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6章 波乱のヴェルトーガ
125 ヴェルトーガ観光
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四大精霊家当主に相応しい?強烈なキャラをしていたディオーヌ様。
彼女が弁えた変態だったおかげで争いに発展しなくて済んだ。
ここは素直に感謝しとこう。
ディオーヌ様は用件が済むとさっさと退出して行ったが、正式に客人待遇となった俺たちは、ヴェルトーガを案内してもらえることになった。
しかも滞在中の宿泊費はタイデリア家持ちっていうんだから、どっかの火の貴族家との格の違いを感じるな。
案内の準備中に、案内予定の使用人さんにディオーヌ様の話を色々聞かせてもらったのだが、想像以上にぶっ飛んだ変態だった模様。
守備範囲は11~16歳くらいまで。外見によっては多少前後することもあるそうだ。
全ての少年に幸福を齎すことを使命とし、不幸な境遇の少年を探しては、お金と権力の力で救ってしまうらしい。
見返りに少年は体を差し出すことになるわけだが、長くても5年くらいの拘束であり、それが終った後はこの屋敷で雇ってもらうことも出来るらしい。
なによりヤベーのが、ディオーヌ様、今まで何人か少年達の子供を身篭ったこともあるが、その全てを出産し、子供を引き取り育てているらしいということ。
流石に自分の息子に欲情する事はないそうだが……。
この屋敷には多くの者が働いているが、男性使用人のまぁまぁの割合が、ディオーヌ様に救われ、かつて肉体関係にあったらしく、忠誠心は非常に高いらしい。
ディオーヌ様は人種であろうが亜人であろうが獣人であろうが、それが少年であるならば全てウェルカムの猛者らしい。
そしてこんなことを喜々として客に語る使用人が居るあたり、自分の性癖を隠す気もなさそうだ。
金と権力と開き直りを得た、究極で無敵な変態紳士、それがディオーヌ様のようだ。
良かった。この人が人並みの分別だけは持ち合わせてくれてて。
体を差し出した少年達も結果的にみんな幸せになってると言うのだから、俺が口出しする問題でもあるまい。
正直言えば、ディオーヌ様の性癖部分にこれ以上関わりたくない。
「お嬢様のお客様をご案内できるなんて光栄です。
ここヴェルトーガは、まるでお嬢様のように、とても美しい都市なのですよ」
めっちゃうっとりしてる案内担当の人。
この人元少年だな絶対。いや元少年ってどんな言葉だよ。
まぁ確かにあそこまで突き抜けてれば、ある意味美しいと思わないでもないわ。
「ヴェルトーガは都市の西側が海に面しており、都市の中に幾つも水路が走っております。
魔法船を用いた物資の大量輸送で発展した都市で、まさに水のタイデリア家に相応しい都市と言えるでしょう」
窓付きの馬車に揺られながら案内人の解説を聞いている。
拠点となる宿と冒険者ギルドに商工ギルド、そして迷宮の入り口まで案内してくれるらしい。
「水路から見て、街はかなり高い位置に作られてますよね。
やはり水路の氾濫対策のためにこれだけの高さが必要なんですか?」
シンが質問している。
確かに日本の河川もかなり堤防が高く作られてるイメージあるな。
ただヴェルトーガの堤防は絶壁になっていて、落ちたら上がるのに苦労しそうな作りになっている。
「勿論氾濫対策でもありますが、一番は魔物対策ですね。
水棲の魔物は陸上の魔物と比べて大型化しやすい傾向にあるので、高さがあって強固な水路は不可欠なのです」
「それだと船も危なくないのー?」
「勿論まったくの安全ではありませんが、船を沈めるほどの大型の魔物はまず水路に侵入するのは無理でしょう。
とはいえ可能性が無いわけではないので、こうして対策が取られていると言うわけですね。
と言っても、ヴェルトーガの都市が作られたのは数百年も前のことらしいので、私が偉そうに解説するのは少し憚られますが」
つまりヴェルトーガは設計の時点で水防を意識されていたって事ね。
それと川や海ならばと、水遊びできる場所について聞いてみたが、魔物が出るせいか、水に入って遊ぶという発想は一般的ではないらしい。
洗浄魔法のおかげで生活排水はかなり少なめで、海も水路も綺麗に見えるのに残念なことだ。
