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10章 壁外世界
365 迷宮への違和感
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ゲートを使ってヴェルトーガへ。
冒険者ギルドに行く用事もないので、直接迷宮に向かい、11階層へ。
昨日の夜にルートの確認は済ませてあるので、最短距離で先に進む。
この辺りまで来ると他の冒険者があまり居なくなる。
ヴェルトーガは海に面した都市なので狩人のなり手が少なく、生涯冒険者として活動する者が比較的多いらしい。
それにしても開放型迷宮はとにかく広い。体感的には迷宮外での戦闘とあまり違いを感じられない。
仮にヴェルトーガで迷宮の氾濫が起こっても、ここの冒険者達なら対処出来る気がする。
最短距離で進んでいるけど、なかなか次の階層への魔方陣に辿り着けない。あーもうスナネコ1匹連れて来たいわマジで! それでもスキップ分恵まれてるんだろうけどさぁ。
でも開放型迷宮は結構面白い。階層ごとに環境が全然違うのは知っていたが、思った以上にバリエーションが豊富だ。
草原エリア、湿地エリアの他に、山岳エリア、砂漠エリア、森林エリア、雪原エリアなんかもあった。
変り種としては洞窟エリアなんかもあって、むしろ積層型迷宮に近い作りになってしまっていたのが印象的だった。
ちょっとだけ心配したのが水中エリアの存在だったが、地図で確認した限りではそんなものは存在していない。
環境適応スキルって、水中はどんな影響を受けるんだろうなぁ。いつか海に入ってみたい。ま、この世界には水着の文化なんかないんだけどね。
出来れば今日中に最深部まで到達しておきたいが、本当に物理的な距離の問題で、中々先に進めない。
っていうかこんだけ広い迷宮、スキップなしだと泊り込んでも攻略出来ないだろ絶対!
考え事をしながらも進んでいく。
最短距離で戦闘をしていないからこその進行ペースだけど、この迷宮の地図を作った人たちの労力には頭が下がる想いだなぁ。
スキップ使いを複数人用意して、大人数で探索したのかな?
そう、開放型迷宮は別としても、この世界で強くなるためには、ある意味スキップは必須魔法と言ってもいい。
ベイク88階層に徒歩で移動しようとしたら、戦闘を回避しつつ最短距離で進んでも、片道2日はかかるだろう。
俺はこの世界の冒険者のスキル取得率があまりにも低すぎると感じていたんだけど、ある意味では仕方ないのかもしれないな。スキップがないと、満足にレベリングなんか出来る訳がない。
でもここに1つの疑問が生じる。
この世界の迷宮は、迷宮神像ダンゲルスヌーマが作り出した物であり、人類に恩恵を齎すものだ。メタっぽい視点で見れば、神様が人類強化のために用意した、修練場兼資源採掘場みたいな物のはず。
殆どスキップ必須のシステムだと、むしろ人類の成長を妨げているようにすら感じる。これって矛盾してないか? 迷宮を踏破すると大量のSPをくれるダンゲルスヌーマ様にしては、意地悪な仕様過ぎる気がする。
なんでこんな歪な状況になっているかと言えば、この世界に迷宮のショートカット機能がないことが原因で、そのショートカットとして機能するスキップのスクロールの流通量が、あまりにも少なすぎるためだ。
ここを改善しなければ、冒険者の成長を早めるにしても限界が来てしまう。これを解決する方法はないだろうか? 俺が居ないとスキップが使えないのは、結構不便なんだよなぁ。
そもそもなんでスキップの流通量がこんなに少ないんだ? どう考えてもリンカーズの仕様に合ってない。神様がうっかり設定をミスったっていうなら納得できなくもないが、エリアキーパーが少しずつ縄張りを拡張していたことを考えると、遠い未来の話ではあるけど、今の冒険者の成長速度のままでは、人類は絶滅してしまう可能性が高い。
エリアキーパーも人類の力で対抗できるという設定の場合、迷宮とスキップの関係性が明らかにおかしい。なんか見落としてないかこれ?
メンタムの話で知ったのは、空間魔法の魔法付加は、今まで不可能と考えられていたという事だ。つまり、スキップの魔法効果のある魔導具を作る事は、今までは不可能だったわけだ。
……でも、今なら話は違ってくるんじゃないか……?
