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遺されたもの
叶えられない約束
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「暇乞いに参りました]
戸口に立つ女の子がそう言った。
彼女は、ドレスを脱いで防具を身に付け剣を下げている。彼女と共に立つのは、お仕着せを着た5人の侍女たち。
「この扉は封鎖します。お一人で心細いかと存じますが、我らは最後の一人まで陛下をお守りいたします。どうかお心を強くお持ち下さい」
侍女頭のヤーリム夫人が震える声を必死に抑えてそう言った。
明り取りも無い小さな部屋。恐怖と絶望に押しつぶされそうなぼくは、俯いたまま何も言葉が出なかった
侍女達が下がり、最後に女の子は無言のまま踵を返すと、ドアを閉めようとした。
「もう…」
必死で絞り出した声は、呟くような小さなものだった。だが彼女の耳には届いたらしい。足を止め振り返ると、次の言葉を待っている。
「もう……もうやめてよ。みんな死んじゃうじゃないか、ぼくひとりのために!」
親類である公爵に追われるぼくを匿ってくれた男爵夫妻…女の子の両親…は、二人とも戦死したと報告があった。最後まで残った男たち…年寄りや文官までもが、皆ぼくに暇乞いをして広間を出て行き一人も戻らない。この部屋と続きの広間に居るのは、もうぼくと女の子と5人の侍女だけだ。そしてとうとう彼女たちも…。彼女も、ヤーリム夫人も、四人の侍女たちも、皆死ぬ覚悟でぼくを護ろうとしている。
そんな彼女たちを前にして、もう王らしい言葉を取り繕う事ができなかった。
ぼくを差し出して降伏すれば、皆は助かる……そう言おうとしたら、彼女の雰囲気ががらりと変わった。
「心配しないの!わたしが必ず護るよ!。あと少し、もうほんの少しでわたし達の勝ちなんだから!」
それは絶体絶命なのに、まったくそぐわない明るい声だった。それに、今まで貴族らしく物静かに話す娘だったのに、言葉遣いすら乱暴になっている。
ぼくは目を丸くしたまま、反射的に答えることしかできなかった。
「え?勝ち??」
まだ残った味方が必死に戦っているけど、もう時間の問題だ。ここからどうやったら勝てるのか見当もつかない。
「そう!爺ちゃんがここに向かっているからね。しかも連中は私の母様を殺してしまった。娘を殺された爺ちゃんは、連中を絶対許さない。勇者の前では万の兵だろうが、公爵の戦士長だろうが雑草刈るのと同じだよ。つまりは、勇者が来るまで陛下を守り切れば勝ち、守り切れなきゃ負け。私たちの戦ってる相手は時間なんだよ。そして私達は必ずその時間を稼ぐ。だからもう少しで勝てる!」
圧倒的な公爵の兵に今まで持ちこたえていたのは、男爵夫妻…特にレベッカ夫人のおかげだった。レベッカ夫人は勇者の娘だ、彼女を害すれば勇者を敵に回す事になる。それを恐れた兵は及び腰になり、そのおかげでどうにか持ちこたえていた。
だが…乱戦の中で夫人が命を落としてしまった。それは不幸な流れ矢だったと兵は言っていた。敵兵は混乱しかけたが、戦士長が後退を許さなかった。こうなれば勇者が来る前にぼくを殺す以外に無い。どの道許されないのであれば、せめて主の命だけでも果たさねばならない。今や公爵の兵の方が死に物狂いになっている。
勇者はそれだけ恐れられている。だから時間を稼げば勝ちだというのは本当なのだろう。だけど…
『勇者が来るまでぼくを護れば勝ち』
……そう、その勝利に彼女たちの生死は含まれていない。彼女たちには戦う力なんか無い。死に物狂いの敵兵に、最後はきっとしがみ付いてでも時間を稼ぐつもりなのだ。
「なんで…そんな…ぼくはまだ何もしてない王なのに…公爵のほうがよっぽど…」
「そりゃ、公爵が優秀な領主なのは確かだけどね。だけど正しくない。陛下を殺そうなんてのは、まったく間違ってる。優秀だけど間違ったから、1-1で0っ!。陛下はまだ何もしていないけれど、正しい手続きで王になったから、0+1で1、だから陛下の方が上。もっと自信持って」
