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~樹生side~
スカウト
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「お前、うちの店に来ないか?」
情事のあと、気恥ずかしさから頭から布団を被り顔を隠していた仁太郎の布団を無理矢理剥ぎ取り、樹生は仁太郎を自分の店に誘った。
「店が大きくなって人手が足りてないんだ。仁太郎が内勤として来てくれたら、俺はかなり助かるんだが」
なんとなく、危なっかしいところのある仁太郎を放っておけない気持ちはあった。しかしそれを差し引いても、仁太郎のように体力が有り余っている元気な若者は立派な戦力になる。
悪ぶっていながらその実仁太郎が根は真面目な人間だということも、樹生は随分前から気付いていた。
大金が飛び交うホストクラブにおいて、お金の管理を任される内勤はかなり重要な立ち位置だ。それ故に信頼できる人間にしか任せられない仕事なのだが、その点仁太郎は性格的に向いていると思った。
色恋を抜きにしても、雇う側として仁太郎はかなり欲しい人材だ。
ホストクラブという性質上、内勤であってもある程度の容姿レベルが欲しいところだが、仁太郎はそこも余裕でクリアしている。
正直キャスト側でも稼げるレベルだと思うが、仁太郎が女性客を相手にしている姿を想像しただけで嫉妬で樹生の方が仕事にならなそうなので、そちらは却下だ。
それに、オーナーとして店の商品であるホストには手を出さないことをポリシーにしている樹生にとって、バリバリ手を出すつもりの仁太郎をキャストにするわけには絶対にいかなかった。
樹生のそんな個人的な思惑にはまったく気付いていない仁太郎は、静かに樹生の話を聞いていた。
「内勤はホストと違ってガッツリ稼げない代わりに、安定はしている。初任給で手取り30万だ。働きによっては昇給もある。悪い話じゃないと思うがな」
樹生の言葉に仁太郎はしばらく考え込んでいたが、首を横に振った。
「正直、金には困ってたから有り難い申し出なんだけどさ。樹生さんがわざわざ俺みたいな不良債権引き取ることねーよ」
仁太郎の言葉に、樹生が眉根を寄せる。
「不良債権?」
「ぶっちゃけ、ほぼ毎回、バイトをクビになってる」
毎回クビとは、少し意外だ。
不良ぶってはいるが、仁太郎は与えられた仕事は真面目にこなすタイプだろう。
少なくとも、クビになるような勤務態度を取りそうには思えない。今まで幾人もの人間と接してきた樹生の目には、そう映っていたのだが。
「…理由、聞いても?」
樹生が尋ねると、仁太郎が少し困った顔をしてから口を開いた。
「初めてバイトした先では店長がバイトの女の子の尻とか胸触ってたからボコったらクビになった。次にバイトしたレンタルビデオショップでは客がレジ担当の女の子にわざとエロいDVDのタイトル言わせてニヤニヤしてたから店の外追い出して…一応客だから手加減したんだけどね?あとは喧嘩ふっかけられて相手してたら遅刻が続いて…とか、そんなこともあったな」
「なんだ、そんなことなら全然心配はいらない」
理由がわかって、樹生はホッとした顔で笑んだ。
仁太郎の話を聞き終えた樹生は、なんとも不器用な目の前の愛しい男を、ますます自分の店で世話してやりたい気持ちになった。
「やっぱりお前、俺んとこ来い」
「樹生さん?俺の話聞いてた?それとも経営者の勘鈍っちゃった?」
困ったような顔の仁太郎に、樹生がははっと笑う。
「確かに、お前が短気すぎるところは問題だ。けど、まともな上司に出会えてたら、きっと結果は違ったと思う」
「ーーー!」
「俺の店には女の子にセクハラするような屑はいないし、慣れない部分はきちんとカバーする。客とのトラブルは昼職の比じゃねぇけど、そういう時は上の連中呼んでもらえたら必ず対処するから。お前はとりあえず一人で抱え込む癖をやめろ」
「樹生さん…」
「上司ってのは威張るだけの置物じゃない。下を守るためにいるんだ。何か困ったことが起きたら、遠慮なく俺を頼れ。従業員を守るのも俺の仕事だ。そのために高い給料もらってトップに立ってるんだから、どんどん利用すればいい。もちろん向いてないと思ったらその時は辞めても構わないーーで、ここまで聞いて、まだ何か不安要素はあるか?」
樹生の言葉を黙って聞いていた仁太郎が、少しモジモジしながら「じゃあ…その、よろしくお願いします」と、樹生の誘いを素直に受けた。
