」
あきれた口調の小早川は、それでも鍋に水を増やしコンロに火をつける。
「あ!エビの天ぷらある!温めよう」
まるっと無視して天ぷら数種をトースターに入れようとすると小早川に止められる。
「ああっ。待ってください!アルミホイルに包んで。焦げますよ」
「面倒だからいいじゃない。焦げる前に引き上げるし」
「…………」
意外と几帳面な小早川に無言でにらまれそろりと手をひく。奴は丁寧にアルミホイルに包み直して天ぷらをトースターへ入れた。
「……あんまり細かいと彼女に嫌がられるわよ」
「女なんて不要ですからご心配なく。それより宮間さんこそあんまりがさつだと男にあきれられますよ」
「そんな器の小さい男はこっちから願い下げだわよ」
などと言い合いしてると玄関からいつきが入ってきた。
「ああ、小早川さん、礼子さんも。おかえりなさい」
一緒に入ってきたのはシェパードの花子。小早川をめがけて飛んできた。
「いやぁ、花子がですね。小早川さんの帰宅を察知してこっちに連れて行けとうるさくて。いつもはそんなことないんですけどねぇ。食堂にいらっしゃるのがわかったみたいで」
さすが犬だ!賢い。けれどそのデレデレとにやけ顔?でお腹を向けて転ぶのはどうかと思うわよ。仮にも見た目凜々しいシェパードなのに。
花子の小早川好きは相当なもので。休みの日には散歩によく連れて行ってもらえることもあり歓迎ぶりは相当だ。そして小早川も人間のメスには素っ気ないけれど犬のメスには優しい。つまり相思相愛である。
「よしよし」と言いながら花子のお腹を撫でて同じくデレデレとだらしない笑顔を見せる小早川は……別人だ。誰しも心許す者には自然と笑顔になるらしい。
戯れる小早川と花子を放置して蕎麦の準備をと……思っていたらいつきがしてくれている。いつきは気が利くナイスガイだ。
ホクホクしながら丼をだす。暖かい天ぷら蕎麦だ。
蕎麦ができあがり、小早川とふたりでいただきますをする。出汁がきいたお蕎麦、最高だ。
「光井さんの桜餡のシフォンケーキあるんですけど。いかがですか?」
ズルズル蕎麦をすする横でいつきが聞いてくる。もちろんいただきますとも。
いつきは皿にシフォンケーキを切り分け、可愛らしくイチゴと生クリームを添えて盛り付けていく。本当にマメだな。
「鈴ちゃんが喜びそうなケーキねぇ?」
「鈴音さんの引っ越し祝いでしょうね。光井さんマメですから」
いや、アンタも十分マメだよ。
「そういえば……鈴音さん、随分と変わられましたね。」
いつきはにっこりにっこり微笑みながらケーキを盛り付ける。
「……言っとくけど。アタシは一言も勧誘してないからね!?本人が希望したんだからね!依頼されたらプロですから。そこんとこ忘れないでよね!」
怖いわ、怖い。アタシは何も悪いことはしてないわよっ。
「まぁ、やってしまったものは仕方ありません」
やってしまったって……人聞きの悪い。
「というわけで小早川さん。鈴音さんをみかけても睨まないでくださいね?でも愛想笑いや営業スマイルは一切不要ですからね。あたりさわりなく住人として節度あるお付き合いをお願いしますね」
急に話をふられた小早川がビックリしている。そらそうだ。そんな注意受けるなんて思っても見なかったって顔してるよ。しかも営愛想笑い不要でどうやって怖がらせないように接しろと?
「……善処します」
何だか最近、小早川が不憫だ。
夜の9時過ぎ。帰宅して食堂に向かうと小早川がいた。蕎麦を茹でようとしていたので自分の分もすかさず頼む。ここのアパート、新入居者があった日は住人全員に蕎麦が振る舞われる。夕食の時間に間に合わない者も、この日ばかりは食堂に蕎麦が置いてあるので食べにやってくる。
「普通、『私がやりますぅ』って言うんじゃないんですか?」
あきれた口調の小早川は、それでも鍋に水を増やしコンロに火をつける。
「あ!エビの天ぷらある!温めよう」
まるっと無視して天ぷら数種をトースターに入れようとすると小早川に止められる。
「ああっ。待ってください!アルミホイルに包んで。焦げますよ」
「面倒だからいいじゃない。焦げる前に引き上げるし」
「…………」
意外と几帳面な小早川に無言でにらまれそろりと手をひく。奴は丁寧にアルミホイルに包み直して天ぷらをトースターへ入れた。
「……あんまり細かいと彼女に嫌がられるわよ」
「女なんて不要ですからご心配なく。それより宮間さんこそあんまりがさつだと男にあきれられますよ」
「そんな器の小さい男はこっちから願い下げだわよ」
などと言い合いしてると玄関からいつきが入ってきた。
「ああ、小早川さん、礼子さんも。おかえりなさい」
一緒に入ってきたのはシェパードの花子。小早川をめがけて飛んできた。
「いやぁ、花子がですね。小早川さんの帰宅を察知してこっちに連れて行けとうるさくて。いつもはそんなことないんですけどねぇ。食堂にいらっしゃるのがわかったみたいで」
さすが犬だ!賢い。けれどそのデレデレとにやけ顔?でお腹を向けて転ぶのはどうかと思うわよ。仮にも見た目凜々しいシェパードなのに。
花子の小早川好きは相当なもので。休みの日には散歩によく連れて行ってもらえることもあり歓迎ぶりは相当だ。そして小早川も人間のメスには素っ気ないけれど犬のメスには優しい。つまり相思相愛である。
「よしよし」と言いながら花子のお腹を撫でて同じくデレデレとだらしない笑顔を見せる小早川は……別人だ。誰しも心許す者には自然と笑顔になるらしい。
戯れる小早川と花子を放置して蕎麦の準備をと……思っていたらいつきがしてくれている。いつきは気が利くナイスガイだ。
ホクホクしながら丼をだす。暖かい天ぷら蕎麦だ。
蕎麦ができあがり、小早川とふたりでいただきますをする。出汁がきいたお蕎麦、最高だ。
「光井さんの桜餡のシフォンケーキあるんですけど。いかがですか?」
ズルズル蕎麦をすする横でいつきが聞いてくる。もちろんいただきますとも。
いつきは皿にシフォンケーキを切り分け、可愛らしくイチゴと生クリームを添えて盛り付けていく。本当にマメだな。
「鈴ちゃんが喜びそうなケーキねぇ?」
「鈴音さんの引っ越し祝いでしょうね。光井さんマメですから」
いや、アンタも十分マメだよ。
「そういえば……鈴音さん、随分と変わられましたね。」
いつきはにっこりにっこり微笑みながらケーキを盛り付ける。
「……言っとくけど。アタシは一言も勧誘してないからね!?本人が希望したんだからね!依頼されたらプロですから。そこんとこ忘れないでよね!」
怖いわ、怖い。アタシは何も悪いことはしてないわよっ。
「まぁ、やってしまったものは仕方ありません」
やってしまったって……人聞きの悪い。
「というわけで小早川さん。鈴音さんをみかけても睨まないでくださいね?でも愛想笑いや営業スマイルは一切不要ですからね。あたりさわりなく住人として節度あるお付き合いをお願いしますね」
急に話をふられた小早川がビックリしている。そらそうだ。そんな注意受けるなんて思っても見なかったって顔してるよ。しかも営愛想笑い不要でどうやって怖がらせないように接しろと?
「……善処します」
何だか最近、小早川が不憫だ。
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