「そんな!…そんな子供みたいなことを…」
そんな簡単な話じゃない!そう言いたかった。だけど彼女はちょっとだけ真面目な顔になった。
「……えぇ、わたしは子供だから、自分が正しいと思った事をする。わたしはあいつらが絶対許せない、両親の仇だしね。……あ、ヤーリム夫人や侍女の皆は違うよ。大人だから『こんな子供を殺そうなんて許せない』って思って頑張ってる。子供を守る女は強いんだから」
「だったらあなたもここに、あなたも子供じゃないか!」
騎士でも無い。ただ剣を学んだだけの女の子が、どうして命を捨てて戦わなきゃいけないのだ。それに……最後に…ひとりきりなんて…嫌だ………
「剣を振れるの、もうわたしだけだからね、出し惜しみしたら助かるもんも助からないし。母様を殺したアホ共に落とし前つけさせなきゃ気が済まないよ」
勇ましく言ってから、彼女はちょっとだけ口ごもった。
「それにわたしはほら……『おねぇちゃん』だからね」
どんな言葉より、その一言で…覚悟が判ってしまった…。
王を護るために命を捨てる騎士と同じように、年下の子を護るために命を捨てるのは姉として当たり前だと思っているのだ。
堪えていた涙が流れだして止められない。涙でかすむ目で彼女にしがみついた。
「絶対、絶対帰って来て。どんなに怪我しても、絶対。いつまでも待っているから!」
必死のお願いをしたけど、彼女はとうとう「はい」とは答えなかった。
「うーん…難しいお願いだけど…、まぁ、これでも不可能を可能にして来た勇者の孫だしね、ちょっと気合入れて頑張ってみようかな~……」
「きっと…きっと。そうすれば、なんでも望む通りにする!約束するから!」
今ここで何を言っても、なんの裏付けもない口約束だ。それでも、命を捨てて戦ってくれる彼女には、最大限の褒美を約束しなきゃならない。もっと、もっと王らしい言葉を掛けたかった。だけど、もうそれしか言う言葉が思いつかなかった。
苦笑した彼女は、ぼくを引きはがしてしゃがむと目を合わせて真剣な顔になった。
「陛下、王が軽々しく『望むままに』などと言ってはなりませんよ。……ですが、お心は確かに頂戴しました。わたしの望みを申し上げます……」
「陛下、そろそろお時間にございます…」
侍従の声で王は目を開けた。
あれから20年。王はあの日を片時も忘れた事はない
あの日、自分より少しだけ年上の少女は、目の前の廊下にまで達しようとする敵兵を止めるために武装して広間を出て……とうとう戻らなかった。
生死を分けたのはほんの僅か…刹那の差だった。トールが広間の前に達したのは、彼女が倒れるのとほぼ同時だった。その瞬間、トールの発した怒りの魔力は、それだけで廊下の敵を無力化してしまった。王も、広間を隔ててなお、心臓を握りつぶされるような恐怖を味わった。広間の侍女たちは全員気を失い、正気に戻った後も折に触れてぶり返す恐怖に身体が震え、普通の生活に戻るのにかなりの日数を要するほどだった。彼女の言う通り『勇者が間に合えば勝ち』だった。
あれを…間に合ったと言っていいのだろうか?。勝ったと言っていいのだろうか?
王はずっと答えが出せずにいる。奥の部屋に押し込まれていた自分と、広間で最後の抵抗をする覚悟だった侍女5人だけが助かった。生き残ったのは、それだけだった。
あの日した約束を叶える相手は居なくなってしまった。
あれから20年。勇者が孫を後継者に指名したという情報が飛び込んで来た。その情報は閣僚たちが堰き止めていたが、それとは別のルートで王にも直接もたらされていた。
事績を調べても、死者を生き返らせたなどという奇跡は〈勇者〉ですら起こした事はない。しかも、その場で傷を癒して蘇生させたのではない。もう20年も前に死んだ肉体をどうやって蘇生させたというのだ。
彼女が言った通り、勇者が不可能を可能にしたのか?
