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小悪魔にも程がある。
クリスマスの夜
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「そういえば、もうすぐクリスマスだね」
いつものように家に居座る晴瑠がポツリと呟いた単語に、陽一の鼓膜がピクリと反応する。
「陽ちゃんは、一緒に過ごす相手とかいるの?」
「いるように見えるか?見ての通り、寂しいぼっちクリスマスですよ」
今年だけではない。もう何年も独りきりのクリスマスを過ごしている。クリスマスデートなんて、大学生の時の彼女と過ごしたのが最後だ。
半ば投げやりのように言うと、晴瑠がにっこりと笑顔でこんな提案をしてきた。
「なら、俺が一緒に過ごしてあげようか?」
「なっ」
「ぼっちより、良くない?」
ねっ、ねっ、としつこく迫る晴瑠を片手で押しやる。
「…彼氏はどうすんだよ」
「仕事って言ってた…でも本当は他の相手と過ごすって知ってるんだよね」
「最低な男だな…」
嫌悪感を隠さない陽一の言葉に、晴瑠は肩を竦めた。
「どっちにしろ、相手にされなかったと思うよ。俺さぁ、今まで普通のデートって、したことないんだ」
(デートをしたことがない…?)
相手には困らなそうな晴瑠の意外な台詞に陽一は眉をひそめた。
「……関係がバレないように、ってこと…?でも男友達と出かけるなんてことは普通にあるし、イチャイチャさえしなけりゃ別に男同士だってーー」
その言葉を遮るように、晴瑠は首を横に振った。
「タケトは世間体をすっごく気にするタイプでさ、普段はゲイなことを隠して女の子と付き合ってるんだ。で、その溜まりに溜まったはけ口を俺に求めてる」
「そんな…」
「タケトだけじゃない。今まで関係を持った人、みんなそんな感じだったよ。まあつまり、セックスさえできればいい存在ってこと。そんな相手とわざわざデートなんかしないでしょ?ましてやイブなんて」
恋人達の日でもあるクリスマスイブに、自分なんて選ばれるわけがない。そう言いたげな晴瑠の投げやりな言葉に、陽一は後頭部を鈍器で思いっきり殴られたような気がした。
「初めて会った日に、彼氏に浮気されたって言ってたの嘘。ホントは、俺の方が浮気相手だったんだ。…まあ、彼女いるって知ったのはもうヤッちゃった後だったんだけど」
悲しげに笑う晴瑠を見て、陽一の胸が軋んだ。自由に恋愛を楽しんでいるタイプだと思っていたのに、実際は違ってたなんて。
「最初はそれでもいいって思ってた。体だけでも別にって。でもあまりにも相手の都合に振り回されてばかりでなんか疲れちゃってさ。で、ちょっとこっちが言い返したら、恋人でもないのにうるさい、お前は黙って足を開いてればいいって言われて、無理矢理抱かれて…悔しくて…」
「それであの日、俺の部屋を訪ねた…?」
晴瑠は静かにこくんと頷いた。そして俯いたまま、言葉を繋いだ。
「あの時はちょっと限界きてたから、そのまま陽ちゃんの優しさに甘えちゃった。真剣に相談に乗ってくれてたのに、嘘ついちゃってごめんね。最低…だよね」
そう言い、帰ろうと玄関に向かった晴瑠に陽一が後ろからポツリと声をかけた。
「まあー…ぼっち同士過ごすのもアリか」
その言葉に弾かれたように晴瑠が振り向いた。そして目をキラキラさせながら、興奮した様子で陽一にリクエストをする。
「あのね、あのね、俺、駅前のイルミネーション見に行きたいの!」
さっきまで地面ばかり見ていた人間と同一人物とは思えない変わりように、陽一は呆気にとられながらも、わかったわかったと晴瑠をなだめた。
「言っとくけどうちの会社は今が繁忙期で仕事は休めないから、かなり遅くなるぞ。店で食事とかは無理だな。仕事終わりに待ち合わせてイルミネーション見て、家でテキトーに飯食ってーーそれでもいい?」
陽一の言葉に、晴瑠はうん、うんと嬉しそうな顔で何度も頷いた。
「遅くなってごめん、色々トラブった」
「ううん、お仕事お疲れ様」
仕事帰りのスーツ姿のまま小走りで駆け寄る陽一を、晴瑠の笑顔が出迎えた。
時刻は夜の8時を回っていた。
なるべく定時で上がろうと今日は朝から奮闘したのに、そんな日に限ってトラブルに巻き込まれるのだから、人生うまくいかない。
寒空の下でずっと待たせるわけにもいかないから、仕事の目処がついてから晴瑠が家を出られるようにメッセージで伝えた。外にいたのはごく短い時間のはずなのに、それでも晴瑠の白い肌が冷たい外気に触れて既に赤くなっている。
人混みが入り交じる中で、不安そうな顔で待っていた晴瑠を、そして陽一の姿を見つけてホッとしたような一瞬の表情を、陽一は見逃さなかった。
(いつも底無しに明るいくせに、なんでそんな顔してんだよーー)
もしかしたらこの子は、今まで何度も約束を反故にされてきたのかもしれない。陽一の胸がズキリと痛んだ。
駅前まで並んで歩いて、イルミネーションをふたり一緒に見上げた。ただそれだけのことだったけれど、晴瑠はすごいすごいと嬉しそうにはしゃいでいて、心から楽しんでいるのだと伝わってくる。
「綺麗だねぇ…」
キラキラと夜道に輝くイルミネーションの光を浴びて笑う晴瑠が、いつもより美しく映って見えて、陽一の心臓がどくんとはねた。
(ああ、もうこれはーー)
陽一は、この胸の高鳴りを知っている。しかも過去他の人に感じたどれよりも強く、はっきりしたもの。
ずっと、そんなことあり得ないと否定し続けてきた。けれど、陽一は晴瑠に対して芽生えたこの気持ちを間違いないものだと、確信した。
色とりどりの光に柄にもなく感動したあと、適当に寄ったコンビニにかろうじて残っていた半額ケーキとシャンパンを買って、家路に着いた。
陽一が堅苦しいスーツを脱いでスウェットに着替えている間、晴瑠がいそいそとケーキ用の皿とフォークを用意する。その嬉しそうな姿を見て、今日晴瑠をひとりにしなくて本当に良かったと陽一は思った。
「美味しい?」
「うん!」
子どものような無邪気な笑顔でケーキを頬張る晴瑠を見て嬉しい気持ちになりながら、陽一もケーキを口に運んだ。
(可愛いなあ…)
ふいに晴瑠が自分の口元についた生クリームをペロリと舌で舐め取った。その無防備なエロティックさに、図らずも陽一の中心が反応してしまった。