あれ? これも結構ヤバい事実では? いや、人類が強くなるためには、絶対に解決しなければならない問題だよな?
というか、以前メンタムにゲートの魔導具の話をしたことがあった。そこで気付くべきだった。リピートの術式を付与した魔導具にスキップを魔法付加すれば、恐らくスキップの魔導具は作れるだろう。
だが空間魔法で優位性を保っていると思われるヴェルトーガに無断で、空間魔法の魔導具を作るのはどう考えても不味いか。ディオーヌ様への義理を欠く行為に他ならない。試作くらいなら許してくれるだろうけれど。
空間魔法の魔導具を作り出す場合、1つ懸念があるとすれば、その膨大な魔力消費量だ。俺はもう毎日使って慣れ切ってしまってるけど、覚えたての頃は『魔力量増加:中』を持っているのに魔力切れしかけた記憶がある。照明の魔導具や、トイレに置いてある洗浄の魔導具のような魔力自動吸引型にしてしまうと、そこらじゅうで冒険者が魔力切れを起こしてぶっ倒れそうだ。
ん~、これはちょっと、メンタムに相談するのはヤバい案件だな。装備製作の邪魔をしてしまうけれど、マーサに協力してもらって試作品を作り、それをディオーヌ様に見せて判断を仰ぐって流れが良いかな?
「トーマー? さっきから何考えてるのー? 18階層に到着したよー!
今日はこのまま19階層まで行って、迷宮神像にお参りしていくんだよねー?」
「ああ悪い悪い。ちょっとまた影響がでかい事思いついちゃってさ。帰ったら話すよ。マーサにも協力してもらわなきゃだし」
「マーサに協力って事は、魔導具関係だね? まったく……、まだ何かあるの?」
「多分な。成功したら、また一気に冒険者の成長が加速するかもしれねぇわ」
「うわ……。トーマがそこまで言うなんて、聞くのが恐ろしくなりますね」
「うん。私分かっちゃったかも。ていうか確かにトーマじゃないと思いつけないよね、能力的に」
今回は18階層でも戦闘を避けて、19階層でガーディアンを倒し、ダンゲルスヌーマ様に感謝を伝えて、ベイクに帰還したのだった。
冒険者ギルドに行く用事もないので、直接迷宮に向かい、11階層へ。
昨日の夜にルートの確認は済ませてあるので、最短距離で先に進む。
この辺りまで来ると他の冒険者があまり居なくなる。
ヴェルトーガは海に面した都市なので狩人のなり手が少なく、生涯冒険者として活動する者が比較的多いらしい。
それにしても開放型迷宮はとにかく広い。体感的には迷宮外での戦闘とあまり違いを感じられない。
仮にヴェルトーガで迷宮の氾濫が起こっても、ここの冒険者達なら対処出来る気がする。
最短距離で進んでいるけど、なかなか次の階層への魔方陣に辿り着けない。あーもうスナネコ1匹連れて来たいわマジで! それでもスキップ分恵まれてるんだろうけどさぁ。
でも開放型迷宮は結構面白い。階層ごとに環境が全然違うのは知っていたが、思った以上にバリエーションが豊富だ。
草原エリア、湿地エリアの他に、山岳エリア、砂漠エリア、森林エリア、雪原エリアなんかもあった。
変り種としては洞窟エリアなんかもあって、むしろ積層型迷宮に近い作りになってしまっていたのが印象的だった。
ちょっとだけ心配したのが水中エリアの存在だったが、地図で確認した限りではそんなものは存在していない。
環境適応スキルって、水中はどんな影響を受けるんだろうなぁ。いつか海に入ってみたい。ま、この世界には水着の文化なんかないんだけどね。
出来れば今日中に最深部まで到達しておきたいが、本当に物理的な距離の問題で、中々先に進めない。
っていうかこんだけ広い迷宮、スキップなしだと泊り込んでも攻略出来ないだろ絶対!
考え事をしながらも進んでいく。
最短距離で戦闘をしていないからこその進行ペースだけど、この迷宮の地図を作った人たちの労力には頭が下がる想いだなぁ。
スキップ使いを複数人用意して、大人数で探索したのかな?
