302 / 580
8章 異風の旋律
272 炙り出し
しおりを挟む
「ずびばぜん……。ずみばぜんでじだ……」
思ったよりも簡単に口を割ってくれた。一応ブルガーゾのほうが長く耐えた模様。
まったく、今回はスキルを使っていないというのに。リペア使って損した気分だ。
サルトリとヨーダムの2人はやはりロンメノの手の者で、狩人ギルドの情報操作を担当していたようだ。
どうでもいいが、サルトリの態度が悪かったのは、憎んでいるカルネジア家のお膝元で働き続けているというストレスからくるものだったらしい。知らんがな。
この2人以外にもロンメノの手の者がボールクローグに入っているようだが、拷問からの情報漏えいを恐れてなのか、横の繋がりは一切ないらしい。
ち、カルネジア家みたいな脳筋なら戦いやすいんだが、ここまで慎重な相手ってのはかなり厄介だな。
トルネの話が無かったとしたら、未だに敵対勢力の存在にすら気付けてなかったかもしれない。
「そんな……。なんで……。2人とも、なんでなの……」
エルハが完全に放心している。
これが演技だったら凄まじい名女優だけど、流石に無いと思う。
「なぁクリーヌ。エルハは相手側の人間だと思う?」
「ん。それは無いと思う。エルハは人を疑うことが苦手なだけ。
というかトーマは、私のことは疑わないの?」
「ボールクローグに家族がいる奴が、今回の計画に協力するのはありえないと思うんだ。
5箇所同時氾濫なんて、ボールクローグはほぼ確実に皆殺しに遭うだろ?
カルネジア家を滅ぼすためとはいえ、自分の家族まで犠牲に出来る奴がいるとは思えない。
そもそも、家族を犠牲にする必要がない計画なわけだし」
「むぅ。そこは仲間だからって言って欲しかった。でも納得出来る。実際にこの2人も、人とあまり交流しているのを見たことがないし」
「っていうかクリーヌって、なんで狩人ギルドの内情にそんな詳しいのー? ただの狩人にしてはエルハとの距離が
近く感じるんだよねー」
お、リーンセンパイが突っ込んでくれた。俺も気になってたんだよね。
「ん。うちの両親とエルハは同じ狩猟団出身。だから生まれたときから付き合いがある。
その縁で狩人ギルドからの頼みごとも良く聞いてたし」
なるほど。エルハとはギルド外でも親交があったわけね。
「さてこいつらはどうすっかね? 今晩はタケルと一緒に俺たちが見張っておいても良いとして、ボールクローグに間者が残っている以上、適当な奴に任せて終わりってワケには行かないよな?」
「うん。それに私たちが戦っている後ろから、破壊工作とか同士討ちとかされる可能性もあるよね。
出来れば氾濫が起きる前に、ロンメノのスパイを一掃しておきたいんだけど、上手い方法が思いつかないかな……」
「ん~、誰かに預けるとしたら、カルネジア家がいいのかな……?
この人たち、カルネジア家を凄く嫌いなんでしょ……? だったらカルネジア家には仲間がいないんじゃないかな……?」
「いえ、カルマさんの話によれば、ロンメノ自身が20年もの長きに渡って、カルネジア家の御用商人を任されていたと言っていましたからね。
カルネジア家が憎いからこそ潜り込む、そういった考えでもおかしくありません」
「……そうだね。かなり厄介な相手だと思うよ。
そもそもロンメノの存在自体、トーマとトルネが揃ってなかったら発覚しなかったと思う。
だからこそ、氾濫のときに間者が残っているなんて不安は消しておきたいところだけど……」
こういう厄介で面倒なことこそ、魔法やスキルでパーッと解決するのがチート主人公なんだけどなぁ。
例えば過去を覗ける魔法だったり、鑑定で人の記憶や感情まで覗けたりとかさぁ。
自白を強要しようにも、しっかり対策されていて情報制限しているのがね。
流石は精霊家の御用商人を長年務めてる相手だ。
用心深く、抜け目ない。
「ん~。こいつらって、カルネジア家を滅ぼしたいほど憎んでるんだよな?