慌てて前を隠すが、その挙動の不審さがかえって仇となりバレてしまった。晴瑠は少し驚いた顔をしたあと、笑顔で陽一に近付いて必死に隠している手を剥がす。
「わっ、これは…その…っ」
「もしかして溜まってた?抜いてあげるよ」
「いいってば」
「遠慮しないでさ…」
軽い口調で楽しそうに声を弾ませながら、晴瑠が陽一のズボンに手をかける。
「やめろって!」
強い口調で怒鳴りつけ晴瑠の身体を押しやると、晴瑠はその勢いに一瞬びくりとしたあと、悲しそうに瞳を揺らした。
「俺に触られるの、嫌?気持ち…悪い?」
拒絶されたと誤解する晴瑠に、「そうじゃない」と強く伝える。
「初めて会った日にも言っただろう。自分を安売りするなって」
「陽ちゃん…」
「なあ晴瑠。こういったこと、簡単にしちゃ駄目だ。セックスって、心が通って初めてすることなんじゃないのか。少なくとも、俺はそう思ってる」
陽一の言葉に、晴瑠が信じられないものを見たかのように目をパチクリさせた。晴瑠が今まで出会ってきたのは、晴瑠が誘えばこれ幸いとばかりに据え膳を食う男ばかりだったからだ。
陽一も本音では、晴瑠のことを抱きたくてたまらなかった。
性的欲求だけじゃない。どうしようもないぐらい、晴瑠の笑顔や人間性に惹かれている。相手が同性ということもあって自覚するのが遅れたけれど、これは間違いなく、恋だ。
今まで自分は女性しか愛せないと思っていたのに、晴瑠となら真剣に付き合いたいとさえ思う。
そんな心の変化に自分でも戸惑ったけれど、抗えない事実で。
きっとここでその想いを告げれば、晴瑠は喜んでその身を差し出すだろう。でも、流されてすることじゃないと思った。晴瑠が大好きだからこそ…。
だから今はまだ、気持ちを伝えるタイミングじゃない。そう思った瞬間。
空気を切るように、メッセージの着信を知らせる音が鳴った。晴瑠のスマホからだった。メッセージを確認した晴瑠がゆっくりと立ち上がる。
「もう、勝手だなあ。今から来るって。きっと本命の子と喧嘩したか何かしたんでしょ」
相手は晴瑠のことを蔑ろにしたあの男だと、名を言わなくてもわかった。
呆れているような、笑っているような、それでいて泣いているような顔で「帰るね」と玄関に向かった晴瑠の手首を咄嗟に陽一が掴んだ。
「ーー!?」
「ごめん、さっきああ言った癖にこんなこと言うのおかしいって分かってるんだけど…」
気付いた時には晴瑠を背後からきつく抱き締めていた。
「あいつのとこ…行かせたくないな…」
「陽ちゃ……」
「晴瑠にあんな顔させるような奴のとこに、晴瑠を行かせたくない…」
晴瑠をいいように利用して好き勝手振る舞う男の存在が許せなくて、抱き締める腕に力がこもる。
晴瑠と関わっていくうちに気付いたことがある。多分、晴瑠は性的な行為に依存してしまうタイプだ。だから、こんな引き止め方は良くないと理性では思っているのに、感情には抗えなかった。
「俺を選んでよ…晴瑠…」
懇願するような掠れた声に応えるように、晴瑠がスマホの電源を落とした。
そのままゆっくりと後ろを振り向き、背伸びをして自分より少し背の高い陽一の唇にそっとキスをする。
「俺の心はとっくに陽ちゃんのものだよ」
その瞬間、理性は完全にかき消えた。
「んっ……」
華奢な晴瑠の体を、骨が軋むほどに強く抱き締めた。もう、止められない。完全にストッパーが外れた陽一が、貪るように激しく、晴瑠の唇を奪った。普段そんな素振りを見せない陽一の熱っぽい濃厚なキスに、晴瑠も必死に応える。
「んん…ふ、あ…」
息もできないほどのキスを繰り返しながら、倒れ込むようにして晴瑠の体をベッドに組み敷いた。そのまま勢いに任せて晴瑠のセーターを一気に胸の上までたくし上げ、下着ごとジーンズを剥ぎ取った。
そこに現れたものは、薄くて平らな胸、細いがくびれのない腰。そして茂みの下には自分と同じ雄の象徴がついている。どこからどう見ても、男の体だ。
「気持ち悪く…ない?」
不安そうに見つめる晴瑠に、陽一はブンブンと首を大きく横に振った。
「すごく…綺麗だ…」
陽一の言葉に、晴瑠が少し照れたような、それでいてホッとしたような顔を見せる。
普段はこっちが困惑するほど大胆なくせに、時折見せる初心な反応とのギャップが、可愛くてしょうがない。
ずっと女の子が好きだったはずなのに、真っ平らな胸を見ても自分と同じモノがついている局部を見ても、萎えるどころか陽一の興奮は加速するばかりだ。
(これが、惚れてるってことなのかな…)
「あ…ふ」
薄く色づいた胸を喰むように口づけると、晴瑠の唇から甘い吐息が漏れた。
小さな突起を舌先で転がしたり舐めたりして愛撫すれば、それに合わせて晴瑠の呼吸が次第に荒くなっていく。
「んっ……ああ…っ」
そっと、既に高ぶりつつある晴瑠の中心に手を添えた。
男のモノを触るなんて想像しただけでも無理だと思うのに、晴瑠のことは可愛がってあげたいと思う。
大きな手で包みやわやわと揉みしだくと、晴瑠の体がびくんと大きく跳ねた。
「あ…っ、や…あ…」
我慢できないと主張するかのように、晴瑠の鈴口からとろとろとした液体が流れ出る。ちゃんと感じてくれてるのだと思うと嬉しくなった。
「ね、陽ちゃんのも…」
自分ばかりされて申し訳ないと思ったのか、おもむろに晴瑠が陽一のスウェットのズボンに手をかけた。
「いっ、いや、それはまた今度で!今日は俺にさせてくれ!なっ」
ギクリとして、慌てて晴瑠の行為を止めさせる。
ーー危なかった。
口淫が晴瑠にとって特別な行為ではないというのは、晴瑠の幾度かの言動から推測できた。
それに陽一に気持ち良くなってもらおうと思ってのことだとわかっていたから、本来なら有り難く好意を受け取るところだろう。
でも、もしこれで達してしまったら…
それが怖かった。自分は早い上に一度達してしまったらすぐには復活できないタイプだと陽一は今までの経験上知っている。初めてのセックスで、そんな失態は絶対起こすわけにいかなかった。
それに、自分が晴瑠のことを気持ち良くしてあげたいという気持ちに偽りはない。きっと晴瑠は今まで奉仕するのが当たり前な環境にいたのだろう。でもとにかく今日は、めいっぱい甘やかしてあげたいのだ。
晴瑠は陽一の言動に驚きはしつつも特に不審には思わなかったようで「そう?」と、深く追及しないでくれた。
