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逓信ギルドの特急運搬人
運搬人とギルド支部長
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商人セカネスと別れた後も黙々と街道を走っていたボッカは、日が傾いているのにも関わらず宿場町を素通りした。そのまま駅にも野営地にも入らず走り続けたボッカは、日が落ちようとする夕暮れ前に人目が無い事を確認しながら森の木陰に入ってしまった。
街や宿場に入ってしまえば、夜は門や木戸が閉じられ出る事が出来ない。裏を返せば、それは夜の野外が危険地帯である事を意味する。夜の森など野獣の天国だ。だが、ボッカは意に介さず日が落ちるまで森に隠れていた。魔獣ならともかく、普通の野獣ならそうそうボッカの甲殻を食い破る事はできない。じっと待っていたボッカは、暗闇が世界を支配すると同時に動き出した。
逓信ギルド最速の特急便、ボッカの真骨頂は夜間走行である。靴を脱いで胸にかけたバッグに仕舞い、2~3度屈伸を繰り返す。そして「さてぇ、行きますか…」と自分に気合を入れたボッカは、日中とは別物の速度で走り出した。ボッカはぐんぐん加速していく。とても普通の人間に出せるスピードでは無い。それどころか、早馬をも上回る速度だった。だからこそ、昼間は普通の人間の走りしかしないようにしている。誰の目も無い夜間に走って時を稼いでいるのだ。
ボッカの目は、白黒ではあるが夜間でもある程度見ることができる。そうで無ければ、月明かりも無い夜間に走ることなどできない。ボッカは猛スピードで街道をひた走っていた。灯りの無い郊外で、夜出歩く者は皆無だ。夜行性の動物以外は出くわさない街道を、二燭時(約四時間)は走り続けているが、スピードは全く落ちていない。時々水筒の水を頭からかぶると、体中から湯気が上がった。そうして明け方近くまで走り続けたボッカは、日の出る頃には、適当な木立を見つけると身を隠した。水を被って濡れた服は体温で半ば乾いているが、ずぶ濡れで夜明けの街道を歩いていたら、巡邏に誰何されかねない。ボッカは夜明けまでの短い時間、木立で息をひそめ、人の行き来が始まる頃には、再び配達人らしく走り始める。
ボッカは、一夜の間に途中の宿場を四つすっ飛ばしていた。目的地に着いた時、早馬でも片道五日はかかる距離をボッカは二日で走破していたのだった。
「ごめんくださ~い。リンコー支部から特急便で~す」
平坦なはずのボッカの声は疲れがにじみ出ていた。といっても、三燭時(6時間)走り続けて平気なボッカなので、肉体的疲労ではない。目的の街に付いたら、周辺の集落も含めて街が臨戦態勢に入っていて、あちこちにバリケードが築かれており臨検を受ける羽目になったのだ。
実を言えば『特急便』の紋を掲げている以上は無視して通っても罪に問われる事は無い。そもそも公的な検問ではなく、武装した住民の臨検だから法的にはなんの根拠も無いのだ。だが、無視した場合は殺気立った村人と争いになりかねず、それを自力で切り抜けなければならない。
領の兵士の姿がそこそこ見えるのに、彼らは封鎖を解除しようともせず妙に遠慮した態度で住民に接している。むしろ住民の方が強気にさえ見えた。強行突破するか、臨検に応じるか…どっちが楽かを考えたボッカは、真面目に付き合うことにしたのだ。何よりボッカは根っから小市民なので、できれば争いはしたくなかった(ちなみに、とっても胡散臭い恰好は覆面からちらりと素顔を見せたら、「判った判った」と止められた。こっちの方ではまだ甲殻人は珍しいらしい)。
臨検に協力的なボッカだが、預かった荷物だけは頑として見せなかった。渋い顔をする町人だったが、「逓信ギルドは、あなた方に頼まれた荷物をここの領主が見せろと言っても断りますよ。そしてそれを破ろうと言うなら、俺は全力で抵抗します」というと、不承不承承知した。通信の秘密は、町人だろうと領主だろうと侵す事はできないというのが、逓信ギルドのルールである。
