異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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9章 異邦人が生きるために

354 大量転移

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 魔導具開発局を出て、まずは図書館組と合流する。


「スナネコの記録も探してみたんだけど見つからなかったんだ。ボールクローグでもペルの種族の存在は知られていないみたいだし、恐らくあまり人前には姿を現さないんじゃないかな?
 魔物みたいに人を襲うわけでもないし、人に保護されなければ生きていけないほど弱くもない生き物だからね。
 ペルの場合は負傷して群れから逸れてしまったみたいだし、スナネコたちの場合は僕たちが餌となる魔物を集めてしまったから、食料を求めて姿を現したんだと思うのが妥当だね」

「あーーーそういうことだったのかー!
 結果的に仲良くなれたから良かったけど、あいつらに迷惑かけちゃったんだなぁ。お詫びに明日ドラゴンステーキでも出してやるかぁ……」


 そっかぁ。魔物相手だから誰も困らないだろうと思ってはしゃいじゃったけど、やっぱり好き勝手やるのは良くないんだなぁ。
 異世界でも日本でも、人間社会でも野生の王国でも、ちゃんと場所ごとにルールがあって、生活があるんだよな。
 魔物は自然発生するから大丈夫、と安易に考えすぎた。猛省しないといけない。

 狩人ギルドで暇している狩人に、国境壁まで送ってもらう。
 何気に国境壁外まで行くの大変だよな。タクシーやバスがあるわけでもないし。

 こいつら頭良いし、もしかしたら呼べば迎えに来てくれる可能性もあるけど、街中をこいつらだけで移動させると問題が起きそうだから、とりあえず保留しておくしかないな。なにか後で考えよう。


「あ、トーマ。おかえりなさいっ……! 職人さんたちが張り切って、立派なお家を建ててくれたんだよっ……!」


 うん。ほんと立派な建物ですね。
 どのくらい立派な建物かと言えば、ベイクの自宅よりも大きくて頑丈そうな建物が建てられている。

 安全性を考慮した結果なのか、入り口は正面には設けられておらず、地上5メートルくらいの高さに設置されていた。常人なら中に入れないな。うちのメンバーなら全員あそこまでジャンプできる気がするけど。あ、マーサは無理な気がする。発狂しそうだな。

 中は少し面白い構造になっていて、全体で見れば床から屋根まで吹き抜けになっているものの、ところどころに足場があって、アスレチックみたいになっている。
 そして床も敷地の半分が床が作られておらず、砂が剥き出しになっている。スナネコの生態が全く分かっていないから、砂が全くない環境だとあまり良くないのではないか、と考えてこのデザインにしたようだ。

 そして中に入って気付いたけれど、国境壁に面している側に、人間用の出入り口が設けられていた。これならマーサでも中に入れそうだな。不定の狂気は免れた模様。


「基本的に自由にしてていいからな。お前達の出番はもうちょっと先になると思う。
 それまでリーネの言う事を聞きながら適当に過ごしててくれよ。
 あ、あと魔物を勝手に狩りまくって悪かった。お詫びに明日の朝御飯に良い肉持ってくるから、それで勘弁してくれな」


 8匹それぞれを軽くモフってからベイクへのゲートを開いた。


「おお、やっと帰ってきてくれたか! トーマ、ちょっと大変な事になってんだよ。すぐに来てくれねぇか?」


 ベイクのターミナル広場に到着すると、オーサンが待ち構えていた。
 大変なことってなんだ? その割にオーサンの様子はそこまで焦ってる感じじゃないな?