そんな晴瑠の様子に安心して、再びベッドに押し倒した。が、
ここまできて大切なことに気付いてしまった。自分が何の用意もしていなかったということに。
つい勢いでここまでしてしまったけれど、まさか今日晴瑠とセックスすることになるなんて想定もしていなかったから、ローションもコンドームも準備していなかったのだ。
陽一の顔からサーッと血の気が引いていく。
実は晴瑠のことを意識するようになってから陽一は密かに男同士のセックスについて調べていて、必要な手順やグッズについて知識だけはあった。あったのだけれど。
完全に、そのことが頭からすっぽ抜けていた。
「ごめん…俺、何も用意してなくて…」
ここまで来て、今から晴瑠の部屋に取りに行くのも雰囲気をぶった斬りそうで、己の情けなさにため息が出そうになったその時。
「あの…陽ちゃんこれ…」
晴瑠がおずおずとカバンからコンドームとローションを取り出した。しかも、使い古しなんかじゃなくて新品のものだ。
「用意してたの…?俺とのために…?」
「…うん」
驚いた顔の陽一を、晴瑠が不安そうな瞳で見つめながらこくりと頷く。
「引いた…?」
「全っ然!」
決して流されてなんかじゃなかった。晴瑠が最初から、自分とのセックスを期待してくれていたなんて。
晴瑠の素直な行動に、引くどころか嬉しすぎて、つい口元がニヤついてしまう。
(確か、ゴムを指にはめて、ローション使って解していくんだったよな…)
調べた手順を頭の中で反芻しながら、間違えのないようにひとつひとつ丁寧に行動に移した。
ついつい動作がぎこちなくなってしまうが、そこは晴瑠も理解してくれていると信じて先に進める。
「痛かったら、言ってくれよ…」
入口を丁寧に優しくほぐしてから、ゆっくりと晴瑠の中に指を埋めていく。
「ん…あっ…」
(この辺に前立腺があるって書いてあったよな…)
ネットで調べただけの知識を頼りに、晴瑠のナカを指の腹で擦り上げた。
「あ…っ、ああっ」
晴瑠の口から一際大きい嬌声が漏れる。確実にさっきまでと反応が違った。どうやら当たりだったようだ。
安堵からほっとため息をついたあと、晴瑠の気持ちいいポイントを狙いすまし指を動かした。それに呼応するかのように晴瑠の体がびくびくと震える。
「あ、あっあ…だめ…っ、気持ちよすぎ…っ」
呼吸を荒くして、頬を染めながら眼尻を濡らした晴瑠の表情が、たくさん感じているのだと教えてくれる。
「ああ…っ、いい…っ」
晴瑠の甘美に震える表情や体に脳が沸騰しそうなほど興奮するのと同時に、ミスってはいけない、冷静になれと叫ぶ自分が頭の中に混在している。
不慣れすぎて、すべてが手探り状態だった。晴瑠の表情をひとつも見逃さないように観察しながら愛撫する、その繰り返し。陽一の緊張はピークに達していた。
男同士ということを除けば陽一はセックス自体は初めてではなかったが、正直テクニックに関しては自信がない。
今までだって、自分なりに相手を大切にしてきたつもりだった。けれど元カノにはよく淡白だと呆れられていたし、相手が自分とのセックスを喜んでいなかったのは口で言わずともその表情や態度から伝わっていた。
そんな苦い過去の経験から余裕なんて持てるはずもなく、とにかく晴瑠にカッコ悪いところだけは見せるまいと必死になる。
「ね、もう挿入っても大丈夫だよ。きて…お願い」
潤んだ瞳で見つめながらねだる晴瑠の可愛さに、鼻血が出そうになるほど興奮した。
それでも焦って晴瑠の体を傷つけないようにと、どうにか心を落ち着けながら、手早くコンドームを自身に付けゆっくりと晴瑠の中に自身の欲望を沈めていった。
「あ…ん」
晴瑠の吐息が甘く、漏れた。
根元まで収めた時、晴瑠がとろんとした目で見つめながら陽一の首に手を添えた。
物欲しげな瞳に応えるように、角度を変えながら何度も何度もキスをして、晴瑠の小さな体を抱き締めた。
密着した肌からお互いの体温や胸の鼓動が伝わって、愛しく思う気持ちが後から後から溢れてくる。
チュッと音を立てて唇が離れた。乱れた呼吸を整えながら焦点がギリギリ合う距離で見つめると、晴瑠がうっとりした表情で応えた。
「嬉しい…今、陽ちゃんと繋がってるんだ」
そう幸せそうに言う晴瑠が可愛くて、年甲斐もなくキュンとしてしまう。
「俺も…晴瑠と繋がれて、嬉しい」
気の利いた言葉なんて出てこない。それでも、素直な気持ちを伝えたい。
陽一の言葉に、ほわりと晴瑠が微笑んだ。その可愛い唇にまたキスをして、少し腰を引いてから再びぐぐっと奥まで楔を押し込んだ。
「あ…っ、ああん…っ」
その衝撃に、晴瑠が恍惚の表情を浮かべながら甘い声を漏らした。少しずつ速くなる律動に合わせるように晴瑠の中がキュウキュウと締まって、陽一の中心を刺激する。
「あっ、陽ちゃん、奥すごい気持ちいいよお…」
奥を穿つたび、晴瑠の体がびくんびくんと大きく跳ねた。
(なんだこれ、気持ち良すぎるだろ…!!)
初めての体験に、奥からどんどん快感がせり上がってくる。気持ち良さそうによがる晴瑠の火照った顔に余計そそられて、腰の動きが止まらなかった。そして。
「あっ…」
ヤバイと思った時には遅かった。途中で止めることは叶わず、先に達してしまったのだ。
「ごめん…いっちゃった…」
まだ晴瑠を満足させてあげられていないのに、なんて情けないんだ俺の息子。
陽一は心の中で軟弱な自分の中心を叱りつけた。
『もういっちゃったの?』
『陽一とのセックス、ほんと退屈』
ふと脳裏を過ったのは、ため息まじりの不満そうな元カノの顔だった。別れた日の何ヶ月も前から体を合わせることはなくなっていて、お互いの心の距離がどんどん離れていったあの頃。過去のトラウマが一気に蘇って、嫌な汗が流れる。
早漏となじられるのも覚悟で晴瑠の顔をちらと見ると、意外にも晴瑠は満足そうな表情をしている。
「俺のナカ…よかった?」
「めちゃくちゃ…最高でした…」
素直な感想を口にすると、晴瑠がふふっと嬉しそうに微笑んだ。
「えへへ、やったあ」
その表情にドキリとさせられて、精を吐き出して萎れた中心があっという間にむくむくと立ち上がり始める。
「わあ、凄…」
淡白だと言われていた過去が嘘のように、陽一の中心はどんどん硬さを増していった。あまりの復活の早さに晴瑠もつい驚きの声を上げる。
(相手が違うとこうも変わるものなのか…?)
こんなこと、今までなかったのに。陽一は、自分の変化に戸惑い、驚く。
「晴瑠が可愛いから復活しちゃった。もう一回いい…?」
笑顔でこくりと頷く晴瑠に口づけを落とし、コンドームをつけ直して、ゆっくりと高ぶりを晴瑠の中に沈めていった。ついさっきまで陽一を受け入れていた中はトロトロに蕩けていて、まるで離さないと言うかのようにいやらしく絡みついてくる。
「あ、ん…陽ちゃん、気持ちいい…」
「俺もだよ、晴瑠。すっげーいい…」
胸と胸を寄せ合い、互いの名を呼び合いながら抱き合った。
体じゃなくて心で繋がることができたーーそう思えた。
晴瑠との初セックスは、全然スマートにはいかなくて、陽一にとって鈍くさい自分を晒す結果になってしまったけれど、過去の嫌な記憶が消滅するほどのインパクトと共に幸せな満足感を与えてくれた。
それは晴瑠も同じだったようで、心から満たされた表情をしている。
情けなくてカッコ悪いところも明るい笑顔で受け止めてくれる晴瑠の前では、陽一も自然体でいられた。
「好きだよ、晴瑠。大好きだ」
その真っ直ぐな言葉に、晴瑠の瞳が一瞬見開かれ、瞼から一雫の涙がこぼれた。
「絶対、大事にするからーーー」
晴瑠を深く深く抱きながら、陽一はこの子を絶対に幸せにしようと固く誓った。
「どうやったら、こんなことになるの…?」
「ごめん…」
陽一と晴瑠の目の前には、丸焦げになった無惨な鍋が置かれている。
「これ、元は何?」
「クリームシチュー…」
炭になった、料理だったらしい物を指差しながら陽一が問うと、その真っ黒さとは真逆の色であるはずの料理名を晴瑠が言うので、思わず耳を疑った。
お互いの気持ちを確認して愛し合った翌日も、陽一はいつも通りの出勤日だった。にも関わらず、久しぶりに没頭した濃厚な情事の疲れからか、陽一はうっかり寝坊してしまったのだ。
「晴瑠はもう少しゆっくり寝てていいから!シャワーもキッチンの物も好きに使って!合鍵置いとくから家出る時は頼むな!」
慌てて出勤準備を済ませ、晴瑠を部屋に残したままバタバタと大急ぎで家を出た。
あまりにも急いでいたので、合鍵を渡された晴瑠が嬉しさのあまり頬を染めていたことは知らない陽一である。
仕事にはギリギリ間に合った。真面目で普段から余裕ある行動を心掛けている陽一が、ハァハァと息を切らしながら滑り込みセーフで出勤する姿はかなり珍しかったようで、同僚には驚かれた。
ブラック企業というわけではないが、陽一の職場は特にこの時期忙しい。とはいえどんなに忙しくても日付が変わる前には帰宅できるし、残業代もきちんと出るので、陽一はこの職場が気に入っている。
脇目も振らず膨大な仕事の山をどうにか片付けて、ようやくわずかに取れた休憩時間、コンビニのおにぎり片手にスマホを確認すると、晴瑠から「お仕事お疲れ様。ご飯用意して待ってるね!」とメッセージが入っていた。
できたてホヤホヤの恋人からの温かいメッセージについつい顔が緩んでしまう。しかしこんな顔を同僚に見られたら確実に揶揄われると、直後にキュッと表情筋を引き締めた。
とにかく、それを楽しみに心の中でワクワクしながら午後の仕事も頑張り、帰宅した結果がコレである。
ここ最近の忙しさで連日コンビニ弁当続きだった陽一の体を心配してのことと知っては怒るに怒れない。それにしてもこんなに無惨なクリームシチューを見るのは初めてだった。
腰に手をあてフゥと軽く息を吐いたあと、腕をまくりながら「とりあえず重曹にでもつけるか」と言うと晴瑠がキョトンとする。
「じゅうそう?」
「そう。価格も安くて色々な場所の掃除に使えるから便利だよ。これ、生活の知恵」
「へえー」
感心したように言う晴瑠に、陽一は得意気な顔をしながら実演して見せてみることにした。
「ほら、水をはった鍋に重曹を入れて、しばらく煮込むと…」
「わっ!コゲが浮いてきた!」
グツグツと煮込んだ鍋から次々と黒いコゲが剥がれてゆく様を見て、心から感動した晴瑠が声を弾ませる。
こんな小さなことに目をキラキラと輝かせる晴瑠が本当に可愛くて仕方ない。
「すっごーい!!」
「あとは軽く擦れば取れると思うよ。新しいコゲだしね」
「俺やる!」
陽一の手からタワシをもぎ取った晴瑠は楽しそうにコゲを取り始める。そんな晴瑠を見て陽一も笑った。
こんな些細なことが楽しい。晴瑠となら、今日みたいな残念な出来事だって楽しい思い出になってしまうのだ。
晴瑠は基本的に家事全般が苦手なようだった。
陽一も一度家に上がらせてもらったことがあるが、眉をひそめるほどの不潔さはなかったものの床に脱ぎ散らかした服が散らかっていて同じ間取りとは思えないほど雑然とした印象だったし、料理は言わずもがな。更に冷蔵庫からは賞味期限切れの食材が出るわ出るわ。
「なんつーか…すごいな」
仕事後の疲れている中、呆れ顔で片付けを手伝う陽一の後ろでしゅんとしているその表情すら愛おしくて、つい笑ってしまう。陽一は完全に晴瑠に惚れてしまったのだと自覚せざるを得なかった。
二人が逢瀬を重ねるのは大抵は陽一の部屋で、陽一が用意した簡単な食事をとったり、まったりと動画配信を見たり、そしてそのままセックスしたりーーという、いわゆるおうちデートばかりだった。
仕事が忙しいと言っても、普通のカップルならば付き合いたてぐらいは時間の合間をぬって色々なところに出かけるものなのかも知れない。実際、陽一の同僚はよく仕事帰りに彼女とデートの約束があるなんて話をしている。
しかし、映画館だとか水族館だとかレストランで食事だとか普通の恋人がするであろう定番のデートコースは、実家に仕送りをしつつ奨学金の返済もしながら生活している陽一にとってそう簡単にホイホイとできるものではなかった。
大学の頃は勉強とバイト漬けの日々で、よく彼女に怒られたものだ。社会人になった今も、極貧生活とまではいかないものの余裕があるわけではない。
最初ぐらいかっこつけて見栄を張ることもできなくはない。けれどそんなハリボテの関係はいずれ無理が来るものだ。晴瑠とは一時の関係なんかじゃなくずっと付き合っていきたいと思っていた陽一は、経済的に厳しいことを正直に話した。
どうしようもないことだと思いつつ、それでも本当は、普通のデートをしたことがないという晴瑠を少しでも外に連れ出してやりたいのにと、陽一は不甲斐なさをずっと感じていた。年上として情けなく思うこともあって、ある日晴瑠に「ごめんな」と謝ったことがある。
そんな陽一に晴瑠は笑顔で首を横に振った。
「ううん。俺、陽ちゃんと一緒なら、それだけで楽しい」
大学時代の彼女には「一緒にいてつまらない」と振られた。なのに自分の目の前にいる愛くるしい恋人はそんな自分との時間を「楽しい」と喜んでくれている。晴瑠の何気ない一言に、陽一は目頭が熱くなるのを感じた。
「俺は正月こっちで過ごすんだけど、晴瑠は?」
年末年始が特に多忙になる職種についている陽一は、就職してからというものこの時期は実家に帰らず一人で過ごすのが恒例となっていた。
晴瑠に予定を聞くと、晴瑠は正月どころか18の頃に実家を出てから一度も帰っていないという。仕事の都合で帰れないだけの陽一とは事情が違っていそうで気になったが、いつもお喋りで聞いてないことまでベラベラ話す晴瑠がそれ以上話さないということは、あまり言いたくないのだろう。仕事の件もそうだが、晴瑠には陽一の知らないことがたくさんある。
(まあ、まだ付き合い初めたばっかりだしな)
いつかは知ることになるかもしれないが、きっと今はまだその時じゃないだけだ。
無理に聞き出すことはせず、いつか来るその日までに信頼を少しずつ築き上げていこうと陽一は心に決めた。
結局、大晦日に二人で年越し蕎麦を食べたこと以外、特別なイベントもないまま何日か過ぎた。
いつものように家に居座る晴瑠がポツリと呟いた単語に、陽一の鼓膜がピクリと反応する。
「陽ちゃんは、一緒に過ごす相手とかいるの?」
「いるように見えるか?見ての通り、寂しいぼっちクリスマスですよ」
今年だけではない。もう何年も独りきりのクリスマスを過ごしている。クリスマスデートなんて、大学生の時の彼女と過ごしたのが最後だ。
半ば投げやりのように言うと、晴瑠がにっこりと笑顔でこんな提案をしてきた。
「なら、俺が一緒に過ごしてあげようか?」
「なっ」
「ぼっちより、良くない?」
ねっ、ねっ、としつこく迫る晴瑠を片手で押しやる。
「…彼氏はどうすんだよ」
「仕事って言ってた…でも本当は他の相手と過ごすって知ってるんだよね」
「最低な男だな…」
嫌悪感を隠さない陽一の言葉に、晴瑠は肩を竦めた。
「どっちにしろ、相手にされなかったと思うよ。俺さぁ、今まで普通のデートって、したことないんだ」
(デートをしたことがない…?)
