【おまけページ更新中】世良くんの刺激的な日々後日談

雨樋雫

文字の大きさ
34 / 34
ifストーリー

もしも二人が閉じ込められていなかったらif

しおりを挟む
 ※このストーリーは、仁太郎と樹生が「もしもセックスしないと出られない部屋に閉じ込められて」ifです。
 途中までは同じ展開ですが、本編では仁太郎が樹生の胸ぐらを掴んだ瞬間に部屋に飛ばされています。
 この部分が分岐点になっています。
 仁太郎視点。男=樹生(源氏名東条響)のことです。







 仁太郎の怒りは頂点に達した。

 仁太郎が、自分に絡んできた不良三人を倒し終わったところに踏み込んできて、いきなり
「喧嘩で営業妨害をするな」
 と物言いをつけてきた目の前のこの男。

 どうやらタッパは自分よりありそうだが、そんなことは関係ない。
 自分が始めたわけでもない喧嘩に対して一方的に責められただけでも既にイライラしているというのに、馬鹿だのなんだのと言われ、煽られた。

 元々気は短い仁太郎が、ここまでコケにされて黙っていられるはずがない。
 自分から絡みにいくことはないが、売られた喧嘩は買う主義だ。

「てめぇブン殴っ…!」

 そうして激昂した仁太郎が男の胸ぐらを掴んだ瞬間ーー男がその手をサッと掴み、一気にくるんっと仁太郎の体をひっくり返す。

「え?」と思う間もないほどあっけなく、仁太郎はとすん、と床に倒された。

 (今、何が起きた…?)

 一瞬の出来事に、すぐには脳が理解できなくて、目をパチクリさせながら天を仰ぐ仁太郎の顔を、男が上から覗き込む。

 頭上から「おーい」と声をかけられて、仁太郎はようやく自分が置かれた状況を理解した。慌ててガバっと上体を起こす。

 (嘘だろ…全然動きが見えなかった…)

 仁太郎が呆然と男の方を見ると、男はニマニマと笑っている。

 (この人、強ぇ…)

 ーー勝てない。瞬時にそう悟った。

 男が本気じゃないことは仁太郎にも分かった。きっと、アスファルトに叩きつけようと思えばできたはずだ。なのに、しなかった。自分の強さに絶対的な自信があって、余裕があるからこそ手加減できたのだろう。

 手心を加えられたことが悔しくて、仁太郎は唇を噛み締めた。

「これに懲りたら喧嘩なんてくだらねーこともうすんなよ」

 男の言葉に、仁太郎がピクリと反応する。

「くだらねー…こと…?」
「だってそうだろ。殴り合いなんて生産性のないことを、よくもまあ毎日毎日飽きもせず……」

 ため息をつきながら呆れ顔で言われ、仁太郎の中に反発心がわいた。

「なっ…!俺だって喧嘩したくてしてるわけじゃねーよ!でもしょうがねーじゃん!何にもしてなくても向こうから絡んでくるんだから!それとも黙って殴られてろって言うのかよ!」

「あのなあー、あんなとこでウロチョロしてるお前にも問題あんだろ?ガッコ終わったらさっさと帰れ」

 男が諭すように言うと、仁太郎は気まずそうに視線をそらした。
 仁太郎の表情に陰りが生まれたことを、男の目は見逃さない。

「もしかしてーー家に帰りづらい理由でもあんのか?」

 核心を突いた男の問いに、仁太郎は静かにこくりと頷いた。樹生が困ったような顔をして、頭をかく。

「でもなあ、お前このままじゃ、迷惑料払わされるぞ。俺だけならいいけどな、ここのビル入ってんのはうちだけじゃないんだ。お前、既に全方位からかなり恨み買ってるし」

 男の言葉に仁太郎はサーッと青ざめ、慌てだした。そこまで深く考えていなかったのだろう。

「それはヤバイ…金ない…」

 男はふぅ、とため息をついて、それから仁太郎にひとつの提案をした。

「じゃあ、お前卒業したら俺の店来るか?」
「……へ?」
「その余りまくった体力、喧嘩じゃなくてうちで使えよ。人手足りてねーから丁度良かったわ」

 思いもよらない方向からのスカウトに、仁太郎は怪訝な顔をする。

「マジで言ってんの…?」
「ああ。お前の家庭の事情は知らねーけど…うちは新人用に寮も用意してるから、家を出れるぞ」

 どうやら、冗談で言っているわけではないらしい。
 男の思考回路がわからなくて、仁太郎は戸惑った。迷惑をかけられていた相手を雇うだなんて、普通の感覚ならやらないだろう。

「喧嘩もマジでもうすんな。お前にかかる火の粉、俺なら振り払ってやれるから。なんなら俺の名前出したっていい」
 そう言って男はスッと名刺を手渡した。

「クラブアバンチュリエ、オーナー東条響……」
「ホストクラブだが、内勤も募集してる。喧嘩やめてマトモに働く気があるなら、ここに来い」
「……」

 初対面の印象は最悪だった。
 事情を何も知らないくせに一方的に怒鳴りつけてくるわ煽るようなことも言うわで、好印象を持てというのが無理な話だ。

 けれど、彼が自分のことを本気で考えてくれているのだと気付いた時、仁太郎の胸の奥にじんわりと温かい感情が広がっていった。

「あ、ありがと…」

 仁太郎が、照れくさそうな顔で、頬を赤らめる。
 大人に親切にしてもらったことのない少年は、この日生まれて初めて、年上の人間の優しさに触れた。

 しかし、やはりその男ーー東条響は少し意地悪だった。
 響は仁太郎の顔をじっと見つめ、口を開く。

「気ィ変わった。やっぱ迷惑料、俺ももらっとくわ」
「えええー!?だから金なんか無いって…借金しろってこと!?それともマグロ漁船にでも売られーー」

 言い終わる前に、何か柔らかいもので唇を塞がれた。
 それが響の唇だと脳が理解するまで、数秒かかる。

 ぽかんとしている仁太郎に、響がニヤリと笑いかけて言った。
「これで勘弁してやる」

 それだけ言うと、響はくるりと踵を返し、自分の店に帰って行った。

「ふ……ふっざけんな!バァーカ!!」

 背後から仁太郎が喚く声が聞こえてきたが、構わず響はペロリと舌を出す。

 (ありえねぇ…いきなりキ…キスするなんて。あんな奴の下でなんて、ぜってー働かねー!)

 非常識にも程がある響の行動に、仁太郎は激しく心をかき乱される。
 しかし樹生の悪ノリに仁太郎は腹を立てながらも、自分の中に生まれた怒りの感情の中に、なんとも言えないむず痒さを感じ始めていた。

 (でも…唇めっちゃ気持ち良かった…)

 心臓がどくんどくんと早鐘を打つ。
 それが怒りによるものなのか、それとも別の何かなのかーーその時の仁太郎には、わからなかった。












 数ヶ月後。
 給料の良さにつられた仁太郎は、まんまと響の店の従業員となっていたーー
しおりを挟む
感想 1

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(1件)

非常食のもち

世良くんあまりにもいい子…!
いい子なのは知ってましたが、これはあまりにも切なすぎます…😭
今も過去も幸せであって欲しい!!!

2025.11.07 雨樋雫

非常食のもちさん感想ありがとうございます!🥺✨️✨️嬉しいです〜❤️
そうなんです、世良はいい子なんですけどめちゃくちゃ不憫な子なんですよ…!😭
世良の幸せを願って下さってありがとうございます。世良の過去はなかなかにハードモードですが、未来はきっと明るいはず…!

解除

あなたにおすすめの小説

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

お兄ちゃんができた!!

くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。 お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。 「悠くんはえらい子だね。」 「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」 「ふふ、かわいいね。」 律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡ 「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」 ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
 漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。  漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。  陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。  漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。  漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。  養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。  陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。  漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。  仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。  沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。  日本の漁師の多くがこの形態なのだ。  沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。  遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。  内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。  漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。  出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。  休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。  個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。  漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。  専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。  資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。  漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。  食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。  地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。  この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。  もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。  翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。  この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です

朝陽七彩
恋愛
 私は。 「夕鶴、こっちにおいで」  現役の高校生だけど。 「ずっと夕鶴とこうしていたい」  担任の先生と。 「夕鶴を誰にも渡したくない」  付き合っています。  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  神城夕鶴(かみしろ ゆづる)  軽音楽部の絶対的エース  飛鷹隼理(ひだか しゅんり)  アイドル的存在の超イケメン先生  ♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡  彼の名前は飛鷹隼理くん。  隼理くんは。 「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」  そう言って……。 「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」  そして隼理くんは……。  ……‼  しゅっ……隼理くん……っ。  そんなことをされたら……。  隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。  ……だけど……。  え……。  誰……?  誰なの……?  その人はいったい誰なの、隼理くん。  ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。  その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。  でも。  でも訊けない。  隼理くんに直接訊くことなんて。  私にはできない。  私は。  私は、これから先、一体どうすればいいの……?

スライムパンツとスライムスーツで、イチャイチャしよう!

ミクリ21
BL
とある変態の話。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同僚に密室に連れ込まれてイケナイ状況です

暗黒神ゼブラ
BL
今日僕は同僚にごはんに誘われました

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。