異世界で目指せハーレム生活! でも仲間のほうがモテモテです

りっち

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10章 壁外世界

375 vsユリバファルゴア④ 多彩

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 砂の下から脱出すると、目の前にどでかい壁が聳え立っていた。これ、ユリバファルゴアの胴体か!
 こいつマジで頭おかしいだろ。1個の生命体が国境壁よりもでかいとかありえねぇ。

 そんなどうしようもない事を考えていたら、突如ユリバファルゴアの表面が振動する。何がくる……?


「うおっ! マジかコイツ!?」


 体表にびっしり生えてる黄色い鱗を、まるで手裏剣のように飛ばしてきやがった!
 うおおおやってらんねぇぞこのアホオオオ!!

 手裏剣のようになんて言ったけど、自分のサイズを考えやがれ!
 厚さだけでも数十メートル、1枚1枚の面積は小さめの村くらいありそうなもんを、気軽にビュンビュン飛ばしてきやがってええええええ!!
 村が飛んでくるっていうこのパワーワード感、なんとかなりませんかねぇ!?
 
 攻撃に転じる余裕はない!
 まずは回避に専念しないと行き着く先は死あるのみ!

 ジャンプは魔力消費が大きいので極力使わない。
 それに俺がジャンプを使っているのはまだ見せてない。出来れば見せたくない。

 砂に足を取られるのが中々に厄介だ。『身体能力強化:大』と『常時発動スキル強化』の重複効果でギリギリ回避できている感じだな。スキル様々だぜ。
 足元から土魔法を発動し、足場の砂を少しでも固めて、グリップ力を高める。気休め程度だけど、足場が動作に及ぼす影響は大きい。やらないよりはやるべきだ!

 何が嫌になるかって、鱗を飛ばした部分に、また新しい鱗が生えてきてるってことなんすよねぇ。
 つまりこの鱗は弾数無限。回避してるだけじゃ埒が明かないわけっすわ。

 集中して見極める。
 この鱗弾も、やはり魔力は使用していないらしい。
 魔力探知に頼ることなく、身体能力だけで回避し、攻撃に転じろ!

 巨大な鱗が雨のように降り注ぐ。
 それでも全てが直線軌道。こんなものには当たってやれない。
 鱗の速度にも大きさにも大分慣れてきた。
 これなら回避しながら攻撃も……ってこの野郎!?

 俺が回避に専念するように正面から鱗を飛ばし続けて、その間に俺の居る場所をUの字型に狭めてきていやがった!
 つまりこれから、3方から同時に鱗が飛ばされるってこった!
 クソが! でかい図体して、変に頭使ってくるんじゃねぇ!

 ちっ! 流石に3方向から同時に撃ち込まれたら回避し切れるかどうか……!
 ならやる事は決まってらぁ!

 足場に土魔法、風魔法で追い風まで作って、全力で正面の壁に走る!
 飽和攻撃をされるくらいなら、発射口に張り付いたほうが全然マシってもんよぉ!

 って、正面の壁が遠ざかっていく!?
 俺の動きと狙いに気付いたのか!
 
 そして気付くと後ろ側も壁になっていて、Uの字どころかOの字になってる!
 3方向どころか全方向から鱗飛ばしなんてされたら、回避できるわけがないっ!

 回避できるわけがないなら、やる事は1つだああああああ!


「閃空うううううう!!」


 今まで横薙ぎにしか放っていなかった閃空を、大きく円を描くように縦の斬撃として発動する!

 ギュオオオオオアアアアア!!?

 はっ! バーカ! 
 俺を閉じ込めようとしていた部分を、丸ごと切り離してやったぜ!
 ほぼ360度の閃空だったから、普段より消費が激しいけど、必要経費だ!

 そして切り離した部分はそのままで、胴体の頭側とと尻尾側から触手みたいなのが伸びてきて、繋ぎ合わさったのが確認できた。
 これは……、ダルマ落とし作戦で、いけるか!?

 しかしダルマ落とし作戦も、そう簡単じゃないんだよな。
 切断するだけではすぐに再生されてしまう。頭と尻尾から短時間で切り離さないといけない。
 さっきみたいな閉じ込めを、またやってくるかは分からない。

 となると、シンとの連携が必要になってくるってワケだ!
 くっそ! ここからシンと合流するのは、結構難易度高くねぇか!?


 しっかしこの野郎! 魔法も使わないくせに、めちゃくちゃ多彩な攻撃を仕掛けてきやがって……!
 しかも頭も悪くねぇし、油断とか遊び心っていう揺らぎがない。
 殺意100%で全力で殺しにくるから始末に負えねぇ!

 ギュオオオオオオオオ!!

 ――――っ!?
 なんだ!? いきなり顔を空に向かって一直線に伸ばし始めた!

 距離を取ったら閃空とグリーンリーパーの餌食になるって分かっているはず……。
 なら、何がくる……!?

 ギュラアアアアアアアアアア!!

 突如頭が反転。こっちに向かって高速で突っ込んできやがった!
 1度飛び上がってから突っ込んでくるとか、ミサイルなのかテメェはよぉ!?


「うおおおーーーー!!」


 とにかく走れ! 全力で走れーーーっ!!
 この無駄にでかい頭部の範囲から、全力で距離を取れええええええ!!


 ギュオオオオオオオ!!


「うわああああああああああ!!!」


 背後から世界そのものが揺れたかと思うほどの衝撃を感じる!!

 衝撃で吹っ飛ばされはしたが、何とか死なずに済んだ……!
 大量の砂が巻き上がって、またもや視界がゼロになる。

 な、なんとか攻撃は回避できたけど、砂埃で何にも見えねぇ。
 というか、砂埃がドンドン濃くなっている……?
 足元からの振動も続いているし、いったいなにを……、ってまさか!?

 足場を固めて追い風も発生させ、強化されたスキルで全力で上に跳ぶ。さらにそこからジャンプを使用して、可能な限り高い位置へ。

 なんとか砂埃の範囲を抜けて俺が見た物は、まるで1本の塔のような状態で、一心不乱に砂に潜り続けるユリバファルゴアの姿だった。
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