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金木犀の想い出
俺のせい
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もう今は使われていない、カビ臭い埃だらけの古倉庫の中。数人の男達に取り囲まれながら、和花は恐怖に体を震わせていた。
いつものように学校から帰宅している途中、わけもわからないまま無理矢理ここに連れてこられたのだ。
抵抗した時に何ヶ所か擦り傷を作ったのと、服も所々引き裂かれ、破れた箇所から下着が顔を覗かせている。
「ねぇ、この女、もうさっさと輪姦しちゃいましょうよ」
「いや、奴の目の前で犯ってやろうぜ。その方が面白い」
「なーる」
ははは、という男達の下卑た笑い声が廃墟に響く。
和花の背筋にぞわり、としたものが走った。
「ねぇ、ノドカちゃん。君にはなーんにも恨みはないんだけどさ、俺達、世良にはすんげぇ恨みがあんのね」
「そーそー。ここにいる全員、世良くんには散々お世話になったからさ?たっぷりお返ししてあげなきゃと思って」
男達の数は、十人。
彼らの会話から、過去に仁太郎から痛い目に遭わされた者達の集まりだということが推測できた。
幼い頃から幾度となく修羅場をくぐり抜けてきた仁太郎は、何度も闘争を重ねていくうちに気付けば圧倒的な強さを得ていた。今や喧嘩慣れした不良であってもそうそう仁太郎に敵う者はいないだろう。
そんな仁太郎相手にタイマンで闘っても勝てないから、卑怯な手を使ってでも叩きのめそうという魂胆だ。
漢としてのプライドも何も無い、最低最悪な集団だった。
愕然とする和花に、リーダー格の男が笑いながら「恨むなら自分の彼氏を恨んでね」と吐き捨てた。
その時、地面を蹴る音と共に土埃が激しく舞った。
「和花…っ!!」
息を切らしながら現れた仁太郎の首筋には、怒りのあまり血管が浮き出ている。
そんな必死な形相の仁太郎とは対照的に、男達はその人数の多さからか余裕綽々といった様子だ。
「あれ、噂をすればお待ちかねの王子様の登場だよーん。ノドカちゃん、安心して。目の前で叩き潰してあげるから」
男達の隙間から、奥にいる傷ついた和花の姿を見つけた仁太郎は、全身の血液が一気に沸騰した。
「てめぇら…っ、ざけんじゃねーぞ!!」
仁太郎の発したドスのきいた声を皮切りに、場にピリッとした空気が流れる。
「それはこっちの台詞だよ、世良。お前、俺達に喧嘩売ってタダで済むと思ってんじゃねーぞ」
リーダー格の男の「ブッ殺せ!」という言葉を合図に、その場にいた全員が仁太郎に向かっていった。そしてーーー
「ハァッ、ハァッ、ハァッ」
随分時間が経ったような気がする。実際は数十分程度のことだったが、仁太郎は肩で息をしながらどうにかその場に立っていた。
仁太郎の目の前には、辛うじて息はしているものの完全に意識を無くした男達が屍のようにゴロゴロと転がっている。
十対一という圧倒的に不利な状況だったが、結果は仁太良の勝ちだった。
ただし、それは圧勝と言うには程遠い状況で。
仁太郎の右目は痛々しく腫れ上がり、両方の鼻からは血が出ていて、一人で多勢を相手にした拳ももう限界だった。
「大丈夫だったか…」
それでも、片目しか見えてないボロボロの状態で彼女に駆け寄り、仁太郎は和花の肩にさっと自分の学ランの上着をかけた。
「うん、私は大丈夫だよ。でも…世良くんが…」
和花が、慌てて持っていたハンカチで仁太郎の鼻を押さえる。みるみるうちに、ハンカチが血で赤く染まった。
「俺のことはいい。無事で…本当に良かった…」
仁太郎のその一言で、張り詰めていた糸が切れたように、和花の目からポロポロと涙が零れ落ちる。
大丈夫だと言っていたけれど、和花はその小さな体を震わせながら、本当はずっと我慢していたのだ。
どんなに怖かっただろうか。今の和花の心は恐怖と安堵が入り混じりぐちゃぐちゃな状態だった。
仁太郎の胸に額を寄せ、わぁぁ、と大声で泣き叫ぶ和花の華奢な背中をそっと優しく抱き締める。