交渉で臨検を通り抜けたボッカの誤算は、そんな臨検が一つだけでは無かった事だった。そういった訳で、逓信ギルド支部に到着したときは、到着から半日以上経過していた。昨夜の走りで思い切り時間短縮したのが相殺された気がして、ボッカはかなりげんなりしていた。
「おお、大変だっただろ、よく無事に着いたな」
出て来た中年男性の窓口職員は、そう言ってボッカを労ってくれた。
「支部長のハマンだ」
……窓口職員ではなくお偉いさんだった。
他の職員は皆出払っている。ここは小さな支部なので、かなりの少人数で仕事を回しているのだ。
「リンコー支部の歩荷です」
そう言って、ボッカは胸から登録証を引っ張り出して見せた。
登録証には人種も記載されているから、顔を隠していても察してくれるだろう。
「はい確かに。ご苦労さん」
「あちこち道が塞がれてましたが、何が始まったんです?」
「上流の村と水争いさ。領主がどうにも優柔不断でね、どっちにもいい顔して調停できないうちに、こっちから交渉に行った街の代表が暴行を受けたって口実で、住民が実力行使に出ちまった」
「傍迷惑な…」
「まぁこうなると、日和見の領主も衝突が始まる前に調停せざるを得ないだろ。…あ、荷物はここに」
「はい」
ボッカは、木のカウンターの上に背負っていた箱を降ろし中身を取り出す。この箱には衝撃で荷が壊れないようにいくつか魔法が付与されている結構な品だったりする。封に異常が無い事を確認するとボッカは支部に荷を引き渡した。ボッカの仕事は支部間の運送で、ここから宛先までは地元の支部が配送する事になっている。特急の文箱のほかに、いくつかの便乗荷物も取り出して並べるとリストと照らして引き渡した。
「うえっ、どうやってこの日数で来たんだ?」
「企業秘密ってやつです」
届け先と期日の記されたリストに目を通したハマン支部長が思わず声を出す。特急便扱いとはいえ、通常の必要日数を大幅に短縮して届いたのだから、驚くのも無理はない。
必要書類に引き渡しのサインをして控えを取り、荷物を引き渡してボッカの仕事は終了となる。特急便搬送のボッカの仕事は配達期日のある仕事が大半だが、期日内に引き渡して期日内に所属のリンコー支部に戻れば問題ない。短縮した分の日数は現地支部で個別に仕事を請けてもいいし、休暇にしても良い事になっている。
(ココの特産品でも見ようかと思ったが、無理そうだなぁ。とっと帰るか…)
「ハマン!、お前んとこに空いてる小隊歩荷はいるか!?」
呑気な事を考えていたボッカの予定は、突然駆け込んで来た一人の男によって大きく軌道修正される事になった。
「うちの所属は今出払ってますよ。何かあったんですか?」
「サイカの山ん中で新しい迷宮が見つかったんだ…あ、まだ口外無用だ。判ってると思うが…」
デカイ声でうっかり重大な事を口走った所で、ボッカの存在に気が付いた男は、(やべっ)という顔でボッカに圧をかけてきた。髪に白いものが混じるくらいの年嵩だが、若い頃はさぞブイブイ云わせてたんだろ…と簡単に想像がつくくらい体格が良くで、顔に傷まで入っている。
「信用第一ですので秘密は守りますよ」
ボッカも先日うっかりをやらかしているので、ここは素直に頷いておく。そんな事より、ここは早期の撤退戦に切り替えるべきだ。
「……立て込んで来たようなので、俺はこれで…」
「ちょい待ち、あんたにも関係ありそうだ」
ハマンの声は低く、先ほどまでの人当たりの良い笑顔からは一変している。
(それが嫌だから出て行くんですよ…)とは口に出せない小市民のボッカはおとなしく立ち止まった。飛び込んで来た男は、ボッカが逓信ギルドの身内だと理解したらしく、そのまま話を続けた。