じゃあさ。こいつらってカルネジア家に何をされるのが一番嫌がるかな?」
「……僕は心底、トーマと敵対しなくて良かったと思ってるよ。
恋人を奪うっていうのが一番嫌うことだと思うけど、流石にこれは現実的じゃないよね?」
「だねー。正体も人数も分からない相手を炙り出すってことだから、交友関係どころか、誰が間者なのかも分かってないわけだしー?」
「共通点は、カルネジア家を嫌いだってことだね……。だからやっぱり、カルネジア家に何かされるのが一番嫌がるのは間違いないと思うけど……」
「かなり計画的な連中ですからね。生半可なことで、尻尾を表してくれるとは思えません」
「……あ! うん。トルネ、そこじゃない? 相手は凄く計画的な連中で、カルネジア家はどっちかと言うと脳筋気味でしょ?
お前達の杜撰な計画など、我がカルネジア家の頭脳の前には無に等しいのだー!って、あのブルガーゾが宣言したら、めちゃくちゃ頭にくるんじゃないかな?」
「確かにねー! 私もブルガーゾに頭脳で負けたって言われたら、めちゃくちゃ頭にくると思うなー!」
「ハルの案がいい気がするけど、それだけで間者が動くかは難しい気がするね。
なんせあと少しで氾濫が始まるって時に、頭にきたってだけで間者が正体を現してくれるかな?」
「つまり、感情以外にも間者側を動かす要素が必要ということですね。
……ちょっと私には思いつきませんが」
んー、横の繋がりがない連中だから、一斉蜂起してくれるかどうかは分からないけど、アイディア自体は湧いてきたかも。
人を動かすには、希望を見せ付けてやればいいんだっけ。
相手が同じ勢力にいるってことしか分かってないが、それでも提示できるメリットはある。
すなわち、捕虜の救出ってやつだな。
うん。状況も利用できそうだし、上手く行くかも知れない。
ブルガーゾも含めて打ち合わせする必要がありそうだ。
思ったよりも簡単に口を割ってくれた。一応ブルガーゾのほうが長く耐えた模様。
まったく、今回はスキルを使っていないというのに。リペア使って損した気分だ。
サルトリとヨーダムの2人はやはりロンメノの手の者で、狩人ギルドの情報操作を担当していたようだ。
どうでもいいが、サルトリの態度が悪かったのは、憎んでいるカルネジア家のお膝元で働き続けているというストレスからくるものだったらしい。知らんがな。
この2人以外にもロンメノの手の者がボールクローグに入っているようだが、拷問からの情報漏えいを恐れてなのか、横の繋がりは一切ないらしい。
ち、カルネジア家みたいな脳筋なら戦いやすいんだが、ここまで慎重な相手ってのはかなり厄介だな。
トルネの話が無かったとしたら、未だに敵対勢力の存在にすら気付けてなかったかもしれない。
「そんな……。なんで……。2人とも、なんでなの……」
エルハが完全に放心している。
これが演技だったら凄まじい名女優だけど、流石に無いと思う。
「なぁクリーヌ。エルハは相手側の人間だと思う?」
「ん。それは無いと思う。エルハは人を疑うことが苦手なだけ。
というかトーマは、私のことは疑わないの?」
「ボールクローグに家族がいる奴が、今回の計画に協力するのはありえないと思うんだ。
5箇所同時氾濫なんて、ボールクローグはほぼ確実に皆殺しに遭うだろ?
