異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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8章 異風の旋律

272 炙り出し

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「ずびばぜん……。ずみばぜんでじだ……」


 思ったよりも簡単に口を割ってくれた。一応ブルガーゾのほうが長く耐えた模様。
 まったく、今回はスキルを使っていないというのに。リペア使って損した気分だ。

 
 サルトリとヨーダムの2人はやはりロンメノの手の者で、狩人ギルドの情報操作を担当していたようだ。
 どうでもいいが、サルトリの態度が悪かったのは、憎んでいるカルネジア家のお膝元で働き続けているというストレスからくるものだったらしい。知らんがな。

 この2人以外にもロンメノの手の者がボールクローグに入っているようだが、拷問からの情報漏えいを恐れてなのか、横の繋がりは一切ないらしい。
 ち、カルネジア家みたいな脳筋なら戦いやすいんだが、ここまで慎重な相手ってのはかなり厄介だな。
 トルネの話が無かったとしたら、未だに敵対勢力の存在にすら気付けてなかったかもしれない。


「そんな……。なんで……。2人とも、なんでなの……」


 エルハが完全に放心している。
 これが演技だったら凄まじい名女優だけど、流石に無いと思う。


「なぁクリーヌ。エルハは相手側の人間だと思う?」

「ん。それは無いと思う。エルハは人を疑うことが苦手なだけ。
 というかトーマは、私のことは疑わないの?」

「ボールクローグに家族がいる奴が、今回の計画に協力するのはありえないと思うんだ。
 5箇所同時氾濫なんて、ボールクローグはほぼ確実に皆殺しに遭うだろ?
 カルネジア家を滅ぼすためとはいえ、自分の家族まで犠牲に出来る奴がいるとは思えない。
 そもそも、家族を犠牲にする必要がない計画なわけだし」

「むぅ。そこは仲間だからって言って欲しかった。でも納得出来る。実際にこの2人も、人とあまり交流しているのを見たことがないし」

「っていうかクリーヌって、なんで狩人ギルドの内情にそんな詳しいのー? ただの狩人にしてはエルハとの距離が
近く感じるんだよねー」


 お、リーンセンパイが突っ込んでくれた。俺も気になってたんだよね。


「ん。うちの両親とエルハは同じ狩猟団出身。だから生まれたときから付き合いがある。
 その縁で狩人ギルドからの頼みごとも良く聞いてたし」


 なるほど。エルハとはギルド外でも親交があったわけね。


「さてこいつらはどうすっかね? 今晩はタケルと一緒に俺たちが見張っておいても良いとして、ボールクローグに間者が残っている以上、適当な奴に任せて終わりってワケには行かないよな?」

「うん。それに私たちが戦っている後ろから、破壊工作とか同士討ちとかされる可能性もあるよね。
 出来れば氾濫が起きる前に、ロンメノのスパイを一掃しておきたいんだけど、上手い方法が思いつかないかな……」

「ん~、誰かに預けるとしたら、カルネジア家がいいのかな……?
 この人たち、カルネジア家を凄く嫌いなんでしょ……? だったらカルネジア家には仲間がいないんじゃないかな……?」

「いえ、カルマさんの話によれば、ロンメノ自身が20年もの長きに渡って、カルネジア家の御用商人を任されていたと言っていましたからね。
 カルネジア家が憎いからこそ潜り込む、そういった考えでもおかしくありません」

「……そうだね。かなり厄介な相手だと思うよ。
 そもそもロンメノの存在自体、トーマとトルネが揃ってなかったら発覚しなかったと思う。
 だからこそ、氾濫のときに間者が残っているなんて不安は消しておきたいところだけど……」


 こういう厄介で面倒なことこそ、魔法やスキルでパーッと解決するのがチート主人公なんだけどなぁ。
 例えば過去を覗ける魔法だったり、鑑定で人の記憶や感情まで覗けたりとかさぁ。

 自白を強要しようにも、しっかり対策されていて情報制限しているのがね。
 流石は精霊家の御用商人を長年務めてる相手だ。
 用心深く、抜け目ない。


「ん~。こいつらって、カルネジア家を滅ぼしたいほど憎んでるんだよな?
 じゃあさ。こいつらってカルネジア家に何をされるのが一番嫌がるかな?」

「……僕は心底、トーマと敵対しなくて良かったと思ってるよ。
 恋人を奪うっていうのが一番嫌うことだと思うけど、流石にこれは現実的じゃないよね?」

「だねー。正体も人数も分からない相手を炙り出すってことだから、交友関係どころか、誰が間者なのかも分かってないわけだしー?」

「共通点は、カルネジア家を嫌いだってことだね……。だからやっぱり、カルネジア家に何かされるのが一番嫌がるのは間違いないと思うけど……」

「かなり計画的な連中ですからね。生半可なことで、尻尾を表してくれるとは思えません」

「……あ! うん。トルネ、そこじゃない? 相手は凄く計画的な連中で、カルネジア家はどっちかと言うと脳筋気味でしょ?
 お前達の杜撰な計画など、我がカルネジア家の頭脳の前には無に等しいのだー!って、あのブルガーゾが宣言したら、めちゃくちゃ頭にくるんじゃないかな?」

「確かにねー! 私もブルガーゾに頭脳で負けたって言われたら、めちゃくちゃ頭にくると思うなー!」

「ハルの案がいい気がするけど、それだけで間者が動くかは難しい気がするね。
 なんせあと少しで氾濫が始まるって時に、頭にきたってだけで間者が正体を現してくれるかな?」

「つまり、感情以外にも間者側を動かす要素が必要ということですね。
 ……ちょっと私には思いつきませんが」


 んー、横の繋がりがない連中だから、一斉蜂起してくれるかどうかは分からないけど、アイディア自体は湧いてきたかも。
 人を動かすには、希望を見せ付けてやればいいんだっけ。

 相手が同じ勢力にいるってことしか分かってないが、それでも提示できるメリットはある。
 すなわち、捕虜の救出ってやつだな。

 うん。状況も利用できそうだし、上手く行くかも知れない。
 ブルガーゾも含めて打ち合わせする必要がありそうだ。
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