「……で、下見に出た探索者の小隊が半壊して中に取り残されたヤツが出た。どうにか帰還した連中が組合に仲間の救援を依頼しに来たんだが、その取り残されたヤツの中に小隊歩荷も含まれていてな。ウチの所属の歩荷は<谷の迷宮>に入ってて今手空きが居ないんだ。そうか、こっちにもいないか…」
ハマン支部長は、ちらりとボッカを見た。
「迷宮は嫌ですよ」
何が言いたいか判ったので、ボッカは先回りして拒否してみた。
「あんた、小隊歩荷なのか!?」
「逓信ギルドの歩荷だけど、小隊歩荷の資格も持ってたよ。あぁ、この人はココの探索者組合の支部長、カイタルさんだ」
登録証に記載されているので隠しようも無いし、支部長二人を前にしたらヒラの歩荷に逆らえる訳もない。ボッカは諦めて頷いた。
「一応資格は取りました。魔猟師の歩荷は時々やりますが、迷宮は苦手なんで避けるようにしてます」
「そんなにデカく無い迷宮だ、どうにか頼めないか?」
「いやその『そんなにデカく無い』はずの迷宮で遭難者が出てるんですよね?」
「う……。有り金はたいて仲間の救援依頼するような探索者は今どき貴重なんだよ。どうにか応えたい、手を貸してくれ」
「配達期日までは、現地の仕事も請けられるんだろ?」
ボッカは溜息のような仕草で肩を落とす。心情に訴えかける泣き落とし&規則をタテにした要請という名の命令。
(支部長なんて立場に就く人間は、何処の支部でも似たような人間になるもんだろうか…)
と。リンコーの支部長の顔を思い出した。
押されたら引くしかないヒラ社員の悲しさだが、それを差っ引いてもボッカは管理職なんかになりたく無かったから、ヒラ社員らしく対応する事にした。
「対応できるのは最大でも4日までです。予定日までにリンコーに帰らなきゃなりませんので、期日が着たら要救助者が目の前に居ても引き上げます。あと、未踏の迷宮なんてほとんど経験がありません、荷物背負って後ろ付いて行くくらいしかできません。それでよければ」
「判った、それでいい。それまでにはウチかココの歩荷が戻るだろう」
「じゃ、契約書作るからちょっと待ってな。救援の小隊はすぐに出せるのか?」
「あぁ、待機中だ」
「なら急ぐとするか…」
(任務に『大成功』したらフラグが立って次のクエストですか?そういうのリアルじゃ要らんのだけどねぇ)
ボッカは本人抜きでテキパキと詰め話し合いをする支部長二人を、遠い目で見ていた。
街や宿場に入ってしまえば、夜は門や木戸が閉じられ出る事が出来ない。裏を返せば、それは夜の野外が危険地帯である事を意味する。夜の森など野獣の天国だ。だが、ボッカは意に介さず日が落ちるまで森に隠れていた。魔獣ならともかく、普通の野獣ならそうそうボッカの甲殻を食い破る事はできない。じっと待っていたボッカは、暗闇が世界を支配すると同時に動き出した。
逓信ギルド最速の特急便、ボッカの真骨頂は夜間走行である。靴を脱いで胸にかけたバッグに仕舞い、2~3度屈伸を繰り返す。そして「さてぇ、行きますか…」と自分に気合を入れたボッカは、日中とは別物の速度で走り出した。ボッカはぐんぐん加速していく。とても普通の人間に出せるスピードでは無い。それどころか、早馬をも上回る速度だった。だからこそ、昼間は普通の人間の走りしかしないようにしている。誰の目も無い夜間に走って時を稼いでいるのだ。
ボッカの目は、白黒ではあるが夜間でもある程度見ることができる。そうで無ければ、月明かりも無い夜間に走ることなどできない。ボッカは猛スピードで街道をひた走っていた。灯りの無い郊外で、夜出歩く者は皆無だ。夜行性の動物以外は出くわさない街道を、二燭時(約四時間)は走り続けているが、スピードは全く落ちていない。時々水筒の水を頭からかぶると、体中から湯気が上がった。そうして明け方近くまで走り続けたボッカは、日の出る頃には、適当な木立を見つけると身を隠した。水を被って濡れた服は体温で半ば乾いているが、ずぶ濡れで夜明けの街道を歩いていたら、巡邏に誰何されかねない。ボッカは夜明けまでの短い時間、木立で息をひそめ、人の行き来が始まる頃には、再び配達人らしく走り始める。
