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10章 壁外世界
403 別荘と浴槽
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次の日から異風の旋律による、ウミガメ島での別荘作りが始まった。
朝にルイナスリームへの人員輸送とスナネコたちへの食事を済ませたら、リーネも島のほうに合流するようになった。
スナネコ達による鱗の運搬作業はとりあえずお休みに。
スナネコたちにはこの機会にゆっくりと羽を伸ばして頂きたいものです。ほんと酷使しちゃってるし……。
それと、鱗運搬の中継用に立てたターミナルは、ユリバファルゴアのお肉集めに役立っているらしい。
鱗は人力で運べないのでターミナルはあまり役に立たないが、ユリバファルゴアの肉は腐りもしないし味も良い。
ユリバファルゴア討伐を聞きつけたディオーヌ様がファーガロン様と交渉し、ウィルスレイアとユリバファルゴアの間だけを行き来できる限定的なゲートサービスを始めてしまったのだ。
利用料金も片道金貨3枚とかなり破格で、実力的に狩人になれない人でも安全に採取できるため非常に好評だ。
ファーガロン様はウィルスレイアが活気づくし、ディオーヌ様はウィルスレイアで独占状態だったユリバファルゴアの肉を確保できるという、WIN-WINなサービスとなっている。
ディオーヌ様はウィルスレイアで確保した肉を、ストレージで大量に持ち帰り、王国の西端であるヴェルトーガから、水運を最大限に利用して販売しているそうだ。やっぱディオーヌ様は怖いわ。
俺とシンはひたすらにサーチシステムの設置をしながら直線距離を伸ばしていく。
中継ポイントが設置できたおかげでかなり楽にはなったが、そもそもの目的地が分からないため、全く先が読めない作業だ。
1人じゃないことと、深海の景色が中々に面白いことが救いだ。
魔物はちょいちょい襲ってくる。
本当に砂漠エリアは平和だったなぁ。平和ってか静かだったって感じかな?
リンカーズの魔物は陸上ですら巨大だったせいか、水中では更に巨大な魔物が多い。
20メートルサイズのイカやクジラなんて目じゃないサイズの魔物が、結構ひっきりなしに襲ってくる。
返り討ちにした魔物の死骸は、魔物に食べられることもあるし、魔物じゃないっぽい生物に食べられたりしている。
肉食の魚が巨大魔物の死骸に群がっている様は、なかなかにグロい物を感じさせるぜ。
そういった魔物じゃないような海洋生物達は、俺達に襲い掛かって来ないんだけど、俺たちに興味もないらしく近寄っても来ない。こっちから近寄ると逃げていくので、警戒心はあるらしい。
どうやらウミガメさんの方が例外的な存在だったようで、今のところ他の生き物と仲良くなれてはいない。
サーチシステムの設置が進むに連れて、どうしても往復の時間が伸びて、1日に設置できる距離が短くなっていく。
透月で海水を凍らせて、その上でゲートを使ってみたけど、やっぱり発動してくれなかった。
ズルはだめですかそうですか。
「トーマ、シン! 暫定的ではあるけど、一応住める程度には完成したぜ! 1度見てくんねぇか!?」
別荘作りをはじめて3日目。マーサから完成報告を受ける。
え、早くない……? 早い分には文句ないけども。
完成したという別荘を見に行くと、ターミナルを置いてある洞窟の両隣に扉が設置してあった。
おお? 洞窟を変形させて住居にしたのか?
