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8章 異風の旋律
295 嵐の後
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宿でひと眠りして目を覚ますと、まだ陽天の報せの前だった。
なんとなく『自然治癒力強化』を取得してから、睡眠時間が短くなったような気がするなぁ。
ステータスを確認すると、5万ちょっとSPが増えている。
あれだけの魔物を殺したのに少し少ないんじゃないかと思えるのは、完全に感覚がバグってるな。
しかしSPか。これはどう考えるべきだろう。
戦闘に参加した人間全部がSPを獲得できていたとしたら、6000人近い冒険者全てに大量のSPが稼げていることになるよな?
そして、もしも氾濫に関わった全ての人にSPが分配されているとしたら、現在ボールクローグにいる5万人近い人たち全てにSPが分配されたことになるよな。
これって、確認すべき案件じゃないか……?
でも俺もハルも最前線に居たわけだし、そんなの確認のしようがないよな?
間違いなく街に残って戦闘していなかったであろう子供達にでも、祝福の儀を受けてもらえばいいか?
そんなことを考えていると、ふわわとつららをマーサと取り合って敗北したタケルの姿が目に入る。
タケルはリーネと同じ、中央の後方支援部隊に居たんだったな。
とりあえずタケルのSPを確認すれば、あの場に居た冒険者達がどの程度SPを獲得できたかの目安にはなりそうだ。
氾濫中ずっと街に居て、一切戦闘に参加しなかった人にも、何人か祝福の儀を受けてもらって確認しようかな。
全員を起こし、身支度を整えている間に、タケルにSPを確認してもらう。
「うおおおお!? すっげぇ!
全然戦ってなかったのに、500SP以上獲得出来てるじゃんか!!
し、信じらんねぇ……!」
あれ? 俺と随分差があるな?
タケルに内緒で、ハルにも確認してみる。
「うん。私はトーマと同じく、5万SPちょっと獲得できているかな。
ねぇトーマ、この5万SPってさ。最後の5つの心核から獲得できた分だったりしないかな?」
あーなるほどなぁ! それは充分にあり得そうだ。
迷宮の氾濫で獲得できたのが500SPくらいで、5万は討伐報酬か。なるほどぉ。
あの魔物の量で500SPかぁ、と思ってしまうけれど、冒険者の数も多かったからなぁ。
出てきた魔物も全体的には弱めだったし、そんなもんかもしれない。
そういえばグリーンドラゴンと戦った時に獲得したSPって、1日で150SPくらいだったっけ。
そう考えると、魔物の数はやっぱり尋常じゃなかったわけか。
マーサとタケルも連れ立って、冒険者ギルドに向かう。
ふわわとつらら争奪戦は、やはりマーサに軍配が上がった模様。
マーサの肩好きだなこの2匹。
今になって、冒険者ギルドをぶち抜いている穴を見ると、ちょっとだけ気まずく感じられる。
3階の大会議室に入ると、エルハとブルガーゾを始めとして、氾濫前の会議で集まっていた面子がそのまま揃っていた。
これはちょうどいいな。
「みんなお疲れ様。とりあえず被害報告とか、今後どうしていく方針なのかとか、俺たちにも教えてもらえる?
特にランドビカミウリの素材は、俺たちが貰っていきたいんだけど」
ランドビカミウリの素材は、俺が心配する必要もなく、普通に異風の旋律に譲渡される流れだったようだ。
いくつかの狩猟団が合同で、解体と運搬をしてくれているらしい。ありがたや~。
今回ボールクローグに魔物は到達しなかったおかげで、この街には被害が一切出なかった。
しかし、避難してきた人たちが住んでいた街がどうなっているのかは分からないので、避難民はすぐに帰らずに、被害調査の結果を待つことになった。
おかげで冒険者達には当分の間、食料調達のために管理迷宮を周ってもらう事になる。
復興費用は、今回殺した魔物の素材で充分すぎるほど賄える見込みらしい。
せっかくなので、そこから今回ボールクローグに居た人たち全員に祝福の儀を受けてもらえるように、費用を捻出してもらうことにする。
5万人弱が居たとして、1回10人で5千回。1日に10回ずつ行っても500日はかかる計算か。この街のスキル担当官には心の底から同情するけど、これが行われればボールクローグとその周辺地域は、爆発的に発展することになりそうだからな。頑張ってもらいたい。
まぁ流石に何らかの対策は取られるだろうけどな。スキル担当官の増員とか。
「ボールクローグに住まう全ての者がスキル取得の経験が積めていたなど、そんなことがあり得るのか……?
俄かには信じがたい話ではあるが……」
「まぁ街に居た人たちは分かんないけどね。少なくとも後方支援部隊に居た、そこのオーサン、いやもういいか、タケルは経験が積めていたんだよね。
俺たち異邦人は、自分が積んだ経験の量を確認することが出来るから間違いない。
6等級冒険者くらいになれるくらいのスキルを取得できるんじゃないかな?」
「それが……、それが本当だとしたら、なんとも凄まじい話になってくるぞ……!
これはすぐに確かめねばならん案件だ!
今回街にいて、戦いに全く参加しなかったものと、後方支援部隊に居たもの、それと前線で戦っていたものを10名程度選別して、今すぐ祝福の儀を受けさせるのだ! 急げ!」
ブルガーゾが血相を変えて指示を飛ばしている。
5万人近い人間が一気に6~8個くらいのスキルを取得できたとしたら、ボールクローグに起こる影響は計り知れないからなぁ。
とりあえず、ランドビカミウリの素材は問題なく貰えるとのことで一安心だ。
これ以上この街の事に、部外者の俺たちが首を突っ込んでも仕方ない。
今回配布した装備品はそのまま譲渡するようお願いして、ゲートを使用しヴェルトーガに向かった。
なんとなく『自然治癒力強化』を取得してから、睡眠時間が短くなったような気がするなぁ。
ステータスを確認すると、5万ちょっとSPが増えている。
あれだけの魔物を殺したのに少し少ないんじゃないかと思えるのは、完全に感覚がバグってるな。
しかしSPか。これはどう考えるべきだろう。
戦闘に参加した人間全部がSPを獲得できていたとしたら、6000人近い冒険者全てに大量のSPが稼げていることになるよな?