相手には困らなそうな晴瑠の意外な台詞に陽一は眉をひそめた。
「……関係がバレないように、ってこと…?でも男友達と出かけるなんてことは普通にあるし、イチャイチャさえしなけりゃ別に男同士だってーー」
その言葉を遮るように、晴瑠は首を横に振った。
「タケトは世間体をすっごく気にするタイプでさ、普段はゲイなことを隠して女の子と付き合ってるんだ。で、その溜まりに溜まったはけ口を俺に求めてる」
「そんな…」
「タケトだけじゃない。今まで関係を持った人、みんなそんな感じだったよ。まあつまり、セックスさえできればいい存在ってこと。そんな相手とわざわざデートなんかしないでしょ?ましてやイブなんて」
恋人達の日でもあるクリスマスイブに、自分なんて選ばれるわけがない。そう言いたげな晴瑠の投げやりな言葉に、陽一は後頭部を鈍器で思いっきり殴られたような気がした。
「初めて会った日に、彼氏に浮気されたって言ってたの嘘。ホントは、俺の方が浮気相手だったんだ。…まあ、彼女いるって知ったのはもうヤッちゃった後だったんだけど」
悲しげに笑う晴瑠を見て、陽一の胸が軋んだ。自由に恋愛を楽しんでいるタイプだと思っていたのに、実際は違ってたなんて。
「最初はそれでもいいって思ってた。体だけでも別にって。でもあまりにも相手の都合に振り回されてばかりでなんか疲れちゃってさ。で、ちょっとこっちが言い返したら、恋人でもないのにうるさい、お前は黙って足を開いてればいいって言われて、無理矢理抱かれて…悔しくて…」
「それであの日、俺の部屋を訪ねた…?」
晴瑠は静かにこくんと頷いた。そして俯いたまま、言葉を繋いだ。
「あの時はちょっと限界きてたから、そのまま陽ちゃんの優しさに甘えちゃった。真剣に相談に乗ってくれてたのに、嘘ついちゃってごめんね。最低…だよね」
そう言い、帰ろうと玄関に向かった晴瑠に陽一が後ろからポツリと声をかけた。
「まあー…ぼっち同士過ごすのもアリか」
その言葉に弾かれたように晴瑠が振り向いた。そして目をキラキラさせながら、興奮した様子で陽一にリクエストをする。
「あのね、あのね、俺、駅前のイルミネーション見に行きたいの!」
さっきまで地面ばかり見ていた人間と同一人物とは思えない変わりように、陽一は呆気にとられながらも、わかったわかったと晴瑠をなだめた。
「言っとくけどうちの会社は今が繁忙期で仕事は休めないから、かなり遅くなるぞ。店で食事とかは無理だな。仕事終わりに待ち合わせてイルミネーション見て、家でテキトーに飯食ってーーそれでもいい?」
陽一の言葉に、晴瑠はうん、うんと嬉しそうな顔で何度も頷いた。
「遅くなってごめん、色々トラブった」
「ううん、お仕事お疲れ様」
仕事帰りのスーツ姿のまま小走りで駆け寄る陽一を、晴瑠の笑顔が出迎えた。
時刻は夜の8時を回っていた。
なるべく定時で上がろうと今日は朝から奮闘したのに、そんな日に限ってトラブルに巻き込まれるのだから、人生うまくいかない。
寒空の下でずっと待たせるわけにもいかないから、仕事の目処がついてから晴瑠が家を出られるようにメッセージで伝えた。外にいたのはごく短い時間のはずなのに、それでも晴瑠の白い肌が冷たい外気に触れて既に赤くなっている。
人混みが入り交じる中で、不安そうな顔で待っていた晴瑠を、そして陽一の姿を見つけてホッとしたような一瞬の表情を、陽一は見逃さなかった。
(いつも底無しに明るいくせに、なんでそんな顔してんだよーー)
もしかしたらこの子は、今まで何度も約束を反故にされてきたのかもしれない。陽一の胸がズキリと痛んだ。
駅前まで並んで歩いて、イルミネーションをふたり一緒に見上げた。ただそれだけのことだったけれど、晴瑠はすごいすごいと嬉しそうにはしゃいでいて、心から楽しんでいるのだと伝わってくる。
「綺麗だねぇ…」
キラキラと夜道に輝くイルミネーションの光を浴びて笑う晴瑠が、いつもより美しく映って見えて、陽一の心臓がどくんとはねた。
(ああ、もうこれはーー)
陽一は、この胸の高鳴りを知っている。しかも過去他の人に感じたどれよりも強く、はっきりしたもの。
ずっと、そんなことあり得ないと否定し続けてきた。けれど、陽一は晴瑠に対して芽生えたこの気持ちを間違いないものだと、確信した。
色とりどりの光に柄にもなく感動したあと、適当に寄ったコンビニにかろうじて残っていた半額ケーキとシャンパンを買って、家路に着いた。
陽一が堅苦しいスーツを脱いでスウェットに着替えている間、晴瑠がいそいそとケーキ用の皿とフォークを用意する。その嬉しそうな姿を見て、今日晴瑠をひとりにしなくて本当に良かったと陽一は思った。
「美味しい?」
「うん!」
子どものような無邪気な笑顔でケーキを頬張る晴瑠を見て嬉しい気持ちになりながら、陽一もケーキを口に運んだ。
(可愛いなあ…)
ふいに晴瑠が自分の口元についた生クリームをペロリと舌で舐め取った。その無防備なエロティックさに、図らずも陽一の中心が反応してしまった。
慌てて前を隠すが、その挙動の不審さがかえって仇となりバレてしまった。晴瑠は少し驚いた顔をしたあと、笑顔で陽一に近付いて必死に隠している手を剥がす。
「わっ、これは…その…っ」
「もしかして溜まってた?抜いてあげるよ」
「いいってば」
「遠慮しないでさ…」
軽い口調で楽しそうに声を弾ませながら、晴瑠が陽一のズボンに手をかける。
「やめろって!」
強い口調で怒鳴りつけ晴瑠の身体を押しやると、晴瑠はその勢いに一瞬びくりとしたあと、悲しそうに瞳を揺らした。
「俺に触られるの、嫌?気持ち…悪い?」
拒絶されたと誤解する晴瑠に、「そうじゃない」と強く伝える。
「初めて会った日にも言っただろう。自分を安売りするなって」
「陽ちゃん…」
「なあ晴瑠。こういったこと、簡単にしちゃ駄目だ。セックスって、心が通って初めてすることなんじゃないのか。少なくとも、俺はそう思ってる」
