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9章 異邦人が生きるために
319 プレゼンテーション
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要は俺の発言で、王国の異邦人に対する認識が決まってくるという話だ。
上手く説得できなかったら申し訳ないなぁ。
「そうですね。異邦人による利益という点でしたら、うちのカンパニーの活動が各地で影響が出始めていると思います。
生活困窮者への支援、迷宮活動への補助などを行うことによって、地域全体の活性化に繋がっていると聞いています。これは異邦人が齎した利益と言って良いと思います」
異邦人じゃなくても出来ることだけど、異邦人の俺が来るまで誰も手をつけてなかったんだから、異邦人が齎したメリットであったと言っても問題ないはずだ。
「そして異邦人の危険性についてですが。
これは異邦人が王国に現れ続ける限りは、完全に払拭することは出来ないことだと思っています。
ですので異邦人を見つけ次第、一旦私達で預かり、必要な知識や常識を身につけさせたいと思っています。
異邦人が1箇所に集まることを恐れる気持ちはあると思いますが、なんの常識もなく恐ろしい能力を持った人間が、人知れず紛れ込んでいる方が脅威度は高いと思いますから」
「ふむぅ。完璧な解決策などはありはしないが、とりわけ異邦人の扱いは難しいのぅ……。
異邦人が組織立ってしまうことも恐ろしいが、野放しにされているのも危険、か」
少し場が騒がしくなってきた。
異邦人は厄介なのであまり関わりたくない、でも人にも任せたくない、そんな感じの葛藤が透けて見える。
「それでですね。あくまで将来的な話ということになるんですけど。
将来的に、ウィルスレイアの先の大砂漠地帯に、異邦人を受け入れるための都市を建設したいと思っているんです。
出来ればリヴァーブ王国の1都市として認めてもらえると、ありがたいと思っているのですが」
「国境壁の外側に都市を建設するというのかっ!?」
「それは王国に弓引く行為であろう!!」
「しかし……、現実的に考えて、大量の異邦人の滞在を受け入れられる都市があるかというと……」
壁外都市の建設を認めてもらえるかどうか。これがネックになるだろうことはわかっていた。
今後も更に異邦人の騒動が増えてくる可能性を考えると、王国内で集まるのはリスクが大きすぎる。
王国民の感情も異邦人排除に傾いていくだろうし、異邦人も王国民に対して敵愾心を抱きかねないからな。
物理的な距離を開けて、直接的な衝突を避ける必要があると思う。
「――――ウィルスレイアの先に、壁外都市を建設する、か……。
くくく、あっはっはっはっは! いいね! 壁外都市! 最高じゃないか!
我がシルグリイド家は、異風の旋律を全面的に支持するよ! 壁外都市建設計画にも全力で協力しよう!」
「ファーガロン? 突然どうしたのだ? 冷静沈着なそなたらしくもない」
「くくく。王よ、失礼しました。
なぁに、単純な話ですよ。僕は砂漠地帯の先が見たい。だから協力する。それだけです。
僕はシルグリイド家の当主として、幼い頃から国境壁の外を見ながら育ちました。一向に進められない領土拡張に苛立ちを覚えながら、いつかこの先を見てみたいと思っていたんですよ。
まさか、まさかこんな形で、砂漠地帯の先を見られる可能性が出てくるなんて……!」
ファーガロンは酷く上機嫌な様子でこちらに向き直った。
「いやぁ合点がいったよ! 君たちの活動は把握していたけれど、支援活動にしては、やけに物件を大量に購入していると思っていたんだ!
将来的に壁外都市建設を考えてあったから、ウィルスレイアへの人の流入を見越していたわけだ!
正直言うと、ヴェルトーガは君たちのおかげで目覚しく発展し始めているし、ボールクローグはスキル取得者が爆増したおかげでこれから目覚しく発展していくだろうし、タイデリア家とカルネジア家には軽い嫉妬を覚えたものだよ!