そして、もしも氾濫に関わった全ての人にSPが分配されているとしたら、現在ボールクローグにいる5万人近い人たち全てにSPが分配されたことになるよな。
これって、確認すべき案件じゃないか……?
でも俺もハルも最前線に居たわけだし、そんなの確認のしようがないよな?
間違いなく街に残って戦闘していなかったであろう子供達にでも、祝福の儀を受けてもらえばいいか?
そんなことを考えていると、ふわわとつららをマーサと取り合って敗北したタケルの姿が目に入る。
タケルはリーネと同じ、中央の後方支援部隊に居たんだったな。
とりあえずタケルのSPを確認すれば、あの場に居た冒険者達がどの程度SPを獲得できたかの目安にはなりそうだ。
氾濫中ずっと街に居て、一切戦闘に参加しなかった人にも、何人か祝福の儀を受けてもらって確認しようかな。
全員を起こし、身支度を整えている間に、タケルにSPを確認してもらう。
「うおおおお!? すっげぇ!
全然戦ってなかったのに、500SP以上獲得出来てるじゃんか!!
し、信じらんねぇ……!」
あれ? 俺と随分差があるな?
タケルに内緒で、ハルにも確認してみる。
「うん。私はトーマと同じく、5万SPちょっと獲得できているかな。
ねぇトーマ、この5万SPってさ。最後の5つの心核から獲得できた分だったりしないかな?」
あーなるほどなぁ! それは充分にあり得そうだ。
迷宮の氾濫で獲得できたのが500SPくらいで、5万は討伐報酬か。なるほどぉ。
あの魔物の量で500SPかぁ、と思ってしまうけれど、冒険者の数も多かったからなぁ。
出てきた魔物も全体的には弱めだったし、そんなもんかもしれない。
そういえばグリーンドラゴンと戦った時に獲得したSPって、1日で150SPくらいだったっけ。
そう考えると、魔物の数はやっぱり尋常じゃなかったわけか。
マーサとタケルも連れ立って、冒険者ギルドに向かう。
ふわわとつらら争奪戦は、やはりマーサに軍配が上がった模様。
マーサの肩好きだなこの2匹。
今になって、冒険者ギルドをぶち抜いている穴を見ると、ちょっとだけ気まずく感じられる。
3階の大会議室に入ると、エルハとブルガーゾを始めとして、氾濫前の会議で集まっていた面子がそのまま揃っていた。
これはちょうどいいな。
「みんなお疲れ様。とりあえず被害報告とか、今後どうしていく方針なのかとか、俺たちにも教えてもらえる?
特にランドビカミウリの素材は、俺たちが貰っていきたいんだけど」
ランドビカミウリの素材は、俺が心配する必要もなく、普通に異風の旋律に譲渡される流れだったようだ。
いくつかの狩猟団が合同で、解体と運搬をしてくれているらしい。ありがたや~。
今回ボールクローグに魔物は到達しなかったおかげで、この街には被害が一切出なかった。
しかし、避難してきた人たちが住んでいた街がどうなっているのかは分からないので、避難民はすぐに帰らずに、被害調査の結果を待つことになった。
おかげで冒険者達には当分の間、食料調達のために管理迷宮を周ってもらう事になる。
復興費用は、今回殺した魔物の素材で充分すぎるほど賄える見込みらしい。
せっかくなので、そこから今回ボールクローグに居た人たち全員に祝福の儀を受けてもらえるように、費用を捻出してもらうことにする。
5万人弱が居たとして、1回10人で5千回。1日に10回ずつ行っても500日はかかる計算か。この街のスキル担当官には心の底から同情するけど、これが行われればボールクローグとその周辺地域は、爆発的に発展することになりそうだからな。頑張ってもらいたい。
まぁ流石に何らかの対策は取られるだろうけどな。スキル担当官の増員とか。
「ボールクローグに住まう全ての者がスキル取得の経験が積めていたなど、そんなことがあり得るのか……?
俄かには信じがたい話ではあるが……」
「まぁ街に居た人たちは分かんないけどね。少なくとも後方支援部隊に居た、そこのオーサン、いやもういいか、タケルは経験が積めていたんだよね。
俺たち異邦人は、自分が積んだ経験の量を確認することが出来るから間違いない。
6等級冒険者くらいになれるくらいのスキルを取得できるんじゃないかな?」
「それが……、それが本当だとしたら、なんとも凄まじい話になってくるぞ……!
これはすぐに確かめねばならん案件だ!
今回街にいて、戦いに全く参加しなかったものと、後方支援部隊に居たもの、それと前線で戦っていたものを10名程度選別して、今すぐ祝福の儀を受けさせるのだ! 急げ!」
ブルガーゾが血相を変えて指示を飛ばしている。
5万人近い人間が一気に6~8個くらいのスキルを取得できたとしたら、ボールクローグに起こる影響は計り知れないからなぁ。
とりあえず、ランドビカミウリの素材は問題なく貰えるとのことで一安心だ。
これ以上この街の事に、部外者の俺たちが首を突っ込んでも仕方ない。
今回配布した装備品はそのまま譲渡するようお願いして、ゲートを使用しヴェルトーガに向かった。
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