陽一の言葉に、晴瑠が信じられないものを見たかのように目をパチクリさせた。晴瑠が今まで出会ってきたのは、晴瑠が誘えばこれ幸いとばかりに据え膳を食う男ばかりだったからだ。
陽一も本音では、晴瑠のことを抱きたくてたまらなかった。
性的欲求だけじゃない。どうしようもないぐらい、晴瑠の笑顔や人間性に惹かれている。相手が同性ということもあって自覚するのが遅れたけれど、これは間違いなく、恋だ。
今まで自分は女性しか愛せないと思っていたのに、晴瑠となら真剣に付き合いたいとさえ思う。
そんな心の変化に自分でも戸惑ったけれど、抗えない事実で。
きっとここでその想いを告げれば、晴瑠は喜んでその身を差し出すだろう。でも、流されてすることじゃないと思った。晴瑠が大好きだからこそ…。
だから今はまだ、気持ちを伝えるタイミングじゃない。そう思った瞬間。
空気を切るように、メッセージの着信を知らせる音が鳴った。晴瑠のスマホからだった。メッセージを確認した晴瑠がゆっくりと立ち上がる。
「もう、勝手だなあ。今から来るって。きっと本命の子と喧嘩したか何かしたんでしょ」
相手は晴瑠のことを蔑ろにしたあの男だと、名を言わなくてもわかった。
呆れているような、笑っているような、それでいて泣いているような顔で「帰るね」と玄関に向かった晴瑠の手首を咄嗟に陽一が掴んだ。
「ーー!?」
「ごめん、さっきああ言った癖にこんなこと言うのおかしいって分かってるんだけど…」
気付いた時には晴瑠を背後からきつく抱き締めていた。
「あいつのとこ…行かせたくないな…」
「陽ちゃ……」
「晴瑠にあんな顔させるような奴のとこに、晴瑠を行かせたくない…」
晴瑠をいいように利用して好き勝手振る舞う男の存在が許せなくて、抱き締める腕に力がこもる。
晴瑠と関わっていくうちに気付いたことがある。多分、晴瑠は性的な行為に依存してしまうタイプだ。だから、こんな引き止め方は良くないと理性では思っているのに、感情には抗えなかった。
「俺を選んでよ…晴瑠…」
懇願するような掠れた声に応えるように、晴瑠がスマホの電源を落とした。
そのままゆっくりと後ろを振り向き、背伸びをして自分より少し背の高い陽一の唇にそっとキスをする。
「俺の心はとっくに陽ちゃんのものだよ」
その瞬間、理性は完全にかき消えた。
「んっ……」
華奢な晴瑠の体を、骨が軋むほどに強く抱き締めた。もう、止められない。完全にストッパーが外れた陽一が、貪るように激しく、晴瑠の唇を奪った。普段そんな素振りを見せない陽一の熱っぽい濃厚なキスに、晴瑠も必死に応える。
「んん…ふ、あ…」
息もできないほどのキスを繰り返しながら、倒れ込むようにして晴瑠の体をベッドに組み敷いた。そのまま勢いに任せて晴瑠のセーターを一気に胸の上までたくし上げ、下着ごとジーンズを剥ぎ取った。
そこに現れたものは、薄くて平らな胸、細いがくびれのない腰。そして茂みの下には自分と同じ雄の象徴がついている。どこからどう見ても、男の体だ。
「気持ち悪く…ない?」
不安そうに見つめる晴瑠に、陽一はブンブンと首を大きく横に振った。
「すごく…綺麗だ…」
陽一の言葉に、晴瑠が少し照れたような、それでいてホッとしたような顔を見せる。
普段はこっちが困惑するほど大胆なくせに、時折見せる初心な反応とのギャップが、可愛くてしょうがない。
ずっと女の子が好きだったはずなのに、真っ平らな胸を見ても自分と同じモノがついている局部を見ても、萎えるどころか陽一の興奮は加速するばかりだ。
(これが、惚れてるってことなのかな…)
「あ…ふ」
薄く色づいた胸を喰むように口づけると、晴瑠の唇から甘い吐息が漏れた。
小さな突起を舌先で転がしたり舐めたりして愛撫すれば、それに合わせて晴瑠の呼吸が次第に荒くなっていく。
「んっ……ああ…っ」
そっと、既に高ぶりつつある晴瑠の中心に手を添えた。
男のモノを触るなんて想像しただけでも無理だと思うのに、晴瑠のことは可愛がってあげたいと思う。
大きな手で包みやわやわと揉みしだくと、晴瑠の体がびくんと大きく跳ねた。
「あ…っ、や…あ…」
我慢できないと主張するかのように、晴瑠の鈴口からとろとろとした液体が流れ出る。ちゃんと感じてくれてるのだと思うと嬉しくなった。
「ね、陽ちゃんのも…」
自分ばかりされて申し訳ないと思ったのか、おもむろに晴瑠が陽一のスウェットのズボンに手をかけた。
「いっ、いや、それはまた今度で!今日は俺にさせてくれ!なっ」
ギクリとして、慌てて晴瑠の行為を止めさせる。
ーー危なかった。
口淫が晴瑠にとって特別な行為ではないというのは、晴瑠の幾度かの言動から推測できた。
それに陽一に気持ち良くなってもらおうと思ってのことだとわかっていたから、本来なら有り難く好意を受け取るところだろう。
でも、もしこれで達してしまったら…
それが怖かった。自分は早い上に一度達してしまったらすぐには復活できないタイプだと陽一は今までの経験上知っている。初めてのセックスで、そんな失態は絶対起こすわけにいかなかった。
それに、自分が晴瑠のことを気持ち良くしてあげたいという気持ちに偽りはない。きっと晴瑠は今まで奉仕するのが当たり前な環境にいたのだろう。でもとにかく今日は、めいっぱい甘やかしてあげたいのだ。
晴瑠は陽一の言動に驚きはしつつも特に不審には思わなかったようで「そう?」と、深く追及しないでくれた。
そんな晴瑠の様子に安心して、再びベッドに押し倒した。が、
ここまできて大切なことに気付いてしまった。自分が何の用意もしていなかったということに。
つい勢いでここまでしてしまったけれど、まさか今日晴瑠とセックスすることになるなんて想定もしていなかったから、ローションもコンドームも準備していなかったのだ。
陽一の顔からサーッと血の気が引いていく。