だがそれも全て吹き飛んだよ! 壁外都市計画、最高じゃないか! 国境壁の先の先が見られるかも知れないなんて、これ以上の喜びはないよ!」
ファーガロンの興奮した様子を見て、場の雰囲気が少し期待を孕んだものになってきつつある。
国境壁の外。これは全リヴァーブ王国民にとっての憧れなのかも知れない。
「私は反対だぁ! そいつらがミルズレンダでなにをしたか分かっておるのか!?
そんな危険人物達に手を貸そうなど言語道断である! 皆の者、目を覚ますがいい!!」
ここでゼルポーナスのじじいが叫び声をあげる。
でもゼルポーナスよ。ここで注目を浴びたら、墓穴掘る事にならねぇ?
「ほう? ゼルポーナスよ。彼らはミルズレンダでなにをしたのだ? 報告はなかったが。
発言を許すぞ。ゼルポーナス。ミルズレンダでなにがあったのか報告せよ」
「はっ! そやつらはミルズレンダから最高の職人を連れ去り、メーデクェイタ家の家人を含む100名を超える人間を殺害したのです!
そんな大量殺人者を信用するなんてどうかしている! むしろ今すぐ捕らえるべきである!」
「――――とゼルポーナスは申しておるが、異風の旋律側はなにか申し開きはあるか?」
「そうですね。まず職人の連れ去りについてですが、本人の希望でうちが引き取っただけです。その際に職人等級を、正規の手続きを持ってミルズレンダで返上しています。
殺害については不明ですね。狩人ギルドの職員に騙され、100人を超える人数に国境壁外地域で襲撃されたことは間違いありませんが、私はゲートが使えるので隙をついて逃げましたから。
その後一切ミルズレンダには近寄っておりませんので、襲撃者がどうなったのかは分かりかねますね」
アリスもゼルポーナスも、一時の感情に流されて死線を踏み越えてしまっているのに気付いてないんだよなぁ。
ミルズレンダでの1件が露呈して困るのは、俺じゃなくてゼルポーナス側だろうに。
やはり感情のコントロールってのは大切だな。他山の石としなければ。
上手く説得できなかったら申し訳ないなぁ。
「そうですね。異邦人による利益という点でしたら、うちのカンパニーの活動が各地で影響が出始めていると思います。
生活困窮者への支援、迷宮活動への補助などを行うことによって、地域全体の活性化に繋がっていると聞いています。これは異邦人が齎した利益と言って良いと思います」
異邦人じゃなくても出来ることだけど、異邦人の俺が来るまで誰も手をつけてなかったんだから、異邦人が齎したメリットであったと言っても問題ないはずだ。
「そして異邦人の危険性についてですが。
これは異邦人が王国に現れ続ける限りは、完全に払拭することは出来ないことだと思っています。
ですので異邦人を見つけ次第、一旦私達で預かり、必要な知識や常識を身につけさせたいと思っています。
異邦人が1箇所に集まることを恐れる気持ちはあると思いますが、なんの常識もなく恐ろしい能力を持った人間が、人知れず紛れ込んでいる方が脅威度は高いと思いますから」
「ふむぅ。完璧な解決策などはありはしないが、とりわけ異邦人の扱いは難しいのぅ……。
異邦人が組織立ってしまうことも恐ろしいが、野放しにされているのも危険、か」
少し場が騒がしくなってきた。
異邦人は厄介なのであまり関わりたくない、でも人にも任せたくない、そんな感じの葛藤が透けて見える。
「それでですね。あくまで将来的な話ということになるんですけど。
将来的に、ウィルスレイアの先の大砂漠地帯に、異邦人を受け入れるための都市を建設したいと思っているんです。
出来ればリヴァーブ王国の1都市として認めてもらえると、ありがたいと思っているのですが」
「国境壁の外側に都市を建設するというのかっ!?」
「それは王国に弓引く行為であろう!!」
「しかし……、現実的に考えて、大量の異邦人の滞在を受け入れられる都市があるかというと……」
壁外都市の建設を認めてもらえるかどうか。これがネックになるだろうことはわかっていた。
今後も更に異邦人の騒動が増えてくる可能性を考えると、王国内で集まるのはリスクが大きすぎる。
王国民の感情も異邦人排除に傾いていくだろうし、異邦人も王国民に対して敵愾心を抱きかねないからな。
物理的な距離を開けて、直接的な衝突を避ける必要があると思う。
「――――ウィルスレイアの先に、壁外都市を建設する、か……。
くくく、あっはっはっはっは! いいね! 壁外都市! 最高じゃないか!
