【おまけページ更新中】世良くんの刺激的な日々後日談

雨樋雫

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職権濫用!?(後編)

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 樹生の行きつけの焼肉屋。完全個室制の静かな空間で、三人はテーブルを囲んだ。

「すいません、俺までご一緒させてもらっちゃって…」
 樹生の向かいに座った龍は、申し訳なさそうに言った。

「龍とこうして飯食う機会あまりなかったからな」
 たまにはこういうのもいいだろうと、恐縮している龍に樹生が微笑みかける。

 注文した肉を焼きながら軽く世間話をして場が温まった頃、ふいに龍が直球を投げてきた。

「それにしてもビックリしました。まさか二人がそういう関係だったなんて。オーナーがバイってのは知ってたけど…JINってゲイだったの?」
「いや、俺は…」
「え、もしかしてノーマル?やっぱり、そうだと思った」

 畳み掛けるように話す龍に、仁太郎はぽかんと間の抜けた顔をしてしまう。

「ああ、不躾にごめんね。俺、自分がゲイだからさ。そういうの、なんとなく分かっちゃうんだ。あ、でもこのことお客様には内緒ね。みんな疑似恋愛を楽しむために店に来てるからさ、ゲイってバレると都合悪いんだよ」

 龍はお店ではバイという設定で通しているのだという。

「まあ、JINがオーナー大好きなのはバレバレだったけど。オーナーの方は全く態度変わらないし、気付けなかったなあ」
「ば…バレバレ…!?」
「うん。あ、でもJINはノーマルっぽいなって感じてたから、憧れとか、そっちの方だと思ってたけどさ。オーナーに漢として惚れてる人は多いから、そこら辺は別に不思議じゃないしね。俺も響オーナーのこと尊敬してるし」

 龍はさらりと樹生に好意を伝えたあと、真面目な顔をして言った。

「二人が付き合ってること、誰にも言いませんから安心して下さい」
「悪いな。俺も迂闊だった」

 樹生が苦笑しながら謝罪する。
 やはり、職権濫用なんてするもんじゃない。

「全然。むしろ秘密の共有できて嬉しいですよ。響オーナーの貴重な別の顔も見れたし」
 そう言って、いたずらっ子のように笑う龍。さすが毎月No.10以内に入る売れっ子なだけあって、発言に余裕がある。

「まあ、オーナーはJINを職務上で特別扱いしたりはしてないですけど、変に嫉妬する連中が出てもおかしくないですから」

 樹生が雇い入れたメンバーは皆優秀で人間性も高い者達ばかりだが、それでも人はいつどんな時にスイッチが入るかわからない。

 しかも、元々仁太郎には「高校生時代に店に迷惑をかけていた不良」だったという前提がある。

 実際、仁太郎を雇うことに、心の中では反発する者もいたようだ。
 もちろん表面上は店の絶対的権力である東条響に逆らうことはなかったが、そんな経緯もあり、仁太郎は最初から歓迎されていたわけではない。

 今は真面目に働く姿勢を見せていくことで、ひとつひとつ信頼を積み上げていっている最中なのだ。それが崩れる可能性のあることは、なるべく避けたい。

 樹生が仁太郎を雇ったのは何も恋仲にあるからという理由ではなく、店にとってプラスになると、経営者として判断したからだ。
 仁太郎はキャストではなく内勤だし、決して二人は悪いことをしているわけではないが、それでも余計な火種は撒かない方がいい。

 龍は「わかってますよ」といった顔をして、二人を安心させるようにニコリと笑った。












「ありがとうございました!」

 食事を終え、三人は店の外に出ていた。
 お礼を伝える龍に、樹生は少し苦笑する。

「こちらこそ。貴重な時間取らせて悪かったな」
「むしろラッキーでしたよ。たまには忘れ物もしてみるもんだなって思いました」
 冗談っぽく笑う龍に、樹生もふっと微笑みを返した。

 しばらくして、仁太郎がタクシーをつかまえた。
「お先にどうぞ」と龍に言われ、樹生は先に仁太郎を後部座席に乗せてから自分もシートに体を滑り込ませる。
 そして、樹生はさり気なく龍に帰りのタクシー代を渡した。さすがのスマートさだ。ここで遠慮する方が不躾だとわかっている龍は、有り難く頂戴する。

 ドアが閉められた後も龍は爽やかな笑顔でそこに立ち、二人を見送っていた。




 やがて、二人を乗せたタクシーが見えなくなるぐらい小さくなった頃、龍がすっと真顔になる。

「ほーんと、羨ましい」

 ぽつりと小さく呟いた龍の独り言は、ひどく冷めた声をしていた。

 特別な感情で繋がれている二人を見て、何か思うところがあったのか。先ほどまでの明るいキャラクターは消え去り、恐ろしいほどに冷たく硬質な表情で、龍は言う。

「俺には一生縁がないけどね」

 さて二丁目でも行くかな、と龍は気持ちを切り替えて、その場から去った。





 fin





 龍が主人公のストーリー「罪と、罰と、二度目の恋と」がアルファポリス内で読めます!(完結済)
 世界線が「世良くんシリーズ」と繋がっています。是非そちらもお楽しみ下さい♥
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