282 / 580
8章 異風の旋律
252 身の丈
しおりを挟む
起床。大きく背伸びする。割と目覚めは良い方なんだよね。
え~っと、ボールクローグに来て今日で5日目だっけ?
今日の仕事が終わったら、1度ベイクに顔出してくるかなぁ。
朝食のときにみんなにも聞いてみる。
「今日の討伐が終わったら、1度ベイクに顔を出してこようと思ってるんだけど、みんなはどうする?一緒に行く?」
「特に用事はないけど、父さん母さんに顔を見せておきたいかな。一緒に行くよ」
「うんうん。ていうか皆で行こー!パーティ分散するのも危ないでしょー?」
まぁそれもそうか。
「でも宿泊はこちらなんですよね?なにが起きるか分かりませんし」
「うん。今は安定してるけど、今回の騒動にチート能力が使われているのなら、事態が急変してもおかしくないもんね」
「クリーヌたちにも、銀の乙女のみんなにも、沢山お世話になったから……。
もしもの時に力になれないのは避けたいな……」
「そうだな。騒動が解決するまでは、寝泊りするのはボールクローグ側にしておこうか。
ぶっちゃけゲートがあると、毎日ボールクローグまで通えてしまうけどな」
出来なくはないけど意味もない。
滞在費が多少浮くくらいだけど、むしろ俺たちはもっとお金を使わないといけないわけだし。
今日の報告が終わったら、ベイクに行って夕食を食べることにする。
俺たちの分は適当に買っていこう。
「トーマさん。ちょっとお話があるのだけど」
狩猟ギルドに着くと、エルハからお声がかかった。
まぁ無視できる情報ではないのかも知れないが、俺が提供できる情報は全てクリーヌにも聞かせた分だけだ。
「構わないけど何の話?
最初に言っとくけど、クリーヌに言ったことなら嘘はついてないけど、証明手段もないからね?
情報源は自分達の経験則って感じかな。
とりあえずここまでを踏まえてもらって、何の話か聞かせてもらおうかな」
時間を無駄にしたくないので、先制で聞かれそうなことを全部答えてしまう。
エルハは少し言葉に詰まっていたけど、小さく咳払いをして用件を話し始めた。
「それらも聞きたかったんだけど、とりあえず答えてくれてありがとう。
それで、トーマさんが私達に情報提供をしたのはなぜなの?
情報が本当だとしたら、情報の公開はあなた達にとって何の利益もないことでしょう?むしろあなた達の優位性が失われるだけのはず。
報告が本当だとして、その情報を他の冒険者に公開しても構わないと思った理由を教えてもらえるかしら?」
あー。俺たちが大規模パーティなら優位性が失われるのかもなぁ。
でも実際は特にデメリットはない。
「簡単な話だよ。この情報を公開しても、俺たちは何も困らないだけ。
俺たちはベイクで毎日60階層台を10周してるからね。
迷宮殺しで得られるえすぴ……、じゃなくて経験なんてなくてもさほど困らないんだよ。
むしろ今回の騒動が長引くほうが嫌なんだ。だから迷宮討伐が促進するように情報を提供しただけだよ。
エルハや他の冒険者がどう行動するかは俺の知ったことじゃないけど、俺たちの仕事が多少でも減る事を期待してる」
「……嘘をついているようには、見えないわね。
貴方の言っていることが嘘か本当かは、迷宮殺しを可能としている冒険団なら簡単に確かめられるはずよ。
それでも情報を公開しても良いのね……?」
「いいよ。むしろさっさと試してもらって、迷宮の討伐が早まって欲しいと思ってる。
話が終わりならもう行っていい?今日の分の討伐に出発したいんだ」
「……ええ、もういいわよ。
一応、今夜の報告会で今回の情報は公開させてもらうわね。
情報提供者は伏せておきます」
ロビーでこんな話をしておいて、今さら意味あるんだろうか?
ま、俺がここで話を始めてしまったのが悪いんだけどさ。
だってなぁ?クリーヌに昨晩確認された事をそのまま繰り返し確認されたら面倒臭くもなるよ。
狩人ギルドを出て迷宮殺しに向かう。
「ん。報告。昨日の迷宮討伐数は9つ。つまり異風の旋律だけしか討伐してない。
新しく見つかった迷宮は4つ。全部で35箇所の迷宮が確認されてる。
今日からは銀の乙女も討伐を優先すると思うし、今夜の情報公開で状況は変わってくると思う」
「なるほどね。もし他の冒険者達、冒険団だっけ。そいつらも討伐を始めたら、あと5日くらいで全部殺し終わりそうだな。
やっぱ情報提供して正解だったわ」
「……私にはトーマの考え方が理解できない」
そうかねぇ?