実は晴瑠のことを意識するようになってから陽一は密かに男同士のセックスについて調べていて、必要な手順やグッズについて知識だけはあった。あったのだけれど。
完全に、そのことが頭からすっぽ抜けていた。
「ごめん…俺、何も用意してなくて…」
ここまで来て、今から晴瑠の部屋に取りに行くのも雰囲気をぶった斬りそうで、己の情けなさにため息が出そうになったその時。
「あの…陽ちゃんこれ…」
晴瑠がおずおずとカバンからコンドームとローションを取り出した。しかも、使い古しなんかじゃなくて新品のものだ。
「用意してたの…?俺とのために…?」
「…うん」
驚いた顔の陽一を、晴瑠が不安そうな瞳で見つめながらこくりと頷く。
「引いた…?」
「全っ然!」
決して流されてなんかじゃなかった。晴瑠が最初から、自分とのセックスを期待してくれていたなんて。
晴瑠の素直な行動に、引くどころか嬉しすぎて、つい口元がニヤついてしまう。
(確か、ゴムを指にはめて、ローション使って解していくんだったよな…)
調べた手順を頭の中で反芻しながら、間違えのないようにひとつひとつ丁寧に行動に移した。
ついつい動作がぎこちなくなってしまうが、そこは晴瑠も理解してくれていると信じて先に進める。
「痛かったら、言ってくれよ…」
入口を丁寧に優しくほぐしてから、ゆっくりと晴瑠の中に指を埋めていく。
「ん…あっ…」
(この辺に前立腺があるって書いてあったよな…)
ネットで調べただけの知識を頼りに、晴瑠のナカを指の腹で擦り上げた。
「あ…っ、ああっ」
晴瑠の口から一際大きい嬌声が漏れる。確実にさっきまでと反応が違った。どうやら当たりだったようだ。
安堵からほっとため息をついたあと、晴瑠の気持ちいいポイントを狙いすまし指を動かした。それに呼応するかのように晴瑠の体がびくびくと震える。
「あ、あっあ…だめ…っ、気持ちよすぎ…っ」
呼吸を荒くして、頬を染めながら眼尻を濡らした晴瑠の表情が、たくさん感じているのだと教えてくれる。
「ああ…っ、いい…っ」
晴瑠の甘美に震える表情や体に脳が沸騰しそうなほど興奮するのと同時に、ミスってはいけない、冷静になれと叫ぶ自分が頭の中に混在している。
不慣れすぎて、すべてが手探り状態だった。晴瑠の表情をひとつも見逃さないように観察しながら愛撫する、その繰り返し。陽一の緊張はピークに達していた。
男同士ということを除けば陽一はセックス自体は初めてではなかったが、正直テクニックに関しては自信がない。
今までだって、自分なりに相手を大切にしてきたつもりだった。けれど元カノにはよく淡白だと呆れられていたし、相手が自分とのセックスを喜んでいなかったのは口で言わずともその表情や態度から伝わっていた。
そんな苦い過去の経験から余裕なんて持てるはずもなく、とにかく晴瑠にカッコ悪いところだけは見せるまいと必死になる。
「ね、もう挿入っても大丈夫だよ。きて…お願い」
潤んだ瞳で見つめながらねだる晴瑠の可愛さに、鼻血が出そうになるほど興奮した。
それでも焦って晴瑠の体を傷つけないようにと、どうにか心を落ち着けながら、手早くコンドームを自身に付けゆっくりと晴瑠の中に自身の欲望を沈めていった。
「あ…ん」
晴瑠の吐息が甘く、漏れた。
根元まで収めた時、晴瑠がとろんとした目で見つめながら陽一の首に手を添えた。
物欲しげな瞳に応えるように、角度を変えながら何度も何度もキスをして、晴瑠の小さな体を抱き締めた。
密着した肌からお互いの体温や胸の鼓動が伝わって、愛しく思う気持ちが後から後から溢れてくる。
チュッと音を立てて唇が離れた。乱れた呼吸を整えながら焦点がギリギリ合う距離で見つめると、晴瑠がうっとりした表情で応えた。
「嬉しい…今、陽ちゃんと繋がってるんだ」
そう幸せそうに言う晴瑠が可愛くて、年甲斐もなくキュンとしてしまう。
「俺も…晴瑠と繋がれて、嬉しい」
気の利いた言葉なんて出てこない。それでも、素直な気持ちを伝えたい。
陽一の言葉に、ほわりと晴瑠が微笑んだ。その可愛い唇にまたキスをして、少し腰を引いてから再びぐぐっと奥まで楔を押し込んだ。
「あ…っ、ああん…っ」
その衝撃に、晴瑠が恍惚の表情を浮かべながら甘い声を漏らした。少しずつ速くなる律動に合わせるように晴瑠の中がキュウキュウと締まって、陽一の中心を刺激する。
「あっ、陽ちゃん、奥すごい気持ちいいよお…」
奥を穿つたび、晴瑠の体がびくんびくんと大きく跳ねた。
(なんだこれ、気持ち良すぎるだろ…!!)
初めての体験に、奥からどんどん快感がせり上がってくる。気持ち良さそうによがる晴瑠の火照った顔に余計そそられて、腰の動きが止まらなかった。そして。
「あっ…」
ヤバイと思った時には遅かった。途中で止めることは叶わず、先に達してしまったのだ。
「ごめん…いっちゃった…」
まだ晴瑠を満足させてあげられていないのに、なんて情けないんだ俺の息子。
陽一は心の中で軟弱な自分の中心を叱りつけた。
『もういっちゃったの?』
『陽一とのセックス、ほんと退屈』
ふと脳裏を過ったのは、ため息まじりの不満そうな元カノの顔だった。別れた日の何ヶ月も前から体を合わせることはなくなっていて、お互いの心の距離がどんどん離れていったあの頃。過去のトラウマが一気に蘇って、嫌な汗が流れる。
早漏となじられるのも覚悟で晴瑠の顔をちらと見ると、意外にも晴瑠は満足そうな表情をしている。
「俺のナカ…よかった?」
「めちゃくちゃ…最高でした…」
素直な感想を口にすると、晴瑠がふふっと嬉しそうに微笑んだ。
「えへへ、やったあ」
その表情にドキリとさせられて、精を吐き出して萎れた中心があっという間にむくむくと立ち上がり始める。
「わあ、凄…」
淡白だと言われていた過去が嘘のように、陽一の中心はどんどん硬さを増していった。あまりの復活の早さに晴瑠もつい驚きの声を上げる。
(相手が違うとこうも変わるものなのか…?)