そう、開放型迷宮は別としても、この世界で強くなるためには、ある意味スキップは必須魔法と言ってもいい。
ベイク88階層に徒歩で移動しようとしたら、戦闘を回避しつつ最短距離で進んでも、片道2日はかかるだろう。
俺はこの世界の冒険者のスキル取得率があまりにも低すぎると感じていたんだけど、ある意味では仕方ないのかもしれないな。スキップがないと、満足にレベリングなんか出来る訳がない。
でもここに1つの疑問が生じる。
この世界の迷宮は、迷宮神像ダンゲルスヌーマが作り出した物であり、人類に恩恵を齎すものだ。メタっぽい視点で見れば、神様が人類強化のために用意した、修練場兼資源採掘場みたいな物のはず。
殆どスキップ必須のシステムだと、むしろ人類の成長を妨げているようにすら感じる。これって矛盾してないか? 迷宮を踏破すると大量のSPをくれるダンゲルスヌーマ様にしては、意地悪な仕様過ぎる気がする。
なんでこんな歪な状況になっているかと言えば、この世界に迷宮のショートカット機能がないことが原因で、そのショートカットとして機能するスキップのスクロールの流通量が、あまりにも少なすぎるためだ。
ここを改善しなければ、冒険者の成長を早めるにしても限界が来てしまう。これを解決する方法はないだろうか? 俺が居ないとスキップが使えないのは、結構不便なんだよなぁ。
そもそもなんでスキップの流通量がこんなに少ないんだ? どう考えてもリンカーズの仕様に合ってない。神様がうっかり設定をミスったっていうなら納得できなくもないが、エリアキーパーが少しずつ縄張りを拡張していたことを考えると、遠い未来の話ではあるけど、今の冒険者の成長速度のままでは、人類は絶滅してしまう可能性が高い。
エリアキーパーも人類の力で対抗できるという設定の場合、迷宮とスキップの関係性が明らかにおかしい。なんか見落としてないかこれ?
メンタムの話で知ったのは、空間魔法の魔法付加は、今まで不可能と考えられていたという事だ。つまり、スキップの魔法効果のある魔導具を作る事は、今までは不可能だったわけだ。
……でも、今なら話は違ってくるんじゃないか……?
あれ? これも結構ヤバい事実では? いや、人類が強くなるためには、絶対に解決しなければならない問題だよな?
というか、以前メンタムにゲートの魔導具の話をしたことがあった。そこで気付くべきだった。リピートの術式を付与した魔導具にスキップを魔法付加すれば、恐らくスキップの魔導具は作れるだろう。
だが空間魔法で優位性を保っていると思われるヴェルトーガに無断で、空間魔法の魔導具を作るのはどう考えても不味いか。ディオーヌ様への義理を欠く行為に他ならない。試作くらいなら許してくれるだろうけれど。
空間魔法の魔導具を作り出す場合、1つ懸念があるとすれば、その膨大な魔力消費量だ。俺はもう毎日使って慣れ切ってしまってるけど、覚えたての頃は『魔力量増加:中』を持っているのに魔力切れしかけた記憶がある。照明の魔導具や、トイレに置いてある洗浄の魔導具のような魔力自動吸引型にしてしまうと、そこらじゅうで冒険者が魔力切れを起こしてぶっ倒れそうだ。
ん~、これはちょっと、メンタムに相談するのはヤバい案件だな。装備製作の邪魔をしてしまうけれど、マーサに協力してもらって試作品を作り、それをディオーヌ様に見せて判断を仰ぐって流れが良いかな?
「トーマー? さっきから何考えてるのー? 18階層に到着したよー!
今日はこのまま19階層まで行って、迷宮神像にお参りしていくんだよねー?」
「ああ悪い悪い。ちょっとまた影響がでかい事思いついちゃってさ。帰ったら話すよ。マーサにも協力してもらわなきゃだし」
「マーサに協力って事は、魔導具関係だね? まったく……、まだ何かあるの?」
「多分な。成功したら、また一気に冒険者の成長が加速するかもしれねぇわ」
「うわ……。トーマがそこまで言うなんて、聞くのが恐ろしくなりますね」
「うん。私分かっちゃったかも。ていうか確かにトーマじゃないと思いつけないよね、能力的に」
今回は18階層でも戦闘を避けて、19階層でガーディアンを倒し、ダンゲルスヌーマ様に感謝を伝えて、ベイクに帰還したのだった。
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