「最近打ち止めになってた異邦人なんだけどよ。今日いきなり大量にベイクに送られてきたんだよ。
 現時点で82名だ。お前らの金で食事させて、今は冒険者ギルドの訓練場で待たせてる。すぐ来てくれ」

「――――なんでいきなりそんなに……? 新しい転移が始まったってことか?
 とりあえず了解した。俺は冒険者ギルドに向かうけど、みんなも行くか?」

「そうですね。人数も多いですし私達も行きましょう。何か人手が必要になるかもしれませんし」


 人数が人数なので、パーティ全員で冒険者ギルドに向かった。

 訓練場に向かうと、黒髪の集団が緊張した面持ちで待っていた。
 一部、シンとシーンの耳を見て盛り上がっている層がいたが、俺も人の事は言えないのでスルーしておく。

 話を聞いてみると、やはり82名全員が、今日この世界に転移してきたばかりだという事だった。
 まずはステータスチェックで貰った能力の詳細を確認してもらって、デメリットを自覚してもらう。文面的にデメリットが分かりにくい能力についての相談にも乗った。

 リンカーズ、そしてリヴァーブ王国の基本的な知識、トイレの使い方、洗浄魔法の存在などを伝え、この世界はスキル無しでは生きられない世界で、スキルを得るためには魔物と戦わないといけないことなどを説明する。
 それと奴隷制度の管理が厳しいことを告げると、やはり一部の層が目に見えて落胆してしまった。気持ちはまぁ分からんでもないよ、うん。

 スキルを得ることでお金を稼ぐのは簡単になり、稼ぎが良ければモテモテになるよと言って、男性陣のモチベーションを高めつつ、ヴェルトーガであった事、ボールクローグであった事を伝え、リヴァーブ王国民から見た異邦人の微妙な立場や、利用される危険性などを伝える。

 カンパニーの話をすると、82名全員が参加を希望した。途中で抜けてもいいわけだしな。断るメリットはあんまりないはず。
 今回集団転移してきて、単独でカンパニーの説明に聞きに来た者も数名居て、明日になったらもう少し人数が増えるらしい。用心深いな。でも信用してもらえたみたいだし問題ない。


 最後に、この世界が如何に危険な世界であるかという事を改めて周知する。


「恐らくみんなはこの世界に転移してきた第3陣だと思う。ここに居るのが全員じゃないとして、キリの良いところで100人くらいが同時に転移してきたのだと想定する。
 第3陣であるみんなは、80~90%ほどの人がベイクに辿り着くことが出来たよな? で、第2陣の人たちはというと、死んでしまった人も含めて、18名しか把握出来ていないんだ。言ってる意味分かるか?
 もしも第2陣の人たちも同じ人数が転移していたとして、カンパニーの準備がまだ整っていない状況で存在が確認できたのは、20%未満だってことだ。生存者に限ると10人も居ないんだ。
 みんな忘れるなよ。この世界はゲームでもなければフィクションでもない。この王国にも歴史があって、人々はノンプレイヤーキャラじゃない。みんなそれぞれの生活がある、生きた人間達なんだ。
 迷惑をかければ排除されるし、油断すれば食い物にされるぞ。忘れんなよ。自分は選ばれた人間だとか主人公だとか、都合のいい妄想してると簡単に命を落すぞ」


 唾を飲み込む音がする。そんな音が聞こえるほど、場が静まり返ってしまった。
 ちょっと脅かしすぎたかな?


「出来ればみんな寿命を迎えるまで長生きしようぜ。だから真面目に堅実に、この国の人たちと仲良くやっていこう。戦えないなら別の道を探そう。やりたいことがあるなら応援する。困ったことがあればちゃんと支援する。
 せっかくの第2の人生、簡単に終わっちゃつまらないだろ? マナーとモラルをしっかり守って、楽しい異世界生活を満喫していこうぜ?」


 脅してばかりも申し訳ない。俺だって楽しんじゃってるわけだからな。
 せっかくこの世界に来てしまったんだから、みんなにも楽しんでもらいたいと思う。

 常識が分かれば迷惑行為も減るだろう。
 余裕があれば犯罪行為に走る者も減るだろう。

 同じ異邦人として、同じリヴァーブ王国に住まう者として、なるべく仲良くやっていきたいもんだよな。
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