異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

文字の大きさ
359 / 580
9章 異邦人が生きるために

321 蜘蛛の糸

しおりを挟む
 都市開発計画の許可さえ貰えれば問題ない。
 王は夕食会で懇親を深めたいと言ってきたが、謁見前の騒動を理由に断った。

 
 城から出て、馬車での送迎を断って、さっさと帰ろうとゲートの詠唱をしていると、ディオーヌ様から忘れ物ですと、アリスを押し付けられてしまった。完全に忘れてたわ。


「殺そうが生かそうがお任せしますけど、置いておくことだけは許しませんわ。
 アリスは異邦人の皆さんが責任を持って処分してくださいな。
 今までのアリスの保護費用は、ヴェルトーガの経済が潤った分で相殺できますので、返還は必要ありません。
 それと、こちらが先ほどの騒動を起こした令嬢達の名簿ですわ」

「アリスも名簿も忘れてましたよ。ありがとうございます。
 今回も今までも、ディオーヌ様には迷惑のかけ通しで申し訳ありません。いつも気にかけていただいて、本当にありがとうございます」

「はぁ……。それはお互い様ですね。
 トーマさん達が居なければ、ヴェルトーガもボールクローグも壊滅していたかもしれませんし、リヴァーブ王国が滅んでいたとしても不思議ではないのですから。
 それにゼルポーナスの件にしてもロンメノの件にしても、異邦人が一方的に悪いばかりではありませんからね。異邦人であろうと王国民であろうと、裁かれる者は裁かれるべきですわ。
 ついでに言いますが、今回のロンメノの件で、カルネジア家の女性関係は王都でも問題視されることになりました。今後はもう、今までのような横暴な婚姻など結べなくなるよう、王国全体で監視されるようになるはずです。
 ロンメノに同情する点はありませんが、カルネジア家に起こされる悲劇は減っていくはずです」

「それはいいことですね。流石にカルネジア家の横暴な振る舞いには嫌気がさしていましたから。
 重ね重ね、お世話になりました。
 ディオーヌ様には大変お世話になってますから、いつかお礼をしなければ行けないですね。
 壁外都市計画が落ち着いたら、ヴェルトーガへの西への進出をお手伝いさせていただけたらと思ってます」

「――――っ!! ヴェルトーガの西、ですか……!
 それは、とても魅力的な提案ですわ。壁外都市建設、なるべく早く成功させてくださいね?」


 ディオーヌ様はこれから話し合わなければならないことが沢山あるらしく、そのまま城に戻っていった。
 残されたのはベイク組と、ディオーヌ様に連れてこられたアリスだけだ。


「じゃあ今回はもう王都を歩いて回る気分でもないだろうし、このまま帰ってもいいよな?
 観光は後日改めてってことにしようぜ。農場見学も、出来ればゆっくりしたいしね」


 ロングソードを抜きながらみんなに確認を取る。
 みんなもこのまま王都を見て回りたいとは思ってないようだ。
 ま、不愉快な出来事が多かったしなぁ。


「じゃあなアリス。次に生まれるときは、もう少し頭を使って生きたほうがいいぞ」

「ま、待って! 服従する! 絶対服従するから! 絶対に逆らわないから! お願い、殺さないで!」

「今さら何言ってんの? お前の言葉になんの信用があると思ってんだ?
 お前は口だけ調子のいいこと言って、また今回と同じ事をやらかすだけだろ?
 言葉だけじゃなんの信用もないし、生かしておく理由としては弱すぎるな」

「ま、魔法契約するわ! いえ、させてください! 魔法契約をすれば、絶対に逆らえなくなるって聞きました!
 スキルの使用も、日常生活も、契約者が任意に縛ることが出来るって聞きました!
 私はそれを受け入れます! だからお願い! 殺さないで……!」

 
 アリスが泣きながら懇願してくるが、俺の中では全く同情心が沸かない。
 こいつを生かしておくメリットが思いつかない上に、コイツはリーンを悲しませた時点で俺の敵だ。殺す理由しか思い当たらない。


「わざわざお前を生かすのに、何で俺がそんな手間暇かけなきゃならないんだ?
 軽い考えで俺に敵対した自分の浅はかさを恨んで死ね」

「トーマ! それなら俺がそいつを預かるよ! だから殺さないでやってくれねぇか!?」


 意外なところから待ったがかかった。
 タケルの声を聞いて、とりあえず武器を下ろす。


「タケル、お前に任せるのは構わないけど、お前はそれでいいのか?
 俺は1度敵対した奴を絶対に信用しないから、お前のパーティの信用度がガタ落ちだし、アリスは今まで食っちゃ寝を繰り返してロクに運動もしてないからな。初めて会った時と比べて明らかに太ってるし、チート能力を使用した時点で問答無用で死んでもらうから役に立たないぞ?
 ディオーヌ様ですら放り出した、負債の中の負債。チートと合わせて核爆弾級の地雷女だぞ? お前に面倒見きれるか?」