彼女が…おねぇちゃんが本当に帰って来たのか……
それを確かめねばならない。
「時間だ」
「はい」
同じ頃、護衛に告げられたウルスラは立ち上がると、頭にベールを付けた。いくら非公式の謁見とはいえ、さすがに男装するのは憚って今日のウルスラは珍しくスカート姿だ。
「頼むから騒ぎは起こしてくれるなよ」
オーサイム卿が小声でそう呟いたが、ウルスラはにっこり微笑んだだけだ。何しろ相手次第なんで、約束なんかできる訳が無い。促され、そのまま控えの間を出た。
謁見のために用意された部屋は、城の奥まった場所にあった。王の私的な空間の一つなのだろう。元は応接のための部屋のようでさほどの広さでは無い。今は調度は片付けられ、上座の一番奥に仮の玉座を設え広間のように整えてある。
部屋の左右にはお仕着せを着た護衛が二人ずつ。後ろにはオーサイム卿が控えている。もし事あらば、彼も護衛の一人としてウルスラを押さえる側に回るだろうし、おそらくはその後に王宮に危険人物を連れ込んだ責任を追及される事になるだろう。
「国王陛下、ご入室!」
戸口の先触れが告げると、ウルスラは片足を引き頭を下げた。
ドアの開く音の後、複数の足音が続く。
……だが、突然の叫び声がその足音を止めた。
「陛下、御下がり下さい!この者は人間ではございませぬ!」
年配の女性の声だ。事前にオーサイム卿に聞いていた話からすると、宮廷魔法使いのイクスという女性だろう。並みの観察眼では見抜けないシリオン渾身の身体を人間では無いと見抜いたのは、さすがは宮廷付きというべきだろうか。とはいえ、ここで王に下がられてしまったら台無しだ。関心してばかりもいられない。
頭を垂れたまま、ウルスラは半目になっていた。
(やれやれ…のっけからコレかよ…)
戸口に立つ女の子がそう言った。
彼女は、ドレスを脱いで防具を身に付け剣を下げている。彼女と共に立つのは、お仕着せを着た5人の侍女たち。
「この扉は封鎖します。お一人で心細いかと存じますが、我らは最後の一人まで陛下をお守りいたします。どうかお心を強くお持ち下さい」
侍女頭のヤーリム夫人が震える声を必死に抑えてそう言った。
明り取りも無い小さな部屋。恐怖と絶望に押しつぶされそうなぼくは、俯いたまま何も言葉が出なかった
侍女達が下がり、最後に女の子は無言のまま踵を返すと、ドアを閉めようとした。
「もう…」
必死で絞り出した声は、呟くような小さなものだった。だが彼女の耳には届いたらしい。足を止め振り返ると、次の言葉を待っている。
「もう……もうやめてよ。みんな死んじゃうじゃないか、ぼくひとりのために!」
親類である公爵に追われるぼくを匿ってくれた男爵夫妻…女の子の両親…は、二人とも戦死したと報告があった。最後まで残った男たち…年寄りや文官までもが、皆ぼくに暇乞いをして広間を出て行き一人も戻らない。この部屋と続きの広間に居るのは、もうぼくと女の子と5人の侍女だけだ。そしてとうとう彼女たちも…。彼女も、ヤーリム夫人も、四人の侍女たちも、皆死ぬ覚悟でぼくを護ろうとしている。
そんな彼女たちを前にして、もう王らしい言葉を取り繕う事ができなかった。
ぼくを差し出して降伏すれば、皆は助かる……そう言おうとしたら、彼女の雰囲気ががらりと変わった。
「心配しないの!わたしが必ず護るよ!。あと少し、もうほんの少しでわたし達の勝ちなんだから!」
それは絶体絶命なのに、まったくそぐわない明るい声だった。それに、今まで貴族らしく物静かに話す娘だったのに、言葉遣いすら乱暴になっている。
ぼくは目を丸くしたまま、反射的に答えることしかできなかった。
「え?勝ち??」
まだ残った味方が必死に戦っているけど、もう時間の問題だ。ここからどうやったら勝てるのか見当もつかない。