まぁ俺だって魔物が出る中を命がけで水に入ろうとは思わないけどさ。
「へぇ。ベイクから来たのかい。精々稼いでいってくれよ!」
冒険者ギルドでヴェルトーガの迷宮の通行証を発行してもらう。これを忘れると犯罪らしいから気をつけないとな。
対応してくれた受付嬢さんは垂れ耳のウサギ獣人だった。
荒々しい口調とウサギの顔がなかなかミスマッチで可愛い。
ウサギの亜人ならバニーガールだったのかもしれないけど、ウサギ顔が普通に可愛いので何も問題ない。
商工ギルドと迷宮は位置の確認だけにして宿に案内してもらう。
『水のせせらぎ亭』というらしい。
ふ、ちゃんと看板も読めるようになった自分が嬉しい。
宿は一部屋にしてもらうつもりだったが、健闘空しく二部屋にされてしまった。
いや、決して嫌なわけではないんだけど連日は辛い。
毎日複数人を無尽蔵に相手できるとか、その時点で既にチートなんじゃね。
流石に陽天の報せは過ぎているが、まだまだ日暮れには時間が理想だ。
宿に大きな荷物は置いて、観光気分で適当にぶらつくことにした。
迷宮に入るのは明日からの予定。
適当に出店を回ってみると、やはり魚系のお店が多い。
基本的にただの塩焼きって感じの店が多いけれど、ベイクではあまり食べられない海産物はなかなかに新鮮な味に感じる。
流石に醤油や味噌に類似する味の商品は無い模様。
作りたくても知識がないからなぁ。
味噌とか醤油とかあっさり作れるって普通にチートだよな。凡人の俺には無理だ。
「あっトーマ!」
リーンに袖を引っ張られる。
「どうした?」
「今あそこの路地に、女の人が無理矢理連れ込まれてた!」
うぇ、厄介事じゃないですかヤダー!
といっても知ってしまった以上は無視も出来ないかぁ。
「事情が分からないので、衛兵を呼ぶって設定でいこう。
叩きのめすのは最終手段で」
「設定というか僕が呼んでくるよ。あそこの路地だねリーン?」
「うん。間違いないよ!」
「では私たちは早く女性の様子を確認しに行きましょう。
猶予がなければ介入してもいいですよね?」
「猶予がなければな。
じゃあトルネの言うとおりに、まずは状況を確認しにいこうか」
異世界ファンタジーにトラブル体質はつきものだけど、俺って他の誰かのトラブル体質に巻き込まれてるだけだと思う今日この頃。
彼女が弁えた変態だったおかげで争いに発展しなくて済んだ。
ここは素直に感謝しとこう。
ディオーヌ様は用件が済むとさっさと退出して行ったが、正式に客人待遇となった俺たちは、ヴェルトーガを案内してもらえることになった。
しかも滞在中の宿泊費はタイデリア家持ちっていうんだから、どっかの火の貴族家との格の違いを感じるな。
案内の準備中に、案内予定の使用人さんにディオーヌ様の話を色々聞かせてもらったのだが、想像以上にぶっ飛んだ変態だった模様。
守備範囲は11~16歳くらいまで。外見によっては多少前後することもあるそうだ。
全ての少年に幸福を齎すことを使命とし、不幸な境遇の少年を探しては、お金と権力の力で救ってしまうらしい。
見返りに少年は体を差し出すことになるわけだが、長くても5年くらいの拘束であり、それが終った後はこの屋敷で雇ってもらうことも出来るらしい。
なによりヤベーのが、ディオーヌ様、今まで何人か少年達の子供を身篭ったこともあるが、その全てを出産し、子供を引き取り育てているらしいということ。
流石に自分の息子に欲情する事はないそうだが……。
この屋敷には多くの者が働いているが、男性使用人のまぁまぁの割合が、ディオーヌ様に救われ、かつて肉体関係にあったらしく、忠誠心は非常に高いらしい。
ディオーヌ様は人種であろうが亜人であろうが獣人であろうが、それが少年であるならば全てウェルカムの猛者らしい。
そしてこんなことを喜々として客に語る使用人が居るあたり、自分の性癖を隠す気もなさそうだ。
金と権力と開き直りを得た、究極で無敵な変態紳士、それがディオーヌ様のようだ。
良かった。この人が人並みの分別だけは持ち合わせてくれてて。
体を差し出した少年達も結果的にみんな幸せになってると言うのだから、俺が口出しする問題でもあるまい。
正直言えば、ディオーヌ様の性癖部分にこれ以上関わりたくない。
「お嬢様のお客様をご案内できるなんて光栄です。
ここヴェルトーガは、まるでお嬢様のように、とても美しい都市なのですよ」
めっちゃうっとりしてる案内担当の人。
この人元少年だな絶対。いや元少年ってどんな言葉だよ。
まぁ確かにあそこまで突き抜けてれば、ある意味美しいと思わないでもないわ。
「ヴェルトーガは都市の西側が海に面しており、都市の中に幾つも水路が走っております。
魔法船を用いた物資の大量輸送で発展した都市で、まさに水のタイデリア家に相応しい都市と言えるでしょう」
窓付きの馬車に揺られながら案内人の解説を聞いている。
拠点となる宿と冒険者ギルドに商工ギルド、そして迷宮の入り口まで案内してくれるらしい。
「水路から見て、街はかなり高い位置に作られてますよね。
やはり水路の氾濫対策のためにこれだけの高さが必要なんですか?」
シンが質問している。
確かに日本の河川もかなり堤防が高く作られてるイメージあるな。
ただヴェルトーガの堤防は絶壁になっていて、落ちたら上がるのに苦労しそうな作りになっている。
「勿論氾濫対策でもありますが、一番は魔物対策ですね。
水棲の魔物は陸上の魔物と比べて大型化しやすい傾向にあるので、高さがあって強固な水路は不可欠なのです」
「それだと船も危なくないのー?」
「勿論まったくの安全ではありませんが、船を沈めるほどの大型の魔物はまず水路に侵入するのは無理でしょう。
とはいえ可能性が無いわけではないので、こうして対策が取られていると言うわけですね。
と言っても、ヴェルトーガの都市が作られたのは数百年も前のことらしいので、私が偉そうに解説するのは少し憚られますが」
つまりヴェルトーガは設計の時点で水防を意識されていたって事ね。
それと川や海ならばと、水遊びできる場所について聞いてみたが、魔物が出るせいか、水に入って遊ぶという発想は一般的ではないらしい。
洗浄魔法のおかげで生活排水はかなり少なめで、海も水路も綺麗に見えるのに残念なことだ。
まぁ俺だって魔物が出る中を命がけで水に入ろうとは思わないけどさ。
「へぇ。ベイクから来たのかい。精々稼いでいってくれよ!」
冒険者ギルドでヴェルトーガの迷宮の通行証を発行してもらう。これを忘れると犯罪らしいから気をつけないとな。
対応してくれた受付嬢さんは垂れ耳のウサギ獣人だった。
荒々しい口調とウサギの顔がなかなかミスマッチで可愛い。
ウサギの亜人ならバニーガールだったのかもしれないけど、ウサギ顔が普通に可愛いので何も問題ない。
商工ギルドと迷宮は位置の確認だけにして宿に案内してもらう。
『水のせせらぎ亭』というらしい。
ふ、ちゃんと看板も読めるようになった自分が嬉しい。
宿は一部屋にしてもらうつもりだったが、健闘空しく二部屋にされてしまった。
いや、決して嫌なわけではないんだけど連日は辛い。
毎日複数人を無尽蔵に相手できるとか、その時点で既にチートなんじゃね。
流石に陽天の報せは過ぎているが、まだまだ日暮れには時間が理想だ。
宿に大きな荷物は置いて、観光気分で適当にぶらつくことにした。
迷宮に入るのは明日からの予定。
適当に出店を回ってみると、やはり魚系のお店が多い。
基本的にただの塩焼きって感じの店が多いけれど、ベイクではあまり食べられない海産物はなかなかに新鮮な味に感じる。
流石に醤油や味噌に類似する味の商品は無い模様。
作りたくても知識がないからなぁ。
味噌とか醤油とかあっさり作れるって普通にチートだよな。凡人の俺には無理だ。
「あっトーマ!」
リーンに袖を引っ張られる。
「どうした?」
「今あそこの路地に、女の人が無理矢理連れ込まれてた!」
うぇ、厄介事じゃないですかヤダー!
といっても知ってしまった以上は無視も出来ないかぁ。
「事情が分からないので、衛兵を呼ぶって設定でいこう。
叩きのめすのは最終手段で」
「設定というか僕が呼んでくるよ。あそこの路地だねリーン?」
「うん。間違いないよ!」
「では私たちは早く女性の様子を確認しに行きましょう。
猶予がなければ介入してもいいですよね?」
「猶予がなければな。
じゃあトルネの言うとおりに、まずは状況を確認しにいこうか」
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