「トーマの作ったターミナル設置場所を見て、面白そうだと思って真似してみたんだよ。これならウミガメさんたちの生活空間への侵食を最低限に抑えられるからよ。
その分採光は難しかったが、私らはみんな暗視が使えるし、トーマとリーネに到ってはヴィジョンまで使えっからな。換気する場合も全員風魔法が使えるし何とかなるだろってな」
力技だなぁ。でも言われてみれば確かに、異世界での居住空間は物理法則をある程度無視していいのかもなぁ。
「調理に関しちゃ私らはどこでも問題なく出来ちまうからよ。火を使う場合にゃ念のため外で、って程度だな。
向かって左側が全員で住む方の別荘。右側が少し小さめの、5~8人程度の居住空間だな。
必要ないかもしれねぇけど、一応シンとハル夫妻が俺たちとも別々になりたい時のためにさ」
嘘つけ、絶対うちの嫁側の提案だろ。
ま、寝る空間は別々のほうが、お互い気を使わなくていいのも確かか。
「断崖を刳り貫いて、中にユリバファルゴアの鱗をリモデリングで入れて補強してあるぜ。多分この崖が全部崩れ去ったとしてもびくともしない強度だろうから、生き埋めになる可能性はなくなったはずだ」
ユリバファルゴアさんマジで大活躍っすね。
リモデリングで自在に変形させられるから使い勝手が良すぎる。
「内装はこれから自由に飾り立てて行く予定だ。みんなには合格を貰ったから、明日からは家具とかを用意しようと思ってるぜ。補強の鱗に『防虫』も付与していかなきゃなんねぇしな。
だがまぁ構造的にはこれで完成のつもりだぜ。あとはトーマが風呂を作ってくれりゃあ終わりかな?」
「あー風呂か。今のうちに浴槽を準備してしまって、ザルトワシルドア倒したらみんなで入ろうかな。
俺は屋外に作るつもり満々だったけど、みんなもそれでいい?」
全員にOKを貰ったので、みんなにも協力してもらって浴槽を作る。
ターミナル置き場の正面に作って、両夫婦宅との距離を同じにして、ターミナルからは見えないように壁を作る。
海側に面した方を開放し、深さは1メートルくらい、広さは1辺10メートルくらいの浴槽を2つ設置。でかいとは思うけど、人数増えてもゆったり入浴したいんだ。だから仕方ないんだ。
2つの浴室の中央に壁を作って仕切りにする。親しき仲にも礼儀ありだ。
着替え用のスペースとして、仕切りの壁は浴槽から5メートル程度突出させる。乾燥と洗浄があるので、浴槽以外のスペースはあんまり必要ないのだ。
「っし、こんなもんか。
あとはさっさとザルトワシルドアを倒して、みんなでゆっくり風呂に入ろう」
こうして目に見えてご褒美があるとやる気が出るな。
異世界初の入浴の条件がエリアキーパーの打倒って、ちょっと条件厳しすぎる気もするけどね。
朝にルイナスリームへの人員輸送とスナネコたちへの食事を済ませたら、リーネも島のほうに合流するようになった。
スナネコ達による鱗の運搬作業はとりあえずお休みに。
スナネコたちにはこの機会にゆっくりと羽を伸ばして頂きたいものです。ほんと酷使しちゃってるし……。
それと、鱗運搬の中継用に立てたターミナルは、ユリバファルゴアのお肉集めに役立っているらしい。
鱗は人力で運べないのでターミナルはあまり役に立たないが、ユリバファルゴアの肉は腐りもしないし味も良い。
ユリバファルゴア討伐を聞きつけたディオーヌ様がファーガロン様と交渉し、ウィルスレイアとユリバファルゴアの間だけを行き来できる限定的なゲートサービスを始めてしまったのだ。
利用料金も片道金貨3枚とかなり破格で、実力的に狩人になれない人でも安全に採取できるため非常に好評だ。
ファーガロン様はウィルスレイアが活気づくし、ディオーヌ様はウィルスレイアで独占状態だったユリバファルゴアの肉を確保できるという、WIN-WINなサービスとなっている。
ディオーヌ様はウィルスレイアで確保した肉を、ストレージで大量に持ち帰り、王国の西端であるヴェルトーガから、水運を最大限に利用して販売しているそうだ。やっぱディオーヌ様は怖いわ。
俺とシンはひたすらにサーチシステムの設置をしながら直線距離を伸ばしていく。
中継ポイントが設置できたおかげでかなり楽にはなったが、そもそもの目的地が分からないため、全く先が読めない作業だ。
1人じゃないことと、深海の景色が中々に面白いことが救いだ。
魔物はちょいちょい襲ってくる。
本当に砂漠エリアは平和だったなぁ。平和ってか静かだったって感じかな?
リンカーズの魔物は陸上ですら巨大だったせいか、水中では更に巨大な魔物が多い。
20メートルサイズのイカやクジラなんて目じゃないサイズの魔物が、結構ひっきりなしに襲ってくる。
返り討ちにした魔物の死骸は、魔物に食べられることもあるし、魔物じゃないっぽい生物に食べられたりしている。
肉食の魚が巨大魔物の死骸に群がっている様は、なかなかにグロい物を感じさせるぜ。
そういった魔物じゃないような海洋生物達は、俺達に襲い掛かって来ないんだけど、俺たちに興味もないらしく近寄っても来ない。こっちから近寄ると逃げていくので、警戒心はあるらしい。
どうやらウミガメさんの方が例外的な存在だったようで、今のところ他の生き物と仲良くなれてはいない。
サーチシステムの設置が進むに連れて、どうしても往復の時間が伸びて、1日に設置できる距離が短くなっていく。
透月で海水を凍らせて、その上でゲートを使ってみたけど、やっぱり発動してくれなかった。
ズルはだめですかそうですか。
「トーマ、シン! 暫定的ではあるけど、一応住める程度には完成したぜ! 1度見てくんねぇか!?」
別荘作りをはじめて3日目。マーサから完成報告を受ける。
え、早くない……? 早い分には文句ないけども。
完成したという別荘を見に行くと、ターミナルを置いてある洞窟の両隣に扉が設置してあった。
おお? 洞窟を変形させて住居にしたのか?
「トーマの作ったターミナル設置場所を見て、面白そうだと思って真似してみたんだよ。これならウミガメさんたちの生活空間への侵食を最低限に抑えられるからよ。
その分採光は難しかったが、私らはみんな暗視が使えるし、トーマとリーネに到ってはヴィジョンまで使えっからな。換気する場合も全員風魔法が使えるし何とかなるだろってな」
力技だなぁ。でも言われてみれば確かに、異世界での居住空間は物理法則をある程度無視していいのかもなぁ。
「調理に関しちゃ私らはどこでも問題なく出来ちまうからよ。火を使う場合にゃ念のため外で、って程度だな。
向かって左側が全員で住む方の別荘。右側が少し小さめの、5~8人程度の居住空間だな。
必要ないかもしれねぇけど、一応シンとハル夫妻が俺たちとも別々になりたい時のためにさ」
嘘つけ、絶対うちの嫁側の提案だろ。
ま、寝る空間は別々のほうが、お互い気を使わなくていいのも確かか。
「断崖を刳り貫いて、中にユリバファルゴアの鱗をリモデリングで入れて補強してあるぜ。多分この崖が全部崩れ去ったとしてもびくともしない強度だろうから、生き埋めになる可能性はなくなったはずだ」
ユリバファルゴアさんマジで大活躍っすね。
リモデリングで自在に変形させられるから使い勝手が良すぎる。
「内装はこれから自由に飾り立てて行く予定だ。みんなには合格を貰ったから、明日からは家具とかを用意しようと思ってるぜ。補強の鱗に『防虫』も付与していかなきゃなんねぇしな。
だがまぁ構造的にはこれで完成のつもりだぜ。あとはトーマが風呂を作ってくれりゃあ終わりかな?」
「あー風呂か。今のうちに浴槽を準備してしまって、ザルトワシルドア倒したらみんなで入ろうかな。
俺は屋外に作るつもり満々だったけど、みんなもそれでいい?」
全員にOKを貰ったので、みんなにも協力してもらって浴槽を作る。
ターミナル置き場の正面に作って、両夫婦宅との距離を同じにして、ターミナルからは見えないように壁を作る。
海側に面した方を開放し、深さは1メートルくらい、広さは1辺10メートルくらいの浴槽を2つ設置。でかいとは思うけど、人数増えてもゆったり入浴したいんだ。だから仕方ないんだ。
2つの浴室の中央に壁を作って仕切りにする。親しき仲にも礼儀ありだ。
着替え用のスペースとして、仕切りの壁は浴槽から5メートル程度突出させる。乾燥と洗浄があるので、浴槽以外のスペースはあんまり必要ないのだ。
「っし、こんなもんか。
あとはさっさとザルトワシルドアを倒して、みんなでゆっくり風呂に入ろう」
こうして目に見えてご褒美があるとやる気が出るな。
異世界初の入浴の条件がエリアキーパーの打倒って、ちょっと条件厳しすぎる気もするけどね。
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