いくら実入りが良くても、それに忙殺されるような生活はしたくないってだけなんだけどな。
「因みにその情報を聞いて、クリーヌは最深部まで付いてきたいとか思わないのか?」
「……ん。魅力的な話だけどやめとく。
父さんがいつも言ってた。身の丈に合わない力を無理に求めるなって。それは身を滅ぼすことになるだけだから。
強くなりたいのなら、毎日武器を振って、訓練して、自分で魔物の命を奪って強くなりなさいって」
「良い親父さんだな。完全に同意だよ。
熟練冒険者として今も迷宮で活躍できているのが納得できる考え方だわ」
「その話で言うと、私はちょっと申し訳ないなぁ……。
私って迷宮に入れないから、今まで一度も魔物を倒したことがないのに、皆に付いて回ってるだけで、たくさんスキルを覚えちゃったから……」
リーネの場合は状況が特殊すぎて、一般的な話に当て嵌めるのが正しいとは限らないよね。
大量のSPを獲得したのも、ミルズレンダの連中が襲撃してきたせいだから、リーネはむしろ被害者なんだよなぁ。
自分の嫁だから贔屓目に見てる部分はあるかもしれないけど。
「リーネと他の人を同じに語るのは難しいからな。
申し訳ないと思うなら、手に入れたスキルに振り回されないように、毎日きっちり訓練していくしかない。
俺はリーネが分不相応な力を手にいれたとは思ってないけどさ。
リーネがそう思うんだったら、力に見合うような努力をするしかないんじゃないか」
「うん、頑張るよ……。
トーマにも皆にも迷惑をかけると思うけど、これからもよろしくね……?」
「もちろん。こちらこそよろしくな。」
「ん。私も恋人欲しい。でもリスの獣人ってあんまりいない」
リスの獣人しか眼中にないのか。獣人自体、人種や亜人と比べて数が少なめだからなぁ。
もしどこかでリスの獣人を見つけたら、必ず紹介することを約束した。
クリーヌにも世話になってるし。
それにリス獣人ってめちゃくちゃ可愛いんだよな。
増えて欲しい。
めっちゃ増えて欲しい。
え~っと、ボールクローグに来て今日で5日目だっけ?
今日の仕事が終わったら、1度ベイクに顔出してくるかなぁ。
朝食のときにみんなにも聞いてみる。
「今日の討伐が終わったら、1度ベイクに顔を出してこようと思ってるんだけど、みんなはどうする?一緒に行く?」
「特に用事はないけど、父さん母さんに顔を見せておきたいかな。一緒に行くよ」
「うんうん。ていうか皆で行こー!パーティ分散するのも危ないでしょー?」
まぁそれもそうか。
「でも宿泊はこちらなんですよね?なにが起きるか分かりませんし」
「うん。今は安定してるけど、今回の騒動にチート能力が使われているのなら、事態が急変してもおかしくないもんね」
「クリーヌたちにも、銀の乙女のみんなにも、沢山お世話になったから……。
もしもの時に力になれないのは避けたいな……」
「そうだな。騒動が解決するまでは、寝泊りするのはボールクローグ側にしておこうか。
ぶっちゃけゲートがあると、毎日ボールクローグまで通えてしまうけどな」
出来なくはないけど意味もない。
滞在費が多少浮くくらいだけど、むしろ俺たちはもっとお金を使わないといけないわけだし。
今日の報告が終わったら、ベイクに行って夕食を食べることにする。
俺たちの分は適当に買っていこう。
「トーマさん。ちょっとお話があるのだけど」
狩猟ギルドに着くと、エルハからお声がかかった。
まぁ無視できる情報ではないのかも知れないが、俺が提供できる情報は全てクリーヌにも聞かせた分だけだ。
「構わないけど何の話?
最初に言っとくけど、クリーヌに言ったことなら嘘はついてないけど、証明手段もないからね?
情報源は自分達の経験則って感じかな。
とりあえずここまでを踏まえてもらって、何の話か聞かせてもらおうかな」
時間を無駄にしたくないので、先制で聞かれそうなことを全部答えてしまう。
エルハは少し言葉に詰まっていたけど、小さく咳払いをして用件を話し始めた。
「それらも聞きたかったんだけど、とりあえず答えてくれてありがとう。
それで、トーマさんが私達に情報提供をしたのはなぜなの?
