異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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8章 異風の旋律

252 身の丈

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 起床。大きく背伸びする。割と目覚めは良い方なんだよね。

 え~っと、ボールクローグに来て今日で5日目だっけ?
 今日の仕事が終わったら、1度ベイクに顔出してくるかなぁ。

 朝食のときにみんなにも聞いてみる。


「今日の討伐が終わったら、1度ベイクに顔を出してこようと思ってるんだけど、みんなはどうする?一緒に行く?」

「特に用事はないけど、父さん母さんに顔を見せておきたいかな。一緒に行くよ」

「うんうん。ていうか皆で行こー!パーティ分散するのも危ないでしょー?」


 まぁそれもそうか。


「でも宿泊はこちらなんですよね?なにが起きるか分かりませんし」

「うん。今は安定してるけど、今回の騒動にチート能力が使われているのなら、事態が急変してもおかしくないもんね」

「クリーヌたちにも、銀の乙女のみんなにも、沢山お世話になったから……。
 もしもの時に力になれないのは避けたいな……」

「そうだな。騒動が解決するまでは、寝泊りするのはボールクローグ側にしておこうか。
 ぶっちゃけゲートがあると、毎日ボールクローグまで通えてしまうけどな」


 出来なくはないけど意味もない。
 滞在費が多少浮くくらいだけど、むしろ俺たちはもっとお金を使わないといけないわけだし。

 今日の報告が終わったら、ベイクに行って夕食を食べることにする。
 俺たちの分は適当に買っていこう。






「トーマさん。ちょっとお話があるのだけど」


 狩猟ギルドに着くと、エルハからお声がかかった。
 まぁ無視できる情報ではないのかも知れないが、俺が提供できる情報は全てクリーヌにも聞かせた分だけだ。


「構わないけど何の話?
 最初に言っとくけど、クリーヌに言ったことなら嘘はついてないけど、証明手段もないからね?
 情報源は自分達の経験則って感じかな。
 とりあえずここまでを踏まえてもらって、何の話か聞かせてもらおうかな」

 
 時間を無駄にしたくないので、先制で聞かれそうなことを全部答えてしまう。
 エルハは少し言葉に詰まっていたけど、小さく咳払いをして用件を話し始めた。


「それらも聞きたかったんだけど、とりあえず答えてくれてありがとう。
 それで、トーマさんが私達に情報提供をしたのはなぜなの?
 情報が本当だとしたら、情報の公開はあなた達にとって何の利益もないことでしょう?むしろあなた達の優位性が失われるだけのはず。
 報告が本当だとして、その情報を他の冒険者に公開しても構わないと思った理由を教えてもらえるかしら?」


 あー。俺たちが大規模パーティなら優位性が失われるのかもなぁ。
 でも実際は特にデメリットはない。


「簡単な話だよ。この情報を公開しても、俺たちは何も困らないだけ。
 俺たちはベイクで毎日60階層台を10周してるからね。
 迷宮殺しで得られるえすぴ……、じゃなくて経験なんてなくてもさほど困らないんだよ。
 むしろ今回の騒動が長引くほうが嫌なんだ。だから迷宮討伐が促進するように情報を提供しただけだよ。
 エルハや他の冒険者がどう行動するかは俺の知ったことじゃないけど、俺たちの仕事が多少でも減る事を期待してる」

「……嘘をついているようには、見えないわね。
 貴方の言っていることが嘘か本当かは、迷宮殺しを可能としている冒険団なら簡単に確かめられるはずよ。
 それでも情報を公開しても良いのね……?」

「いいよ。むしろさっさと試してもらって、迷宮の討伐が早まって欲しいと思ってる。
 話が終わりならもう行っていい?今日の分の討伐に出発したいんだ」

「……ええ、もういいわよ。
 一応、今夜の報告会で今回の情報は公開させてもらうわね。
 情報提供者は伏せておきます」


 ロビーでこんな話をしておいて、今さら意味あるんだろうか?
 ま、俺がここで話を始めてしまったのが悪いんだけどさ。

 だってなぁ?クリーヌに昨晩確認された事をそのまま繰り返し確認されたら面倒臭くもなるよ。

 狩人ギルドを出て迷宮殺しに向かう。


「ん。報告。昨日の迷宮討伐数は9つ。つまり異風の旋律だけしか討伐してない。
 新しく見つかった迷宮は4つ。全部で35箇所の迷宮が確認されてる。
 今日からは銀の乙女も討伐を優先すると思うし、今夜の情報公開で状況は変わってくると思う」

「なるほどね。もし他の冒険者達、冒険団だっけ。そいつらも討伐を始めたら、あと5日くらいで全部殺し終わりそうだな。
 やっぱ情報提供して正解だったわ」

「……私にはトーマの考え方が理解できない」


 そうかねぇ?
 いくら実入りが良くても、それに忙殺されるような生活はしたくないってだけなんだけどな。


「因みにその情報を聞いて、クリーヌは最深部まで付いてきたいとか思わないのか?」

「……ん。魅力的な話だけどやめとく。
 父さんがいつも言ってた。身の丈に合わない力を無理に求めるなって。それは身を滅ぼすことになるだけだから。
 強くなりたいのなら、毎日武器を振って、訓練して、自分で魔物の命を奪って強くなりなさいって」

「良い親父さんだな。完全に同意だよ。
 熟練冒険者として今も迷宮で活躍できているのが納得できる考え方だわ」

「その話で言うと、私はちょっと申し訳ないなぁ……。
 私って迷宮に入れないから、今まで一度も魔物を倒したことがないのに、皆に付いて回ってるだけで、たくさんスキルを覚えちゃったから……」


 リーネの場合は状況が特殊すぎて、一般的な話に当て嵌めるのが正しいとは限らないよね。
 大量のSPを獲得したのも、ミルズレンダの連中が襲撃してきたせいだから、リーネはむしろ被害者なんだよなぁ。

 自分の嫁だから贔屓目に見てる部分はあるかもしれないけど。


「リーネと他の人を同じに語るのは難しいからな。
 申し訳ないと思うなら、手に入れたスキルに振り回されないように、毎日きっちり訓練していくしかない。
 俺はリーネが分不相応な力を手にいれたとは思ってないけどさ。
 リーネがそう思うんだったら、力に見合うような努力をするしかないんじゃないか」

「うん、頑張るよ……。
 トーマにも皆にも迷惑をかけると思うけど、これからもよろしくね……?」

「もちろん。こちらこそよろしくな。」

「ん。私も恋人欲しい。でもリスの獣人ってあんまりいない」


 リスの獣人しか眼中にないのか。獣人自体、人種や亜人と比べて数が少なめだからなぁ。
 もしどこかでリスの獣人を見つけたら、必ず紹介することを約束した。
 クリーヌにも世話になってるし。

 それにリス獣人ってめちゃくちゃ可愛いんだよな。
 増えて欲しい。

 めっちゃ増えて欲しい。
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