こんなこと、今までなかったのに。陽一は、自分の変化に戸惑い、驚く。
「晴瑠が可愛いから復活しちゃった。もう一回いい…?」
笑顔でこくりと頷く晴瑠に口づけを落とし、コンドームをつけ直して、ゆっくりと高ぶりを晴瑠の中に沈めていった。ついさっきまで陽一を受け入れていた中はトロトロに蕩けていて、まるで離さないと言うかのようにいやらしく絡みついてくる。
「あ、ん…陽ちゃん、気持ちいい…」
「俺もだよ、晴瑠。すっげーいい…」
胸と胸を寄せ合い、互いの名を呼び合いながら抱き合った。
体じゃなくて心で繋がることができたーーそう思えた。
晴瑠との初セックスは、全然スマートにはいかなくて、陽一にとって鈍くさい自分を晒す結果になってしまったけれど、過去の嫌な記憶が消滅するほどのインパクトと共に幸せな満足感を与えてくれた。
それは晴瑠も同じだったようで、心から満たされた表情をしている。
情けなくてカッコ悪いところも明るい笑顔で受け止めてくれる晴瑠の前では、陽一も自然体でいられた。
「好きだよ、晴瑠。大好きだ」
その真っ直ぐな言葉に、晴瑠の瞳が一瞬見開かれ、瞼から一雫の涙がこぼれた。
「絶対、大事にするからーーー」
晴瑠を深く深く抱きながら、陽一はこの子を絶対に幸せにしようと固く誓った。
「どうやったら、こんなことになるの…?」
「ごめん…」
陽一と晴瑠の目の前には、丸焦げになった無惨な鍋が置かれている。
「これ、元は何?」
「クリームシチュー…」
炭になった、料理だったらしい物を指差しながら陽一が問うと、その真っ黒さとは真逆の色であるはずの料理名を晴瑠が言うので、思わず耳を疑った。
お互いの気持ちを確認して愛し合った翌日も、陽一はいつも通りの出勤日だった。にも関わらず、久しぶりに没頭した濃厚な情事の疲れからか、陽一はうっかり寝坊してしまったのだ。
「晴瑠はもう少しゆっくり寝てていいから!シャワーもキッチンの物も好きに使って!合鍵置いとくから家出る時は頼むな!」
慌てて出勤準備を済ませ、晴瑠を部屋に残したままバタバタと大急ぎで家を出た。
あまりにも急いでいたので、合鍵を渡された晴瑠が嬉しさのあまり頬を染めていたことは知らない陽一である。
仕事にはギリギリ間に合った。真面目で普段から余裕ある行動を心掛けている陽一が、ハァハァと息を切らしながら滑り込みセーフで出勤する姿はかなり珍しかったようで、同僚には驚かれた。
ブラック企業というわけではないが、陽一の職場は特にこの時期忙しい。とはいえどんなに忙しくても日付が変わる前には帰宅できるし、残業代もきちんと出るので、陽一はこの職場が気に入っている。
脇目も振らず膨大な仕事の山をどうにか片付けて、ようやくわずかに取れた休憩時間、コンビニのおにぎり片手にスマホを確認すると、晴瑠から「お仕事お疲れ様。ご飯用意して待ってるね!」とメッセージが入っていた。
できたてホヤホヤの恋人からの温かいメッセージについつい顔が緩んでしまう。しかしこんな顔を同僚に見られたら確実に揶揄われると、直後にキュッと表情筋を引き締めた。
とにかく、それを楽しみに心の中でワクワクしながら午後の仕事も頑張り、帰宅した結果がコレである。
ここ最近の忙しさで連日コンビニ弁当続きだった陽一の体を心配してのことと知っては怒るに怒れない。それにしてもこんなに無惨なクリームシチューを見るのは初めてだった。
腰に手をあてフゥと軽く息を吐いたあと、腕をまくりながら「とりあえず重曹にでもつけるか」と言うと晴瑠がキョトンとする。
「じゅうそう?」
「そう。価格も安くて色々な場所の掃除に使えるから便利だよ。これ、生活の知恵」
「へえー」
感心したように言う晴瑠に、陽一は得意気な顔をしながら実演して見せてみることにした。
「ほら、水をはった鍋に重曹を入れて、しばらく煮込むと…」
「わっ!コゲが浮いてきた!」
グツグツと煮込んだ鍋から次々と黒いコゲが剥がれてゆく様を見て、心から感動した晴瑠が声を弾ませる。
こんな小さなことに目をキラキラと輝かせる晴瑠が本当に可愛くて仕方ない。
「すっごーい!!」
「あとは軽く擦れば取れると思うよ。新しいコゲだしね」
「俺やる!」
陽一の手からタワシをもぎ取った晴瑠は楽しそうにコゲを取り始める。そんな晴瑠を見て陽一も笑った。
こんな些細なことが楽しい。晴瑠となら、今日みたいな残念な出来事だって楽しい思い出になってしまうのだ。
晴瑠は基本的に家事全般が苦手なようだった。
陽一も一度家に上がらせてもらったことがあるが、眉をひそめるほどの不潔さはなかったものの床に脱ぎ散らかした服が散らかっていて同じ間取りとは思えないほど雑然とした印象だったし、料理は言わずもがな。更に冷蔵庫からは賞味期限切れの食材が出るわ出るわ。
「なんつーか…すごいな」
仕事後の疲れている中、呆れ顔で片付けを手伝う陽一の後ろでしゅんとしているその表情すら愛おしくて、つい笑ってしまう。陽一は完全に晴瑠に惚れてしまったのだと自覚せざるを得なかった。
二人が逢瀬を重ねるのは大抵は陽一の部屋で、陽一が用意した簡単な食事をとったり、まったりと動画配信を見たり、そしてそのままセックスしたりーーという、いわゆるおうちデートばかりだった。
仕事が忙しいと言っても、普通のカップルならば付き合いたてぐらいは時間の合間をぬって色々なところに出かけるものなのかも知れない。実際、陽一の同僚はよく仕事帰りに彼女とデートの約束があるなんて話をしている。
しかし、映画館だとか水族館だとかレストランで食事だとか普通の恋人がするであろう定番のデートコースは、実家に仕送りをしつつ奨学金の返済もしながら生活している陽一にとってそう簡単にホイホイとできるものではなかった。
大学の頃は勉強とバイト漬けの日々で、よく彼女に怒られたものだ。社会人になった今も、極貧生活とまではいかないものの余裕があるわけではない。
最初ぐらいかっこつけて見栄を張ることもできなくはない。けれどそんなハリボテの関係はいずれ無理が来るものだ。晴瑠とは一時の関係なんかじゃなくずっと付き合っていきたいと思っていた陽一は、経済的に厳しいことを正直に話した。
どうしようもないことだと思いつつ、それでも本当は、普通のデートをしたことがないという晴瑠を少しでも外に連れ出してやりたいのにと、陽一は不甲斐なさをずっと感じていた。年上として情けなく思うこともあって、ある日晴瑠に「ごめんな」と謝ったことがある。
そんな陽一に晴瑠は笑顔で首を横に振った。
「ううん。俺、陽ちゃんと一緒なら、それだけで楽しい」
大学時代の彼女には「一緒にいてつまらない」と振られた。なのに自分の目の前にいる愛くるしい恋人はそんな自分との時間を「楽しい」と喜んでくれている。晴瑠の何気ない一言に、陽一は目頭が熱くなるのを感じた。
「俺は正月こっちで過ごすんだけど、晴瑠は?」
年末年始が特に多忙になる職種についている陽一は、就職してからというものこの時期は実家に帰らず一人で過ごすのが恒例となっていた。
晴瑠に予定を聞くと、晴瑠は正月どころか18の頃に実家を出てから一度も帰っていないという。仕事の都合で帰れないだけの陽一とは事情が違っていそうで気になったが、いつもお喋りで聞いてないことまでベラベラ話す晴瑠がそれ以上話さないということは、あまり言いたくないのだろう。仕事の件もそうだが、晴瑠には陽一の知らないことがたくさんある。
(まあ、まだ付き合い初めたばっかりだしな)
いつかは知ることになるかもしれないが、きっと今はまだその時じゃないだけだ。
無理に聞き出すことはせず、いつか来るその日までに信頼を少しずつ築き上げていこうと陽一は心に決めた。
結局、大晦日に二人で年越し蕎麦を食べたこと以外、特別なイベントもないまま何日か過ぎた。
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