子どものように泣きじゃくる和花の姿に、仁太郎の胸の奥がズキンと痛んだ。
(俺のせいで巻き込んじゃって、ごめんな……)
そして仁太郎は、ある決意をした。
いつものように学校から帰宅している途中、わけもわからないまま無理矢理ここに連れてこられたのだ。
抵抗した時に何ヶ所か擦り傷を作ったのと、服も所々引き裂かれ、破れた箇所から下着が顔を覗かせている。
「ねぇ、この女、もうさっさと輪姦しちゃいましょうよ」
「いや、奴の目の前で犯ってやろうぜ。その方が面白い」
「なーる」
ははは、という男達の下卑た笑い声が廃墟に響く。
和花の背筋にぞわり、としたものが走った。
「ねぇ、ノドカちゃん。君にはなーんにも恨みはないんだけどさ、俺達、世良にはすんげぇ恨みがあんのね」
「そーそー。ここにいる全員、世良くんには散々お世話になったからさ?たっぷりお返ししてあげなきゃと思って」
男達の数は、十人。
彼らの会話から、過去に仁太郎から痛い目に遭わされた者達の集まりだということが推測できた。
幼い頃から幾度となく修羅場をくぐり抜けてきた仁太郎は、何度も闘争を重ねていくうちに気付けば圧倒的な強さを得ていた。今や喧嘩慣れした不良であってもそうそう仁太郎に敵う者はいないだろう。
そんな仁太郎相手にタイマンで闘っても勝てないから、卑怯な手を使ってでも叩きのめそうという魂胆だ。
漢としてのプライドも何も無い、最低最悪な集団だった。
愕然とする和花に、リーダー格の男が笑いながら「恨むなら自分の彼氏を恨んでね」と吐き捨てた。
その時、地面を蹴る音と共に土埃が激しく舞った。
「和花…っ!!」
息を切らしながら現れた仁太郎の首筋には、怒りのあまり血管が浮き出ている。
そんな必死な形相の仁太郎とは対照的に、男達はその人数の多さからか余裕綽々といった様子だ。
「あれ、噂をすればお待ちかねの王子様の登場だよーん。ノドカちゃん、安心して。目の前で叩き潰してあげるから」
男達の隙間から、奥にいる傷ついた和花の姿を見つけた仁太郎は、全身の血液が一気に沸騰した。
「てめぇら…っ、ざけんじゃねーぞ!!」
仁太郎の発したドスのきいた声を皮切りに、場にピリッとした空気が流れる。
「それはこっちの台詞だよ、世良。お前、俺達に喧嘩売ってタダで済むと思ってんじゃねーぞ」
リーダー格の男の「ブッ殺せ!」という言葉を合図に、その場にいた全員が仁太郎に向かっていった。そしてーーー
「ハァッ、ハァッ、ハァッ」
随分時間が経ったような気がする。実際は数十分程度のことだったが、仁太郎は肩で息をしながらどうにかその場に立っていた。
仁太郎の目の前には、辛うじて息はしているものの完全に意識を無くした男達が屍のようにゴロゴロと転がっている。
十対一という圧倒的に不利な状況だったが、結果は仁太良の勝ちだった。
ただし、それは圧勝と言うには程遠い状況で。
仁太郎の右目は痛々しく腫れ上がり、両方の鼻からは血が出ていて、一人で多勢を相手にした拳ももう限界だった。
「大丈夫だったか…」
それでも、片目しか見えてないボロボロの状態で彼女に駆け寄り、仁太郎は和花の肩にさっと自分の学ランの上着をかけた。
「うん、私は大丈夫だよ。でも…世良くんが…」
和花が、慌てて持っていたハンカチで仁太郎の鼻を押さえる。みるみるうちに、ハンカチが血で赤く染まった。
「俺のことはいい。無事で…本当に良かった…」
仁太郎のその一言で、張り詰めていた糸が切れたように、和花の目からポロポロと涙が零れ落ちる。
大丈夫だと言っていたけれど、和花はその小さな体を震わせながら、本当はずっと我慢していたのだ。
どんなに怖かっただろうか。今の和花の心は恐怖と安堵が入り混じりぐちゃぐちゃな状態だった。
仁太郎の胸に額を寄せ、わぁぁ、と大声で泣き叫ぶ和花の華奢な背中をそっと優しく抱き締める。
子どものように泣きじゃくる和花の姿に、仁太郎の胸の奥がズキンと痛んだ。
(俺のせいで巻き込んじゃって、ごめんな……)
そして仁太郎は、ある決意をした。
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