「よ、容赦ねぇな……! 確かに俺は軽く考えてる部分はあるかも知れねぇ。
 でもよ、俺のチート能力だって同じくらいの地雷度だと思うんだよ。その俺が能力を理由にその女を見捨てちまったら、俺は一生後悔しそうな気がするんだ。
 そいつの面倒は俺が見るよ。だからここで殺すのは、勘弁してやっちゃくれねぇか」


 んー。能力の代償が無差別攻撃って部分で、タケルがちょっとしたシンパシーを感じてしまったらしい。
 まぁタケルが面倒見るなら殺さなくてもいいかも知れないけど、タケルのパティメンバーの2人が、明らかに不機嫌になっているのが気になるな。


「タケルの言い分はわかったっすけど、私は反対っすね。何もせずに贅沢三昧の日々を送ってきて、トーマたちに嫌がらせを嗾けてきた女っすから。
 しかも自分は動かずに、身分の高い女性を自分の代わりに嗾けて、自分は安全な場所でニタニタ笑ってたっすからね。チートを抜きにしても地雷女っしょ、こいつ」

「私も反対よ。この世界に来て異邦人が太れるなんて、普通有り得ないわ。
 こういう女は生涯直らないわ。一緒にパーティを組むなんて、絶対に耐えられない。
 タケルがその女の面倒を見るなら、パーティは抜けさせてもらうわ。あとはご自由にどうぞ」


 この3人も成り行きで組んでただけだからなぁ。
 1人が我侭を通せば、瓦解するのも仕方ない。


「――――分かった。その条件でいいよ。それでも俺は、この女を見捨てたくないんだ。
 頼むトーマ。俺が面倒見るから、殺さないでやってくれねぇか……!」

「そこまで言うならタケルに任せるよ。ただベイクに戻ったら、すぐに魔法契約してもらうけどな。
 それといくらお前が面倒を見るっつっても、甘やかすのは絶対に許さない。
 アリス自身が労働して生活費を稼げないようなら、即殺すことに同意してもらう。
 はっきり言うけど、アリスって生かしておくメリットって全くないんだよ。それを曲げるんだから、そっちにもそれ相応の制限を約束してもらうからな」


 タケルのおかげで、アリスは首の皮1枚繋がったな。
 そのおかげでタケルが失ったものは、なかなかに大きそうではあるが。

 タケルが選んだ道なんだ。俺は黙って見送るとしよう。
 アリスが更生するなんて毛ほども信じちゃいないけどね。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

第2の人生は、『男』が希少種の世界で

赤金武蔵
ファンタジー
 日本の高校生、久我一颯(くがいぶき)は、気が付くと見知らぬ土地で、女山賊たちから貞操を奪われる危機に直面していた。  あと一歩で襲われかけた、その時。白銀の鎧を纏った女騎士・ミューレンに救われる。  ミューレンの話から、この世界は地球ではなく、別の世界だということを知る。  しかも──『男』という存在が、超希少な世界だった。

異世界でただ美しく! 男女比1対5の世界で美形になる事を望んだ俺は戦力外で追い出されましたので自由に生きます!

石のやっさん
ファンタジー
主人公、理人は異世界召喚で異世界ルミナスにクラスごと召喚された。 クラスの人間が、優秀なジョブやスキルを持つなか、理人は『侍』という他に比べてかなり落ちるジョブだった為、魔族討伐メンバーから外され…追い出される事に! だが、これは仕方が無い事だった…彼は戦う事よりも「美しくなる事」を望んでしまったからだ。 だが、ルミナスは男女比1対5の世界なので…まぁ色々起きます。 ※私の書く男女比物が読みたい…そのリクエストに応えてみましたが、中編で終わる可能性は高いです。

男:女=1:10000の世界に来た記憶が無いけど生きる俺

マオセン
ファンタジー
突然公園で目覚めた青年「優心」は身辺状況の記憶をすべて忘れていた。分かるのは自分の名前と剣道の経験、常識くらいだった。 その公園を通りすがった「七瀬 椿」に話しかけてからこの物語は幕を開ける。 彼は何も記憶が無い状態で男女比が圧倒的な世界を生き抜けることができるのか。 そして....彼の身体は大丈夫なのか!?

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...