情報が本当だとしたら、情報の公開はあなた達にとって何の利益もないことでしょう?むしろあなた達の優位性が失われるだけのはず。
報告が本当だとして、その情報を他の冒険者に公開しても構わないと思った理由を教えてもらえるかしら?」
あー。俺たちが大規模パーティなら優位性が失われるのかもなぁ。
でも実際は特にデメリットはない。
「簡単な話だよ。この情報を公開しても、俺たちは何も困らないだけ。
俺たちはベイクで毎日60階層台を10周してるからね。
迷宮殺しで得られるえすぴ……、じゃなくて経験なんてなくてもさほど困らないんだよ。
むしろ今回の騒動が長引くほうが嫌なんだ。だから迷宮討伐が促進するように情報を提供しただけだよ。
エルハや他の冒険者がどう行動するかは俺の知ったことじゃないけど、俺たちの仕事が多少でも減る事を期待してる」
「……嘘をついているようには、見えないわね。
貴方の言っていることが嘘か本当かは、迷宮殺しを可能としている冒険団なら簡単に確かめられるはずよ。
それでも情報を公開しても良いのね……?」
「いいよ。むしろさっさと試してもらって、迷宮の討伐が早まって欲しいと思ってる。
話が終わりならもう行っていい?今日の分の討伐に出発したいんだ」
「……ええ、もういいわよ。
一応、今夜の報告会で今回の情報は公開させてもらうわね。
情報提供者は伏せておきます」
ロビーでこんな話をしておいて、今さら意味あるんだろうか?
ま、俺がここで話を始めてしまったのが悪いんだけどさ。
だってなぁ?クリーヌに昨晩確認された事をそのまま繰り返し確認されたら面倒臭くもなるよ。
狩人ギルドを出て迷宮殺しに向かう。
「ん。報告。昨日の迷宮討伐数は9つ。つまり異風の旋律だけしか討伐してない。
新しく見つかった迷宮は4つ。全部で35箇所の迷宮が確認されてる。
今日からは銀の乙女も討伐を優先すると思うし、今夜の情報公開で状況は変わってくると思う」
「なるほどね。もし他の冒険者達、冒険団だっけ。そいつらも討伐を始めたら、あと5日くらいで全部殺し終わりそうだな。
やっぱ情報提供して正解だったわ」
「……私にはトーマの考え方が理解できない」
そうかねぇ?
いくら実入りが良くても、それに忙殺されるような生活はしたくないってだけなんだけどな。
「因みにその情報を聞いて、クリーヌは最深部まで付いてきたいとか思わないのか?」
「……ん。魅力的な話だけどやめとく。
父さんがいつも言ってた。身の丈に合わない力を無理に求めるなって。それは身を滅ぼすことになるだけだから。
強くなりたいのなら、毎日武器を振って、訓練して、自分で魔物の命を奪って強くなりなさいって」
「良い親父さんだな。完全に同意だよ。
熟練冒険者として今も迷宮で活躍できているのが納得できる考え方だわ」
「その話で言うと、私はちょっと申し訳ないなぁ……。
私って迷宮に入れないから、今まで一度も魔物を倒したことがないのに、皆に付いて回ってるだけで、たくさんスキルを覚えちゃったから……」
リーネの場合は状況が特殊すぎて、一般的な話に当て嵌めるのが正しいとは限らないよね。
大量のSPを獲得したのも、ミルズレンダの連中が襲撃してきたせいだから、リーネはむしろ被害者なんだよなぁ。
自分の嫁だから贔屓目に見てる部分はあるかもしれないけど。
「リーネと他の人を同じに語るのは難しいからな。
申し訳ないと思うなら、手に入れたスキルに振り回されないように、毎日きっちり訓練していくしかない。
俺はリーネが分不相応な力を手にいれたとは思ってないけどさ。
リーネがそう思うんだったら、力に見合うような努力をするしかないんじゃないか」
「うん、頑張るよ……。
トーマにも皆にも迷惑をかけると思うけど、これからもよろしくね……?」
「もちろん。こちらこそよろしくな。」
「ん。私も恋人欲しい。でもリスの獣人ってあんまりいない」
リスの獣人しか眼中にないのか。獣人自体、人種や亜人と比べて数が少なめだからなぁ。
もしどこかでリスの獣人を見つけたら、必ず紹介することを約束した。
クリーヌにも世話になってるし。
それにリス獣人ってめちゃくちゃ可愛いんだよな。
増えて欲しい。
めっちゃ増えて欲しい。
0
あなたにおすすめの小説
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
第2の人生は、『男』が希少種の世界で
赤金武蔵
ファンタジー
日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。
あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。
ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。
しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる