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9章 異邦人が生きるために
321 蜘蛛の糸
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都市開発計画の許可さえ貰えれば問題ない。
王は夕食会で懇親を深めたいと言ってきたが、謁見前の騒動を理由に断った。
城から出て、馬車での送迎を断って、さっさと帰ろうとゲートの詠唱をしていると、ディオーヌ様から忘れ物ですと、アリスを押し付けられてしまった。完全に忘れてたわ。
「殺そうが生かそうがお任せしますけど、置いておくことだけは許しませんわ。
アリスは異邦人の皆さんが責任を持って処分してくださいな。
今までのアリスの保護費用は、ヴェルトーガの経済が潤った分で相殺できますので、返還は必要ありません。
それと、こちらが先ほどの騒動を起こした令嬢達の名簿ですわ」
「アリスも名簿も忘れてましたよ。ありがとうございます。
今回も今までも、ディオーヌ様には迷惑のかけ通しで申し訳ありません。いつも気にかけていただいて、本当にありがとうございます」
「はぁ……。それはお互い様ですね。
トーマさん達が居なければ、ヴェルトーガもボールクローグも壊滅していたかもしれませんし、リヴァーブ王国が滅んでいたとしても不思議ではないのですから。
それにゼルポーナスの件にしてもロンメノの件にしても、異邦人が一方的に悪いばかりではありませんからね。異邦人であろうと王国民であろうと、裁かれる者は裁かれるべきですわ。
ついでに言いますが、今回のロンメノの件で、カルネジア家の女性関係は王都でも問題視されることになりました。今後はもう、今までのような横暴な婚姻など結べなくなるよう、王国全体で監視されるようになるはずです。
ロンメノに同情する点はありませんが、カルネジア家に起こされる悲劇は減っていくはずです」
「それはいいことですね。流石にカルネジア家の横暴な振る舞いには嫌気がさしていましたから。
重ね重ね、お世話になりました。
ディオーヌ様には大変お世話になってますから、いつかお礼をしなければ行けないですね。
壁外都市計画が落ち着いたら、ヴェルトーガへの西への進出をお手伝いさせていただけたらと思ってます」
「――――っ!! ヴェルトーガの西、ですか……!
それは、とても魅力的な提案ですわ。壁外都市建設、なるべく早く成功させてくださいね?」
ディオーヌ様はこれから話し合わなければならないことが沢山あるらしく、そのまま城に戻っていった。
残されたのはベイク組と、ディオーヌ様に連れてこられたアリスだけだ。
「じゃあ今回はもう王都を歩いて回る気分でもないだろうし、このまま帰ってもいいよな?
観光は後日改めてってことにしようぜ。農場見学も、出来ればゆっくりしたいしね」
ロングソードを抜きながらみんなに確認を取る。
みんなもこのまま王都を見て回りたいとは思ってないようだ。
ま、不愉快な出来事が多かったしなぁ。
「じゃあなアリス。次に生まれるときは、もう少し頭を使って生きたほうがいいぞ」
「ま、待って! 服従する! 絶対服従するから! 絶対に逆らわないから! お願い、殺さないで!」
「今さら何言ってんの? お前の言葉になんの信用があると思ってんだ?
お前は口だけ調子のいいこと言って、また今回と同じ事をやらかすだけだろ?
言葉だけじゃなんの信用もないし、生かしておく理由としては弱すぎるな」
「ま、魔法契約するわ! いえ、させてください! 魔法契約をすれば、絶対に逆らえなくなるって聞きました!
スキルの使用も、日常生活も、契約者が任意に縛ることが出来るって聞きました!
私はそれを受け入れます! だからお願い! 殺さないで……!」
アリスが泣きながら懇願してくるが、俺の中では全く同情心が沸かない。
こいつを生かしておくメリットが思いつかない上に、コイツはリーンを悲しませた時点で俺の敵だ。殺す理由しか思い当たらない。
「わざわざお前を生かすのに、何で俺がそんな手間暇かけなきゃならないんだ?
軽い考えで俺に敵対した自分の浅はかさを恨んで死ね」
「トーマ! それなら俺がそいつを預かるよ! だから殺さないでやってくれねぇか!?」
意外なところから待ったがかかった。
タケルの声を聞いて、とりあえず武器を下ろす。
「タケル、お前に任せるのは構わないけど、お前はそれでいいのか?
俺は1度敵対した奴を絶対に信用しないから、お前のパーティの信用度がガタ落ちだし、アリスは今まで食っちゃ寝を繰り返してロクに運動もしてないからな。初めて会った時と比べて明らかに太ってるし、チート能力を使用した時点で問答無用で死んでもらうから役に立たないぞ?
ディオーヌ様ですら放り出した、負債の中の負債。チートと合わせて核爆弾級の地雷女だぞ? お前に面倒見きれるか?」
「よ、容赦ねぇな……! 確かに俺は軽く考えてる部分はあるかも知れねぇ。
でもよ、俺のチート能力だって同じくらいの地雷度だと思うんだよ。その俺が能力を理由にその女を見捨てちまったら、俺は一生後悔しそうな気がするんだ。
そいつの面倒は俺が見るよ。だからここで殺すのは、勘弁してやっちゃくれねぇか」
んー。能力の代償が無差別攻撃って部分で、タケルがちょっとしたシンパシーを感じてしまったらしい。
まぁタケルが面倒見るなら殺さなくてもいいかも知れないけど、タケルのパティメンバーの2人が、明らかに不機嫌になっているのが気になるな。
「タケルの言い分はわかったっすけど、私は反対っすね。何もせずに贅沢三昧の日々を送ってきて、トーマたちに嫌がらせを嗾けてきた女っすから。
しかも自分は動かずに、身分の高い女性を自分の代わりに嗾けて、自分は安全な場所でニタニタ笑ってたっすからね。チートを抜きにしても地雷女っしょ、こいつ」
「私も反対よ。この世界に来て異邦人が太れるなんて、普通有り得ないわ。
こういう女は生涯直らないわ。一緒にパーティを組むなんて、絶対に耐えられない。
タケルがその女の面倒を見るなら、パーティは抜けさせてもらうわ。あとはご自由にどうぞ」
この3人も成り行きで組んでただけだからなぁ。
1人が我侭を通せば、瓦解するのも仕方ない。
「――――分かった。その条件でいいよ。それでも俺は、この女を見捨てたくないんだ。
頼むトーマ。俺が面倒見るから、殺さないでやってくれねぇか……!」
「そこまで言うならタケルに任せるよ。ただベイクに戻ったら、すぐに魔法契約してもらうけどな。
それといくらお前が面倒を見るっつっても、甘やかすのは絶対に許さない。
アリス自身が労働して生活費を稼げないようなら、即殺すことに同意してもらう。
はっきり言うけど、アリスって生かしておくメリットって全くないんだよ。それを曲げるんだから、そっちにもそれ相応の制限を約束してもらうからな」
タケルのおかげで、アリスは首の皮1枚繋がったな。
そのおかげでタケルが失ったものは、なかなかに大きそうではあるが。
タケルが選んだ道なんだ。俺は黙って見送るとしよう。
アリスが更生するなんて毛ほども信じちゃいないけどね。
王は夕食会で懇親を深めたいと言ってきたが、謁見前の騒動を理由に断った。
城から出て、馬車での送迎を断って、さっさと帰ろうとゲートの詠唱をしていると、ディオーヌ様から忘れ物ですと、アリスを押し付けられてしまった。完全に忘れてたわ。
「殺そうが生かそうがお任せしますけど、置いておくことだけは許しませんわ。
アリスは異邦人の皆さんが責任を持って処分してくださいな。
今までのアリスの保護費用は、ヴェルトーガの経済が潤った分で相殺できますので、返還は必要ありません。
それと、こちらが先ほどの騒動を起こした令嬢達の名簿ですわ」
「アリスも名簿も忘れてましたよ。ありがとうございます。
今回も今までも、ディオーヌ様には迷惑のかけ通しで申し訳ありません。いつも気にかけていただいて、本当にありがとうございます」
「はぁ……。それはお互い様ですね。
トーマさん達が居なければ、ヴェルトーガもボールクローグも壊滅していたかもしれませんし、リヴァーブ王国が滅んでいたとしても不思議ではないのですから。
それにゼルポーナスの件にしてもロンメノの件にしても、異邦人が一方的に悪いばかりではありませんからね。異邦人であろうと王国民であろうと、裁かれる者は裁かれるべきですわ。
ついでに言いますが、今回のロンメノの件で、カルネジア家の女性関係は王都でも問題視されることになりました。今後はもう、今までのような横暴な婚姻など結べなくなるよう、王国全体で監視されるようになるはずです。
ロンメノに同情する点はありませんが、カルネジア家に起こされる悲劇は減っていくはずです」
「それはいいことですね。流石にカルネジア家の横暴な振る舞いには嫌気がさしていましたから。
重ね重ね、お世話になりました。
ディオーヌ様には大変お世話になってますから、いつかお礼をしなければ行けないですね。
壁外都市計画が落ち着いたら、ヴェルトーガへの西への進出をお手伝いさせていただけたらと思ってます」
「――――っ!! ヴェルトーガの西、ですか……!
それは、とても魅力的な提案ですわ。壁外都市建設、なるべく早く成功させてくださいね?」
ディオーヌ様はこれから話し合わなければならないことが沢山あるらしく、そのまま城に戻っていった。
残されたのはベイク組と、ディオーヌ様に連れてこられたアリスだけだ。
「じゃあ今回はもう王都を歩いて回る気分でもないだろうし、このまま帰ってもいいよな?
観光は後日改めてってことにしようぜ。農場見学も、出来ればゆっくりしたいしね」
ロングソードを抜きながらみんなに確認を取る。
みんなもこのまま王都を見て回りたいとは思ってないようだ。
ま、不愉快な出来事が多かったしなぁ。
「じゃあなアリス。次に生まれるときは、もう少し頭を使って生きたほうがいいぞ」
「ま、待って! 服従する! 絶対服従するから! 絶対に逆らわないから! お願い、殺さないで!」
「今さら何言ってんの? お前の言葉になんの信用があると思ってんだ?
お前は口だけ調子のいいこと言って、また今回と同じ事をやらかすだけだろ?
言葉だけじゃなんの信用もないし、生かしておく理由としては弱すぎるな」
「ま、魔法契約するわ! いえ、させてください! 魔法契約をすれば、絶対に逆らえなくなるって聞きました!
スキルの使用も、日常生活も、契約者が任意に縛ることが出来るって聞きました!
私はそれを受け入れます! だからお願い! 殺さないで……!」
アリスが泣きながら懇願してくるが、俺の中では全く同情心が沸かない。
こいつを生かしておくメリットが思いつかない上に、コイツはリーンを悲しませた時点で俺の敵だ。殺す理由しか思い当たらない。
「わざわざお前を生かすのに、何で俺がそんな手間暇かけなきゃならないんだ?
軽い考えで俺に敵対した自分の浅はかさを恨んで死ね」
「トーマ! それなら俺がそいつを預かるよ! だから殺さないでやってくれねぇか!?」
意外なところから待ったがかかった。
タケルの声を聞いて、とりあえず武器を下ろす。
「タケル、お前に任せるのは構わないけど、お前はそれでいいのか?
俺は1度敵対した奴を絶対に信用しないから、お前のパーティの信用度がガタ落ちだし、アリスは今まで食っちゃ寝を繰り返してロクに運動もしてないからな。初めて会った時と比べて明らかに太ってるし、チート能力を使用した時点で問答無用で死んでもらうから役に立たないぞ?
ディオーヌ様ですら放り出した、負債の中の負債。チートと合わせて核爆弾級の地雷女だぞ? お前に面倒見きれるか?」
「よ、容赦ねぇな……! 確かに俺は軽く考えてる部分はあるかも知れねぇ。
でもよ、俺のチート能力だって同じくらいの地雷度だと思うんだよ。その俺が能力を理由にその女を見捨てちまったら、俺は一生後悔しそうな気がするんだ。
そいつの面倒は俺が見るよ。だからここで殺すのは、勘弁してやっちゃくれねぇか」
んー。能力の代償が無差別攻撃って部分で、タケルがちょっとしたシンパシーを感じてしまったらしい。
まぁタケルが面倒見るなら殺さなくてもいいかも知れないけど、タケルのパティメンバーの2人が、明らかに不機嫌になっているのが気になるな。
「タケルの言い分はわかったっすけど、私は反対っすね。何もせずに贅沢三昧の日々を送ってきて、トーマたちに嫌がらせを嗾けてきた女っすから。
しかも自分は動かずに、身分の高い女性を自分の代わりに嗾けて、自分は安全な場所でニタニタ笑ってたっすからね。チートを抜きにしても地雷女っしょ、こいつ」
「私も反対よ。この世界に来て異邦人が太れるなんて、普通有り得ないわ。
こういう女は生涯直らないわ。一緒にパーティを組むなんて、絶対に耐えられない。
タケルがその女の面倒を見るなら、パーティは抜けさせてもらうわ。あとはご自由にどうぞ」
この3人も成り行きで組んでただけだからなぁ。
1人が我侭を通せば、瓦解するのも仕方ない。
「――――分かった。その条件でいいよ。それでも俺は、この女を見捨てたくないんだ。
頼むトーマ。俺が面倒見るから、殺さないでやってくれねぇか……!」
「そこまで言うならタケルに任せるよ。ただベイクに戻ったら、すぐに魔法契約してもらうけどな。
それといくらお前が面倒を見るっつっても、甘やかすのは絶対に許さない。
アリス自身が労働して生活費を稼げないようなら、即殺すことに同意してもらう。
はっきり言うけど、アリスって生かしておくメリットって全くないんだよ。それを曲げるんだから、そっちにもそれ相応の制限を約束してもらうからな」
タケルのおかげで、アリスは首の皮1枚繋がったな。
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