「そう!爺ちゃんがここに向かっているからね。しかも連中は私の母様を殺してしまった。娘を殺された爺ちゃんは、連中を絶対許さない。勇者の前では万の兵だろうが、公爵の戦士長だろうが雑草刈るのと同じだよ。つまりは、勇者が来るまで陛下を守り切れば勝ち、守り切れなきゃ負け。私たちの戦ってる相手は時間なんだよ。そして私達は必ずその時間を稼ぐ。だからもう少しで勝てる!」
圧倒的な公爵の兵に今まで持ちこたえていたのは、男爵夫妻…特にレベッカ夫人のおかげだった。レベッカ夫人は勇者の娘だ、彼女を害すれば勇者を敵に回す事になる。それを恐れた兵は及び腰になり、そのおかげでどうにか持ちこたえていた。
だが…乱戦の中で夫人が命を落としてしまった。それは不幸な流れ矢だったと兵は言っていた。敵兵は混乱しかけたが、戦士長が後退を許さなかった。こうなれば勇者が来る前にぼくを殺す以外に無い。どの道許されないのであれば、せめて主の命だけでも果たさねばならない。今や公爵の兵の方が死に物狂いになっている。
勇者はそれだけ恐れられている。だから時間を稼げば勝ちだというのは本当なのだろう。だけど…
『勇者が来るまでぼくを護れば勝ち』
……そう、その勝利に彼女たちの生死は含まれていない。彼女たちには戦う力なんか無い。死に物狂いの敵兵に、最後はきっとしがみ付いてでも時間を稼ぐつもりなのだ。
「なんで…そんな…ぼくはまだ何もしてない王なのに…公爵のほうがよっぽど…」
「そりゃ、公爵が優秀な領主なのは確かだけどね。だけど正しくない。陛下を殺そうなんてのは、まったく間違ってる。優秀だけど間違ったから、1-1で0っ!。陛下はまだ何もしていないけれど、正しい手続きで王になったから、0+1で1、だから陛下の方が上。もっと自信持って」
「そんな!…そんな子供みたいなことを…」
そんな簡単な話じゃない!そう言いたかった。だけど彼女はちょっとだけ真面目な顔になった。
「……えぇ、わたしは子供だから、自分が正しいと思った事をする。わたしはあいつらが絶対許せない、両親の仇だしね。……あ、ヤーリム夫人や侍女の皆は違うよ。大人だから『こんな子供を殺そうなんて許せない』って思って頑張ってる。子供を守る女は強いんだから」
「だったらあなたもここに、あなたも子供じゃないか!」
騎士でも無い。ただ剣を学んだだけの女の子が、どうして命を捨てて戦わなきゃいけないのだ。それに……最後に…ひとりきりなんて…嫌だ………
「剣を振れるの、もうわたしだけだからね、出し惜しみしたら助かるもんも助からないし。母様を殺したアホ共に落とし前つけさせなきゃ気が済まないよ」
勇ましく言ってから、彼女はちょっとだけ口ごもった。
「それにわたしはほら……『おねぇちゃん』だからね」
どんな言葉より、その一言で…覚悟が判ってしまった…。
王を護るために命を捨てる騎士と同じように、年下の子を護るために命を捨てるのは姉として当たり前だと思っているのだ。
堪えていた涙が流れだして止められない。涙でかすむ目で彼女にしがみついた。
「絶対、絶対帰って来て。どんなに怪我しても、絶対。いつまでも待っているから!」
必死のお願いをしたけど、彼女はとうとう「はい」とは答えなかった。
「うーん…難しいお願いだけど…、まぁ、これでも不可能を可能にして来た勇者の孫だしね、ちょっと気合入れて頑張ってみようかな~……」
「きっと…きっと。そうすれば、なんでも望む通りにする!約束するから!」
今ここで何を言っても、なんの裏付けもない口約束だ。それでも、命を捨てて戦ってくれる彼女には、最大限の褒美を約束しなきゃならない。もっと、もっと王らしい言葉を掛けたかった。だけど、もうそれしか言う言葉が思いつかなかった。