カルネジア家を滅ぼすためとはいえ、自分の家族まで犠牲に出来る奴がいるとは思えない。
そもそも、家族を犠牲にする必要がない計画なわけだし」
「むぅ。そこは仲間だからって言って欲しかった。でも納得出来る。実際にこの2人も、人とあまり交流しているのを見たことがないし」
「っていうかクリーヌって、なんで狩人ギルドの内情にそんな詳しいのー? ただの狩人にしてはエルハとの距離が
近く感じるんだよねー」
お、リーンセンパイが突っ込んでくれた。俺も気になってたんだよね。
「ん。うちの両親とエルハは同じ狩猟団出身。だから生まれたときから付き合いがある。
その縁で狩人ギルドからの頼みごとも良く聞いてたし」
なるほど。エルハとはギルド外でも親交があったわけね。
「さてこいつらはどうすっかね? 今晩はタケルと一緒に俺たちが見張っておいても良いとして、ボールクローグに間者が残っている以上、適当な奴に任せて終わりってワケには行かないよな?」
「うん。それに私たちが戦っている後ろから、破壊工作とか同士討ちとかされる可能性もあるよね。
出来れば氾濫が起きる前に、ロンメノのスパイを一掃しておきたいんだけど、上手い方法が思いつかないかな……」
「ん~、誰かに預けるとしたら、カルネジア家がいいのかな……?
この人たち、カルネジア家を凄く嫌いなんでしょ……? だったらカルネジア家には仲間がいないんじゃないかな……?」
「いえ、カルマさんの話によれば、ロンメノ自身が20年もの長きに渡って、カルネジア家の御用商人を任されていたと言っていましたからね。
カルネジア家が憎いからこそ潜り込む、そういった考えでもおかしくありません」
「……そうだね。かなり厄介な相手だと思うよ。
そもそもロンメノの存在自体、トーマとトルネが揃ってなかったら発覚しなかったと思う。
だからこそ、氾濫のときに間者が残っているなんて不安は消しておきたいところだけど……」
こういう厄介で面倒なことこそ、魔法やスキルでパーッと解決するのがチート主人公なんだけどなぁ。
例えば過去を覗ける魔法だったり、鑑定で人の記憶や感情まで覗けたりとかさぁ。
自白を強要しようにも、しっかり対策されていて情報制限しているのがね。
流石は精霊家の御用商人を長年務めてる相手だ。
用心深く、抜け目ない。
「ん~。こいつらって、カルネジア家を滅ぼしたいほど憎んでるんだよな?
じゃあさ。こいつらってカルネジア家に何をされるのが一番嫌がるかな?」
「……僕は心底、トーマと敵対しなくて良かったと思ってるよ。
恋人を奪うっていうのが一番嫌うことだと思うけど、流石にこれは現実的じゃないよね?」
「だねー。正体も人数も分からない相手を炙り出すってことだから、交友関係どころか、誰が間者なのかも分かってないわけだしー?」
「共通点は、カルネジア家を嫌いだってことだね……。だからやっぱり、カルネジア家に何かされるのが一番嫌がるのは間違いないと思うけど……」
「かなり計画的な連中ですからね。生半可なことで、尻尾を表してくれるとは思えません」
「……あ! うん。トルネ、そこじゃない? 相手は凄く計画的な連中で、カルネジア家はどっちかと言うと脳筋気味でしょ?
お前達の杜撰な計画など、我がカルネジア家の頭脳の前には無に等しいのだー!って、あのブルガーゾが宣言したら、めちゃくちゃ頭にくるんじゃないかな?」
「確かにねー! 私もブルガーゾに頭脳で負けたって言われたら、めちゃくちゃ頭にくると思うなー!」
「ハルの案がいい気がするけど、それだけで間者が動くかは難しい気がするね。
なんせあと少しで氾濫が始まるって時に、頭にきたってだけで間者が正体を現してくれるかな?」
「つまり、感情以外にも間者側を動かす要素が必要ということですね。
……ちょっと私には思いつきませんが」
んー、横の繋がりがない連中だから、一斉蜂起してくれるかどうかは分からないけど、アイディア自体は湧いてきたかも。
人を動かすには、希望を見せ付けてやればいいんだっけ。
相手が同じ勢力にいるってことしか分かってないが、それでも提示できるメリットはある。
すなわち、捕虜の救出ってやつだな。
うん。状況も利用できそうだし、上手く行くかも知れない。
ブルガーゾも含めて打ち合わせする必要がありそうだ。
0
あなたにおすすめの小説
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺
マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。
その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。
彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。
そして....彼の身体は大丈夫なのか!?
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!
石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。
クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に!
だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。
だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。
※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる