【おまけページ更新中】世良くんの刺激的な日々後日談

雨樋雫

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~世良side~

世良の過去

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 ある夜のことだった。
 高校3年生になった仁太郎は、いつものように街をブラつきながら、持て余した暇をつぶしていた。
 やがて人通りの少ない場所に差し掛かった時、高校生数人が何かを取り囲んでいる光景が仁太郎の視界に入った。

 (…なんか嫌な予感がする)

 ざらつくような妙な胸騒ぎを感じ、慌てて現場に駆け寄る。
 仁太郎の予感は的中していて、まさにそれは高校生がホームレスの中年男性を集団で暴行していた最中だったのだ。

 男性は痛い、やめてくれと叫んでいる。けれど高校生達はまるでゲームを楽しむかのように下卑た笑い声を上げながら、男性を足蹴にしたり、棒のような物で殴ったりしていた。

 四人はいただろうか。弱いものを容赦なくいたぶる姿が、自身の父親と重なった。
 その瞬間、ぶわわと沸騰するように一気に頭に血が上った。その怒りを抑えることができなくて、仁太良は感情のままに高校生を次々と殴り倒した。



「も、もうやめてくれ…っ!」
 高校生達に、さっきまでの余裕はもうない。
 頬を腫らし、泣きながら懇願する高校生の腹に、仁太郎は容赦なく蹴りを入れた。ゲホッと嘔吐する音が聞こえたが、それでも一度湧き上がった仁太郎の怒りは収まることを知らない。
「無抵抗の相手に寄ってたかって殴る蹴るしてたのはどこのどいつだよ?ああ!?」
「ひ…、許して…っ下さいいいっ…!!」
「死ね」
 怒りでコントロールを失っていた仁太郎は迷わず拳を振り上げた。

 ーーこのままでは殺される。
 仁太良の殺気に慄いた高校生達は、顔中血まみれになりながらもその場から命からがら逃げ出した。

「ダッセェ…。やられる覚悟も無いくせに、馬鹿みてぇなことしてんじゃねえよ」
 その場から誰もいなくなった時、あれだけ熱く沸騰していた心が、すうっと冷えていくのを感じた。
 仁太郎は男性の無事を目視で確認すると、何も言わずその場から立ち去った。











 翌日、校長室に呼び出された仁太良が聞かされたのは、耳を疑うような信じられない内容だった。

 なんと仁太良がホームレスを襲い、それを止めようとした正義の高校生を仁太良が殴った…そういう風にシナリオが書き換えられていたのだ。

「俺じゃねえ!…いや、その高校生集団を殴ったのは俺だけど…、ホームレス襲ってたのはそいつらの方なんだって!」
「反省の色、なしか。嘘が下手だな。いい加減罪を認めろ、世良!」
「嘘なんかついてねえよ!だからさっきから俺じゃねえって何度も…っ」
「お前のことなんか、誰が信じると思う…?」

 その言葉に、もう、何を言っても無駄なのだなと仁太郎は悟った。

 相手は進学校の生徒だった。対する仁太郎は底辺校と揶揄される高校の生徒で、本人も普段から喧嘩ばかりしている不良だ。どんなに違うと訴えても教師はまったく聞く耳を持たず、ハナから仁太郎がやったと決めつけた。

 (俺じゃねえ…のに…)

「有り難いことに先方は警察沙汰にしないと言ってくれている。…世良、お前この騒動のケジメとして学校を辞めろ」
 悔しさを滲ませて、無言で拳を強く握りしめた仁太郎に、教師はそう冷たく告げた。


 仁太良が退学するという噂は、あっという間に学校中を駆け巡った。

「ホームレス狩りだって」
「しかも助けに入った学生をボコボコに殴りつけたんだってさ」
「やっぱり不良って怖いね」

 噂が独り歩きしていく中で、過去に仁太良に救われた経験を持つ学生二名が仁太郎の無実を証明するために立ち上がった。

「世良くんがそんなことをするはずない!」

 二人は世良を信じて、事件の起きた周辺で根気強く聞き取りをし、必死に証拠を集めてくれた。

 二人の調査によると、どうやら例の高校生集団は、たびたびあの場所を訪れてはそこに住まうホームレスを襲撃していたらしい。ホームレス側は前々から立ち退くように言われていた弱みから、警察沙汰になるのを恐れ、通報できなかったのだという。
 行き場のないホームレスを狙った卑劣な犯行だった。

 結果的に二人のお陰で誤解は解け、仁太郎の退学は免れた…のは良かったのだが、しかし、相手の学生はその悪質さながら数日の停学処分で済んだ。

 更に教師は、仁太良を疑ったことを謝りもせず、バツが悪そうな顔をしながら「日頃の行いのせいだぞ」と最後まで仁太良のことを悪者にした。

 カッとなり、殴ってやろうと思ったけれどーー
 それで退学にでもなれば、必死に証拠を集めてくれた二人の気持ちを踏みにじることになる。唇を噛み締め、悔しさにじっと耐えた。

 この時から、仁太良はますます大人を信用しなくなっていく。
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