「こちらこそ」
樹生は笑顔で仁太郎の仲間入りを歓迎した。
情事のあと、気恥ずかしさから頭から布団を被り顔を隠していた仁太郎の布団を無理矢理剥ぎ取り、樹生は仁太郎を自分の店に誘った。
「店が大きくなって人手が足りてないんだ。仁太郎が内勤として来てくれたら、俺はかなり助かるんだが」
なんとなく、危なっかしいところのある仁太郎を放っておけない気持ちはあった。しかしそれを差し引いても、仁太郎のように体力が有り余っている元気な若者は立派な戦力になる。
悪ぶっていながらその実仁太郎が根は真面目な人間だということも、樹生は随分前から気付いていた。
大金が飛び交うホストクラブにおいて、お金の管理を任される内勤はかなり重要な立ち位置だ。それ故に信頼できる人間にしか任せられない仕事なのだが、その点仁太郎は性格的に向いていると思った。
色恋を抜きにしても、雇う側として仁太郎はかなり欲しい人材だ。
ホストクラブという性質上、内勤であってもある程度の容姿レベルが欲しいところだが、仁太郎はそこも余裕でクリアしている。
正直キャスト側でも稼げるレベルだと思うが、仁太郎が女性客を相手にしている姿を想像しただけで嫉妬で樹生の方が仕事にならなそうなので、そちらは却下だ。
それに、オーナーとして店の商品であるホストには手を出さないことをポリシーにしている樹生にとって、バリバリ手を出すつもりの仁太郎をキャストにするわけには絶対にいかなかった。
樹生のそんな個人的な思惑にはまったく気付いていない仁太郎は、静かに樹生の話を聞いていた。
「内勤はホストと違ってガッツリ稼げない代わりに、安定はしている。初任給で手取り30万だ。働きによっては昇給もある。悪い話じゃないと思うがな」
樹生の言葉に仁太郎はしばらく考え込んでいたが、首を横に振った。
「正直、金には困ってたから有り難い申し出なんだけどさ。樹生さんがわざわざ俺みたいな不良債権引き取ることねーよ」
仁太郎の言葉に、樹生が眉根を寄せる。
「不良債権?」
「ぶっちゃけ、ほぼ毎回、バイトをクビになってる」
毎回クビとは、少し意外だ。
不良ぶってはいるが、仁太郎は与えられた仕事は真面目にこなすタイプだろう。
少なくとも、クビになるような勤務態度を取りそうには思えない。今まで幾人もの人間と接してきた樹生の目には、そう映っていたのだが。
「…理由、聞いても?」
樹生が尋ねると、仁太郎が少し困った顔をしてから口を開いた。
「初めてバイトした先では店長がバイトの女の子の尻とか胸触ってたからボコったらクビになった。次にバイトしたレンタルビデオショップでは客がレジ担当の女の子にわざとエロいDVDのタイトル言わせてニヤニヤしてたから店の外追い出して…一応客だから手加減したんだけどね?あとは喧嘩ふっかけられて相手してたら遅刻が続いて…とか、そんなこともあったな」
「なんだ、そんなことなら全然心配はいらない」
理由がわかって、樹生はホッとした顔で笑んだ。
仁太郎の話を聞き終えた樹生は、なんとも不器用な目の前の愛しい男を、ますます自分の店で世話してやりたい気持ちになった。
「やっぱりお前、俺んとこ来い」
「樹生さん?俺の話聞いてた?それとも経営者の勘鈍っちゃった?」
困ったような顔の仁太郎に、樹生がははっと笑う。
「確かに、お前が短気すぎるところは問題だ。けど、まともな上司に出会えてたら、きっと結果は違ったと思う」
「ーーー!」
「俺の店には女の子にセクハラするような屑はいないし、慣れない部分はきちんとカバーする。客とのトラブルは昼職の比じゃねぇけど、そういう時は上の連中呼んでもらえたら必ず対処するから。お前はとりあえず一人で抱え込む癖をやめろ」
「樹生さん…」
「上司ってのは威張るだけの置物じゃない。下を守るためにいるんだ。何か困ったことが起きたら、遠慮なく俺を頼れ。従業員を守るのも俺の仕事だ。そのために高い給料もらってトップに立ってるんだから、どんどん利用すればいい。もちろん向いてないと思ったらその時は辞めても構わないーーで、ここまで聞いて、まだ何か不安要素はあるか?」
樹生の言葉を黙って聞いていた仁太郎が、少しモジモジしながら「じゃあ…その、よろしくお願いします」と、樹生の誘いを素直に受けた。
「こちらこそ」
樹生は笑顔で仁太郎の仲間入りを歓迎した。
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