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最強のホスト東条響
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「おい東条。お前、尻で仕事取ってんだって?男としてのプライドねーのかよ?」
小馬鹿にしたように笑い、男が言う。
東条響こと葉山樹生は、チラと男の顔を一瞬だけ見たが、すぐさま手元のスマホの画面に目を落とした。
樹生がこのクラブで働き出してから、3ヶ月ほど経った時期だった。
樹生はバイセクシャルであることを周囲に隠していない。それどころか自身のセールスポイントにしているぐらいで、時には男と寝ることもあるのだが、それが気に食わないのかこうやって揶揄する人間が出てくるのだ。
挑発には一切乗らず、平然と顧客へ連絡を入れ続ける樹生の姿に、男がワナワナと怒りを募らせる。
男は、樹生よりも半年も早く入店したにも関わらずうだつが上がらず未だに掃除組から抜け出せていない、いわゆる底辺ホストだ。
ホストとしての立ち居振る舞いを学ぶ機会として、ホストは皆新人の頃は営業前後の店内清掃や開店準備などの雑用を担当させられる。それが掃除組だ。
そのうちホストとして売れてくると掃除組からは「卒業」という形になるが、この男のように、売上が少ないホストはいつまでもそこから抜け出せないのだった。
デビューから1ヶ月という早さでNo.入りを果たし、掃除組からさっさと卒業した樹生に対して、嫉妬心から嫌味を言ってくる人間は後を絶たない。
「おい、無視すんなよ。俺は先輩だぞ?」
自慢できるポイントがそこしか無いのか。呆れて言葉も出ない。
むしろ先輩のくせに結果を出せていない事実を恥じた方がいいんじゃないかとさえ思う。
「聞いてんのか?おい、東条」
樹生が挑発に乗ってこないことに、男は余計に気分を悪くして、突っかかってくる。
万年掃除組で、いつまでも売れずに年だけ取った先輩の嫌味なぞ、相手にするだけ時間の無駄だ。そう思って樹生はずっとスルーしていたが、こうしつこいと無視を決め込むわけにもいかなくなってきた。
(くっだらねーな。こんなことしてる暇あるなら客に連絡の一つでも入れりゃあいいのに。だから売れねーんだよ。あーマジで面倒くせーな。つーかお前も客相手に竿使ってんだろうが。プライドだのなんだのって話は枕やめてから言えっつーの)
という言葉を全て飲み込み、樹生は代わりに
「試しに先輩もやってみたらいいんじゃないですか?」
と笑いながら言った。
「あ!?」
当然相手は舐められていると激昂したがーー
「あ、呼ばれてる。すいません俺忙しいんで」
一向に指名をもらえない先輩ホストを置き去りにして、樹生は颯爽と待機所を後にした。
こんな小物にキャンキャン吠えられたところで、樹生の地位は揺るがない。
言いがかりは華麗にひらりとかわし、そして結果でねじ伏せる。これが樹生のホストとしての生き方だった。
「はじめまして東条響です。初指名ありがとうございます」
指示された卓に樹生が向かうと、そこにはホストクラブには珍しく男性客が待っていた。
樹生は営業スマイルで爽やかに微笑みながら、男の隣につく。
「ねぇ…響くんって男もイケるって本当?」
水割りを作って提供したタイミングで、いきなり聞かれた。
まだ会話も序盤だと言うのに、なかなか突っ込んだ話をしてくる男だ。
樹生はにこっと微笑み、
「そうだよバイだから。興味ある?」
と答えた。
「そうだね…興味ある。ねぇ、この後アフターどう…?」
男は樹生の手の甲につつ…と自身の指を滑らせ、アピールをしてくる。
その手つきに樹生は思わず鳥肌が立ちそうになった。
(こいつ、初回のくせに図々しいな)
樹生と男は、間違いなく今日が初対面だ。
しかも男が利用しているのは3000円ぽっちで飲み放題を楽しめる初回プラン、言わば体験コースだった。
アフターイコールセックスというわけではないが、言動からして男が求めているのはそういうことだろう。
面の皮が厚い人間はどこの界隈にもいるものだなと、樹生は思った。
樹生はチッと舌打ちをしたい気持ちを堪えながら、表面上はあくまでも友好的に、しかしはっきりと拒絶する。
「興味あるのって俺の顔?体?それとも中身?」
「えっと、それは……」
口ごもる男に、樹生はにこりと微笑みながら言った。
「悪いけど、俺そんなにすぐ寝るような安い男じゃないよ」
(なんつってな)
樹生は心の中でペロリと舌を出した。
実際は、セックスまでのハードルが低い方だ。樹生に高尚な貞操観念など無い。
この男は嫌いなタイプだが、別に寝ようと思えば寝れるだろう。
しかしここで簡単に寝ては、自分のホストとしての商品価値が下がる。樹生はそこまで計算した上で、男に言った。
「もっとお互いを深く知ってからする方が気持ちいいと思わない?」と。
「ね?」
目をじっと見つめて、再び微笑む。
樹生の蕩けるような色気に酔わされ、男は頭をクラクラさせながら縋るように言った。
「君を本指名するよ。だ、だから、明日も来ていいかな…?」
「もちろん。ありがとう、嬉しいよ」
樹生の作戦勝ちだ。
男はその後まんまと店に通い詰め、樹生の太客の一人となったーー。
小馬鹿にしたように笑い、男が言う。
東条響こと葉山樹生は、チラと男の顔を一瞬だけ見たが、すぐさま手元のスマホの画面に目を落とした。
樹生がこのクラブで働き出してから、3ヶ月ほど経った時期だった。
樹生はバイセクシャルであることを周囲に隠していない。それどころか自身のセールスポイントにしているぐらいで、時には男と寝ることもあるのだが、それが気に食わないのかこうやって揶揄する人間が出てくるのだ。
挑発には一切乗らず、平然と顧客へ連絡を入れ続ける樹生の姿に、男がワナワナと怒りを募らせる。
男は、樹生よりも半年も早く入店したにも関わらずうだつが上がらず未だに掃除組から抜け出せていない、いわゆる底辺ホストだ。
ホストとしての立ち居振る舞いを学ぶ機会として、ホストは皆新人の頃は営業前後の店内清掃や開店準備などの雑用を担当させられる。それが掃除組だ。
そのうちホストとして売れてくると掃除組からは「卒業」という形になるが、この男のように、売上が少ないホストはいつまでもそこから抜け出せないのだった。
デビューから1ヶ月という早さでNo.入りを果たし、掃除組からさっさと卒業した樹生に対して、嫉妬心から嫌味を言ってくる人間は後を絶たない。
「おい、無視すんなよ。俺は先輩だぞ?」
自慢できるポイントがそこしか無いのか。呆れて言葉も出ない。
むしろ先輩のくせに結果を出せていない事実を恥じた方がいいんじゃないかとさえ思う。
「聞いてんのか?おい、東条」
樹生が挑発に乗ってこないことに、男は余計に気分を悪くして、突っかかってくる。
万年掃除組で、いつまでも売れずに年だけ取った先輩の嫌味なぞ、相手にするだけ時間の無駄だ。そう思って樹生はずっとスルーしていたが、こうしつこいと無視を決め込むわけにもいかなくなってきた。
(くっだらねーな。こんなことしてる暇あるなら客に連絡の一つでも入れりゃあいいのに。だから売れねーんだよ。あーマジで面倒くせーな。つーかお前も客相手に竿使ってんだろうが。プライドだのなんだのって話は枕やめてから言えっつーの)
という言葉を全て飲み込み、樹生は代わりに
「試しに先輩もやってみたらいいんじゃないですか?」
と笑いながら言った。
「あ!?」
当然相手は舐められていると激昂したがーー
「あ、呼ばれてる。すいません俺忙しいんで」
一向に指名をもらえない先輩ホストを置き去りにして、樹生は颯爽と待機所を後にした。
こんな小物にキャンキャン吠えられたところで、樹生の地位は揺るがない。
言いがかりは華麗にひらりとかわし、そして結果でねじ伏せる。これが樹生のホストとしての生き方だった。
「はじめまして東条響です。初指名ありがとうございます」
指示された卓に樹生が向かうと、そこにはホストクラブには珍しく男性客が待っていた。
樹生は営業スマイルで爽やかに微笑みながら、男の隣につく。
「ねぇ…響くんって男もイケるって本当?」
水割りを作って提供したタイミングで、いきなり聞かれた。
まだ会話も序盤だと言うのに、なかなか突っ込んだ話をしてくる男だ。
樹生はにこっと微笑み、
「そうだよバイだから。興味ある?」
と答えた。
「そうだね…興味ある。ねぇ、この後アフターどう…?」
男は樹生の手の甲につつ…と自身の指を滑らせ、アピールをしてくる。
その手つきに樹生は思わず鳥肌が立ちそうになった。
(こいつ、初回のくせに図々しいな)
樹生と男は、間違いなく今日が初対面だ。
しかも男が利用しているのは3000円ぽっちで飲み放題を楽しめる初回プラン、言わば体験コースだった。
アフターイコールセックスというわけではないが、言動からして男が求めているのはそういうことだろう。
面の皮が厚い人間はどこの界隈にもいるものだなと、樹生は思った。
樹生はチッと舌打ちをしたい気持ちを堪えながら、表面上はあくまでも友好的に、しかしはっきりと拒絶する。
「興味あるのって俺の顔?体?それとも中身?」
「えっと、それは……」
口ごもる男に、樹生はにこりと微笑みながら言った。
「悪いけど、俺そんなにすぐ寝るような安い男じゃないよ」
(なんつってな)
樹生は心の中でペロリと舌を出した。
実際は、セックスまでのハードルが低い方だ。樹生に高尚な貞操観念など無い。
この男は嫌いなタイプだが、別に寝ようと思えば寝れるだろう。
しかしここで簡単に寝ては、自分のホストとしての商品価値が下がる。樹生はそこまで計算した上で、男に言った。
「もっとお互いを深く知ってからする方が気持ちいいと思わない?」と。
「ね?」
目をじっと見つめて、再び微笑む。
樹生の蕩けるような色気に酔わされ、男は頭をクラクラさせながら縋るように言った。
「君を本指名するよ。だ、だから、明日も来ていいかな…?」
「もちろん。ありがとう、嬉しいよ」
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男はその後まんまと店に通い詰め、樹生の太客の一人となったーー。
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