苦笑した彼女は、ぼくを引きはがしてしゃがむと目を合わせて真剣な顔になった。
「陛下、王が軽々しく『望むままに』などと言ってはなりませんよ。……ですが、お心は確かに頂戴しました。わたしの望みを申し上げます……」
「陛下、そろそろお時間にございます…」
侍従の声で王は目を開けた。
あれから20年。王はあの日を片時も忘れた事はない
あの日、自分より少しだけ年上の少女は、目の前の廊下にまで達しようとする敵兵を止めるために武装して広間を出て……とうとう戻らなかった。
生死を分けたのはほんの僅か…刹那の差だった。トールが広間の前に達したのは、彼女が倒れるのとほぼ同時だった。その瞬間、トールの発した怒りの魔力は、それだけで廊下の敵を無力化してしまった。王も、広間を隔ててなお、心臓を握りつぶされるような恐怖を味わった。広間の侍女たちは全員気を失い、正気に戻った後も折に触れてぶり返す恐怖に身体が震え、普通の生活に戻るのにかなりの日数を要するほどだった。彼女の言う通り『勇者が間に合えば勝ち』だった。
あれを…間に合ったと言っていいのだろうか?。勝ったと言っていいのだろうか?
王はずっと答えが出せずにいる。奥の部屋に押し込まれていた自分と、広間で最後の抵抗をする覚悟だった侍女5人だけが助かった。生き残ったのは、それだけだった。
あの日した約束を叶える相手は居なくなってしまった。
あれから20年。勇者が孫を後継者に指名したという情報が飛び込んで来た。その情報は閣僚たちが堰き止めていたが、それとは別のルートで王にも直接もたらされていた。
事績を調べても、死者を生き返らせたなどという奇跡は〈勇者〉ですら起こした事はない。しかも、その場で傷を癒して蘇生させたのではない。もう20年も前に死んだ肉体をどうやって蘇生させたというのだ。
彼女が言った通り、勇者が不可能を可能にしたのか?
彼女が…おねぇちゃんが本当に帰って来たのか……
それを確かめねばならない。
「時間だ」
「はい」
同じ頃、護衛に告げられたウルスラは立ち上がると、頭にベールを付けた。いくら非公式の謁見とはいえ、さすがに男装するのは憚って今日のウルスラは珍しくスカート姿だ。
「頼むから騒ぎは起こしてくれるなよ」
オーサイム卿が小声でそう呟いたが、ウルスラはにっこり微笑んだだけだ。何しろ相手次第なんで、約束なんかできる訳が無い。促され、そのまま控えの間を出た。
謁見のために用意された部屋は、城の奥まった場所にあった。王の私的な空間の一つなのだろう。元は応接のための部屋のようでさほどの広さでは無い。今は調度は片付けられ、上座の一番奥に仮の玉座を設え広間のように整えてある。
部屋の左右にはお仕着せを着た護衛が二人ずつ。後ろにはオーサイム卿が控えている。もし事あらば、彼も護衛の一人としてウルスラを押さえる側に回るだろうし、おそらくはその後に王宮に危険人物を連れ込んだ責任を追及される事になるだろう。
「国王陛下、ご入室!」
戸口の先触れが告げると、ウルスラは片足を引き頭を下げた。
ドアの開く音の後、複数の足音が続く。
……だが、突然の叫び声がその足音を止めた。
「陛下、御下がり下さい!この者は人間ではございませぬ!」
年配の女性の声だ。事前にオーサイム卿に聞いていた話からすると、宮廷魔法使いのイクスという女性だろう。並みの観察眼では見抜けないシリオン渾身の身体を人間では無いと見抜いたのは、さすがは宮廷付きというべきだろうか。とはいえ、ここで王に下がられてしまったら台無しだ。関心してばかりもいられない。
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