我がシルグリイド家は、異風の旋律を全面的に支持するよ! 壁外都市建設計画にも全力で協力しよう!」
「ファーガロン? 突然どうしたのだ? 冷静沈着なそなたらしくもない」
「くくく。王よ、失礼しました。
なぁに、単純な話ですよ。僕は砂漠地帯の先が見たい。だから協力する。それだけです。
僕はシルグリイド家の当主として、幼い頃から国境壁の外を見ながら育ちました。一向に進められない領土拡張に苛立ちを覚えながら、いつかこの先を見てみたいと思っていたんですよ。
まさか、まさかこんな形で、砂漠地帯の先を見られる可能性が出てくるなんて……!」
ファーガロンは酷く上機嫌な様子でこちらに向き直った。
「いやぁ合点がいったよ! 君たちの活動は把握していたけれど、支援活動にしては、やけに物件を大量に購入していると思っていたんだ!
将来的に壁外都市建設を考えてあったから、ウィルスレイアへの人の流入を見越していたわけだ!
正直言うと、ヴェルトーガは君たちのおかげで目覚しく発展し始めているし、ボールクローグはスキル取得者が爆増したおかげでこれから目覚しく発展していくだろうし、タイデリア家とカルネジア家には軽い嫉妬を覚えたものだよ!
だがそれも全て吹き飛んだよ! 壁外都市計画、最高じゃないか! 国境壁の先の先が見られるかも知れないなんて、これ以上の喜びはないよ!」
ファーガロンの興奮した様子を見て、場の雰囲気が少し期待を孕んだものになってきつつある。
国境壁の外。これは全リヴァーブ王国民にとっての憧れなのかも知れない。
「私は反対だぁ! そいつらがミルズレンダでなにをしたか分かっておるのか!?
そんな危険人物達に手を貸そうなど言語道断である! 皆の者、目を覚ますがいい!!」
ここでゼルポーナスのじじいが叫び声をあげる。
でもゼルポーナスよ。ここで注目を浴びたら、墓穴掘る事にならねぇ?
「ほう? ゼルポーナスよ。彼らはミルズレンダでなにをしたのだ? 報告はなかったが。
発言を許すぞ。ゼルポーナス。ミルズレンダでなにがあったのか報告せよ」
「はっ! そやつらはミルズレンダから最高の職人を連れ去り、メーデクェイタ家の家人を含む100名を超える人間を殺害したのです!
そんな大量殺人者を信用するなんてどうかしている! むしろ今すぐ捕らえるべきである!」
「――――とゼルポーナスは申しておるが、異風の旋律側はなにか申し開きはあるか?」
「そうですね。まず職人の連れ去りについてですが、本人の希望でうちが引き取っただけです。その際に職人等級を、正規の手続きを持ってミルズレンダで返上しています。
殺害については不明ですね。狩人ギルドの職員に騙され、100人を超える人数に国境壁外地域で襲撃されたことは間違いありませんが、私はゲートが使えるので隙をついて逃げましたから。
その後一切ミルズレンダには近寄っておりませんので、襲撃者がどうなったのかは分かりかねますね」
アリスもゼルポーナスも、一時の感情に流されて死線を踏み越えてしまっているのに気付いてないんだよなぁ。
ミルズレンダでの1件が露呈して困るのは、俺じゃなくてゼルポーナス側だろうに。
やはり感情のコントロールってのは大切だな。他山の石としなければ。
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