ボッカは、一夜の間に途中の宿場を四つすっ飛ばしていた。目的地に着いた時、早馬でも片道五日はかかる距離をボッカは二日で走破していたのだった。
「ごめんくださ~い。リンコー支部から特急便で~す」
平坦なはずのボッカの声は疲れがにじみ出ていた。といっても、三燭時(6時間)走り続けて平気なボッカなので、肉体的疲労ではない。目的の街に付いたら、周辺の集落も含めて街が臨戦態勢に入っていて、あちこちにバリケードが築かれており臨検を受ける羽目になったのだ。
実を言えば『特急便』の紋を掲げている以上は無視して通っても罪に問われる事は無い。そもそも公的な検問ではなく、武装した住民の臨検だから法的にはなんの根拠も無いのだ。だが、無視した場合は殺気立った村人と争いになりかねず、それを自力で切り抜けなければならない。
領の兵士の姿がそこそこ見えるのに、彼らは封鎖を解除しようともせず妙に遠慮した態度で住民に接している。むしろ住民の方が強気にさえ見えた。強行突破するか、臨検に応じるか…どっちが楽かを考えたボッカは、真面目に付き合うことにしたのだ。何よりボッカは根っから小市民なので、できれば争いはしたくなかった(ちなみに、とっても胡散臭い恰好は覆面からちらりと素顔を見せたら、「判った判った」と止められた。こっちの方ではまだ甲殻人は珍しいらしい)。
臨検に協力的なボッカだが、預かった荷物だけは頑として見せなかった。渋い顔をする町人だったが、「逓信ギルドは、あなた方に頼まれた荷物をここの領主が見せろと言っても断りますよ。そしてそれを破ろうと言うなら、俺は全力で抵抗します」というと、不承不承承知した。通信の秘密は、町人だろうと領主だろうと侵す事はできないというのが、逓信ギルドのルールである。
交渉で臨検を通り抜けたボッカの誤算は、そんな臨検が一つだけでは無かった事だった。そういった訳で、逓信ギルド支部に到着したときは、到着から半日以上経過していた。昨夜の走りで思い切り時間短縮したのが相殺された気がして、ボッカはかなりげんなりしていた。
「おお、大変だっただろ、よく無事に着いたな」
出て来た中年男性の窓口職員は、そう言ってボッカを労ってくれた。
「支部長のハマンだ」
……窓口職員ではなくお偉いさんだった。
他の職員は皆出払っている。ここは小さな支部なので、かなりの少人数で仕事を回しているのだ。
「リンコー支部の歩荷です」
そう言って、ボッカは胸から登録証を引っ張り出して見せた。
登録証には人種も記載されているから、顔を隠していても察してくれるだろう。
「はい確かに。ご苦労さん」
「あちこち道が塞がれてましたが、何が始まったんです?」
「上流の村と水争いさ。領主がどうにも優柔不断でね、どっちにもいい顔して調停できないうちに、こっちから交渉に行った街の代表が暴行を受けたって口実で、住民が実力行使に出ちまった」
「傍迷惑な…」
「まぁこうなると、日和見の領主も衝突が始まる前に調停せざるを得ないだろ。…あ、荷物はここに」
「はい」
ボッカは、木のカウンターの上に背負っていた箱を降ろし中身を取り出す。この箱には衝撃で荷が壊れないようにいくつか魔法が付与されている結構な品だったりする。封に異常が無い事を確認するとボッカは支部に荷を引き渡した。ボッカの仕事は支部間の運送で、ここから宛先までは地元の支部が配送する事になっている。特急の文箱のほかに、いくつかの便乗荷物も取り出して並べるとリストと照らして引き渡した。
「うえっ、どうやってこの日数で来たんだ?」
「企業秘密ってやつです」
届け先と期日の記されたリストに目を通したハマン支部長が思わず声を出す。特急便扱いとはいえ、通常の必要日数を大幅に短縮して届いたのだから、驚くのも無理はない。
必要書類に引き渡しのサインをして控えを取り、荷物を引き渡してボッカの仕事は終了となる。特急便搬送のボッカの仕事は配達期日のある仕事が大半だが、期日内に引き渡して期日内に所属のリンコー支部に戻れば問題ない。短縮した分の日数は現地支部で個別に仕事を請けてもいいし、休暇にしても良い事になっている。
(ココの特産品でも見ようかと思ったが、無理そうだなぁ。とっと帰るか…)
「ハマン!、お前んとこに空いてる小隊歩荷はいるか!?」
呑気な事を考えていたボッカの予定は、突然駆け込んで来た一人の男によって大きく軌道修正される事になった。
「うちの所属は今出払ってますよ。何かあったんですか?」
「サイカの山ん中で新しい迷宮が見つかったんだ…あ、まだ口外無用だ。判ってると思うが…」
デカイ声でうっかり重大な事を口走った所で、ボッカの存在に気が付いた男は、(やべっ)という顔でボッカに圧をかけてきた。髪に白いものが混じるくらいの年嵩だが、若い頃はさぞブイブイ云わせてたんだろ…と簡単に想像がつくくらい体格が良くで、顔に傷まで入っている。
「信用第一ですので秘密は守りますよ」
ボッカも先日うっかりをやらかしているので、ここは素直に頷いておく。そんな事より、ここは早期の撤退戦に切り替えるべきだ。
「……立て込んで来たようなので、俺はこれで…」
「ちょい待ち、あんたにも関係ありそうだ」
ハマンの声は低く、先ほどまでの人当たりの良い笑顔からは一変している。
(それが嫌だから出て行くんですよ…)とは口に出せない小市民のボッカはおとなしく立ち止まった。飛び込んで来た男は、ボッカが逓信ギルドの身内だと理解したらしく、そのまま話を続けた。
「……で、下見に出た探索者の小隊が半壊して中に取り残されたヤツが出た。どうにか帰還した連中が組合に仲間の救援を依頼しに来たんだが、その取り残されたヤツの中に小隊歩荷も含まれていてな。ウチの所属の歩荷は<谷の迷宮>に入ってて今手空きが居ないんだ。そうか、こっちにもいないか…」
ハマン支部長は、ちらりとボッカを見た。
「迷宮は嫌ですよ」
何が言いたいか判ったので、ボッカは先回りして拒否してみた。
「あんた、小隊歩荷なのか!?」
「逓信ギルドの歩荷だけど、小隊歩荷の資格も持ってたよ。あぁ、この人はココの探索者組合の支部長、カイタルさんだ」
登録証に記載されているので隠しようも無いし、支部長二人を前にしたらヒラの歩荷に逆らえる訳もない。ボッカは諦めて頷いた。
「一応資格は取りました。魔猟師の歩荷は時々やりますが、迷宮は苦手なんで避けるようにしてます」
「そんなにデカく無い迷宮だ、どうにか頼めないか?」
「いやその『そんなにデカく無い』はずの迷宮で遭難者が出てるんですよね?」
「う……。有り金はたいて仲間の救援依頼するような探索者は今どき貴重なんだよ。どうにか応えたい、手を貸してくれ」
「配達期日までは、現地の仕事も請けられるんだろ?」
ボッカは溜息のような仕草で肩を落とす。心情に訴えかける泣き落とし&規則をタテにした要請という名の命令。
(支部長なんて立場に就く人間は、何処の支部でも似たような人間になるもんだろうか…)
と。リンコーの支部長の顔を思い出した。
押されたら引くしかないヒラ社員の悲しさだが、それを差っ引いてもボッカは管理職なんかになりたく無かったから、ヒラ社員らしく対応する事にした。
「対応できるのは最大でも4日までです。予定日までにリンコーに帰らなきゃなりませんので、期日が着たら要救助者が目の前に居ても引き上げます。あと、未踏の迷宮なんてほとんど経験がありません、荷物背負って後ろ付いて行くくらいしかできません。それでよければ」
「判った、それでいい。それまでにはウチかココの歩荷が戻るだろう」
「じゃ、契約書作るからちょっと待ってな。救援の小隊はすぐに出せるのか?」
「あぁ、待機中だ」
「なら急ぐとするか…」
(任務に『大成功』したらフラグが立って次のクエストですか?そういうのリアルじゃ要らんのだけどねぇ)
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